2011/11/27

公式伝記「スティーブ・ジョブズ」から読み解くアップルのマーケティング哲学

Steve Jobs先週は1週間の休みを取り、ペルー旅行(メインはマチュピチュやナスカの地上絵)に行ってきました。ペルーは日本から見て地球の裏側に位置し、移動はさすがに長時間になりました。ペルーへ行くだけでも成田-LA-リマ(ペルー)と、乗り継ぎ時間も合わせると24時間を超えます。そんな長いフライト時間だったのであらためてゆっくり読めたのはスティーブジョブズの伝記でした。(スティーブ・ジョブズ Ⅰスティーブ・ジョブズ Ⅱ

■What creative people could do with the computers

ジョブズの生き方、人生観はすでに過去にエントリーしています。
あらためて考えさせられるスティーブ・ジョブズの死生観|思考の整理日記
スティーブ・ジョブズの死生観とシンプルへの追及|思考の整理日記

伝記を読みそれ以外で印象的だったのは、アップルがMac、iPod、iPhone、iPadなど世界を変えることになる製品を次々に世の中に送り込んだストーリーでした。私自身が新規事業開発のプロジェクトに参画していることもあり、開発経緯の話がおもしろかったです。本書で、特に印象的だったフレーズがあります。

It was designed to celebrate not what the computers could do, but what creative people could do with the computers.
焦点をあてるべきは、コンピュータになにができるかではなく、コンピュータを使ってクリエイティブな人々はなにができるか、だ。

(英文は原作より。訳は日本語版(Ⅱ)p.74より)
※ちなみに、原作は手元にないのですが、ペルーへの乗り継ぎ地点のLA空港の売店に原作本が売っており、せっかくなので上記の文章をお土産に帰ってきました

この表現はアップルの考え方をとてもよく表していると思います。普通であれば「コンピュータになにができるか」、つまり自分たちがつくったものの機能や特徴をユーザーに最大限アピールすることに注力します。しかし、アップルのやっていることはもう1歩踏み込んだところまで考え、実行しています。それが「コンピュータを使ってクリエイティブな人々はなにができるか」。すなわち、単に機能だけを伝えるだけではなく、どんな人たちが使うかを想定し、そのユーザーがどうやって手に取り、さらには利用シーンや使用目的までも考えるのです。だから、「コンピュータになにができるか」にとどまらず、「人々になにができるか」まで力を注ぐ。言い換えれば、アップルはユーザー体験にまで焦点を当てている。スティーブジョブズの伝記では、ジョブズが「ユーザーのことを考えるから、体験全体に責任を持ちたい」という言葉が紹介されています。おそらく、アップルではプロダクトの設計や開発段階からユーザー体験まで深く議論をしているのではないかと思います。

アップルがユーザー体験を重視する考え方は、例えばiPadのCMでもまさにその通りのメッセージを私たちに訴えています。iPadというデバイスが主役ではなく、あくまでユーザーがiPadを使って何ができるかを伝えようとしているように思います。

iPad2 CM 日本版 2 Apple|YouTube

■アップルのエコシステムとユーザー体験

音楽プレイヤーのiPodの開発でもユーザー体験を重視する姿勢が描かれていました。iPodをリリースする前、ジョブズたちは既存の音楽プレイヤーが複雑でとても使いにくと思っていました。もっとシンプルに、もっと使いやすく。そして結論はPCの中にあるiTunesをハブとし、iPodを同期させることでした。iPodはあくまで衛星的な存在であり、曲のプレイリスト作成などの機能をiTunesのみで可能とし、iPodには同期させるだけ。iPodでできることをあえて制限したのです。ジョブズはこの形を「複雑な部分をあるべき場所に移ってゆけた」と表現します。

PCを「デジタルハブ」とするビジョンをジョブズが描いたのは2001年でした。音楽プレイヤーだけではなく、その後のiPhoneやiPadもPCと同期させるという関係性をつくります。PCを中心としたエコシステムであり、とてもうまくコントロールされているのです。

ところがジョブズ自らがこのエコシステムを壊していくことになります。デジタルハブと置いたPCを他のデバイス同様のレベルに降格させ、替わりにデジタルハブとして位置付けたのがクラウドでした。伝記にはクラウドをハブとする構想は2008年ごろに抱いていたことが書かれ、そして2011年6月のWWDC(世界開発者会議)の講演で新しいサービスであるiCloudとして発表されます。2000年代がPCであり、次の2010年代はクラウドがハブとなるのでしょう。アップルのデジタルハブという戦略はぶれることはありませんが、技術や時代に合わせてPCからクラウドに自らで移行しているのです。それもこれも、より使い勝手のよいサービスにしたいという思いから。ハブをクラウドにするという変化の底にはユーザー体験があるのです。

■「全てが一体となって機能する」というアップルのコンセプト

とはいえ、ハブをPCからiCouldにするという変化はまだまだ移行期にあると感じます。iOS5へのアップデート後に実際にiCloudを使っていますが、アプリの取り込みやバックアップの実行は依然としてPC経由でもやっています。今のところハブはPCとクラウドの2つが併存している。この状況はジョブズの言う「抜群の使い勝手」にはもう一歩という感じです。

iPhone、iPadなどのアップルの製品を使っていて感じるのは、「全てが一体となって機能する」使いやすさです。PCに入っているiTunesを中心にしていた世界では、同期させるのは手動でつなげる必要がありました。これがデジタルハブという中心が完全にiCloudになる時、気づけば全てが一体となっているはずです。勝手に同期してくれる分、人々は「なにができるか」に集中できます。「コンピュータになにができるか」ではなく、「人々になにができるか」。これからのアップルにもこの姿勢を期待したいです。


※参考情報

あらためて考えさせられるスティーブ・ジョブズの死生観|思考の整理日記
スティーブ・ジョブズの死生観とシンプルへの追及|思考の整理日記
iPad2 CM 日本版 2 Apple|YouTube
iCloudで携帯電話以来の大変化が起こる...それは未来のコンピューティング|ギズモード・ジャパン

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2011/11/19

Google+でプロダクト全体最適を進めるグーグル

Googleと言えばネットで何かを検索する時には当たり前のように使いますが、それ以外のサービスも色々と利用していることに気づきます。仕事とプライベートのスケジュール管理にはGoogleカレンダーは外せないですし、他にもGmail、Google Reader、Googleドキュメント、などと挙げていくと1つのアカウントで様々なグーグルサービスを活用しています。

■ここ最近のGoogleの動き

ちょっと前になりますが、これら多くのグーグルサービスがデザイン変更をしました。デザインだけの変更であれば新しいデザインも使っていればそのうちに慣れるものの、機能が変わってしまいそれが自分にとって使いづらくなってしまうと前のデザイン(機能)のほうがよかったのに、なんて思ってしまいます。ここは無料で使っているので文句はあまり言えず、一定のデザイン変更期間(新旧両方が使える)が終われば、強制的に新デザインに移行されます。

もう1つ、最近のグーグル関連の大きなニュースとしては、Google Musicのリリースがあります。

Google Music is open for business|Official Google Blog

これまではβ版だった音楽サービスの正式リリースで、主な特徴は、所有している曲は2万曲まではクラウド上に無料保存可能、Android MarketというiTunes Storeのようなマーケットから購入でき、1曲は0.99~1.29ドルで100円以内で買えるイメージです。購入対象曲は現在は800万曲、近々1300万曲まで増えるとのこと。曲のファイルはMP3の320kbps。

印象的だったのは、大手レーベル3社とインディーズレーベル1000社がパートナーになっている、Google+との連携で共有しやすい仕組み、それとオフライン状況でもデバイス保存分は聞くことができること。あとはアーティストとの連携強化も。日本への展開時期は未定のようです。Google Musicにより、グーグルは音楽サービスでもiTunesやAmazon Cloud Playerとぶつかることになります。

他に話題になっていたのは、Google+で企業ページの「Google+ Page」のリリースもありました。

Google+ Pages: connect with all the things you care about|Official Google Blog

リリース段階の時点で、トヨタやユニクロ、ペプシなど、20以上の企業ページが開設されたようです。これはFacebookページと似ていますが、Google+ Pageの特徴はグーグルの強みである検索と強力な連動させている点にあります。Direct Connectという機能の追加がそれで、グーグルで検索でをする際に、企業名やブランド名の前に「+」を付けて検索すると、その企業のGoogle+ Pageをサークルに入れることを推奨するページが表示できるようになりました。

■Google+統合という全体最適化

ここまで、最近のグーグルの動きとして、各種サービスのデザイン変更、Google Music、Google+ Pageを見てきましたが、これら共通していることがあります。それは、全てでGoogle+との連携がされていること。

デザイン変更ではGoogle+のそれと同じイメージになり、Google MusicではGoogle+への共有機能も追加されています。これらの意味することは様々なグーグル提供サービスがGoogle+が軸となる統合で、この動きがGoogle+がリリースされてから一気に動き出していると感じます。

Google+に関して、グーグル幹部のNikesh Arora氏(chief business officer)がある公聴会で印象的な発言をしていました。

Google+, for us, is not a social network, It is a platform which allows us to bring social elements into all the services and products that we offer. So you have seen YouTube come into Google+; you’ve seen Google+ with ‘direct connect’ go into our search business. We are trying to make sure we use social signals across all of our products... It’s not just about getting people together on one site and calling it a social network.”

我々はGoogle+は「ソーシャルネットワーク」とは位置づけていない。Googleが提供する全サービスにソーシャルの要素をもたらすプラットフォームである(YouTubeとGoogle+の連携や、グーグル検索におけるGoogle+のDirect Connectなど)。我々は、人々を一つの場所に集めそれをソーシャルネットワークと呼ぶのではなく、ソーシャルの信号をGoogleの全製品にわたって使えるようにしようとしている。

Google+ 'is not a social network'|Telegraph

すなわち、Google+を使ったあらゆるサービスの連携・統合であり、要するにグーグルは何をしているかというと、Google+をベースにしたグーグルのあらゆるサービスの全体最適化だと思いました。実はこれまでのグーグルの各サービスは、それぞれがバラバラにつくられ提供されていたと思います。これまでのグーグルの特徴をよく表していて、ほんと自由にやっている印象でした。そういう意味では各サービスごとの部分最適がされていて、Googleラボを覗けば新しいサービスが次々にベータリリースされていました。実はこのGoogleラボもGoogle+のリリース後にクローズされています。

More wood behind fewer arrows|Official Google Blog
やっぱり気になる「Google Labs」の閉鎖|ZDNet Japan

Google+への統合と合わせてと考えると、これまでのグーグルが発散型でサービス開発・リリースをしてきたのに対し、Google+のリリースを境に「選択と集中」に舵を切っているのです。

■Googleの方針転換でどう変わるのか

グーグルのこうした動きはとても興味深いものです。Googleが生まれ変わろうとしていると言っても過言ではないように感じます。とはいえ、現時点ではこの方針転換は始まったばかりで、Google+への統合と言ってもユーザーにとっての目に見える変化はGoogle+に簡単に共有できるような仕組みがあることや、デザインがGoogle+のように次々に変わっていることくらいです。

ただ、ユーザーの見えないところではおそらく確実に動き出しているのでしょう。例えばデザインの変更を見ても、ただ単に見た目だけをGoogle+にしただけでは当然ないでしょうし、その裏にある設計思想というか、どうすればGoogle+と連携し統合できるか、それはグーグルにとって、またユーザーにとってどういうメリットがあるのか、等々がGoogle+を軸にした横断的な検討・開発がされているのではないでしょうか。

グーグルというのは、図のような無料でサービスを提供する代わりに、膨大なユーザーデータを取得し、それをさらなるサービスの利便性向上や、ユーザーデータをグーグルの主要ビジネスモデルであるネット広告事業に活かしている。この集まってくる膨大なデータ活用がグーグルの本質的な部分であり、であればここ最近のGoogle+への統合もより一層のユーザーデータ取得のためだと思います。それがひいては広告事業での売上および利益増加につなげたいということ。



あるいは、もしかしたらネット広告事業への収益依存を変えていくのかもしれません。これはちょっと考えてみたのですが、まだ自分の中でどういう具体的な戦略が考えられるかが見えていなくて、広告収入ではなくユーザーから直接課金するのか、ユーザーは個人なのか企業なのか。課金モデルは具体的には何かなど、もう少しグーグルの動きを見ていけばわかってくるかもしれません。

いずれにせよ、方向転換をしつつあるグーグルは気になりますし、その中心に位置しているGoogle+がどうなっていくのかにも興味があります。


※参考情報

Google Music is open for business|Official Google Blog
More wood behind fewer arrows|Official Google Blog
Google+ 'is not a social network'|Telegraph
Google+ Pages: connect with all the things you care about|Official Google Blog
やっぱり気になる「Google Labs」の閉鎖|ZDNet Japan
Google Labsの閉鎖は、Googleによるイノベーションの歩みを止めるのか?|TechCrunch Japan


2011/11/06

失敗を評価する四つの視点

回復力~失敗からの復活 (講談社現代新書) 「回復力 失敗からの復活」(講談社現代新書)という本は、失敗学を提唱する畑村洋太郎氏の著書です。この本では、人は誰でも失敗をしてしまうこと、だからこそ大切なのはそこからどう失敗を捉え、考え、行動するかを中心に書かれています。

■失敗を評価する四つの視点

本書で印象的だったのは、著者が紹介する失敗を正しく評価するための4つの視点でした。1.物理的視点、2.経済的視点、3.社会的視点、4.倫理的視点。まずは以下で、それぞれの説明を引用します(「回復力 失敗からの復活」p.80-82)。なお、エントリータイトルは本書の目次からそのまま使っています。

1.物理的視点
失敗をまず物理的現象としてとらえる視点です。これは要するに、目の前でどのようなことが起こっているのかをありのままに見ることです。ものの見方は、その人の立場や関わり方などによって大きく左右されますが、そうした影響を上手に排除していかないと、目の前で起こっていることを正しく認識することはできません。

2.経済的視点
いわば損得勘定で失敗を見る視点です。社会のことはほぼすべて、経済的なメカニズムの中で動いています。(中略)失敗でも同じで必ず経済的な影響がついてまわります。そのことを考慮し、経済的な指標によって評価するのが経済的視点による失敗の評価です。

3.社会的視点
経済的視点よりさらに広範な見方です。一番目の物理的視点とは逆の視点とも言えますが、失敗の影響は経済的なもの以外にも広く及ぶので、これらをすべて見る視点が必要になります。これはいわば、その失敗と社会の関係を評価するためのものですが、具体的には「社会の中でその失敗がどう見られているか」とか「社会がその失敗にそう反応して動いているか」などを見ることををいいます。

4.倫理的視点
生身の人間の立場から失敗をみる視点です。これは人としてやらなければならないことがきちんとできているかどうかを判断するためのものです。(中略)この視点がないと、「こうあるべき」とか「こうなるはず」という形式的な評価に振り回されて、失敗の取り扱いを間違える危惧があります。

■四つの失敗評価視点を自分事化してみる

この4つの失敗評価視点はなるほどという感じです。ただ、表現や説明が一般的なものになっており、自分ごととして捉えるためにはもう少し落とし込んで理解したほうがいいように思いました。

実は以前にあるプロジェクトに参加していた時に、1つの失敗がプロジェクト全体に大きく影響を与えたことがありました。プロジェクト工程のクリティカルパスだったため、スケジュール全体の遅れ、リカバリーのための対応工数増加、販売への機会損失、顧客からの信頼・ブランドイメージ低下など、合計の損失額はプロジェクトへの投資と比較しても発生したダメージは小さくありませんでした。その時に学んだことや考えさせられたことも踏まえて、以下、4つの評価について私自身の解釈を書いておきます。(書いてみて思いましたが、どちらかと言うと仕事における失敗評価の内容になっています)

1.物理的視点
起こった失敗に対して、「事実」を正しくつかむことが失敗評価の第一歩ではないでしょうか。畑村氏が「目の前でどのようなことが起こっているのかをありのままに見ること」と言っているように、いかに客観的に何が起こったかを理解できるかが重要だと思います。この時に原因究明も行なうことになりますが、重要なのは原因究明と責任追及を分けることだと考えます。すなわち、ここで言う物理的視点では失敗という発生事象とその原因究明に注力し、責任の所在や追求は失敗評価が終わってからが望ましいと思います。原因究明と責任追及を同時にやってしまうと、責任を逃れたいというインセンティブから、正しく原因がわからないという事態になりかねないからです。

2.経済的視点
「損得勘定で失敗を見る視点」とありましたが、失敗による金銭面での影響や、あるいは時間のロスなど、失敗を数字で見る視点です。失敗をしてしまうと、やり直しのために余分な時間が必要になりますし、仕事であればそのための追加コストと時間が発生します。また、仕事と関係のないプライベートな失敗でも(例えば予定していた時間の電車に乗り遅れたなど)、直接お金への影響がない場合でも、少なくとも時間に影響してきます。起きてしまった失敗を評価する上で、影響や被害を数字で見る視点があれば、他者とも共有しやすいでしょう。「物理的視点」と同様に数字で評価することで、失敗を客観的に捉えることができます。

3.社会的視点
社会的視点とは、失敗を1つか2つ上の立場から評価することだと思いました。失敗をした・起こした時には、とかく視野が狭くなりがちです。失敗に注力し失敗のことを考える必要はあるのですが、視野が狭くなってしまうと二次災害の可能性もでてきます。よって、今の自分よりも1つ上の視点、例えば仕事であれば上司の立場では失敗はどう位置づけられるのか、あるいは○○課に所属していれば、その上の△△部には失敗がどう影響するのか、そこから少しずつ視野を広げていって、自分の会社やクライアント、その先にようやく社会に対してどう影響するかを考えるといいのではないでしょうか。失敗の当事者としてだけで捉えていると、必要以上に一大事だと感じることもありますが、1つ1つ視野を広げることで、失敗がそれぞれどう位置づけられるかが評価できます。

4.倫理的視点
1~3はいかに客観的に失敗を評価するかという視点でしたが、倫理的視点では、その失敗に対して「自分はどう考えるか」というものだと思います。失敗をした時に真っ先に頭に浮かんでくるのは、失敗に対しての後悔や惨めさ・恥ずかしさなどの感情だと思います。これは自分の経験からもそうです。ただ、失敗を評価する時に大切なのは、事象の確認、原因究明、そして何よりも、失敗を次への糧にすること。であれば、倫理的視点においては、自分の行動や意思決定に何か落ち度はなかったか、準備不足だった可能性、などなどを一度評価しておいたほうがいいと思います。よく失敗談が語られることがありますが、失敗について自分で考え、自らの言葉で評価できるかどうかが、失敗を次に活かすかそうではないかに大きく影響するように思います。

失敗というのはやっかいなものです。誰も失敗しようとは望んでいないのに、それでも私たちは失敗します。私自身もこれまで数多くの失敗があり学びもしましたが、だからと言って失敗はこれからもゼロにできるかというと、これからも失敗するのでしょう。人は誰でも失敗をします。その失敗を生かすも殺すも、失敗をどう評価し、次へのチャレンジにつなげられるかどうかだと思います。畑村氏が提案する失敗を評価する4つの視点は失敗が起こってからではなく、日頃から意識をしておきたいものです。



2011/11/03

TVチェックインサービスIntoNowがもたらす新しいTV視聴体験

ツイッターのタイムラインでは、TVの話題が流れていることがあります。その中にはまさに「今見ている番組」のツイートも見かけます。そんな今見ている番組をツイッターやフェイスブックに共有するためのサービスにIntoNowがあります。このIntoNowに今回新しい機能が追加されたのですが、その内容がちょっと興味深かったので、そのあたりを中心に書いています。

■IntoNowとは

IntoNowというのはiPhone/iPad・Android用アプリです。使い方は簡単で、テレビを見ている時にアプリ上のボタンを押すとアプリがその番組を自動認識します。あとはツイッターやフェイスブックで見ている番組を共有するだけです。(ちなみにIntoNowは今年4月にYahoo!に買収されています)

あいにくIntoNowは日本では使えないので(米国向けサービス)、YouTubeなどで動画を見るくらいしかできないのですが、動画を見る限り本当にボタンを押してから数秒で自動認識し、番組名が表示されています。これは百聞は一見にしかずなので、以下の動画を見るとイメージがつかみやすいです。

IntoNow from Yahoo! for iPad|YouTube

IntoNowがとてもユニークで、かつ個人的に興味深いと思っているのは、TV番組の音声だけで見ている番組を自動認識をする仕組みです。具体的には、アプリが見ている番組の音声を記録し、その音声情報と独自に構築している番組音声情報のデータベースと照合させます。そして、認識させた結果(見ている番組名)をアプリに表示させるのです。

IntoNowがすごいのは、このプロセスをわずか数秒でやることです。つまり、数秒以内にまさに今放送されている番組の音声情報をインデックス化したデータベース構築と、ユーザーのアプリから送られる音声情報をマッチングをしその結果を返すことの2つをしているのです。

■IntoNowに新しく追加されたわくわくする機能

IntoNowのアプリはこれまではスマートフォンだけだったのですが、今回新たにiPad用アプリがリリースされました。これだけ聞くと、スマートフォンでできたことがタブレットでもできるようになったと映りますが、実は今回のリリースではなかなかおもしろい機能が追加されているのです。

実は上の動画の後半でその紹介があるのですが、これまでは主に自動認識をさせるのが何の番組かだけだったのが、その番組に関連する情報までもわかるようになっています。例えば、プロ野球の試合を見ていてIntoNowで認識させると、試合のスコアや経緯の詳細、各選手の成績などの情報や、試合に関するツイート情報がアプリ上に表示されます。もちろん、これまでのスマホ用アプリでできた、ツイッターやフェイスブックへの共有も同じ画面からできます。あるいはここからは想像と期待も込めてですが、ドラマであれば登場している俳優のプロフィールであったり、もしかしたら着ている服やアクセサリーなども簡単に確認ができ、さらには気に入ればその場で買えるなんてこともできるようになるかもしれません。バラエティ番組で考えると、番組内で紹介されたお店、スイーツなどの商品、訪れたことのない名所など、関連する動画や説明などの情報が向こうからやってきてアプリ上に表示されるイメージです。

見ている番組が自動認識され、そして関連する情報までも提供される。この間にユーザーがすることはアプリ上のボタンをたった1回押すだけで、数秒後にはアプリ上に表示されるのです。グーグルでの検索や他の複数のアプリを使う必要などもなく。

IntoNowはTV番組に「チェックイン」するためのアプリです。これまでのチェックインをする目的は、はソーシャルメディアへの共有にあったのではと思いますが、今回のiPad用アプリのリリースで関連する情報を手に入れるためという新たな目的が加わったことになります。TVを見ながら、手元のiPadでボタンを押すだけで関連する情報が手に入り、それが数秒で自動的にできるというのは、今までにないTV視聴体験だと感じます。

■考えられる課題

そんなユーザー体験がIntoNowアプリでできるのはおもしろそうですが、課題もあると思います。大きくは2つで、1つ目がTV音声認識です。スマホやタブレットでTVの音を記録するということは、同時にTV以外の音も拾ってしまいます。家族の会話やペットの鳴き声、家のまわりの音も混じってくるケースも考えられます。その中で番組認識に必要な音だけをどれだけ正確に認識できるか。

2つ目の課題は、音声で番組を認識できたとして、その番組に関連する情報がどれだけ提供できるかだと思います。一口に関連する情報と言っても、ユーザーに必要な情報でなければ逆効果になってしまいます。さらに言えば、同じ関連情報でもユーザーによっては欲しかった内容であり、他のユーザーにとっては不要となることもあり得ます。アプリのボタンを押して関連情報も含めた結果を返すのは長くても10秒ちょっととのことで、これだけ短時間で実現するためには自動化されているはずで、いかにユーザーにとって目利きされた情報が提供できるか。これが2点目の課題になるのではないでしょうか。

■タブレットでIntoNowを使う価値

このように課題はありそうですが、それでも先のイメージ動画を見ると今の自分の環境ではできないテレビの見方ができ、日本でリリースされていないのが残念です。今回のiPadアプリのリリースにより関連情報の提供を開始するわけですが、これはタブレットの画面の大きさをうまく活用した事例とも言えそうです。同じことをiPhoneなどのスマートフォンでやる場合、画面の大きさが十分ではないので、画面をトントンして拡大させたり、スライドさせたりなど、拡大/縮小・移動を繰り返していると、テレビのほうに集中できないような気もします。だからiPadというタブレット用のアプリで実装されていることに価値があるんだと思います。

IntoNowの特徴はTVの音声だけで番組認識と関連情報の提供をする点にあると思いますが、これが実現できるのは高い音声認識技術と、放送されている番組をリアルタイムで独自に収集しデータベース化しているからです。特に番組音声のデータベース化は相当の投資が必要ではと思います。ましてやアメリカ以外の国でサービスを開始するためには、その国のTV番組をゼロから集めないといけません。そんなことを考えると、IntoNowが日本でもリリースされるのはなかなか難しいのかなと、ちょっと残念に思います。


※参考情報

IntoNow - Connect with your friends around the shows you love
IntoNow App Turns iPad into ‘Intelligent’ TV Companion | Gadget Lab | Wired.com
Yahoo Brings Intelligent Social TV App IntoNow To The iPad; Adds Content Feeds And More | TechCrunch
Share your TV habits with Yahoo's IntoNow app, now on the iPad | Digital Media - CNET News
リアルタイムウェブとチェックインの可能性を考える|思考の整理日記
IntoNow from Yahoo! for iPad|YouTube
IntoNow iPhone App Review - AppVee.com|YouTube


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