2011/09/04

スティーブ・ジョブズの死生観とシンプルへの追及


2011年8月24日、スティーブ・ジョブズがアップルCEOを退任することを明かしました。その内容はアップル全社員に宛てた短いメールに書かれていましたが、アップル社員だけではなく世界の人々にとってニュースとなりました。

■ Steve Jobs Stanford Commencement Speech 2005

アップルのCEOという立場から退いた今、あらためて考えさせられたのがこれでした。2005年に米国スタンフォード大学卒業式の祝賀式で卒業生に向けて行ったスピーチです。

Steve Jobs Stanford Commencement Speech 2005|YouTube
スティーブ・ジョブスの魂。STAY HUNGRY, STAY FOOLISH|ASSIOMA(日本語訳)

あらためてスピーチ内容を見ると、ジョブズの原点というか、生き方や考え方のベースになっている内容だと思いました。このスピーチは相当有名なのでご存知の方も多いと思いますが、内容を整理すると次のようなものです。

  • 起:点と点をつなぐ(バラバラの経験であっても将来それが何らかのかたちで繋がる)
  • 承:好きなことを仕事にする
  • 転:ジョブズの死生観
  • 結:卒業生へのメッセージ 「Stay hungry, stay foolish.」

■ ジョブズの死生観

このスピーチの中で最も強い印象に残ったのが、ジョブズの死生観でした。

ジョブズは17才の時、次の言葉を知り衝撃を受けたと言います。「来る日も来る日もこれが人生最後の日と思って生きるとしよう。そうすればいずれ必ず、間違いなくその通りになる日がくるだろう」。

その後、ジョブズは毎朝欠かさずに鏡の中の自分と対話をするようになります。「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日の予定は、本当に私のやりたいことだろうか?」と。この質問に対する答えが「No」という言う日が続くと、そろそろ何かを変える必要があると考えるのだそうです。

スピーチでは、すい臓ガンを患い発見した際には医師たちから余命が3-6ヵ月であると告げられたことも触れています。これをジョブズは「死の支度をしなさい」と受け取ります。

しかし、その後の診断で、この時のジョブズの腫瘍は極めて稀な形状で手術をすれば治せるものだったようで、無事に成功しています。

ジョブズの死への考え方が印象に残ったのは、「死は我々全員が共有する終着点」と捉えており、さらには「死はおそらく生が生んだ唯一無比の最高の発明品」としている点です。死によって、古きものを一掃して新しきものに道筋を作っていく働きのあるものと言います。

毎朝、今日という日を人生最後の日だと考える、つまり、自分が死と隣り合わせにあることを忘れずに思うこと。ジョブズはこれまで人生を左右する重大な選択を迫られた時には常に、決断を下す最も大きな助けになったとスピーチで語っています。

私自身も、ここまで確固たる死生観とはいかないものの、日常生活のちょっとしたタイミングで自分の死を意識することがあります。朝玄関を出た時に、ふと今日自分が死ぬともうこの家には帰ってこないと思ったりします。特にこれは東日本大震災の後はいつもよりも自分の死を意識する頻度であったりリアリティが強くなりました。

ただ、その後は仕事で忙しかったりするとかで自分の死が頭から離れていくこともあり、時々しか頭をよぎらなくなるのですが。ジョブズの言う、自分の死を意識することで人生の岐路に立った時に決断する手がかりになるということはわかる気がします。人生は一度きりというか、変な迷いがなくなり、そう思うことで吹っ切れます。

■ 本当に必要なこととシンプルさ

ジョブズに戻します。ジョブズは死を意識するとともに、今やっていることが「本当に自分のやりたいこと」かどうかを自問します。おそらく、アップルのCEOをやめる決断をしたことも、これと同じプロセスを踏んだのだと思います。

自分のやりたいこと・大切なことにフォーカスするということは、裏を返せば不要なことは除外するということになります。本当に必要なことだけを取り組む、あるいは残すという考え方は、突き詰めていけば「シンプルさ」にいきつきます。

今自分の手元には、ジョブズのつくり出したiPhoneとiPadがあります。

あらためて手に取り、その他のITや家電製品と比べるとその形状のシンプルさが際立ちます。iPadの正面にはホームボタンというたった1つのボタンがあるだけです。側面を合わせてもスリープボタンなどボタンやスイッチ部分は5つのみです。

本当に必要な機能に極限まで絞り込んだ結果だと思いますが、ここにジョブズの哲学を感じることができます。

徹底してシンプルを追及すること、それはつまり本当に必要なことだけを取り組む姿勢、その背後にはジョブズの死生観があります。ジョブズの功績は、複雑性が増す現代社会で「シンプル」なプロダクトとユーザー体験によって世界に驚きを与え続けたと言えるのではないでしょうか。


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