2010/11/07

キャリアと適性に見る「鶏と卵」

文部科学省によると、進路指導におけるキャリア教育は次のように説明されています。

「激しい社会の変化に対応し、主体的に自己の進路を選択・決定できる能力やしっかりとした勤労観、職業観を身に付け、 (中略) 社会人・職業人として自立していくことができるようにするキャリア教育の推進が強く求められています」。

まずは自分自身の仕事への適性や考え方を見極め、それに合った仕事を選ぶことを目指す教育です。

■自分の適性は後から開発される

神戸女学院大学文学部教授である内田樹氏はその著書「街場のメディア論」(光文社新書)において、キャリア教育について反対する趣旨の内容を書いています。簡単に書くと、仕事に取り組む中で仕事に対する自分の適性がわかるのであって、決してその逆(キャリア教育)ではない、というものです。

内田氏は、与えられた状況・仕事で最高のパフォーマンスを発揮する中で、自分自身の潜在能力を選択的に開花させることが大事であると説きます。次の図でいうと下のパターン(図1)。「環境が人を育てる」、「ポストが人をつくる」などと言われることにも通じる考え方だと思います。



■「種の起源」に見る環境への適応

ところで、ダーウィンの「種の起源」によると、生物は常に環境に適応するように変化し、種が分岐して多様な種が生じるとしています。この主張の前提になっているのは、種にとって環境は常に変わることであり、それに適応することで生存競争において有利な立場となる、この過程で多様な種が生まれるのです。

上記の内田氏の、その能力が必要になった時にはじめて潜在能力が発揮される(適正が見い出される)という主張は、環境に適応するよう種が変化するという「種の起源」の考え方にも通じるように思います。

■知識社会での環境への適応

ドラッカーはその著書「断絶の時代」において次のように述べています。「知識労働者の台頭や知識社会の出現が最も重要な断絶、すなわち社会の根源的な変化である」。ちなみに断絶の時代が初めて世に出されたのは1968年であることを考えると、あらためてドラッカーの慧眼には驚かされるばかりです。

知識社会に相当する情報社会についてのプロセスについては、「情報の文明学」(梅棹忠夫 中公文庫)で言及されています。それによると、人類産業の転換史は、1.農業の時代、2.工業の時代、3.精神産業の時代という3段階を経たとしています。このプロセスを著者は、食べることから筋肉の時代に、そして精神(情報)の時代へと産業が展開したと述べています。

現在は高度に発達した情報社会であり、かつ情報が国を超えて手に入るグローバル社会でもあると感じます。このような私たちがいる環境では非常に速いスピードで変化します。世の中の変化のスピードが速いことをドッグイヤー、あるいはマウスイヤーなどと表現されたりします(犬は人間の7倍で成長、マウスは18倍の速さで成長することから)。

だからこそ、この変化する環境に適応することが大事になると思います。ダーウィンの「種の起源」で見た、変化する環境に適応しない種は淘汰されるように、個人レベルでも同様なのではないでしょうか。これが内田氏の主張する、与えられた状況・仕事で最高のパフォーマンスを発揮する中で、自分自身の潜在能力を選択的に開花させること、につながります。考えようによっては、惰性ではなくとても刺激的な状況であり、おもしろくやりがいのある世の中だと感じています。


※参考情報
進路指導・キャリア教育について (文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/index.htm


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