2011/04/23

これからのテレビは多様な視聴スタイルになってほしい

テレビ番組を見るのはどこで、いつ見ることが多いでしょうか?回答はいろいろありそうですが、最も多いのはテレビが設置してあるリビングなどで、その番組が放送している時間に見ることだと思います。放送中にテレビを見られない場合は、ハードディスクなどに録画しておき後から見ることもあるかもしれません。あるいは家のテレビではなく、電車の中で携帯電話のワンセグから見る場合も考えられます。

■時間シフトと場所シフト

録画で放送時間より後から見ることを「時間シフト」、ワンセグなどにより屋外も含めた見たい場所で見ることを「場所シフト」とすると、冒頭の視聴の仕方は次のように位置づけができます。


ワンセグ放送を活用したユニークな商品をソフィアデジタル株式会社が提供しています。アレックス6というチューナーレコーダーで、ワンセグの6チャンネルを24時間自動で録画されます。1テラバイトのハードディスクがあれば2ヵ月くらいの番組データが保存できるとのこと。視聴はLAN経由でPCから、あるいは専用のアプリを使えばiPhoneやiPadからもマルチデバイスで視聴できます(ただし家庭内)。全て録画されているので、放送後翌日に友達やツイッター上で話題になった番組をその後で見るなど、「全て録画する・録画したものから探して視聴する」という新しい視聴スタイルです。

時間シフトと場所シフトで言えば、家庭内とはいえこれまでの視聴方法とはやや異なるポジションです。


■SPIDERのユーザーインターフェイスとソーシャル視聴

番組を全部撮るということを同じようにできるのが株式会社PTPのSPIDERというビデオレコーダーです。1週間分(大容量オプションでは1ヶ月分)のテレビを全て自動録画し、その中からあらゆる番組シーンの検索が可能です。法人向けのSPIDER PROと家庭向けのSPIDER ZEROがあり、地デジ対応のPROは2011年5月23日、ZEROは2011年末に発売されるようです。

実物は見たことないのですが、同社HPの動画や、有吉社長×佐々木俊尚氏の対談記事を見ると、SPIDERでは使いやすさを徹底的に追求しているようです。動作している動画や、とりわけ非常にシンプルなリモコンが特徴です。

出所:SPIDER ZEROの機能紹介ページより引用

もう一つSPIDERで興味深いのが、ソーシャル視聴を目指している点です。SPIDERの中に「みんなの感想」という機能があり、気になるシーンにコメントを投稿することができるとのこと。この投稿はSPIDERユーザーの誰もが見ることができ、ユーザーの「おもしろい!」がみんなで共有されます。(個人的にはニコニコ動画などのようにツイッター、あるいはフェイスブックとの連携を目指した方がいいようにも思いますが)

■ソーシャル視聴の効果

ソーシャル視聴というと何か新しいような響きがありますが、やっていることはみんなでわいわい同じ番組を見ることだと思っています。従来は家族や友人同士で集まって見ることだったのが、TwitterやSNSを使うことでソーシャル視聴と言われる所以です。

個人的にソーシャル視聴のおもしろさを感じたのは、昨年のサッカーW杯でした。日本の活躍ももちろんですが、ゴールシーンではツイッターのタイムライン上に流れるコメントを見ると、同じ場所にはいないもののテレビ画面とiPhoneやPC画面の両方を見ることで、あたかもみんなで一緒に見ているような感覚になったのを覚えています。

テレビのソーシャル視聴の効果は実際の数字にも表れているようで、例えば2010年2月にアメリカで開催されたアメリカンフットボールの第44回スーパーボウルでは、放送された中継の視聴者数が1億5000万人で例年は1億人程度であることから大幅増加したとのこと。この要因の1つはソーシャル視聴にあるようです(参考:「スマートテレビで何が変わるか」(山崎秀夫 翔泳社) p.86)

では、なぜソーシャル視聴で視聴者数が増えるのでしょうか。あくまで推測ですが、友人・知人がTV番組について盛り上がっているのをSNSなどで見つけ、いつもは見ないような人まで呼び込んだ結果なのではと思っています。

■これからのテレビの視聴スタイル

このように番組を見つけるきっかけがSNS上などでの話題性がある一方で、今後はインターネットとテレビが融合するスマートテレビでは、これまで以上に番組を「検索する」することも増えてきそうです。先ほどのSPIDERでは、リモコンの十字キーだけで芸能人などの名前、番組名、商品名、企業名から簡単に検索できるようになっています。これ以外にも、「昨日の午前8時20分」のようなあいまいな検索方法や、Wikipediaから探すWikipedia検索、CMソングの曲名からCMの検索も可能のようです。

テレビCMと言えば、録画ではCMをスキップする人が9割もいるという調査結果がありますが、一方で話題となっているCMをあえて見たいというニーズもあるはずです。あるいは30秒や15秒のCMしか見たことないけど、60秒のバージョンが見たいというニーズもありそうです。

いかに番組、CMというコンテンツと出会えるか。そしてそのコンテンツを楽しめるか。このアプローチが、例えば、ひとまず全部撮って後から探すというアレックス6やSPIDER、ソーシャル視聴、これまでのテレビとは違うスマートテレビなのだと思います。

スマートテレビが本格的に普及してゆけば、あらゆる番組がクラウド化され、「見たい時にいつでもどこでも見る」という視聴スタイルになるはずです。アレックス6やSPIDERも完全なクラウドではないものの、考え方の本質はクラウド化と同じ方向性を持っていると思います。

今年の7月24日正午にテレビのアナログ放送が終了し、地上デジタル放送に切り替わります。とは言え、現時点での地デジ化のメリットは単に「アナログよりも画面がきれいになった」程度や番組表が表示されるくらいにすぎません。放送電波をデジタル信号にすることで、ネットとの相性もよくなり、今後はテレビとネットの融合はきっと起こってくると思います。

テレビのクラウド化によって時間シフトと場所シフトの自由度が上がり、見たい時にいつでもどこでも見られるようになること。ユーザーインターフェイスに優れた検索やソーシャル視聴により、おもしろいコンテンツが見られること。これからのテレビにはこんな視聴スタイルを期待しています。


※参考情報

アレックス6
SPIDER PRO
SPIDER ZERO
2011年、SPIDERが変えるテレビの「未来」と「可能性」 有吉昌康(株式会社PTP社長) 第1回|現代ビジネス
「ソーシャル」こそが再びテレビを甦らせる 佐々木俊尚×有吉昌康(株式会社PTP社長) 第2回|現代ビジネス
もう一度、「戦後」から始めれば、新しい時代の本田宗一郎や盛田昭夫が生まれてくる 佐々木俊尚×有吉昌康(株式会社PTP社長) 第3回|現代ビジネス
「録画視聴ではCM飛ばす」9割―首都圏調査|JCASTテレビウォッチ


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