2010/11/27

書籍 「ソーシャルメディア維新」

「ソーシャルメディア維新」(オガワカズヒロ マイコミ新書)という本を読みました。今回のエントリーでは、同書で取り上げられているグーグルとフェイスブックを中心に見ていきます。

■「ソーシャルメディア維新」の主題

この本の内容を一言で表現すれば、ウェブトラフィックがグーグルの「検索エンジン」からフェイスブックなどの「ソーシャルメディア」へのシフトです。具体的には、各種ウェブサイトへ行く時に従来はグーグルで検索をしていたのが、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディア経由となっている状況を指しています。ちなみに副題でも、フェイスブックが塗り替えるインターネット勢力図、とあります。

少し古いデータですが、アメリカの調査会社Hitwiseの発表(2010年3月15日)によれば、アメリカでのアクセス数でフェイスブックがグーグルを抜いたようです(図1)。フェイスブックは前年同週比で185%増、一方のグーグルは9同%増としています。


■検索エンジンからソーシャルメディアへのパラダイムシフト

グーグルの検索エンジンからフェイスブックなどのソーシャルメディアへのシフトを見るため、まずはグーグルについて考えてみます。

グーグルは次のようなミッションを掲げている企業です。Google's mission is to organize the world's information and make it universally accessible and useful.(Googleの使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることである) グーグルがこれまでやってきたことは、まさにこのミッションに従ってのものであり、社会にあるありとあらゆる情報をウェブ上に整理し、検索可能な状況をつくる努力をしてきたのだと思います。

グーグルのすごさは、ネットでの検索エンジンで世界一になり、かつそこから検索連動型などの広告モデルを自分たちの収益に結びつけたことです。グーグルは多くの人がネットを使えば検索も利用されると考えており、だから彼らは検索可能な領域を増やし続けてきたのではないでしょうか。

このようなグーグルとユーザーのWinWinの状況を脅かしつつあるのが、フェイスブックなどのソーシャルメディアの存在です。ツイッターを使っていて実感することに、何かのサイトやコンテンツを知るきっかけがフォローしている人のつぶやく情報だということがよくあります。例えば話題になっているニュースを知るきっかけはツイッターという状況が普通に起こるようになりました。

「ソーシャルメディア維新」ではツイッター上を流れるつぶやきなどの総称をソーシャルストリームと表現し、グーグルのこれまでの情報整理の仕方ではソーシャルストリームのスピードに追いつけていない状況が発生していると言います。というのも、グーグルの考え方はウェブの最小単位をウェブページとし、それらのリンク構造を把握することで正確な検索技術を実現してきましたが、ソーシャルメディアの台頭で、ウェブページよりもその上に流れている情報やコンテンツが重要になってきたからで(図2)、その流れのスピードがグーグルにとって速すぎるのです。「ソーシャルメディア維新」では、このような状況の結果として、グーグルの検索エンジンからソーシャルメディアへのパラダイムシフトを起こしていると指摘しています。



■Facebookが目指すもの

フェイスブックのグーグルに対する優位性に、フェイスブックの5億人を超えるユーザーの人間関係情報(ソーシャルグラフ)があります。さらには、各ユーザーが持つ様々な情報への興味・関心もそうで、例えばLikeボタンにより、これらの興味関心までもユーザー同士でつながります。「ソーシャルメディア維新」という本では、フェイスブックが行おうとしているのは人間関係というネットワークをウェブに移すこと、すなわち人間関係のクラウド化であり、かつウェブ上にある様々なコンテンツとフェイスブック内の人間関係を結びつける「オープングラフ」だと指摘しています。

上記のようにグーグルの捉え方はウェブページとウェブページのリンクでしたが、フェイスブックはユーザーの人間関係や興味・関心のリンクを目指します。グーグルはウェブ上の情報を整理してくれますが、フェイスブックはウェブ上の情報を各ユーザーの自分好みにパーソナライズ化してくれる存在なのです。

■Facebookの課題

一方で、「ソーシャルメディア維新」ではフェイスブックが抱える課題についても言及しています。その最も大きな課題がプライバシー問題と言います。先ほどフェイスブックの優位性にユーザー同士の人間関係や興味・関心と書きましたが、実は優位性となる前提としてこれらの情報がオープンに公開されている必要があります。しかし、ユーザーにとっては当然ながら公開したくない情報もあり、それがユーザーとフェイスブックの間に齟齬が起こりプライバシー問題につながってしまうのです。

グーグルが自社の検索技術から検索連動型広告という収益モデルを築いたように、フェイスブックは自分たちが保有する優位性を収益に結び付けるためにこの課題をどう解決するか、世界中にいる5億人のユーザー数とそこから発生するウェブのトラフィックからの換金方法を見出した時、ソーシャルメディアによる維新が起こるのかもしれません。


※参考情報

Facebook Reaches Top Ranking in US (March 15, 2010) | Hitwise
http://weblogs.hitwise.com/heather-dougherty/2010/03/facebook_reaches_top_ranking_i.html

Google's Mission
http://www.google.com/corporate/facts.html


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2010/11/23

欧州最大のLCCライアンエアーに見る戦略ストーリー

今週の日経ビジネス2010.11.22の特集記事はアップルを取り上げています(「アップルの真実 ジョブズの天下はいつまで続くのか?」)。ですが個人的に興味深かったのは、このアップルの次に掲載されていた欧州最大の航空会社であるライアンエアーについての記事でした。タイトルは「『究極の目標は運賃ゼロ』 異端経営で圧倒的安さを実現」。今回のエントリーではライアンエアーの戦略ストーリーについて考えてみます。

■戦略ストーリーの5C

本題に入る前にストーリを見ていく上でのフレームについてです。下記は「ストーリーとしての競争戦略」(楠木建 東洋経済)という本からの引用で、著者が戦略ストーリーの5Cと呼んでいるものです(表1)。以下、5Cのうちの4つ(競争優位、コンセプト、構成要素、クリティカル・コア)で整理しています。



■ライアンエアー

まずはライアンエアーについて簡単に。アイルランドに本社を構える同社は、日経ビジネスの記事によると、航空会社の搭乗者数ランキングでは5位でヨーロッパではトップです(1位サウスウェスト航空、2位アメリカン航空、3位デルタ航空、4位中国南方航空 ※出所:IATA World Air Transport Statistics 54th Edition 2010)。日経ビジネスが各社の通期決算を基準に算出した平均運賃を見ると、ライアンエアーは30ユーロ程度(約3500円)で全日空の170ユーロ前後(約19000円)と比べると低運賃なのがわかります。

記事には、1997年に株式公開を果たし急成長を遂げていると書かれています。実際に売上高は対前年プラスを維持し続けており、最終損益はリーマンショック後の2009年には赤字を計上しているものの、2010年にはV字回復しているようです。

■競争優位とコンセプト

ここで言う競争優位とは、どういった戦略で利益を創出するかで、ライアンエアーの競争優位は徹底的な低コストの実現です。次に顧客にどういった価値を提供するかというコンセプトは低賃金です。これに関してCEOのマイケル・オリーリー氏は次のように言っています。「競合他社を排除するために、運賃とコストを下げ続ける。長期的な目標は運賃ゼロ」。というのも、記事内に出てくるある証券アナリストのコメントからオリーリー氏はこう考えているようだからです。航空ビジネスはもはや価格でしか訴求できないコモディティビジネスであり、故に最安で勝負する。

■差別化を実現する構成要素

まとめると、低コストという優位性を実現することで、最安値を追及し提供するのがライアンエアーのコンセプトです。ではそのためにはどういった取組みをしているのでしょうか。日経ビジネスの記事では複数の事例が紹介されています。

例えば搭乗手続きのチェックインは事前にウェブサイトで行なうことを顧客に義務付け、搭乗券も顧客が自宅などで印刷が必要です。手荷物の預かりを有料としたり、座席指定がなく、機内誌や機内食メニューも必要な客にだけしか配布しません。そして、席にリクライニング機能はなく席の前にあるポケットもない。また、記事では現在検討中のものとして、席自体がない立ち乗りや機内トイレの有料化、副操縦士までもが機内食販売を担当することまで挙げられています。

■顧客を巻き込み低コスト実現

記事にはCEOのオリーリー氏は、上記のオンラインチェックインや手荷物チェックインの有料化などの課金は「乗客の行動を変えるため」と主張しています。事実、手荷物を預ける乗客は過去3年で80%から25%にまで減少したとのこと。

このように、様々な施策をうちだしているライアンエアーですが、個人的に思うのは顧客を巻き込んでの低コストの実現だということです。顧客が事前にオンラインで搭乗手続きを行い搭乗券の発行を済ませてくれば、当日のコストを省けます。そもそも手続きカウンターすら不要になります。座席指定をなくすことで、乗客は座りたい席を確保するため自ら早く搭乗するようになります。また、手荷物預かりが減ったことで、荷物の機内の乗り入れも乗客が自分でします。こういった乗客の行動を促す、つまり顧客を巻き込みながら、平均30ユーロ、時には欧州各都市を片道5ユーロ(約565円)という圧倒的な低価格を実現しているように思います。

ただ、補足事項として、運賃を下げる一方で課金しているところでは課金をしている点があります。具体的にはウェブチェックインは有料で5ポンド(約655円)、搭乗券の印刷を忘れたら再発行に40ポンド(約5240円)、提示する運賃は税抜で別途支払いなど。

■部分非合理&全体最適なクリティカル・コア

書籍「ストーリーとしての競争戦略」ではクリティカル・コアという考え方を提唱しています(図1)。



これはある側面だけを見ると合理的には見えないが、戦略ストーリー全体で見れば合理的だというものです。例としてアマゾンの巨大な在庫・物流センターがあります。オンラインでの販売に特化しているアマゾンが在庫を抱えることはコストもかかりウェブの身軽さを享受できないように一見すると非合理ですが、それだけ豊富な在庫を保有することで商品の充実が図れます。よって全体で見ると合理的なのです。部分的には非合理であるため、競合他社はむしろ模倣を図ることなく、故にアマゾンの競争優位をもたらします。

話をライアンエアーに戻します。個人的に考える同社のクリティカル・コアは「コスト削減にタブーなし」だと考えます。まだ検討中のようですが、立ち乗りや副操縦士による機内食販売は安全性という航空会社の根幹に関わるものです(オリーリー氏は立ち乗りに関して手すりにベルトを用意するなど安全面では妥協はしないと言っていますが)。おそらく一般的な航空会社であれば、具体的な検討すら行われないのではないでしょうか。あるいは、前述のような顧客に手間をかけさせたり機内サービスの省略も、今でこそLCC(格安航空)では普及しているかもしれませんが、従来では考えにくい発想のように思います。

コスト削減においてタブー視しない姿勢について、CEOのオリーリー氏の言葉が印象的でした。以下、日経ビジネスの記事からそのまま引用しています。「誰もが『不可能だ』『安全じゃない』と言うが、大切なのは、すべての可能性を議論できるように問題提起することだ。」

■まとめ

最後に今回の内容をまとめておきます(表2)。こうして見ると、ライアンエアーのストーリーには一貫性があることがわかります。






2010/11/20

ネットテレビが変えるもの

2010年5月にグーグルはテレビとネットの機能を併せ持つグーグルTVの構想を発表しました。そして10月下旬、グーグルとソニーによる「ソニーインターネットTV」がアメリカで発売されました。

「Android」OSを使ったグーグルTVの特徴は、テレビ画面に表示される検索窓にキーワードを入力することでテレビ番組、ネット上の動画、Webサイトなどを横断的に検索し、その映像を再生することができる点にあります。

■視聴を180度変える

このようにネットテレビはテレビ+パソコンの両方の要素を兼ね備えていますが、単純に1+1=2となるかと言うと個人的にはそれ以上のインパクトがあると思っています。なぜならば、私たちの視聴を180度異なるものにする可能性があると考えているからです。

従来のテレビ視聴は、テレビ局が番組をどの曜日のどの時間に放送するかを決めていました。よって視聴者は見たい番組が放送される時間に合わせてテレビをつけます。もちろん、DVDなどでの録画で見るパターンもありますが、基本的な構図はテレビ局が番組放送をコントロールしています。

一方のネットテレビ。上記のような番組放送も依然として残ると思いますが、前述のグーグルTVの特徴のようにネット上の動画に加え、オンデマンドでの視聴も増えていくはずです(現時点でも一部オンデマンドはありますが)。このように視聴者自らがYouTubeなどの動画やオンデマンドの番組を見るようになるわけで、ネットテレビにおいては視聴者が映像コンテンツを見ることに対して主導権を握ることになります。先ほど視聴を180度変えると表現したのは、主従関係が変わるこの状況を指してのことです(図1)。




ネット上にはYouTubeなどの動画サイトがあり、あるいはおそらく今後はネット上での映画配信や番組のオンデマンドサービスの充実など、ユーザーはテレビ番組放送だけではなく、様々なコンテンツを楽しむことができるようになります。

ところが多くのコンテンツが選択肢になるほど、放送されるTV番組は相対的に今よりも見られなくなるということが起こってくるはずです。良質な番組は今後も視聴者からは支持されるでしょうが、そうでない番組は見てもらえなくなる。ネットテレビによって自分の見たい番組を簡単に探すことができ、オンデマンドで用意されているので、好きな時間に自分の見たいコンテンツを自由に見る楽しさ、つまりコントロールできることをユーザーは覚えてしまうのではないでしょうか。


2010/11/13

ソーシャルはユニバースかマルチバースか

11月4日にソフトバンクモバイルとミクシィは、「ソーシャルフォン」サービスの提供を開始すると発表しました。

■ソーシャルがモバイルのベースに

発表内容を見ると、「ソーシャルフォン」サービスは、mixiのさまざまな機能とスマートフォンの機能を連動させることで、友人・知人とのコミュニケーションを、より便利に楽しんでいただけるスマートフォン向けのアプリケーションサービスです、とあり、2011年2月より開始するようです。スマートフォンの電話帳とmixiの友人データが自動的に同期するなど、これまでの「スマートフォン+SNSアプリ」とは異なり、注目に値すると思っています。(とはいえ、買うことはないかと思いますが)

SNS世界最大手のFacebookは、世界でユーザーが5億人を突破し現在も増え続けているようです。CEOのZuckerberg氏はFacebookケータイについてあるインタビューで次のように語っています。(出所:TechCrunch) Our whole strategy is not to build any specific device or integration or anything like that. (中略) Our strategy is very horizontal. We’re trying to build a social layer for everything. (中略) So I guess, we view it primarily as a platform. Our role is to be a platform for making all of these apps more social,  英語部分をすごく簡単に言ってしまえば、Facebookケータイではなくプラットフォームをつくりたいとのこと。

また、別の記事(Scobleizer)によれば、Facebookがソーシャルフォンそのものを開発しないであろう理由として、以下を挙げています。 Facebook is so powerful that mobile companies are forced to build their own Facebook apps, after all, who would buy a phone that doesn’t have Facebook today?  すでにたくさんのケータイにはフェースブックのアプリが入っており、故に、フェースブック自身がケータイを開発する必要がないことを示唆しています(記事ではこれ以外にも開発しない理由が書かれています)。

ソーシャルケータイをリリースするmixi、自らは開発しないと説明するFacebook。どちらの戦略が正しいかは現時点ではわかりませんが、いずれにしてもSNSなどのソーシャルグラフ(人間関係)をモバイルであたかも身に着けるような方向性に進んでいるように思います。上記のmixiフォンではついに、SNSのデータが電話帳に同期します。これまでは、モバイル機能の1つでしかなかったソーシャルが、ソーシャルをベースとしたモバイルの登場です(図1)。



■ソーシャルは1つになるのか?

さて、私たちは複数の人間関係を持っています。家族、彼氏・彼女、友人、バイト仲間、仕事関係、などなどです。ここで、いくつかの人間関係を下図のようなマトリクスで整理してみます(図2)。



リアル世界では、これまでは自分の持つ人間関係は別々に存在していました。しかしSNSなどの登場により人間関係がSNS上でつながり、自分に関係ある人たちがフラットに並びつつあるような気がします。今後ますます多くの人がSNSを利用した場合、そこには仕事の同僚もいれば、幼馴染もいたりとか、1つの大きな人間関係がソーシャル上に存在することになっていくことも考えられます(図3)。いや、もしかしたら、ビジネスライクなSNS、友達用のカジュアルなSNS、などと、複数のソーシャルを持つのかもしれません(図4)。

ユニバース型SNS




マルチバース型SNS



人間は社会的な動物です。人とつながりたいという気持ちは普遍的な感情だと思います。これは何もSNSができたからでは決してなく、大昔からずっとそうだったはずです。人間の三大欲求には含まれませんが、人間の本能に近い欲求なのではないでしょうか。ソーシャルというキーワードはますますいろんなところに入り込んでいきそうです。


※参考情報

「ソーシャルフォン®」サービスを提供開始 (ソフトバンクモバイル株式会社)
http://www.softbankmobile.co.jp/ja/news/press/2010/20101104_03/index.html

Interview With Mark Zuckerberg On The “Facebook Phone” (TechCrunch)
http://techcrunch.com/2010/09/22/zuckerberg-interview-facebook-phone/

Why Mark Zuckerberg would be an idiot to announce a hardware device today (scobleizer)
http://scobleizer.com/2010/11/03/why-mark-zuckerberg-would-be-an-idiot-to-announce-a-hardware-device-today/


2010/11/07

キャリアと適性に見る「鶏と卵」

文部科学省によると、進路指導におけるキャリア教育は次のように説明されています。

「激しい社会の変化に対応し、主体的に自己の進路を選択・決定できる能力やしっかりとした勤労観、職業観を身に付け、 (中略) 社会人・職業人として自立していくことができるようにするキャリア教育の推進が強く求められています」。

まずは自分自身の仕事への適性や考え方を見極め、それに合った仕事を選ぶことを目指す教育です。

■自分の適性は後から開発される

神戸女学院大学文学部教授である内田樹氏はその著書「街場のメディア論」(光文社新書)において、キャリア教育について反対する趣旨の内容を書いています。簡単に書くと、仕事に取り組む中で仕事に対する自分の適性がわかるのであって、決してその逆(キャリア教育)ではない、というものです。

内田氏は、与えられた状況・仕事で最高のパフォーマンスを発揮する中で、自分自身の潜在能力を選択的に開花させることが大事であると説きます。次の図でいうと下のパターン(図1)。「環境が人を育てる」、「ポストが人をつくる」などと言われることにも通じる考え方だと思います。



■「種の起源」に見る環境への適応

ところで、ダーウィンの「種の起源」によると、生物は常に環境に適応するように変化し、種が分岐して多様な種が生じるとしています。この主張の前提になっているのは、種にとって環境は常に変わることであり、それに適応することで生存競争において有利な立場となる、この過程で多様な種が生まれるのです。

上記の内田氏の、その能力が必要になった時にはじめて潜在能力が発揮される(適正が見い出される)という主張は、環境に適応するよう種が変化するという「種の起源」の考え方にも通じるように思います。

■知識社会での環境への適応

ドラッカーはその著書「断絶の時代」において次のように述べています。「知識労働者の台頭や知識社会の出現が最も重要な断絶、すなわち社会の根源的な変化である」。ちなみに断絶の時代が初めて世に出されたのは1968年であることを考えると、あらためてドラッカーの慧眼には驚かされるばかりです。

知識社会に相当する情報社会についてのプロセスについては、「情報の文明学」(梅棹忠夫 中公文庫)で言及されています。それによると、人類産業の転換史は、1.農業の時代、2.工業の時代、3.精神産業の時代という3段階を経たとしています。このプロセスを著者は、食べることから筋肉の時代に、そして精神(情報)の時代へと産業が展開したと述べています。

現在は高度に発達した情報社会であり、かつ情報が国を超えて手に入るグローバル社会でもあると感じます。このような私たちがいる環境では非常に速いスピードで変化します。世の中の変化のスピードが速いことをドッグイヤー、あるいはマウスイヤーなどと表現されたりします(犬は人間の7倍で成長、マウスは18倍の速さで成長することから)。

だからこそ、この変化する環境に適応することが大事になると思います。ダーウィンの「種の起源」で見た、変化する環境に適応しない種は淘汰されるように、個人レベルでも同様なのではないでしょうか。これが内田氏の主張する、与えられた状況・仕事で最高のパフォーマンスを発揮する中で、自分自身の潜在能力を選択的に開花させること、につながります。考えようによっては、惰性ではなくとても刺激的な状況であり、おもしろくやりがいのある世の中だと感じています。


※参考情報
進路指導・キャリア教育について (文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/index.htm


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2010/11/03

宇宙の3つの常識がくつがえった

自分の中で今までは当たり前だと思っていた宇宙についての常識がありました。例えば、(1)宇宙にあって多くを占めるのは星や銀河、(2)宇宙の始まりを説明するのはビックバン理論、(3)銀河や地球など全てものがこの宇宙内に存在する、といった内容です。

しかし、宇宙についての本を読んでこれらの常識が自分の中で覆えりました。そこで今回のエントリーでは主に2冊の本、「宇宙は何でできているか」(村山斉 幻冬舎新書)、「インフレーション宇宙論」(佐藤勝彦 講談社)から、自分の常識がどう覆されたかを中心に書いてみます。



■この宇宙の96%を占めるもの

宇宙にある大部分の質量は地球や銀河などによるものだと思っていました。今回知ったこととしては、星と銀河の質量は宇宙のわずか0.5%にすぎないということです。では残りは何で占められるのか。宇宙の質量は以下のような構成となっているようです(図1)。

 宇宙の質量構成比

特に今回初めてその存在を知ったのは、23%を占める暗黒物質(ダークマター)と73%の暗黒エネルギー(ダークエネルギー)でした。

暗黒物質とは、我々地球を含む銀河を銀河たらしめるもの、すなわち、もし暗黒物質が存在しなければ銀河が今の形を構成できずバラバラになると考えられています。また、暗黒エネルギーとは、宇宙を加速膨張をさせているエネルギー。実は宇宙は現在も膨張し続けており、さらに言うとその膨張する加速度は大きくなり続けているようです。詳しい話は省略しますが、宇宙の加速膨張を理論的に説明するために考えられているのが暗黒エネルギーの存在なのです。



■宇宙のはじまりを説明するインフレーション理論

これまで信じていたことに、宇宙のはじまりはビックバンという現象の発生があります。ビックバン理論の概要は、宇宙の最初は「火の玉」であり、その後に膨張していく過程で次第に温度が下がりガスが固まって星が生まれます。そこから銀河が形成され現在に至るというものです。

しかし、実はビックバン理論では説明できないことがあります。「インフレーション宇宙論」の著者である佐藤勝彦氏によれば、例えば「なぜ火の玉からなのか?」や、「火の玉の前はどのような状態だったのか?」などであり、ビックバン理論では、特異点という「神の一撃」の存在を許すことにもなるようです。つまり特異点から始まった宇宙がなぜ火の玉になったかが説明できません。余談ですが、著者は物理学者として、神の存在を用いることなく物理法則だけで宇宙の創造を語りたいものだ、としています。

ここでインフレーション理論の登場です。まずインフレーション理論はビックバン理論を補完する理論です。インフレーション理論を簡単に説明すると以下のようになります。

インフレーション理論では、宇宙は真空のエネルギーが高い状態で誕生し、このエネルギーによって急激な膨張が起こりました。これは宇宙誕生直後の10のマイナス36乗秒後から10のマイナス34乗秒後までの極めて短い時間。宇宙が最初から火の玉として生まれてそのエネルギーで膨張したわけではなく、真空のエネルギーが宇宙を急激に膨張させることで相転移により熱エネルギーに変わる、この時点でようやく「火の玉」になったのです。

■宇宙はユニバースではなくマルチバース?

最も驚かされたのがこれです。宇宙は英語でユニバース、つまり、1つのという意味のユニ(uni)が使われていますが、宇宙は1つではなく多数存在するマルチバース(multiverse)という考え方です。

マルチバースの考え方では、今私たちが存在する宇宙は数ある宇宙の中のone of themでしかないということになります。マルチバースのイメージは下図のようになり、たくさんある1つ1つの球体のようなものがそれぞれ宇宙を表しています(図2)。


マルチバースのイメージ

マルチバースの考え方は、前述のインフレーション理論から説明されており、インフレーションの発生の順番で、親宇宙、子宇宙、孫宇宙、・・・、というように宇宙が次々できるとしています。無から生まれる宇宙は、私たちが存在する宇宙だけとは限らずいくらでも別の宇宙ができる可能性があるということです。

ただ、現在のところマルチバースというのは理論的に予言されているだけにすぎず、実際に科学的に証明されたわけではなく、あるいは観測されたものではありません。ましてや仮にその存在が証明されたとしても、この宇宙から抜け出し別の宇宙に行くことがどうやってできるのか、宇宙は膨張しているのでいずれ2つの宇宙が衝突するのか(あるいは重なるのか)、などと考え出すとなんともわけがわからなくなってしまいます。

■考えさせられたこと

「宇宙は何でできているのか」および「インフレーション宇宙論」を読んでいて感じたこととして、フロンティアというものはどれだけでも広がるということがあります。読み進めていく中で、1つ新しい理論ができれば新しい矛盾が生まれる状況が多くありました。何か新しいことを知れば次の疑問が生まれ、それにより自分には知らないことがまたでてくる、ということだと思います。

これは何も物理学者などの科学者だけによらないと思っています。例えば、何か新しいことを学んで知れば、それに関連する新しいことをさらに知りたくなる、という感じです。仕事も然りで、何か新しいことに挑戦すれば、次はもっと難しいことにチャレンジしたくなります。こういった知的好奇心やチャレンジ欲はいつまでも持ち続けたいものだなとあらためて思いました。


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2010/11/02

RSSとソーシャルフィルターはひとまず共存で

■様々なソーシャル

ソーシャルという言葉があります。個人的に感じるのは、特に今年は様々なものにソーシャルという言葉が付いたことです。これまではSNSのソーシャルくらいでしたが、ソーシャルゲーム、ソーシャルメディア、SNSなどでの人間関係を表すソーシャルグラフ、ソーシャルブックマーク、などです。

ソーシャルサーチと言う検索もあります。これは、世間の評判や意見、あるいはユーザーの趣味や嗜好を反映させた検索のことです。あるいは、ソーシャルフィルターと呼ばれるものもあります。ソーシャルフィルターとは、興味関心が似ている自分の選んだ人によって情報を選んでもらい、結果的に多種多様な情報から必要なものを手に入れることだと思っています。例えば、自分の趣味や考え方が近い人をツイッターでフォローすれば、その人からの情報は自分のアンテナにひっかかりやすい、という感じです。

■RSSの役割は終わった?

2か月くらい前だったかと思いますが、「RSSの役割は終わったのでは」という話がネットで話題になっていました。その理由として、ツイッターやSNSなどのソーシャルメディアの登場でRSSリーダを使わなくても情報を収集できる方法が出てきたためで、例えばツイッターをうまく活用すれば、自分が欲しい情報も入ってくるし、自分の興味範囲外の思わぬ情報が入ってくることもあるからです。普段ツイッターを使っているのでこの説明は理解できますし、故に、わざわざRSSリーダーを使わなくても情報が入ってくるという話だと思います。RSSがソーシャルフィルターに取ってかわる、または、ソーシャルサーチの台頭はイメージとしては、下図のようになりそうです(図1)。


本当に、ソーシャルサーチではない従来型の検索やRSSは不要なのでしょうか?個人的には、両方とも引き続き必要であると思っています。

まず、能動的な情報収集である検索ですが、確かにソーシャルサーチは場合によっては有効なツールです。自分の嗜好や趣味に合わせた検索結果が出てくる、例えば、自分の興味に合った書籍が検索結果の上位に出てくれば、その検索結果には満足できそうです。一方で、このような検索は悪く言えば、人間的なバイアスが発生します。つまり、自分の嗜好や意見に近いものばかりでは一様な検索結果となり、多様な情報に触れる機会を失ってしまうかもしれません。

■RSSとソーシャルフィルターは共存する

次に、RSSですが、確かにツイッターやFacebookをうまく活用できれば、それだけでも十分すぎるくらいの情報が手に入ることができるかもしれません。実際に先日、RSSをあえて一日使わないことを試してみましたが、大きな問題はありませんでした。しかしそれでも、RSSは現在のところ、自分にとっては不可欠なツールなのです。なにもこれはソーシャルフィルターを否定するという意味ではなく、むしろ、RSSとツイッターなどのソーシャルフィルターはお互いを補完しながら使えるツールだと考えてます。ここで、RSSとソーシャルフィルターをいくつかの項目で整理してみます(表1)。


この表を少し補足すると、RSSはブログやサイト単位で登録をする一方で、ツイッターやSNSは人というアカウントごとの登録です。Whoを登録するソーシャルフィルタ-のほうが多様な情報が入ってきます(ニュース記事以外にも、その人の行動などのつぶやき等)。またRSSはストック型の情報管理に対して、ソーシャルフィルターはフローのイメージです。

RSSを重宝している理由の1つに、RSSはサイトの文字や画像をRSS画面上で見ることができる点にあります。これがツイッターだと140文字という文字数制限とiPhoneという画面サイズの制約からどうしても、リンク先に飛ばざるをえない状況がよくあります。特に屋外ではリンク先に飛ぶという時間が意外に長く感じられ、スターをつけたりInstapaperに保管したりして、あとから読んでいます。でもRSSならその場でさくさく読めて便利です。

ソーシャルフィルターは、RSSに比べてフィルターの精度がどうしても劣るような気がしています。これは、自分のソーシャルフィルターの使い方が甘いだけなのかもしれませんが、どうしても相対的に「広く浅い」情報だというのが現在の印象です。ただ、ツイッターの「広い」情報は時として思いがけないものであり、これはこれでおもしろいと思っています。

今のところの結論としては、RSSとソーシャルフィルターは共存する、ということになります(図2)。マトリクスの4つの象限とも、自分にとっては必要な情報収集方法なのです。


今回あらためて思ったのは、ソーシャルフィルターとはまだまだ発展途上なものだということです。もちろん、もうすでに使いこなしている人も多くいると思いますが、個人的には、RSSの活用に比べ、ツイッターやSNSの利用は試行錯誤が続いているように思います。

ツイッターやFacebookは活用方法において工夫の余地が大きいと思います。また、APIにより、これまでになかったような便利なアプリやサービスが開発される可能性があります。その時は、もしかしたらRSSとソーシャルフィルターがハイブリッドされ、もっと便利な情報収集ツールになるのかもしれません。


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