2010/03/14

書籍 「マネー・ボール」

現在プロ野球はオープン戦の真っ最中ですが、パ・リーグは20日(土)、セ・リーグは26日(金)にペナントレースが開幕します。個人的な感覚として、オープン戦の話題になると「冬が終わる」気がし、開幕戦を迎えると「春が来た」という感じがします。



今回の内容は、最近読んだ「マネー・ボール」(マイケル・ルイス 中山宥(訳) ランダムハウス講談社)という本についてです。

この本は、実話をもとに描かれたあるメジャーリーグチームの話です。主人公はアスレチックスのゼネラルマネージャーであるビリー・ビーン。彼はそれまでの球界にはなかった考え方で、年俸トータルはヤンキースの3分の1でしかないのに、アスレチックスの成績をほぼ同等まで導いていたという内容です。



■原則となる考え方

この本を読む上で重要な考え方があります。それは「アウト」についてなのですが、本の中では次のように書かれています。
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野球において最も肝心な数字――飛び抜けて圧倒的に重要な数字――は3だ。すなわち、イニングを区切るアウト数である。スリーアウトになるまでは何が起こるかわからない。スリーアウトになってしまえばもう何も起こらない。したがって、アウト数を増やす可能性が高い攻撃はどれも、賢明ではない。逆に、その可能性が低い攻撃ほどよい。(p.102より引用)
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特に、自チームが攻撃をしている時はいかにアウトにならないかを考え、それを定量的に把握できるデータを使い、また実践できる選手を重宝するのが、ゼネラルマネージャーであるビリー・ビーンの考え方なのです。



■攻撃の考え方

では、具体的には彼はどのように考えたのか。重視したデータの1つが「出塁率」というものです。
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ここで、出塁率というものに注目してほしい。出塁率とは、簡単に言えば、打者がアウトにならない確率である。よって、データのなかでもっとも重視すべき数字は出塁率であることがわかる。出塁率は、その打者がイニング終了を引き寄せない可能性を表している。(p.102より引用)
打率よりも出塁率が、アウトにならない確率が、なによりだいじなのだ。野球チームの成功に最も寄与する技能は、どんなかたちであれ出塁することだ。(p.200より引用)
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一般的に野球における攻撃、つまり打撃に関して最もポピュラーな指標は「打率」ではないでしょうか。しかしビリーは、打率ではなく出塁率を重要視します。なぜならそれは逆に言えば「アウトにならない確率」であり、まさに前述の原則となる考え方に基づいているのです。

ちょっと話がそれますが、そういえばマリナーズ・イチローも大切なのは「打率ではなく安打数だ」と言っていました。その理由は、安打数は1本1本の積み重ねで減ることはないもので、打率を求めると打席に立ちたくなくなってしまうと言っていたように記憶しています。



■守備の考え方

守備面に関して印象的だったのは2点です。エラーについてと、投手について重視するデータについてです。

エラーについて、以下のような記述がされていました。
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エラーとは何か?第三者の目から見て、いまのはもっとまともにプレーできたはずだということを表わす。スポーツの世界において唯一主観的なデータにほかならない。試合後のロッカールームで話題に出るような、あそこでああすればよかったのに、という指摘だ。 (中略) ところが野球のエラーは、実際には行われなかったプレーをスコアラーが思い浮かべて比較し、判断を下す。まったく異例な”参考意見の記録”なのである(p.114から引用)
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「エラーとファインプレーは紙一重」という表現があるように、確かにエラーの中には必ずしも責められるものではないプレーもあります。なぜなら、積極的にチャレンジした場合の結果だからです。一方で、素人から見てもまずいプレーというのも(プロといえども)存在するのが現実なので、全てのエラーについて上記引用の内容が当てはまるとは思いませんが。


次に投手のデータについてです。書籍では「本当に意味のあるデータとは、与四球、被本塁打、奪三振などだ(p.362より引用)」と書かれています。

よく目にする被安打や防御率は出てきません。その理由は、被安打については、フェアグラウンド内に打球が飛んでも、それが安打となるか否かは野手の守備能力や運に依存する部分が大きく、本塁打以外のフェア打球は投手には責任は無いとするもの。また防御率については、周囲の状況によって大きく変動する要素のためというものです。



以上、「考え方の原則」、「攻撃の考え方」、「守備の考え方」について整理しました。

攻撃面での「アウトにならない」という考え方は、あらためて考えさせられました。というのも、理論上は確かにその通りなのですが、一方でこの考え方では盗塁やヒットエンドランなどは非効率とされるからです。

もちろんゼネラルマネージャーであるビリーの立場では、この考え方は「限られた資金の中で、レギュラーシリーズを戦い、高い勝率で終える」という戦略目的を達成するためのものですので、理解はできます。しかし野球を見る側としては、盗塁などを否定してしまうとエキサイティングさに欠けるゲームになってしまいかねないように思います。いわゆるスモールベースボールとは対極にある考え方とも言えます。(結局、どちらが間違っているというものでもないので、人それぞれかもしれないですが)



今年のプロ野球は、西武の雄星投手など楽しみな人材もいるので、今から開幕が楽しみです。


マネー・ボール (ランダムハウス講談社文庫)

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多田 翼 (書いた人)