2011/12/17

落合監督の采配論に教えられた後悔しない生き方のヒント

野球でごく稀に「完全試合」と呼ばれるゲームがあります。

これは一人の投手が相手チームの誰一人として塁に出さずに勝つ試合です。ヒットを打たれず、四球や味方のエラーもゼロ。野球は3アウトで回が変わりゲームは9回までなので、相手バッターを 3 × 9 = 27人で終わらせて勝つ試合のことです。

■ 幻の完全試合

2007年のプロ野球日本シリーズ第5戦。中日と日本ハムの対戦カードにおいて、中日ドラゴンズにある大記録が生まれようとしていました。

過去一度もない日本シリーズでの完全試合です。結果だけ先に書いておくと試合は 1 - 0 で中日が勝ち、シリーズを制してチームの53年ぶりの日本一を勝ち取ります。しかし、史上初の「日本シリーズでの完全試合」は幻となりました。

この試合は TV 中継でリアルタイムで見ていました。

試合序盤に平田選手の犠牲フライで中日が 1 - 0 と先制、一方の中日先発の山井大介投手は快投を続けていきます。

気づけば8回を終わって走者を一人も出していません。中日がそのまま 1 - 0 で勝っていたので、もし9回も三者凡退にできれば完全試合でした。

しかし、9回表のマウンドに立っていたのは山井ではなく中日の守護神・岩瀬でした。中日の落合監督の「采配」で中日は勝利しますが、完全試合という記録はつきませんでした。

実は、山井投手は素晴らしいピッチングを続ける裏で試合中盤で右手中指のマメが破れ、出血をしながらの投球だったと言います。それでもなんとか序盤までマウンドに上がり続けましたが、とうとう8回を終わった時、本人から直接「もう投げられない」と投手コーチに告げ、それが落合監督に伝えられたそうです。

落合監督も多くのファン同様に完全試合を見たかったと言います。野球人としての欲求と、大記録や個人タイトルを取り選手が成長するケースが多いことから、山井投手がさらに成長してほしいと言うマネジメントの立場としてもでした。(詳細は下記の書籍「采配」を参照)

落合監督の采配は山井から岩瀬へのスイッチでした。そこには投げられないと言っている山井に無理をしてでも続投させて完全試合を狙わせるのではなく、53年ぶりのチームの日本一のためという強い思いからでした。

個人的にもこの山井-岩瀬のバトンタッチは忘れられない光景です。その時にはまだ山井のマメの話も伝えられなかったので、落合監督の決断に驚かされるとともに、中日が日本シリーズを勝ったとはいえ完全試合が見られず、中日の日本一の瞬間はなんとも複雑な気持ちを持ったのを覚えています。

■ 決してブレない落合監督の采配の原則

采配この時の落合監督の采配について、「采配」(落合博満 ダイヤモンド社)という本に詳しく書かれていて、落合監督は次のように言います。

『「こんな判断をしたら、周りから何と言われるだろう」。そうした邪念を振り払い、今、この一瞬に最善を尽くす。監督の采配とは、ひと言で言えば、そういうものだと思う』と。

どんな場面でも采配は後からの結果論で語られることが多く、采配を振るう自分がフォーカスできるのは、この瞬間に最善と思える決断をすることです。そこは決してブレてはいけないと言います。

だから、落合監督は完全試合を目の前にした山井を降板させた采配を、正しかったか間違っていたかの物差しで考えるのではなく、「あの場面で最善と思える決断をしたかどうか」、これだけだと明確に書かれていました。

■ 今という時間を生きるということ

この本で印象的だったのは、采配とは自分の人生にも通じるという指摘でした。

采配というと組織をリードすると思いがちですが、意思決定をし進む方向を決めると捉えれば、人生における自分の選択や生き方でもあり、自分の人生を「采配」できるのは他ならぬ自分だけだとあらためて気づきます。

第三者から助言をもらっても結局決めるの本人です。

本書から受け取ったのは、「常に自分の進むべき道を探し求めること、すなわち自分の人生を采配することにこそ、人生の醍醐味があるのだと思う」「一度きりの人生に悔いのない采配を振るべきではないか」という落合監督からのメッセージでした。

自分の生き方を采配すると考えれば、先ほどの『「こんな判断をしたら、周りから何と言われるだろう」。そうした邪念を振り払い、今、この一瞬に最善を尽くす。監督の采配とは、ひと言で言えば、そういうものだ』という内容も共感できます。

今と言う一瞬に最善を尽くすということは、今を精一杯生きるということであり、その一瞬一瞬の積み重ねが自分という存在を形作り、それが結果として自分の「人生」になるのです。

自分のこれまでを振り返って、あれをすればよかった、こうしておけば違った結果になったのに、と結果論で見てしまいます。もちろん、過去の失敗を客観視して教訓にすることも大事です。

一方で、日々、今という時間をいかに過ごすか、そんなことをあらためて考えさせられた2011年の年末でした。


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