2010/03/27

日経電子版(評価と課題)

日経新聞が10年3月23日より、電子版をスタートさせました。これまではNIKKEI NETにより記事の配信がされていましたが、今後は無料・有料コンテンツを組み合わせた本格的なネット新聞としての事業となります。

まず料金プランから確認すると、以下のような4種類のプランが設定されています(表1)。この価格設定は、今回の記事のポイントでもあります。



電子版開始当初は、無料登録で様子を見ていました。ですが、無料版だと見られる記事やコンテンツに制限があるため、電子版の評価が難しいと判断し、実際に自分の目で確かめるために有料登録をしてみました。(注 4月30日までは創刊記念キャンペーンで有料会員サービスを無料で利用できるため、実際にはまだお金は支払っていない)

そこで、日経電子版を見てみて、現時点での評価を以下の観点から整理してみます。
・ 電子版の印象
・ 見えてきた問題点
・ 問題点詳細 (2つ)


■ 電子版の印象

無料登録の時点でざっと見た範囲では、電子版でも紙版と同様の記事が読めそうだという印象でした。ただ、紙版にはあるが無料登録では見られないもののうち、次の3つが有料登録でどうなるかが気になっていました。具体的には、「私の履歴書」、「経済教室」、「景気指標(月曜朝刊のみ)」の3つです。

これらのうち、有料版では「私の履歴書」、「経済教室」は紙版と同様の内容が見られることを確認できました(「景気指標」については後述)。また、電子版ならではの機能やコンテンツもいくつかあるようです。(詳細は省略)



■ 見えてきた問題点

一方で問題点もあると思いました。具体的には、以下の通りです。(※については別途詳細を書いています)

○無料版での問題点
・ 右クリックコピーができない(Ctl+Cはできるがいずれできなくなる・・?) ※
・ 無料登録だと過去6か月分の見出し検索しかできない

○機能面での問題点
・ 月曜朝刊の「景気指標」の各種統計データが、紙面ビューアーでしか見られない
(紙面ビューアー:紙面イメージをそのまま表示する)
・ 紙面ビューアーの表示がやや遅く感じる
・ スマートフォンでは紙面ビューアーが利用できない

○価格についての問題点
・  価格設定 (無料、4000円、5383円/4568円) ※
・ 記事検索は月25回まで無料 (26回目からは1回あたり175円)
・ 人事情報データベース(日経WHO'S WHO)の利用は別途370円



■ 問題点詳細 (右クリック)

ツイッター等でも話題になっていましたが、無料登録の場合、記事内の文章をコピーしたくても右クリックによるコピーができません。なぜなら、右クリックをしても何も表示されないからです(ちなみに、Ctrl+Cからはできますが)。

一方、有料登録の場合は、右クリックからコピーもできますので、こんなところで無料/有料の差を設けているようです。仮にそうだとすると、Ctrl+Cもいずれできない設定となるかもしれません。個人的には、無料登録でもコピーはできてもいいのでは、と思いますが。



■ 問題点詳細 (価格設定および電子版の位置づけ)

次に、価格設定についてです。なぜ問題かというと、価格体系があくまで紙版(3383円/3568円)の延長で設定されているように思うからです。これは、電子版のみの価格が紙版よりも高い4000円に設定されていることがそれを象徴しています。電子版には印刷や配達の経費は発生しなく、普通に考えれば低コストで提供できるはずです。電子版は紙版よりも情報量は多いことは事実ですが、それを考慮しても紙版より高い設定には疑問です。

一方で既存の紙版読者については、+1000円での電子版提供は一見お得なようにも思えます。しかし、紙+電子版で合計5383or4568円という価格を考えると、決して安い価格ではないのではないでしょうか。

目標部数が現在の紙版の300万部に対して30万部であること、また日本経済新聞社・喜多社長の発言である「購読料は、現在の紙の新聞販売に影響を与えない価格体系を模索した」などを考慮すれば、そもそもの同社の電子版の位置づけはあくまで紙版の延長上でしかないという印象です。1つ1つの記事やコンテンツが良くても電子版の戦略がこれでは、Webのメリットを十分に活かしきれないのではと思います。

では、Webによる電子版の新聞媒体のメリットとはどういうものでしょうか。例えば、以下のような点のはずです。
(1) 低コスト運用
(2) モバイル等の各種電子端末での閲覧
(いつでもどこでも、自分に合った端末から読める)
(3) 記事の引用がしやすい
(4) 検索が容易

しかし、現状ではそれぞれにおいて前述した問題点を抱えています。
(1) 価格設定が紙版の延長。電子版ではゼロベースで検討し設定すべき
(2) スマートフォンで紙面ビューアーが利用できない
(3) 無料登録では、文章のコピーをさせない姿勢が見られる
(4) 記事検索で追加料金を取られる場合がある



個人的には、日経の電子版事業をビジネス(有料モデルで)としてスタートさせたこと自体は、評価しています。しかし、電子版の位置づけが紙版の延長という発想ではせっかくの日経の強みが活かされない戦略です。まだ電子版を立ち上げたばかりで様々な課題があるのでしょうが、ベースとなるこの戦略を見直すべきではないかと思っています。

4月末までは有料登録も創刊キャンペーンで無料ですが、5月以降も有料で登録するかはもう少し様子見です。


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多田 翼 (書いた人)