2010/07/01

ローカリズムのグローバル化


■まとめ

今回の記事のまとめです。

・ 企業のグローバル化には3段階ある
・ 中国での賃上げ労働争議と海外の人材登用
・ ローカリズムのグローバル化とは



■3段階の企業のグローバル化

NTTドコモの「iモード」を立ち上げた一人でもある夏野剛氏は、著書「夏野流 脱ガラパゴスの思考法」(ソフトバンククリエイティブ)において、企業のグローバル化には次のように3段階あるとしています。

(1)国内製造輸出型
*グローバルマーケットはあくまで売り先の市場としか考えていない
*経営体制や企業哲学などはグローバル化していない場合がほとんど

(2)製造拠点のグローバル化
*人件費などの製造コストの低減のために工場を海外に移す
*日本国内のやり方、哲学を海外に移転しようとする

(3)グローバル企業化
*一部本社機能も必要に応じて海外に移すことも厭わない
*経営体制や企業哲学は世界で通用する、世界中の従業員を動かす独自性が要求される



■中国での賃上げをめぐる労働争議

ここ最近気になる出来事として、中国で賃上げをめぐる労働争議やストが相次いでいるニュースをよく目にします。中国の消費者物価指数(CPI)が上昇する一方で、賃金が据え置かれたままの状況では、相対的には減収しているようにも感じられ労働者の不満が労働争議につながるというのもわかる気がします。

ただ、日経新聞の10年6月27日の朝刊国際面の記事では、「一連の労働争議の根本的な問題は労組。労組のあり方を変えない限り、スト問題は解決しない」(北京の日系企業幹部)と報じています。というのも、工場に労組があったとしても、共産党や企業経営者寄りで従業員の賃上げ交渉の受け皿になっていないためだそうです。この記事では、「”労働争議が中国進出リスク”と言われるようになれば、長い目で見ればマイナス」であると懸念しています。



■海外の人材登用

そんな中、コマツが2012年までに、中国にある主要子会社16社の経営トップ全員を中国人にする方針を決めたようです(日経10年6月29日朝刊)。コマツ以外にも、海外の人材を積極に登用している例として、トヨタ自動車、伊藤忠商事、資生堂、花王などが取り上げられていました。

日本企業では人事異動の一環として日本人が数年間、現地法人のトップや幹部を務める例が多いようですが、現地市場に精通した人材を積極登用して権限を委譲し、経営の意思決定を速めるのがコマツの狙いのようです。記事では、「中国で相次ぐ日系工場でのストライキの背景には現場の社員との対話不足も指摘され、経営層の現地化を求める声がある。現地生え抜きの人材が要職につけば社員の意欲向上にもつながる」と期待しています。



■ローカリズムのグローバル化

フジサンケイビジネスアイの「論風」に、グローバル企業のマネジメントについてのある記事が掲載されました。投稿者である日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)会長の田下憲雄氏によると、中国市場に進出する日本企業の重要課題として以下のポイントを挙げています。
・ 「マネジメントの現地化」と、それを可能にする人材の確保と育成
・ そのための仕組みの構築と、それをサポートする日本人人材の育成

同氏の言う 「マネジメントの現地化」とは、経営にかかわる重要な意思決定をローカルの経営者と社員に任せ、投資回収の責任を委ねること。すなわち、様々なリスクに対して迅速かつ的確な判断を行いながら、事業を創造することができるのはローカル人材だと認識し、そうした人材の確保・育成に取り組むことであると説明されています。

従来の日本企業の課題は、海外で活躍できる日本人を確保・育成することだと言われていましたが、このように中国そしてアジアの現地人材をグローバル人材として育成することも必要で、そのための日本人人材の育成も課題になってきそうです。この状況について田下氏は、「ビジネスを本当に成功させることができるのは、ローカリズムとローカル人材をグローバル化することに成功したときではないか」という言葉で表現しています。



■最後に

冒頭で企業のグローバル化を3段階で見た時に、少しずつですが、「(2)製造拠点のグローバル化」から「(3)グローバル企業化」に変わってきていることを感じます。世界の情報がこれだけ瞬時に伝わる状況の中、今後は日本人だけで現地法人を運営することがリスクになってきそうです。

そうなると、販売やマーケティングにおいても日本国内の考え方だけではなく、現地の事情や国民性に合わせた展開を考える必要があるのかもしれません。



※参考情報

【論風】インテージ社長・田下憲雄 グローバル化とマネジメントの現地化
http://www.sankeibiz.jp/business/news/100312/bsg1003120501001-n1.htm


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多田 翼 (書いた人)