2011/07/30

マクドナルドの経営戦略がおもしろい

日経ビジネスで短期連載されていた「日本マクドナルド原田泳幸の経済教室」。今週の2011.8.1で最終回で、おもしろい企画でした。マクドナルドの経営手法について、原田CEO(社長・会長CEOを兼任)本人が語るというものでした。

■原田経営の土台はQSC

第一回で紹介されたのが原田経営の考え方。04年に原田氏がCEOに就任した当時、マクドナルドは7年連続で既存点売上高が落ち続けるという状態でした。

その後、結果的には7年連続で同売上が上がり続けることになり、10年12月期決算では経常利益が上場以来最高益を更新するのですが、「どん底」であったCEO就任当時にまず取り組んだことが、「マクドナルドらしさ」に立ち返ることだったそうです。

ではマクドナルドらしさとは何か。記事では、QSC(Quality:品質、Service:サービス、Cleanliness:清潔さ)という同社の考え方が紹介されていました。すなわち、おいしく、清潔で、サービスの質が高い店舗に顧客が集まるということ。

では、QSCという「品質・サービス・清潔さ」を向上するために何をしたのか。

まず取り組んだことは従業員満足度を上げることでした。従業員満足度を向上させるのは、離職率を低下させるためで、原田氏曰く、離職率が下がれば、ノウハウを持ちモチベーションの高い従業員が長く働くことになる、ひいては店舗のQSCが上がるのだそうです。

原田氏は、一般論として企業というのは「らしさ」を忘れて不振に陥り、「らしさ」を取り戻して復活するものだ、と語っています。品質・サービス・清潔さという「マクドナルドらしさ」。記事からは、この土台をまずは築くことに徹底してこだわったという印象を受けました。

■勝つためには「順序」がある

原田氏は、勝つためには「順序(シーケンス)」があると言います。まずは土台があり、土台の上に柱を建て、柱がないのに壁は張れないという考え方で、ある戦術を実行するためには、その戦術を実行できる環境を整えておかなくてはならないという考え方です。

日経ビジネスの記事では、QSCというマクドナルドの「土台」をつくった後のシーケンスが紹介されています。次に行ったのが100円メニューの導入でした。その後の展開は、「えびフィレオ」投入、価格改定(値上げ)、「メガマック」投入と続きます。

ここに原田氏のシーケンス(順序)の意図が見て取れます。

  1. 価値を固め
  2. 客数の増加
  3. 客単価の増加

QSC向上により、顧客の中に「おいしい・きれい・サービスがいい」という認識が生まれ価値を固める。この次が100円メニューの導入だったわけですが、この狙いは客数の増加です。

実は100円メニューをつくるという実質的な値下げであり客数は増加しましたが、(100円メニューを客が注文することで)客単価は下がったようです。だからこそ次の施策が重要で、「えびフィレオ」、価格改定(値上げ)、「メガマック」を投入することで、客単価の増加を狙っています。

売上高=客数×客単価という基本に忠実に従っていますが、特徴的なのはそこに時間軸があることだと思いました。

マクドナルドの戦略は、はじめに客単価を下げてでも客数を増加させること、100円メニューで客数を取り戻した後に付加価値の高い商品を投入することで客単価を増加させる、QSC向上⇒100円メニュー⇒値上げというシーケンスは必然だったと原田氏は語っています。

パズルを1つひとつ組んでいくように、戦略実行のシーケンスを考えるのが経営戦略だというのが同氏の言葉です。

■過去の購買履歴にもとづくマクドナルドの個人クーポン

日経新聞の記事に『マクドナルドが「個人仕様」のクーポン 購買履歴で差』(11年7月13日)というものがありました。

記事によれば、日本マクドナルドは、一人ひとりの顧客の購買特徴に合わせ、割引する新たな電子クーポンの配信を始めるとのこと。携帯電話サイト会員のうち1000万人の購買履歴を分析することで、コーヒーやハンバーガーなど割引商品の内容や送信時間が一律ではない「個人仕様」のクーポンを提供するようです。顧客ごとに割引内容を変えるクーポンというのは珍しい事例です。

例えば個人クーポンはこんな感じです。

  • 一定期間、来店していない顧客には以前よく購入していたハンバーガーを無料などで提供するクーポン
  • 販売中の新製品の購入経験がない顧客には半額のクーポンを配布し試してもらう
  • 週末の昼食時にコーヒーを購入する頻度が高い人には、土曜の朝にコーヒーの割引クーポン

仮に個人クーポンが活性化できれば、客数の増加が見込めます。一定期間来店していない顧客へのクーポンはまさにそれです。過去の購買履歴データから、クーポンという形で行なう「次の提案」。しかも顧客それぞれで異なるのです。

いかに個々人で嗜好の違う消費者に購買履歴からレコメンドが提示できるか、ここが最大のキモであり同時に難しさだと思います。

■あのニュースもシーケンスで考えると見えてくる?

クーポンというからには、半額だったりあるいは無料だったりということで客数の増加が期待できます。

ただ一方で、それだけでは客単価は低下する可能性があるようにも思いました。この状況は、先に書いた100円メニュー⇒付加価値の高い商品投入で値上げ=客単価増、というシーケンスに似ているのではないでしょうか。

マクドナルドの今回の個人クーポンの取り組みはなかなかに興味深いものです。そしてその裏にあるマクドナルドのシーケンス、すなわち次の客単価の増加への施策はどう出てくるか。ちょっと注目しておきたいですね。

それはもしかしたら、このニュースもシーケンスのワンピースなのかもしれません。
マクドナルド/六本木ヒルズに新世代デザインの旗艦店オープン|流通ニュース

マクドナルドのニュースリリースには、六本木店に対して次のように言及されているのですから。
 
マクドナルドでは、お客様から商品やサービスなど常に高いクオリティが要求されるこのエリアにおいても、「100円マック」などのレギュラーメニューはそのままに、これまで以上のお得感(ベストバリュー・フォー・マネー)を感じていただけるよう質の高い商品、サービスを提供してまいります。 
都心型新世代デザイン店舗 旗艦店 「六本木ヒルズ店」をオープン|日本マクドナルドホールディングス ニュースリリース
■最後に

今回取り上げた日経ビジネスの記事内にあった原田氏の言葉で印象的だったものを引用しておきます。

発想は大胆でありたいと思っています。でも実行は慎重に。

何か新しいことを始めようという時には、徹底してデータを集めて検証しながら物事を進めます。だから数字は大好きですよ。無機的に見える数字の羅列には、本当は有機的な意味が隠されていますから。

改革というと、みんなコスト削減から始めるじゃないですか。そんなの誰だってできますよ。コスト削減ほど易しい経営はない。僕はこう言うんです。「コストをカットをするな。もっとお金の使い方の提案を持ってこい」。お金を使ってもっと売る方法を考えろ、ということですね。経営とは、要はお金の使い方を考えることだと私は思っているんです。

大事なのは、本当に顧客が求めているもの、顧客自身ひょっとしたら気づいていないかもしれない真相的なニーズを見抜くビジネス・インサイト、洞察です。

コンシューマー(消費者)の心を引くために大事なのは、いい意味でお客さんの期待を裏切ること。驚かせることです。


※参考情報
日本マクドナルド原田泳幸の経済教室|日経ビジネス
マクドナルドが「個人仕様」のクーポン 購買履歴で差|日本経済新聞(11年7月13日)
マクドナルド/六本木ヒルズに新世代デザインの旗艦店オープン|流通ニュース
都心型新世代デザイン店舗 旗艦店 「六本木ヒルズ店」をオープン|日本マクドナルドホールディングス ニュースリリース



2011/07/17

Googleが計画する「ウェブデータ取引所」は、あなたと広告のミスマッチを解消してくれるのか

それにしてもスケールの大きなニュースです。Ad Age DIGITALによれば、グーグルがウェブデータの取引所を創設する構想を持っているとのことです。
Google Readies Ambitious Plan for Web-Data Exchange|Ad Age DIGITAL

■グーグルが計画中のウェブデータ取引所とは

まずは開発中とされるグーグルのこの取り組みについて見てみます。簡単に言うとグーグルがやろうとしているのは、ユーザーデータが売買できる仕組みおよび場(取引所)を提供するということです。ユーザーデータは、ネットでの行動履歴データで例えば訪れたサイトや検索した時に入力した単語(検索ワード)など。このデータが売買されるわけですが、売り手はウェブサイトなど、買い手は広告主となります。

広告主は何のためにデータを買うかというと、広告をどういう人たちに表示をさせるかというターゲット情報を得るためです。広告の基本は、1.人の集まるところに出す(だからTV広告では視聴率が重宝される)、2.広告を見てほしい人に見てもらう、だと思っていますが、この2点を考えるためにターゲット情報が活用されます。ここで言うターゲット情報というのが、上記のウェブサイトなどから提供される「ネットでの行動履歴」に当たりますが、ネットでの行動履歴というのは、言い換えればその人の興味・関心のデータです。というのは、ネットで何かのサイトや動画を見る、検索をするなどは、そこに何かしらの興味があってのことで、上記のAd Ageの記事では「新車を購入しようとしている人」、「旅行を計画中の人」などの例が書かれていますが、行動履歴を積み重ねるとその人が何に興味を持っているのか、さらにはどういう人なのかもある程度はわかるようになります。

グーグルが開発しているこのデータベースが実現すれば、広告主は自分の広告を表示させたいターゲットを抽出することができ、広告を見てもらいやすくなり購入にもつながることが期待できます。ユーザーデータについて需用と供給が成り立つことで、それに対してグーグルの役割は、あらゆるユーザーデータを一つに集約した巨大データベースを構築し、売り手と買い手の間で円滑にデータが売買されるような仲介役なのです。

■あなたにとってどういう意味があるのか

では、仮にグーグルのウェブデータ取引の仕組みが実現されるとして、その場合に私たちに一体何をもたらすのかということを考えてみます。認識としてあらためて考えてみたいのが、自分たちのまわりにはたくさんの広告であふれているものの、それらのうちどれだけの広告に興味・関心を持ち、さらにはその広告の商品・サービスを買うところまで至ったかという点です。ウェブ上でも多くの広告が表示されますが、個人的には大部分はクリックすることはなく、もっと言えば何の広告かの認識すらしていないこともあります。

この状況を冷静に考えてみると、現在の広告は多くの場合でミスマッチが起こっているのではないでしょうか。つまり、広告が表示されていても、見る人にとってその時点で興味関心は持たれていない、本当に見てほしい人(見てくれる人)に表示されないというミスマッチです。これはあらためて考えてみると残念な状況です。とういのも、ミスマッチが発生しているということは、その広告の広告主・消費者・広告媒体の三者それぞれにとっても望ましい状況ではないと言えるからです。広告出稿費を払ったのに広告の効果が出ない、見たくはない広告が表示される、表示広告に効果が見えにくいと広告媒体としての価値が上がらない、といった感じに。

広告というのは必要な人に適切なタイミングで提供できれば、消費者と広告主の双方にメリットがあるものだと思っています。広告の中には関心を抱くものも多少はあるわけで、広告で存在をはじめて知ったり、ちょっと買ってみようかなと思うこともある。あるいは実際に広告の影響で買うこともあります。

少し前置きが長くなりましたが、グーグルの取り組みが実現されるとこうしたミスマッチが解消していく可能性があると考えます。グーグルが提供している検索連動型広告は検索ワードという興味・関心に連動した広告なわけですが、それよりも幅広いネットでの行動履歴をベースに広告を表示させるターゲットを選んでくることができるからです。これにより、広告が必要な人に適切なタイミングで提供されることが期待できます。ふと○○が欲しいと思った時に向こうから知らせてくれたり、自分の中で完全なニーズになっていないことまで提案してくれる、なんてことが実現できるかもしれません。

■独占とプライバシーの問題

一方で、自分のネットでの行動履歴が使われることに対しての反発も当然起こってくるでしょう。このようなウェブのユーザーデータはクッキーという機能を活用することになるのですが(他にも仕組みはあるのですが)、自分のデータが提供されることがわかっていて許諾が得られている場合はいいとして、ユーザーにとっては自分のウェブデータが活用されていることにも気づいていないケースもあり、このあたりは個人情報やプライバシーの問題が必ず出てくると思います。

それにただでさえグーグルは独占禁止法やプライバシー問題で、アメリカやヨーロッパの独禁・司法当局からの監視の目が増している状況です。そんな中、グーグルが個人のウェブデータを集約し、売買できるようなデータベース・仕組みを構築するとなれば、独占禁止法とプライバシー問題の両方で懸念の声が出てきてしまう恐れがある。その実現は簡単ではないというのが個人的な見解でもあります。
フェイスブック・米当局…グーグル支配に包囲網|日本経済新聞(11年7月7日)
[FT]グーグルに独禁法関連の疑い相次ぐ 今度は欧州で訴訟 |日本経済新聞(11年6月28日)

■グーグルにとってなぜこのプロジェクトなのか

それでもなお、グーグルはこのプロジェクトを前に進めていくのでしょう。なぜなのかを整理するために、ここではグーグルの目的を考えてみます。1つ考えられるのは、ユーザーの行動履歴というウェブデータが集まるデータベースが構築できそこにデータを売る/買うプレイヤーが集まる、こうしたプラットフォームをグーグルが支配することです。支配できれば、課金モデルが構築できます。一定の手数料という形でグーグルにとっては持続的な利益を得ることができる。

この可能性はなくはないのですが、個人的にはグーグルの目的はこのビジネスモデルではないのではと思っています。それはグーグルがアンドロイドOSを無償提供し、あくまでアンドロイドの普及を進めているのと同じで、グーグルにとって大事なのはあらゆるウェブのデータが集まることです。グーグルの目的は、データが集まり、広告主がそのデータベースからターゲットを抽出できる、本当に必要な人に広告が表示でき広告のマッチング精度・効果が上がる、そしてオンライン広告の価値がより向上すること。これがグーグルが描いていることなのではないでしょうか。

冒頭で引用したAd Ageの記事はタイトルにAmbitious Planという表現が入っており、さらに記事ではこのプロジェクトに詳しいグーグルの幹部によれば「one of the most ambitious in Google's march to become a brand advertising giant.」と表現し、グーグルがブランド広告の巨人になるためは最も重要なプロジェクトの1つと指摘しているのです。グーグルの目的はウェブデータ取引所で広告主にデータを活用してもらい、オンライン広告へこれまで以上に投資してもらうこと、ひいてはそれが広告媒体としてグーグルの収益に結びつくという構図です。

■個人データ活用への期待

最後に、このニュースについて自分はどう思うかを少し書いておきます。ウェブのデータ活用にはメリット/デメリットがあるものの、結論としては期待のほうが大きいと思っています。マイナス面としては自分のウェブ上の行動履歴がデータとして誰かに(知らないところで)活用されるという不安がありそうですが、一方でウェブを使い以上はある程度の自分のデータが提供されてしまうのは不可避だと考えます。自分の個人情報をウェブ上に預けることで、利便性を享受できている面もあります。であるならば、データが提供されることを受け入れ、そこから個人データをいかに活用し、どうすれば世の中をもっと豊かにできるかを考えたいというのが個人的な思いです。

※参考情報
Google Readies Ambitious Plan for Web-Data Exchange|Ad Age DIGITAL
データが通貨になる Googleが「ウェブデータ取引所」機能構築へ=米報道【湯川】|TechWave
フェイスブック・米当局…グーグル支配に包囲網|日本経済新聞(11年7月7日)
[FT]グーグルに独禁法関連の疑い相次ぐ 今度は欧州で訴訟 |日本経済新聞(11年6月28日)


2011/07/10

「ソーシャルメディア実践の書」から得られたノウハウ以上のこと

ここ最近で読んだ本に「ソーシャルメディア実践の書 -facebook・Twitterによるパーソナルブランディング-」があります。

ソーシャルメディアを活用して個人レベルでできるブランディングのヒントがたくさん書かれていました。それ以外にも考えさせられたこともあり、興味深く読めました。

著者である大元隆志氏はソーシャルメディアの最も重要な特徴を次のように表現します。「世界中の人に、あなたというこの世でたった一つの存在を知ってもらうことを実現する最良のメディアである」と。

では、自分のこと、それも「あなたの魅力」をソーシャルメディアで伝えるにはどうすればよいか、これが本書の主題です。

この本では、自分自身のポテンシャル向上方法と、ソーシャルメディア活用し自分の魅力伝える方法の2点が指南されています。

■ ソーシャルメディアを活用する心得

本書の構成は大きくは3つです。

  • ソーシャルメディアとは何か(第一章・第二章)
  • ソーシャルメディアでの実践ノウハウ(第三章・第四章)
  • ソーシャルメディアの未来(第五章)

本書はタイトルが「ソーシャルメディア実践の書」とある通り、ソーシャルメディアで自分の魅力を伝えるためにどう考え、何をすればよいかが具体的に書かれているのが特徴です。

よく、ソーシャルメディアでは絆をつくることが大切であるということが言われます。例えば、企業が消費者と絆を形成することで、自社のブランドや商品のファンになってくれる、これをソーシャルメディアであれば実現できる、というようなことも書かれていたりします。

ただ、肝心の「絆をどうつくるか」はあまりフォーカスされていないような気がします。それが本書では、個人レベルでもできる内容が書かれています。もちろん、著者が言うように本書のノウハウを実践したとしても、成果が出るには早くても半年くらいはかかるとあるように、継続してやるのはそれなりの努力は必要です。

本書で提示されているソーシャルメディアの実践ノウハウは2つに分けることができます。1つがソーシャルメディアのリテラシーで心得、2つ目が具体的な活用ノウハウです。

1つ目の心得ですが、私が印象に残った内容は以下のようなものでした。

  • ソーシャルコミュニケーションの王道は人から尊敬され人望を集めていくこと
  • パーソナルブランディングは目立つことよりも信頼されることを重視するべき

■ ソーシャルメディアの実践

それではソーシャルメディアを使って、人望を集め信頼されるにはどうすればよいのでしょうか。

著者のアドバイスが「実践の書」として書かれていて、一言で表現すると必要なのは「評判を管理していく能力」です。

評判を管理し、自分への信頼を少しずつ積上げていきます。必要な能力は3つだと著者は言います。

  • キューレーション能力
  • 表現力
  • コミュニケーション能力

なぜこの3つなのかというと、それはソーシャルメディア上での自分の魅力を伝えるための活動と関係しています。

つまり、情報をインプットするためには目利きとしてのキュレーション能力が必要になり、インプットした情報をコンテンツ(例.ブログ記事にする)にして自分の魅力を伝えるために表現力が、ソーシャルメディア上で交流するためにはコミュニケーション力が要求されるというものです。このサイクルをまわすことで評判を管理するのです。

詳細は本書に譲りますが、この3つの能力のうち表現力に該当する情報提供について、著者の考え方に共感しました。

例えば、ツイッターやブログで何かをツイート・記事のエントリーをするということは情報を提供することになりますが、その時に重要なのはいかに質の高い情報を発信し相手に貢献できるか、価値を提供できるかという考え方です。ただ読んでもらうだけではなく、そこに自分ならでは視点・考え方をプラスアルファで提示し、共感をしてもらえることを目指します。

ここに著者の哲学がありました。この本の最後の「結び」で、次のようなことが書かれていました。

  • ソーシャルメディアで活躍する最もよい方法は誰かを幸せにすること
  • あなたの隣にいる人を幸せにしたいと願う気持ちが成功の秘訣である

これらが、著者が本書を通じて最も伝えたかったことであり、この本を通じて書かれていた実践の仕方はこの考え方がベースになっていると思いました。

■ ソーシャルメディア時代の4つの絆から考えた本当に大切なもの

ここまでは本書のソーシャルメディア実践の考え方・ノウハウでした。この本に書かれていたことで印象的だったのはノウハウ以外にもありました。

おもしろいと思ったのは、ソーシャルメディア時代には四種類の絆が形成されると書かれていたことです。強い絆、仲間の絆、弱い絆、一時的な絆です。



上図は本書(p.318)からの引用です。

ソーシャルメディアにより、それまでは家族などの強い絆と友人などの仲間の絆という2つだったものが、弱い絆、一時的な絆(ちなみに図では一次となっていますが一時のはずです)が形成されるようになると言います。

弱い絆は例えばツイッターで2、3回やりとりした、ソーシャルメディアを通じて知り合った人などの相互フォローの関係です。一時的な絆はあるトピックでその時だけ一時的にコミュニケーションをとったことのある関係です。

上図のソーシャルメディア時代の4つの絆について、弱い絆や一時的な絆はソーシャルメディア以前にも存在はしていたと思います。

というのも、ソーシャルメディア以前にも、弱い絆は、例えば会社内で顔と名前は知っているけれども、あまり話したことがない人やメールでしかやりとりをしたことがない人です。一時的な絆は、業界カンファレンスや何かの集まりで会って話したけど、それ以降は特にコミュニケーションが発生していない人などがいたからです。

ただし、ソーシャルメディアの使用以前と以後で大きく違うのは、この関係の人たちから得られる情報です。

弱い絆や一時的な絆からの情報(業界動向、ニュースなど)も、時には有力なものに成り得ると実感するからです。

例えば自分の専門ではない話題(経済、政治など)のニュースや考察などの情報は、ツイッターで流れていることが多く、それは多くの場合弱い絆や一時的な絆である人たちからのものです。あるいは、自分がいる業界の情報も、時にはこうした人たちが情報源になることもあり、情報が入ってくる速さ・頻度・質がソーシャルメディア使用以前よりも明らかに向上しています。

これは絆が弱かったり、一時的だったとしてもソーシャルメディア上でつながっていることが大きいのではと思います。

自分にとって大切なのは家族などの強い絆や友達や一緒に仕事をしている人たちで構成される仲間の絆です。そこに弱い絆と一時的な絆が加わり、様々な関係性が形成されます。

ソーシャルメディアはこうした関係性を充実させてくれるツールだと思いますし、いくらソーシャルメディアの使い方に詳しくてもそこにコミュニティがあるかどうかで楽しさが違ってきます。

本書で書かれているソーシャルメディアの実践も参考になりますが、一方で自分が持つコミュニティは財産とも言え、お金では買えない大切なものだということが本書を読んであらためて考えたことでした。

※参考情報
ソーシャルメディア実践の書 -facebook・Twitterによるパーソナルブランディング-|ASSIOMA:ITmedia オルタナティブ・ブログ


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2011/07/03

グーグルが新SNSのGoogle+をリリースする2つの意味とわくわく感

ついにGoogleも動いてきました。同社が世界に発表した新しいSNSであるGoogle+です。(11年7月2日現在まだパイロットテスト段階で、一部のユーザー限定で使用が可能)
Introducing the Google+ project: Real-life sharing, rethought for the web|The Official Google Blog

今回のエントリーでは、Google+について以下のような論点で書いてみようと思います。
1.Google+とは何か?Facebookとの違いは?
2.なぜGoogleはSNSに取り組むのか?
3.Google+が普及するとどうなるのか?そして期待すること

■Google+の特徴を簡単に

1つ目の機能がCircles。友人をグループ化する機能であり、例えば家族、高校の友達、大学の友達、職場の同僚、趣味の友達、と言った感じでサークルを作成し、そのグループごとに情報が共有できます。高校の友達とは昔の思い出やアホな話で盛り上がり、大学の友達とは今度久しぶりに集まって飲もうという会話、職場の同僚とは新規企画のことを真面目に議論する、趣味の友達にはおもしろい動画を見つけたので教えてあげる。Circlesの使用イメージはこんな感じです。会話のやりとりはそのグループメンバー以外には見えないので、全然違う話題について他の友達の目を気にすることなく情報共有ができます。実はこの機能はフェイスブックと大きく違う点なのですが、これについては後述します。

他の機能としては、事前に設定した自分が関心のあるテーマを設定しておくと、関連するブログ記事・動画・書籍などのコンテンツを集めてくれるSparks、ビデオチャットができるHangouts、グループでチャットができるHuddle、これ以外にもモバイルで撮影した写真を簡単にアップロードできたりする機能などもあります。詳細は以下のグーグルの発表内容や、lifehackerの記事で紹介されています。
Google+ プロジェクト: 現実世界の人間関係をウェブで|Google+プロジェクト
Google渾身の新SNS「Google+」の主要機能を一挙紹介!|lifehacker

■Google+とFacebookの違い

次に、Google+とフェイスブックの違いについて見てみます。上記のGoogle+のCirclesのところで、この機能がフェイスブックと異なる点だと書きました。ざっくりと言ってしまうと、Google+では情報共有はグループごとに行ないそのグループ以外の人には見えないのに対し、フェイスブックではシェアやいいね情報は自分の友達全員に発信されます。例えばフェイスブックでは、自分の発言に対しては高校の友達からも会社の同僚からも、あるいは家族からも全て同じところにコメントがつきます。

実はGoogle+ではこのようなフェイスブックの仕組みについて、Google+ プロジェクト: 現実世界の人間関係をウェブで|Google+プロジェクトの中で「全ての友達をひとくくりにしており、これが情報の共有に問題を生じさせている」と指摘しています。ひとくくりであることは大雑把であり、人目を気にしなければいけない、そして繊細さに欠けると。だからグーグルの答えは、サークルという異なるコミュニティごとに選択的に情報を共有できるような仕組みを打ち出しているのです。グーグルの使命は「世界中の情報を整理すること」ですが、この文脈で言えばSNS上の友人関係をコミュニティごとに整理することで、コミュニケーションがより濃くなり活性化することを狙ってのことだと思います。そう考えるとCirclesはグーグルらしい考え方だなと。

■なぜGoogleはSNSに取り組むのか

2011年春からそれまでのCEOからグーグルの会長職となったエリック・シュミット氏は米ウォールストリート紙のインタービューで、「私はソーシャルネットワーキング分野で方向性を間違った」と述べています。さらには、「何かをしなければならないことは明白だったが、私はしなかった」「CEOは責任を取るべきだ。私は失敗した」とも語っており、グーグルがソーシャルネットワークの分野で出遅れたことを認めています。
グーグルのシュミット会長、「私はSNSで失敗した」公開インタビューでCEO時代を振り返る|JBpress

フェイスブックなどのSNSの中の情報というのはグーグルにとっては接触不可なもので、従って整理することができません。グーグルはソーシャルネットワークの領域に出遅れたことで、その間にフェイスブックはユーザー数は増加し、ますます多くの情報がグーグルが扱える範囲の外で発生するようになりました。グーグルは情報を整理できなくなり、これはグーグルの検索結果にはそれらの情報が出現しないことを意味します。実際にフェイスブックの情報でグーグル検索結果から表示されるのは登録名称などのごく一部にしかすぎません。日本でのグーグルのリアルタイム検索は実質ツイッター検索です。

このようにグーグルにとって検索不可領域が増えることで、グーグルユーザーの検索ニーズを満たすことができなくなる可能性がでてきます。検索で知りたい答えがグーグルの検索結果には表示されないかもしれない。そうなると、ユーザーの検索利用回数の減少というグーグル離れが懸念される。この状況はグーグルにとって死活問題になりかねません。なぜならば、グーグルユーザーの検索利用回数が減る/ユーザー自体が減少するということは、すなわち、グーグルが展開する検索結果連動型広告などに接触する回数や人数や減ってしまうことを意味し、結果的にグーグルの広告売上が下がってしまいます。現在のグーグルの収益はほぼ広告収入だということを考慮すれば、グーグルにとってはビジネスモデルという根底に関わってきます。

これがグーグルの恐れているシナリオであったはずで、フェイスブックから中の情報が得られないのであれば自らでSNSを独自に立ち上げる、グーグルはこのように考えて自分たちでつくるとしたらどういうSNSがいいのかを検討した結果のひとつのカタチがGoogle+なんだと思います。

■Google+が普及するとどうなるか

ここからは、Google+が普及していった場合にどうなるかを考えてみます。一言で言ってしまうと、グーグルは今ままで得られなかったSNSからのソーシャルデータを手に入れることが可能になります。ソーシャルグラフ(人間関係)、ユーザーの興味・関心の情報です。たぶんこのあたりの情報は喉から手が出るほど、グーグルは欲しいと思っている。

そして、個人的に予想するのがこの間グーグルが積極的に普及に取り組んでいる+1ボタンとの相乗効果です。以前のエントリーで+1普及の最大のハードルとして、自分が+1ボタンをクリックしたという情報は、友達がその後に検索をして初めて共有されるため、+1をクリックする動機づけとしては弱いと書いたことがあります。フェイスブックにはニュースフィードといういいねやSendの情報を共有できるプラットフォームが、ツイッターにはタイムラインというツイート情報を共有できるプラットフォームがあることに比べると、グーグルの+1にはこのような友達と共有できるプラットフォームがないのです。しかし、Google+が+1と連携すれば状況が変わってきます。+1をクリックしたことがリアルタイムにGoogle+上で友達に共有できれば、フェイスブックやツイッターと同じ構図になるからです。これで+1クリックの動機は少なくとも今以上には大きくなり、より多くの人々が+1を使用すればそれだけグーグルには+1という興味・関心の情報を手に入れることができる。

Google+が普及することで興味・関心の情報が手に入ると、グーグルはこれまではAISASで言うところのSearch部分だったのがその前のAttentionやInterestでも情報が整理できることになります。こうなるとグーグルの広告でも検索結果連動型だけではなくソーシャル広告への可能性も広がってくるのではと思います。ソーシャル広告については少しずつ事例も出てきており、以下の記事ではその定量的効果が紹介されています。
mixi × Nike ソーシャルバナーの広告効果速報、訪問者213万人、CTR10倍超に|In the looop
ミクシィが動いた これがソーシャル広告のチカラ【湯川】|TechWave

グーグルが新SNSであるGoogle+をリリースする意味は2つあると思っています。1つ目が、自身が掲げる情報整理という使命を果たすためであり、Google+というSNSの情報・データも集められることで、世界中の情報を整理するという究極の目的に一歩近づく。2つ目が広告収入というビジネスモデルを強化すること。こんなふうに考えると、グーグルがGoogle+にかける意気込み・本気度は並大抵のものではないと感じます。

■Google+への期待

最後に、Google+への個人的な期待を少し書いておきます。グーグルは数多くのサービスを無料で提供していますが、あらためて考えてみるとグーグルのサービスはよく使っていることに気づきます。グーグル検索はもちろんのこと、Gmailで連絡を取ったりAmazonなどからの商品発送の通知連絡を確認する、スケジュール管理はGoogleカレンダー、RSSはGoogleリーダーで、ブログはDocsを使って書いています。iPhoneではGoogleマップ、他にもストリートビューやYouTubeだったり、あとはGoogleトレンドなどの各種分析ツールなど、仕事・プライベートによらず非常に重宝しています。

で、期待したいのは、これらの既存のサービスがGoogle+をベースにして連携されることで、ソーシャルの要素が加わるのではないかということです。少し具体的なイメージを考えてみるため、友人同士でどこかに旅行に行くケースを想定してみます。Google+上で、旅行先の候補を絞るため現地のストリートビューを見ながら友人と相談し、日程はGoogleカレンダーで調整、現地での食事のお店選びにはグーグルのクーポンサービスであるGoogle Offersを利用することにし、支払いはGoogle Walletで済ます。当日の集合場所はGoogleマップで決める。旅行中の写真はPicassaで、動画はYouTubeで共有する。以上がPCだけではなくスマートフォンでも使え、こんな感じですでにあるグーグルのサービスがGoogle+と連携するイメージです。

他にもグーグルはブックスという電子書籍、クラウドミュージック、ゲーム、Androidというスマートフォン/タブレット用OSを持っており、これらをうまく活用できれば用意できるコンテンツはフェイスブックと同等かそれ以上の規模にもできるポテンシャルを感じます。Google+の発表があってからはGmailやカレンダーなどがGoogle+に似た新しいデザインに変わってきていることも、いずれはGoogle+と連携するための準備とも考えられ、このへんは色々と想像をしてしまいます。

色々と書きましたが、現時点ではグーグル自身がGoogle+のことをProjectと表現し、Productとは言っていないのでまだまだ完成はしておらず、ユーザーもグーグルアカウントを持っている全ての人々ではないこともあり、SNSとして普及していくかは未知数なところもあります。SNSは機能やユーザーインターフェイスがどんなに優れていても、結局のところソーシャルグラフがどれだけ充実しているかどうかがSNSがおもしろくなるかどうかに直結するので、ユーザーが増え普及し使われ続けない限りは、上記の内容は絵に描いた餅にすぎません。Google+が発表されたことで、フェイスブックも対抗策を考えてくるのでしょう。この両者の戦いは今後も注目です。

※参考情報
Introducing the Google+ project: Real-life sharing, rethought for the web|The Official Google Blog
Google+ プロジェクト: 現実世界の人間関係をウェブで|Google+プロジェクト
Google渾身の新SNS「Google+」の主要機能を一挙紹介!|lifehacker
Google Launches Google+ To Battle Facebook [PICS]|Mashable
フォトレポート:グーグルの新SNS「Google+」をチェック|CNET Japan
Google+: First Impressions|Mashable
Google+はフェースブックより「まともな」SNS|@シリコンバレーJournal Newsweek
Google+ が解決した、たった一つのフェイスブックの問題点|IT戦記
グーグルのシュミット会長、「私はSNSで失敗した」公開インタビューでCEO時代を振り返る|JBpress
Google Missed 'Friend Thing'|THE WALL STREET JOURNAL TECHNOLOGY
mixi × Nike ソーシャルバナーの広告効果速報、訪問者213万人、CTR10倍超に|In the looop
ミクシィが動いた これがソーシャル広告のチカラ【湯川】|TechWave
Googleは「+1」でソーシャル検索を実現できるのか?|思考の整理日記

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