2011/03/31

「商売の日本史」から考えるヤマヒコの復興とウミヒコの復興

歴史を学ぶ意義はどこにあるのでしょうか。このことをあらためて考えさせてくれた本が『ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義 (PHPビジネス新書)』でした。本書にはこのように書いてあります。「歴史を学ぶ意味は、過去の人々の営みから今に役立つさまざまな教訓を引き出すこと」(p.102)。あらためて思ったのは、歴史をただ単に過去の出来事で終わらせてしまうのは、歴史の価値を半分も享受できていないのではないかということです。

■経済から見る新しい歴史観

この本は、書かれている視点がとてもユニークです。だからおもしろかった。どうユニークかと言うと、日本史をお金の動き、すなわち経済という切り口で書かれています。

思い返してみると、小学校から歴史の授業が始まり、中学、高校と日本史を学びましたが、教科書や授業で習ったのは、ほぼ政治史という観点での歴史だったことに気づきます。例えば、鎌倉幕府から室町幕府への流れは、歴史で教わったのは、足利尊氏らが反乱を起こし、鎌倉幕府と時の政権を握っていた北条氏を滅ぼして室町幕府を開いたということでした。武力と選挙という手段は違えど、これは現代で言う「政権交代」です。実際はここに経済も関連していたはずですが、そんな話は習った記憶があまりなく、少なくとも印象に残っていません。

だからこの本を読むと、色々と新しい歴史の見方を与えてくれます。詳しくは本書に譲りますが、印象深かったものを1つだけ紹介しておきます。武士として初めて律令の最高位である太政大臣となった平清盛の話です。

平清盛は現代にも通じることを先駆的に行ないました。瀬戸内海を支配し、物流とそこでのマネーサプライを握ったのです。貿易のための港を整備し、当時の中国・宋との日宋貿易から多額の富を生み出します。今っぽく言えば、瀬戸内海というプラットフォームを構築したのが平清盛でした。平家は、貿易から様々なものを輸入しました。宋銭、陶磁器、薬品、香料、書籍など。これらが日本の文化に与えた影響は大きかったはずです。

中世に琵琶法師が語り継いだ「平家物語」で、その中の源平の戦いでは平清盛は悪役として語られています。多くの人の印象も実際にそうでしょう。しかし、このように「経済」という視点で見ると、平清盛の印象はがらりと変わりました。

■ヤマヒコとウミヒコ

さて、本書のキーワードに、「ヤマヒコ」と「ウミヒコ」があります。古事記や日本書紀に登場する兄弟の神さまの名前で、2人は対照的な性格をしています。本書では、ヤマヒコを内向きのエネルギーの総称、ウミヒコを外向きのエネルギーの総称とし、日本史を大きな流れで見ると、時代時代でヤマヒコの性格が強い日本、ウミヒコの性格が強い日本と、それぞれの特徴が交互にスイングするかのように現代に至るまで歴史を重ねてきたことが書かれています。

ヤマヒコとウミヒコの時代・特徴を本書から引用すると、以下のようになります。

出所:ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義 (PHPビジネス新書)から引用

日本人は、その時代ごとにヤマヒコとウミヒコそれぞれの特徴を持ちながら、時に内向きを志向し日本独自の文化や内需を盛り上げ、またある時は外向きな志向から自らの命の危険を顧みず海を越え異国の地を目指し、様々な文化・知見を持ち帰ったのです。

■著者はヤマヒコからウミヒコに変わると予想しているが

それでは、現在はヤマヒコとウミヒコのどちらの要素が強いのでしょうか。本書で述べられていたのは、昭和から平成になった現在の特徴はヤマヒコが強いということでしたが、著者の主張として、今後はウミヒコの側面がもっと出てくる・出てきてほしいというものでした。ウミヒコが強くなる時代は中国の影響が強いと述べられていましたが、確かに、昨年はGDPで中国が日本を抜いたことがほぼ確実視されるなど、以前にも増して政治・経済の両方で中国の影響を感じます。

ところが、です。2011年3月11日、マグニチュード9.0という日本観測史上最大の地震が発生しました。地震だけではなく、津波、福島原発、電力エネルギー不足と、日本だけでなく世界中に大きな影響を与えています。

そして今後の課題ですが、短期的な課題は被災地での救援活動や原発からの放射線・放射線物質漏れを封じ込めること、中期的には計画停電や節電による電力供給不足をどうしのぐか(特に今年の夏や冬)、あるいは復興への財源をいかに確保するか(補正予算、国債?復興税?寄付への税額控除?)、長期的には抜本的なエネルギー供給の検討(原発・新エネルギー・周波数の問題など)と被災地の復興です。

■ヤマヒコの復興とウミヒコの復興

報道などで震災後の現地の状況を見ると、家などの建築物、道路や堤防、水道、電気・ガスなどの社会基盤から破壊されてしまっています。ということは、復興はインフラレベルでの整備が必要になり、これはつまりは内需のエネルギーが強いヤマヒコの要素です。

一方の関東より西の西日本はどうでしょうか。これまで政治・経済の中心は東京が担ってきましたが、最近では一部でこの一極集中の是非を問うような議論も見られます。それはともかく、企業によってはすでに本社機能の一部を西日本に移転させているところもあるようです。また、震災前の状況を思い返してみると、名古屋では減税を掲げる河村市長が再選、大村知事が当選し、大阪でも橋下知事が大阪都構想を提唱しています。関西などの西日本が元気になり、そして、中国が今後少なくとも数年は2桁に近い経済成長を続けることを考えると、中国の影響をこれまで以上に強く受けるようになります。これはまさに、ウミヒコの要素です。

日本の現状を見れば、大変な状況です。復興にはそれなりの時間がかかるはずで、今後は上記のように、関東や東北地方ではインフラ整備というヤマヒコ的な復興が、中部や西日本ではそれぞれが発展し、外需も積極的に取り込むようなウミヒコ的な活動が必要です。特に、関東や東北が大変な時だからこそ、中部・関西・九州などではこれまで以上の経済活動から日本を盛り上げることが重要です。

まとめると、これからの日本ではヤマヒコの復興とウミヒコの復興の両方が必要になり、それこそ私たち日本人の1人1人が日本を引っ張っていく気持ちが大切になってくるのではないでしょうか。

海の向こうの歴史的な大統領が、当時こんなフレーズで国民と自らをも鼓舞していました。ちょっと今さらな感じもしますが、今こそ私たち自身に対しても使ってもいいのかもしれません。

Yes We Can.



ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義 (PHPビジネス新書)
藤野 英人
PHP研究所
売り上げランキング: 1249



follow us in feedly このエントリーをはてなブックマークに追加

Facebook Page

バックナンバー

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...