2012/12/30

「MAKERS」書評:Web世界で起こった革命がモノづくりでも起こる未来は明るいのか?

Web で起こったことがモノの世界でも起きる。それが21世紀の産業革命である。

こう主張するのは、かつてロングテールやフリーミアムの概念を提唱したクリス・アンダーソン氏です。「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる」という本の主題です。

■ Web の本質

そもそも、Web の世界で起こったこととは何だったのでしょうか。最近のエントリーでも触れたように、ウェブの本質は「個の情報発信」「双方向性(ネットワーク)」です。

重宝しているGunosyから考えるネットの本質と課題|思考の整理日記



ウェブ以前、あるいは普及前は情報発信をすること自体が今ほど手軽ではありませんでした。

それが、クラウドによるサーバーコスト低下、通信速度の向上、コンピューターやスマホ等の高性能かつ(一般ユーザーでも手に入る)安価なデバイスの普及で、ウェブが当たり前になり、個人レベルでの情報発信も容易になりました。これが1つ目の個の情報発信の背景です。

もう1つ、ウェブの世界で起こったことで大きかったのが、双方向性が実現したことです。つまりネットワークの構築です。

情報発信と合わせて捉えると、情報を発信して終わりではなく、双方向で情報のやり取りが可能になり、情報やアイデアはシェアされ、またたく間に拡散していきます。結果、ウェブ以降の世界は、情報量が爆発的に増えたのです。

■ Web で起こったことがモノの世界でも起きる

本書「MAKERS」の主題は、ウェブで起こったことがモノの世界でも起きることです。ここまで見た2点から考えると、モノの世界でも

  • 個人によるモノづくり
  • アイデア/設計/プロダクトの双方向性

が当てはまることになります。

個人によるモノづくり:本書では 3D プリンタ・3D スキャナ・レーザーカッター等のツールが紹介されています。従来は企業などの特定のプレイヤーでしか使われていなかったのが、今後はコストダウンやサイズのコンパクト化により個人レベルでも普及していきます。生産手段を個人が所有するようになる。プリンタで紙を印刷するようにモノをつくる、欲しいものは自分でつくってしまう、という状況です。

アイデア / 設計 / プロダクトの双方向性:ウェブの世界で情報がシェア・拡散していくように、モノの世界でもそれは起こります。すでにあるウェブに、モノの情報(アイデアや設計情報など)が載って双方向にやりとりされます。ウェブではソフトウェアのオープンソースの文化があるように、モノの設計情報やモノ自体がオープンソースとなって公開、シェアされます。

■ モノのロングテール、Web をベースにしたモノづくりのマネタイズ

個人によるモノづくりが普及していくと、ウェブの世界でも見られたロングテールがモノの世界でも起こるようになるとクリス・アンダーソンは言います。本書「MAKERS」から引用すると、
新しい時代とは大ヒット作がなくなる時代ではなく、大ヒット作による独占が終わる時代なのだ。

(中略)

ただ、「より多く」なるというだけなのだ。より多くの人が、より多くの場所で、より多くの小さなニッチに注目し、より多くのイノベーションを起こす。そんな新製品-目の肥えた消費者のための数千個単位で作られるニッチな商品-は、集合として工業経済を根本から変える。

(中略)

もの作りの世界を再形成することになるはずだ。

一方、著者の見方で興味深かったのが、新しいメーカーズ(もの作りプレイヤー)は、ウェブのフリーの恩恵をベースにモノでは収益を上げているという事例でした。

ウェブがなければ、新しいモノの発想やアイデアがあっても、それをつくって実現化させるのにハードルがありました。もしくは作ったとしても作っただけという「発明家」で終わっていました。しかし、今はウェブを活用すれば「起業家」になれると言います。

ウェブのフリーミアムを活用し、モノではマネタイズができるのでしょうか?

MAKERS を読んだ今の意見としては、モノの世界でもウェブ同様にマネタイズできて個人がモノ作りで食っていけるのは一握りではないかと思います。

■ モノづくり世界の「セミプロ vs プロ」

もう1つ思ったのが、モノの世界でもセミプロが増えっていった時に、セミプロ対プロはどんな競争の構図になるのかでした。

最近読んだ、こちらのエントリーで言われていることがモノの世界でも同じなのでは、という論点です。

[IT一般] セミプロに駆逐されるプロという構図|Nothing ventured, nothing gained.

この記事で書かれている内容は、

  • ネットの普及などにより、多くの人が情報発信するようになった。その中には今までは埋もれていた人(セミプロ)の知識や経験が発信され、支持されるようになる
  • しかし、アマチュアやセミプロの市場への参入というのは必ずしも良いことばかりでは無い気がする
  • なぜなら、その市場で今まで食べていたプロからするとコンテンツ流通価格の低下が進み、良質なコンテンツを提供するプロがいなくなるという事態に発展することも考えられるから

という懸念です。

もちろん、フェアな競争でプロとはいえセミプロに駆逐され、結果として市場が良質なものになるのであればよいと思います。しかし、プロが質の高いものを提供するモチベーションを阻害するような状況であれば、果たして大量のセミプロが存在する環境が本当に良いのでしょうか。考えさせられる問いです。

モノの世界でも、ウェブで起こったことが起こるとすると、セミプロ対プロの構図はできあがるはずです。もの作りのプロである企業が提案するプロダクトよりも、セミプロが自分でつくってしまうモノのほうが特定のニーズを持つ人には刺さることも十分考えられます。「そうそう、こんなのが欲しかった」と。

部分的には作り手と受け手のニーズが一致しウィンウィンですが、長期的に見れば大量のセミプロの市場参入によりプロが駆逐されるのでしょうか?それは本当に社会全体で見ると良いことなのでしょうか?まさにさきほどのウェブでの指摘と同じ構図です。

実際のところどうなるかはわからないし、そもそもまだ「モノの世界で大量のセミプロがマネタイズできていて市場参入している」というのも起こっていません。

★  ★  ★

「MAKERS」という本は読み応えのある内容でした。

クリスアンダーソンが主張する「モノの世界でもウェブで起こったことが起こる」は、そうだろうなと思います。その先の、本エントリーで考えたようなその先のロングテール現象、マネタイズ、セミプロ対プロ、など、色々な論点があり興味深い内容でした。


※参考情報
重宝しているGunosyから考えるネットの本質と課題|思考の整理日記
[IT一般] セミプロに駆逐されるプロという構図|Nothing ventured, nothing gained.
【レポート】「ブログやメルマガで食える人は本当に増えるのか?」、もしドラ作家・岩崎氏とブロガー小飼弾氏が一触即発の舌戦 (1) 川上氏「日本で唯一成功しているワールドワイドなプラットフォームは任天堂」|マイナビニュース


MAKERS―21世紀の産業革命が始まる
クリス・アンダーソン
NHK出版
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2012/12/29

2012年に読んだおすすめの本 (後編)




今年読んだ本で書いたエントリーから、特に印象に残っているものをご紹介します。本エントリーは2つに分けた後編です。こちらが前編です。

なお、仕事関係の書籍は対象外としています。


経営学 (小倉昌男)


小倉昌男 経営学

1975年当時、今では当たり前の家庭向け宅配サービスは民間業者はどこもやっていなく、「参入すれば絶対赤字になる」 と言われていました。

そんな常識に果敢に挑んだヤマト運輸。宅配便という民間業者が誰もやっていなかった家庭への宅配サービスへの挑戦です。新規事業開発、サービス開始、その後の拡大が詳しく書かれていたのが本書でした。

2012/12/27

2012年に読んだおすすめの本(前編)

数えてみると、今年は280冊くらいの本を読んでました。毎月コンスタントに20-25冊くらいは読むことができ、仕事にプライベートに色々あったわりにうまく時間が作れたかなと思っています。特に平日朝の出社前に、まとまった読書時間を確保したことがよかったです。仕事を片づけないといけない時は朝も本ではなく仕事だったりもするのですが。

今回のエントリーでは今年読んだ本について書いたエントリーから、特に印象に残っているものをご紹介します。自分が読んだ本をあらためて振り返る意味でも。なお、仕事関係の書籍は対象外としました(取り上げてもマニアックな内容になりそうなので)。





勝ち続ける意志力(梅原大吾)

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)著者はプロ格闘ゲーマーの梅原大悟氏。得意とするゲームは対戦型格闘ゲームで、ゲームセンターにあるストリートファイターとかです。

本書を一言でまとめると、「勝ち続ける意志力とは、勝つことではなく『自分が成長し続けること』を目的とすること」。

常に成長し続けたい、これって自分の価値観とドンピシャなんですよね。年齢を重ねると肉体的な衰えも起こると思いますが、経験や考え方、精神的なものも含め人としてトータルで昨日より今日、今日より明日で成長していたい、そんな価値観。

本書に出てくる印象的な内容としては、
  • 僕にとって生きることとは、チャレンジし続けること、成長し続けることだ。成長を諦めて惰性で過ごす姿は、生きているとはいえ生き生きしているとは言えない
  • 「結果を出す」ことと、「結果を出し続ける」ことは根本的に性質が異なる。勝つことに執着している人間は、勝ち続けることができない
  • 成長し続けるためにはどうすればよいか。それには変わり続けること、チャレンジし続けること。そして努力すること。自分にとって努力の適量を考える時に「その努力は10年続けられるものなのか?」と問う
勝ち続ける意志力:目的は「勝つこと」ではなく「成長し続けること」|思考の整理日記
勝ち続ける意志力(Amazonリンク)
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採用基準(伊賀泰代)

採用基準タイトルは(マッキンゼーの)採用基準ですが、書かれていることはリーダーシップについて。平易な言葉でわかりやすく、かつ本質的なことが書かれているのが本書。

リーダーがやるべきことは4つあるとし、①目標を掲げる、②先頭を走る、③決める、④伝える(コミュニケーション)。また、マッキンゼー流のリーダーシップの身につけるためには、
  • 結果や成果を出す。「成果は何か」「付加価値は何か」を意識する
  • 自分の意見・考え方を持つ(本書ではポジションを持つと表現)
  • 自分の仕事のリーダーは自分自身という当事者意識を持つ
  • 会議で積極的にホワイトボードを使うなどリードする
著者の主張で共感できるのが、1人1人にリーダーシップを持つことの重要性。リーダーは1人かもしれないけど、「リーダーシップ」を持つのは1人でなくてもよい、むしろ全員が何かしらのリーダーシップを持つことが大事。そういう組織のほうが強い。このへんも共感できる内容でした。

今年は自分のリーダーシップをいかに高めるかを考えた1年でした。これからもリーダーシップとは、を意識したいし、実際に行動に移したいと思っています(それと結果も)。

マッキンゼーの採用基準から考える「僕らのリーダーシップ」|思考の整理日記
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ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉(リンダ・グラットン)

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉この本が読者に投げかける問いは、2025年に私たちはどんなふうに働いているのか?というもの。本書がおもしろく、色々と自分事として考えさせられたのは、読んでいる中で随所に「自分の場合はどうなるのだろう?」と問いかけができる点でした。

本書から受けとったメッセージは、この先も漠然と生きるのではなく、よりよい未来を実現するために、私たち一人一人が未来について考え「じゃあどうすればよいか」と自分事化することだと理解しました。それが「主体的に築く未来」「自由で創造的な人生/社会」につながる。

主体的な行動をとることで、「今」をちょっと変え、その先に続く「未来」を変えていく。主体的に生きるために思うのは、当事者意識を持つこと・我が事化することであり、まずは自分のできることからやる。そしてコントロールできる範囲を広げていくこと。(コントロールできない)自分の身に何が起こるかよりも、焦点を当てるべきは起こったことに対して自分はどう解釈し反応するか、どう行動するか。これが大事と思っています。

もう1つ、本書に出てきた問いで考えさせられたのは、自分の専門性をいかに磨くかについての3つの質問でした。
  • その専門技能は価値を生み出せるのか?
  • その専門技能は希少性があるか?
  • その専門技能はまねされにくいか?
個人のキャリアにも当てはまるし、組織や企業の戦略やマーケティングにも通用する問い。自分の価値は何か?これからも問い続けたい質問です。

書籍「ワーク・シフト」まとめ:孤独と貧困から自由になる主体的な生き方|思考の整理日記
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自分でやったほうが早い病(小倉広)

自分でやった方が早い病 (星海社新書)本書が投げかける問題設定は、「この仕事は自分でやってしまったほうが早い」と思い、いつの間にか色々と自分が抱えている状況を病と捉えるべきだということ。この病の原因や治療法、そもそもなぜ克服しなければいけないのか、本当の仕事の任せ方や人の育て方も含め指南してくれる本です。

単にまわりに仕事を振るノウハウやテクニック的な話ではなく、なぜ「自分でやったほうが早い病」を克服しなければいけないのか。そのためにはどう考え方を変えていかなければならないのか。病を克服したあるべき姿(What)に対して、理由と(Why)マインドを変える処方箋(How)が書かれていたのが良かったです。

詳細は下記エントリーを参照いただく、もしくは本書を手に取っていただければと思いますが、この本を読んでからは本当に自分がやるべきこととそうではないことをより意識するようになりました。

誰も幸せにしない「自分がやった方が早い病」を克服する仕事の任せ方|思考の整理日記
自分でやった方が早い病(Amazonリンク)



ネット・バカ―インターネットがわたしたちの脳にしていること(ニコラス・G・カー)

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること2012年は特にプライベートでのネット利用時間を意図的に減らしてみた1年でした。それまでは朝起きてから夜寝るまでの間、ネット常時接続状態。リアルタイムウェブ中毒です。でもふと思ったのが、これって本当に自分がやるべきことなのか、本当に必要なことなのか、と。

そんな頃に読んだのが本書で、主題は、ネットを当たり前のように使うようなり人間の脳に変化が起こっている、具体的には脳が注意力散漫になることへの警鐘です。注意力散漫になるとは逆に言えば1つのことに長く集中できないという状態(頻繁にツイッターを見る、RSSをチェックする、メッセージ受信のアラートで作業を中断しメールを確認する)。この回数/頻度が多いほどそれ以外のことを長くやり続けることが困難になります。

とはいえ、じゃあネットを使わない生活に戻れるかというとそれは現実的ではない。結局のところ、ネット利用時間で無駄な内容(無目的なウェブ閲覧)をなくし、目的を持ってネットを使うようにしました。なんとなしにSNSやスマホを使わないようにすること。ネットの付き合いはこれからも試行錯誤が続きそうですが、本書を読んだのは問題意識を持つためのいいきっかけになりました。

リアルタイムウェブ中毒だった自分と今の自分|思考の整理日記
ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること(Amazonリンク)


★  ★  ★

他にもまだご紹介したい本について載せる予定が、長くなったので残りは別エントリーで更新します。今回は生き方とか考え方にフォーカスした本を中心に選びました。後半ではもう少しビジネスよりの、戦略とかビジネスモデルについて書かれた本を載せる予定です。

後編はこちら


2012/12/24

書籍 MEDIA MAKERS に書かれていた 「メディア変化がコンテンツをも変える」 論点がおもしろい




MEDIA MAKERS - 社会が動く 「影響力」 の正体 という本をご紹介します。

メディアに関する様々な論点が提示され、随所に示される豊富な具体例が書かれています。抽象的な内容で終わらず、読み応えのある本でした。


2012/12/22

重宝しているGunosyから考えるネットの本質と課題

情報収集のツールは色々とありますが、その中でこれはオススメというのがGunosy(グノシー)です。ネット上のニュースやブログ記事を対象としたキュレーションツールで、気づけばほぼ毎日使ってます。

■Gunosyとは

Gunosyの特徴は以下の3つと思っています。
  • シンプルな仕組み:アカウントをつくるとユーザーそれぞれに最適化されたニュース記事を配信してくれます。アカウント登録はTwitter、Facebook、はてなブックマークのどれかでログイン。ピックアップしてくれるニュース記事等の閲覧方法は、GunosyのWebページを開くか、1日1回のメール配信の設定の2通り。Webページとメールには記事タイトルと本文見出しがリンク付で表示され、毎日更新されます。
  • 毎日のメール配信:メール配信というプッシュ型の通知が意外に便利だったりします。いつの間にかGunosyからのメールチェックが毎日の日課になりました。大抵のメール配信は来ること自体が面倒に感じるんですが、Gunosyはそれが全然ないんですよね。メール配信の設定は2つあって、何時に送ってもらうかの配信時刻と1回あたり何個記事を表示させるかの記事数を決めることができます。今のところは、朝5時配信で、10個記事と設定しています。欲を言えば朝のメール配信は3時とか4時も可能にしてほしいところ。
  • とにかく精度が高い:キュレーションツールの肝はどれだけユーザーごとに最適化できるか。Gunosyの精度は良いです。メールで10個の記事が送られてきますが、ほぼ1つ以上は気になる記事がありクリックしています。だいたい10個中、1~3個くらい。RSSに比べると打率はかなり高いし、良好な精度だからこそ毎日のメール配信も嫌じゃない。

■なぜGunosyの精度は高いのか

Gunosyを使っていての感触として、最適記事を抽出するのに活用されているのは、
  • 人気記事や話題性のあるもの:はてブ、ツイート、いいね!がたくさん付いているものなど、よくクリックされている記事がピックアップされる傾向がある
  • Twitterなどのログインツール内情報の利用:ツイッターであればユーザーのツイート内容などユーザー情報を参考に最適記事を選んでいる
  • Gunosyでの行動履歴:どの記事をユーザーがクリックしたかの情報が蓄積される。ユーザーがGunosyを使えば使うほどユーザーに最適化された記事が配信される仕組み
で、特に2点目と3点目のバランスが良く、結果的に高い精度が実現できていると感じます。

Gunosyを開発・立ち上げた東大大学院生3人へのインタビュー記事を見ると、「他のキュレーションサービスのほとんどは自分のSNSタイムライン上で『つながりのある人の間で話題になっている情報』を配信するものが多いのに対し、Gunosyはユーザーのソーシャルグラフではなく、あくまで自分自身の過去のポストやソーシャル上のアクティビティを分析対象として記事を選ぶ仕組み」というようなことが書かれています。(参考:「精度高すぎ」と話題のニュースキュレーション『Gunosy』は、どんな設計思想で作られているのか?|エンジニアtype

自分のアクティビティが分析対象とは、Gunosy配信の中から気になる記事をクリックするほど精度が高くなっていくのがまさにそれです。クリックする=その話題に興味があると判断され、次回以降のニュース記事ピックアップに活かされる。使えば使うほどユーザーに最適化された仕組みになっていく。

以前のエントリーでキュレーションアプリのZiteについて取り上げましたが、Ziteも同じような感じです。こっちは配信記事が英語のサイトなので、英語の勉強にもなります。(参考:重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記

■フィルターバブルと転職サービスへの挑戦

上のインタビュー記事の中にあったことで注目したのが、Gunosyでは「フィルターバブル」についても考慮、課題設定としている点です。

フィルターバブルというのは、情報の偏りすぎることでユーザーに不利益をもたらすのではという懸念です。過度にキュレーションすることで、ユーザーの興味や嗜好に合致しない情報は全部排除されてしまいかねません。

でも、実は除かれた情報の中にはユーザーにとって有益な内容もあり得るわけで、あまりに選定しすぎるのは良くないのではという問題意識。イメージはユーザーが自分の興味関心だけの泡の中に閉じこもり、未知の外の世界を知る機会がなくなる感じでしょうか。(参考:情報社会の未来:私たちはネットの世界に知らない間に閉じこもってしまうのか|思考の整理日記

だから時々そのバブルの外にも注目すべきと思うのですが、Gunosyではこの問題にどう対処するかはこれからの課題。要はキュレーションするのをどこまで絞るといいかのバランスで、ここは個人的にも注目しておきたい取り組みです。

もう1つ、Gunosyのサービスはニュース記事配信以外にもGunosy Careerという転職サービスもあります(正確には13年春のローンチを目標)。ニュース記事抽出/配信のデータマイニングやレコメンド技術を転職サービスに応用しようというもの。Gunosyの特徴である登録・設定・使い勝手のシンプルさや、高いマッチング精度を転職市場でも実現できるか。期待したいです。

■ネットの本質から考える今の「ネット上のバランスの悪さ」

何かと何かをマッチングさせる領域は、まだまだこれから発展するのではと思っています。マッチングとは単純化すればAとBの異なる要素をつなげることです。Gunosyでは、A:ネット上の情報、B:ユーザーをマッチングさせる仕組みだし、転職サービスのGunosy CareerはA:企業とB:人をマッチングさせようというもの。人と人をつなげるサービスはFacebookやLinkedinとかLineがあったり、情報と人を結ぶのはGoogleの検索サービスもそうですよね。

これらのマッチングの仕組みで共通しているのはネット上でつながっていること。インターネットが当たり前のように普及したことでネット上の情報量が爆発的に増えたけど、一方で増加する情報に追い付けていないのはマッチングだと思っています。必要な情報や人を探したり、つながるための仕組み。確かに何か知りたい時はグーグルの検索があるし、フェイスブックやラインで気軽に人とコミュニケーションが取れますが、まだ十分ではないように思います。

何が言いたいかと言うと、ネットは人やモノの情報が文字通り網の目のように入り組んだ世界ですが、ネットを構成する一つ一つのつながりが少ないor最適化されていなく、増える情報量に対してマッチングが不十分ということです。インターネットの本質って、人やモノという「個の情報発信」と「双方向性」なのではと思います。前者の情報発信はネットで実現できているけど、後者の双方向性、つまりマッチングとかつながりはこれからの領域。今はまだ情報量とマッチングのバランスが悪い状態です。だからこそ、Gunosyのようなテクノロジーでこれを解決するプレイヤーには期待したいです。

人や企業にはいろんなニーズがあり、中身は千差万別です。それらをどうつなげるか。ネットが進化してもう1つ上のレベルになるための課題と思っています。


※参考情報

Gunosy(グノシー)
「精度高すぎ」と話題のニュースキュレーション『Gunosy』は、どんな設計思想で作られているのか?|エンジニアtype
Gunosyが会社になりました。|Gunosy blog
あなたに最適化したニュースを届ける「Gunosy」が会社化|Itmediaニュース
重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記
情報社会の未来:私たちはネットの世界に知らない間に閉じこもってしまうのか|思考の整理日記
Gunosy Career


2012/12/16

Apple地図問題の本質とスマホ位置情報の可能性




iOS 6 がリリースされて最も話題を集めたことはアップルの独自地図でした。パチンコガンダムという名前の駅、羽田空港が大王製紙に、東京都公文書館が海上にある、などなど。iOS 純正なのに、地図完成度の低さが話題になりました。

この問題について、Apple やスマートフォンの事情に詳しいジャーナリストの西田宗千佳氏と、Yahoo! JAPAN で「ルートラボ」など位置情報サービスの開発にあたる地図のスペシャリスト河合太郎氏の対談記事が示唆に富み、おもしろかったです。今回のエントリーではこの対談から、アップルの地図問題について考えてみます。

2012/12/15

人生はスーパーマリオ

孫泰蔵氏はかつて起業したばかりの頃、資金繰りや社内の人間関係に苦しみ人生のどん底にあったと言います。

そんな時に兄でもあるソフトバンク孫正義社長から「人生はスーパーマリオ」というこんな話を聞いたそうです。

泰蔵、辛いやろ。苦しかろう。ばってん、お前は今いい経験をしよるとぞ。その苦労や経験は必ず実となって今後お前の人生に絶対に役に立つ。

人生はスーパーマリオみたいなものだ。

最初に1面を始めたときを考えてみい。ザコキャラのノコノコにすぐやられるし、雲に乗ることもできん。だんだん習熟してくるとボスキャラのクッパにたどり着けるようになる。だけど、本当にクッパを倒せるまでに何度も死ぬことになる。そこで挫折しそうになるのをこらえて挑戦を続けて、やっとクッパをやっつけてピーチ姫を助けることができる。次の2面はまた一段と難しくなっとる。そこで何度も何度も失敗するけど、努力と訓練でスキルを上げてクリアしてゆく。

いまのお前は1面で苦労している段階や。それでいかにも俺に助けてもらいたそうな顔をしているけど、プライドがあって言い出せんのだろう。最初に言っとくけど、俺は助けてやらん。お前の今の困難はおれも経験したし、助けてやるのは簡単やぞ。だけど、ここで助けてたらお前のためにならん。

『そこの土管から3面にワープできるぞ』と教えるのは簡単やけど、いまのお前の実力では3面にいったら瞬殺やぞ。だから、1面、2面で『必ず経験しておくべき失敗をして』、そのうえでクリアしていって、やっと3面のボスキャラに対抗できる実力が身に付く。ここで俺がお前を助けて3面に行かせてやったら、そこで致命的な失敗をする。だから、ここは逃げちゃいかん。お前の勝負どころやぞ。

書籍「僕たちがスタートアップした理由」より引用

当時、「死んでお詫びしよう」とまで考えたこともある孫泰蔵氏は、マリオという身近なストーリーであったこともあり気持ちが明るくなり、これをきっかけに苦境を乗り越えたとのことでした。

■ これまでの「今」の積み重ねが今の自分をつくっている

人生はスーパーマリオ。なかなかおもしろい例えだと思いました。そして自分の人生観ともわりと近いと思っています。

自分自身の考え方の1つに、これまでの「今」の積み重ねが今の自分をつくっている。いかに毎日きちんと生活するか、というものがあります。

これは自分の中でベースになっているもの。過去の積み重ねが今で、今を積み重ねると未来になる。だから、いつ何時も「今」というこの瞬間をいかに生きるかが大事、という考え方です。

マリオの話で言うと、1-1という最初のステージから始まり、目の前の障害を1つ1つクリアしていきます。その積み重ねで、マリオ(orプレイヤー)は成長するし、ステージを進んでいくことができます。

その過程で時には失敗もします。敵キャラにやられたり、穴に落ちてしまったり。でもゲームでは復活できるのでその経験は次に活かすことができる。実社会においても今失敗したことを次にどう活かすかは、失敗を糧にできるかどうかの分かれ目です。

失敗は、ミスってしまったその時は何かとんでもないことをやってしまった感じが大きいものですが、後から振り返ってみると、実はそんなに大したことではなかったと思うことがあります。1年後とかに当時を振り返ると、失敗をしたことで自分の経験値が増えたと思うこともあるし、失敗もポジティブに捉えられることもあります。

これはマリオの話で言うと、「泰蔵、辛いやろ。苦しかろう。ばってん、お前は今いい経験をしよるとぞ。その苦労や経験は必ず実となって今後お前の人生に絶対に役に立つ」という状況に近いのではと思います。

■ 風向きは変えられないが、帆の向きは変えられる

マリオの話で思ったのは、人生においては変えられることと変えられないことがある、ということです。

当たり前と言えばそれまでなのですが、マリオで言うと、ゲーム内に用意された各ステージはプレイヤーに変えることはできません。どうしてもクリアできないからと言って、敵の出現やステージ構成をいじることはできません。

しかし、各ステージや敵に対してどう対処するかは変えることができます。敵キャラをやっつけるのか、それとも攻撃をよけて先に進むのか。あるいは土管や雲の上に行くことでショートカットをするのかです。

この話は以前のエントリーで書いた、You can't control the wind but you can adjust your sails.(風向きは変えられないが、帆の向きは変えられる)、とも通じるものです。

自分がコントロールできないことと(風の向き)できること(帆の向き)を区別すること、そして自分のコントロールできることに集中することの重要性を示した言葉です。(参考:新入社員に伝えたい自分の頭で考えるための3つのこと|思考の整理日記

もう少し踏み込んで考えると、刺激に対して自分の反応・感情の間には選択の自由がある、という考え方です。何かが自分に起こった時に、それに対する自分の感情反応は1つではないこと、つまり選べるのです。

例えば、発車間際の電車に乗ろうとして目の前でドアが閉まり乗り損ねたとします。

この出来事に対してどう思うか、1つの感情は「今日はついてないな」とマイナスの反応で考えてしまうことです。でも、「次の電車はすぐ来るし、発車間際の電車より空いているかもしれない。待ち時間も有効に使おう、乗り遅れても数分の差で大したことない」と考えてみるとどうでしょうか。

起こってしまったことに対してポジティブな反応になっています。刺激に対して自分の反応は選択できること、選ぶならプラスの反応をしてみるのです。

■ 結果とプロセスのバランス感

もう1つ、マリオの話であらためて思ったのは、人生では結果(目的)とプロセスのバランスです。

スーパーマリオではクッパにさらわれたピーチ姫を助け出すという目的があります。一方で、救出という結果を出すまでには様々な敵キャラに対応し、各ステージをクリアするというプロセスがあります。

ゲーム自体はステージの難易度が絶妙に上がり、このプロセスでのスリルというかおもしろさがあるからこそ、マリオというゲームにハマります。

いくらピーチ姫を助け出すことができたという結果がうれしくても、そこに行き着くプロセスが楽しくなければマリオの楽しさは半減してしまうでしょう。

普段の過ごし方でも結果とプロセスのバランスは意識したいものです。

結果だけを追い求めすぎず、プロセスだけでもなくです。考え方は上に書いた「今の積み重ねが未来をつくる」です。プロセスを積み重ねることで結果や成果を出すことを意識しておきたいと思っています。


※参考情報
スーパーマリオとバックパッカー|TAIZO SON'S BLOG
新入社員に伝えたい自分の頭で考えるための3つのこと|思考の整理日記


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2012/12/09

世界と日本の経済を俯瞰しておこう

ちょっと前に読んだ本が野口悠紀雄氏の「経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか」「大震災からの出発 ―ビジネスモデルの大転換は可能か」の2冊。世界と日本の経済の全体像が俯瞰されていて、「なるほど!」と思うことも多く目から鱗とはこのこと、という感じでした。

第二次世界大戦から現在の歴史的な時間の流れというタテの比較、日本だけでなく先進国・新興国のヨコの比較。ようやく自分の理解も追いついてきたのでエントリーしています(書きながら頭の整理ができることを期待しつつ)。

■戦後の世界経済を俯瞰する

書籍「経済危機のルーツ」で印象的だったのは、工業化のシフトと脱工業化の新しい流れでした。ここについては、ちきりん氏のブログがとてもよくまとまっているので引用させていただきます。以下の表は第二次世界大戦後~2010年代までにおける、日本やアメリカなどの主な国の経済状況です。マトリクスにすることで俯瞰できるとてもわかりやすい図です。


引用:戦後の世界経済が俯瞰できる本|Chikirinの日記

戦勝国である米国・英国、敗戦国であったドイツと日本、そして共産国となった中国、ロシア(ソビエト)について、それぞれの時期に何があったかをまとめたのがこの表、グレーはその国の調子がよくなかった時代(濃いほど悪い)、オレンジはその国が調子がよかった時代を示しています。(濃いほど勢いがある時代)
表の手書きの赤丸はちきりん氏によるもので、工業化による経済成長を順に起こっています。イギリス・アメリカで最初に発生し、ドイツ・日本、中国と、それぞれの国で、農業から工業という第一次産業から第二次産業にシフトが起こり、生産性が大幅に改善しました。青い丸は工業化による経済成長を終えた国が、2番目の経済成長のための「脱工業化」プロセスです。

■日本経済の繁栄と苦難

このへんからはもう1冊の「大震災からの出発」に書かれてる内容に入っていきます。

上の表で1970年代と80年代の日本のところは「繁栄の時代!」とあるように、Made in Japanの工業製品が世界を席巻しました。アメリカなどの製品に比べて品質が良く、かつ低コスト生産による価格優位性があったためです。つまり、アメリカvs日本において、日本製品が勝り日本は工業化による経済成長を実現したのです。

ところが90年代以降、世界経済の産業構造はある変化が起こります。中国などの新興国の工業化。「世界の工場」とも呼ばれた中国製品は品質もそこそこ&低価格を武器に、次第に日本製品が負けるようになっていきます。今度は日本vs新興国において日本は優位性が保てなくなっていく。国内ではバブル崩壊の混乱、国外では世界の産業構造変化の荒波に飲みこまれ、それまでの繁栄がうそのように後に「失われた20年」と言われる苦難の時代へ。

90年代以降は自動車や家電、電気製品の工業製品の相手は新興工業国のそれでした。競争の中で起こったことは、低価格に対抗するためのコストを下げることでしたが、次第にコスト減の内容はリストラや非正規雇用への転換に行き着き、雇用や所得の減少を引き起こします。

製造業での失われた雇用の受け皿になったのがサービス業でした。雇用吸収先が製造業よりも低い生産性のサービス業で雇用形態が非正規雇用であったために、ますますの所得減少が起こった、これが野口氏の説明でした。

ちょっと長くなったのでまとめると、
  • 90年代以降の新興国の工業化で、日本製品の競争相手は新興国製品に。価格などの比較劣位から日本は次第に負けていく
  • それでも新興国製品に対抗するために行き着いた施策がリストラや非正規雇用への転換。結果、雇用が失われたり所得が減少した
  • 失われた雇用の受け皿が製造業より低生産のサービス業であったため、さらに所得減少に

■変化しなかった日本、対応したアメリカ

新興国工業化というのは、世界経済の産業構造の大きな変化でした。野口氏が書いていた内容で印象的だったのが、世界の構造変化に対して日本の産業構造は「変化しなかった」、という指摘。

企業のビジネスモデルや産業構造が変わらず、工業製品の輸出という外需依存の状態を続けます。新興国との競争の仕方が対アメリカの時代の競争と基本的に同じでした。本来は、製造業に代わる新しい基幹産業を国内につくり、異なる競争軸を目指すべきだった。でも実際は、政府は円安政策や金融緩和もあり古い産業構造が生き残り続けることに。

ちなみに、新しい競争軸を生み出したのがアメリカやイギリスでした。それが上の表にある青丸で囲まれた「ITと金融で再生」。製造業よりも付加価値の高いサービス業を創出し、脱工業化を実現したのです。

■東日本大震災の影響

新興国工業化による国内製造業の環境悪化に拍車をかけたのが、3.11の東日本大震災でした。短期的には東北地方が絡むサプライチェーンが壊れたことで生産・供給不足を引き起こしましたが、より影響が大きいのは中長期的に発生する電力制約です。

電力制約は2つあって、使える電力量の不足と、電力使用コストが上がること。福島原発事故の影響で、節電による産業に使える電気が強制的に制限されること、原発停止に伴いその分を火力発電で代替し原料をスポットの高い価格で輸入したことによる電気料金の値上げ。

当初は東京エリアを中心に電力制約が起こるはずが、全国的に原発稼働停止の流れで日本中で電力制約が発生、これに対して企業は生産拠点の海外移転を加速。結果、ますますの製造業の雇用減少という構図です。

■日本は産業構造を変化させられるのか

野口氏は著書の中で、本来あるべき姿は比較優位に即した国際分業である、と述べています。製造業は新興国に任せ、先進国は高い技術や専門性に立脚した産業に特化すべきである。重要なのは製造業の海外移転を引き止めることではなく、製造業に代わる産業を国内に作ることである、と。

新たな産業は高生産性サービス業というのが野口氏の意見です。例として、情報通信、金融・保険、不動産、医療福祉、教育・学習支援、など。重要なのは、新産業の生産性が製造業よりも高いこと。そうでなければ雇用の移転が起こって維持されても、所得は下がり日本は貧しくなってしまう。

個人的な意見として、製造業をゼロにすることは現実的ではないし、いきなりの変化は無理でしょう。製造業でも「先進国は高い技術や専門性に立脚した産業に特化」の例として思いつくのはアップルです。

iPhoneの裏にはこんなことが書かれています。Designed by Apple in California. Assembled in China. デザインはカリフォルニアにあるアップル、製造は中国。これは比較優位に即した国際分業の好例だと思います(もちろん、中国での製造は様々なリスクもあるし、これからも比較優位となり続けるかはわかりませんが)。

★  ★  ★

もう1つ、あるべき姿で触れておくべきは政府の役割。期待したいのは「政府が掲げる成長戦略」ではなく、「政府は何もしないこと」。市場に任せ、規制緩和など競争の邪魔をしないこと。既得権や特定産業を優先する施策は競争をゆがめ、めぐりめぐって経済成長が阻害されてしまいます。


※参考情報
戦後の世界経済が俯瞰できる本|Chikirinの日記


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2012/12/08

マッキンゼーの採用基準から考える 「僕らのリーダーシップ」


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今年2012年は、自分のリーダーシップをいかに高めるかを考えた1年でした。特に仕事においてのテーマでした。

最近、興味深く読めたのは、採用基準 という本でした。



テーマはリーダーシップ


著者の伊賀康代氏はマッキンゼーの採用マネージャーを12年間務めた方です。2012年現在はキャリア形成コンサルタントをされています。

採用基準というタイトルは、マッキンゼーが何を基準に採用しているのか、どういう人材を求めているかからきています。マッキンゼーが採用するにあたり重視しているのはリーダーシップです。特に、将来グローバルリーダーとして活躍できる人です。

2012/12/01

日本のマーケティングリサーチを変える「黒船」を考える

今週、JMRX勉強会の「次世代マーケティングリサーチ討論会」に参加してきました。

討論会の見どころは、マーケティングリサーチ(MR)の世界を30年ものあいだ牽引してきたRay Poynter(レイ・ポインター)氏と、トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長で書籍「次世代マーケティングリサーチ」の著者でもある萩原雅之氏との対談でした。

この討論会のサブタイトルは「黒船到来、日本のマーケティングリサーチはどう変わる?」。討論会の中で萩原氏が日本のMRの歴史を紹介し、リサーチ業界では10年おきにイノベーションが起きており、今また新たなイノベーションが起こりつつあると言われたように、MRがどう変わっていくかは関心の高いテーマです。



■日本のマーケティングリサーチを変える「黒船」とは何か?

だから討論会に出席してあらためて考えさせられたのは、日本のMRに変革を迫る「黒船」とは何か、ということ。

黒船という言葉は、当時のアメリカが260年鎖国が続いた日本に開国を迫り将軍と武士を中心とした江戸の社会を根本的に変えた「外部要因」を指すと理解しています。

MRの世界でも大きな変化が起こりつつある/起こっていると感じますが、何が変化を引き起こしているのかという論点です。討論会も踏まえ考えてみた日本のMRを変える要因は以下の通り。
  • 海外の新しいMR手法:MROCsなどの新しいリサーチ手法が日本に入ってきて日本のMR業界を変える。今回の討論会を聞いて感じたのは日本のMROCsは海外に比べ普及していない/事例が少ない印象でしたが、果たして今後は変えるのか
  • クライアントの変化:マーケティングリサーチとは一言で言えばクライアントのマーケティングの課題解決のため。よって、クライアントのマーケが変わればMRも変わる。マーケの考え方やリサーチ予算の縮小、あるいはROIをこれまで以上に求められれば、MRも変わっていかざるを得ない
  • テクノロジーの進化:脳波や脳内の血液変化を使ったニューロサイエンスや表情認識などの調査対象者本人ですら自覚できないようなことも技術進歩でわかるようになる。Webアクセスログなどのこれまでは収集できなかったビッグデータ、ハドゥープやクラウドの普及。こうしたテクノロジーの進化でMRに活用できるデータ領域が増える。また、技術進歩によりコストが下がりビジネスで使用できるようになったことも大きい
  • メディア/ネット環境の多様化:スマホやタブレットの普及、SNSやブログ・口コミサイトなど多様な環境をMRに活用することで、新しいリサーチ手法が登場する。これまでのネット調査はPCが前提だったが、モバイルを使うことでよりリアルなデータ、クイックな調査ができるようになる。ソーシャルメディアを活用したリサーチは今後のトレンドの1つに
  • 消費者の変化:メディア/ネット環境の多様化により消費者の情報発信、消費者同士のコミュニケーションが変化してきている。MRでは消費者中心/消費者理解の考え方が主要なものになってきており、消費者の変化がMRの変える
  • 政府・国:先日、日経が報じた「民間の個人情報売買解禁へ 政府、新事業創出を後押し」。これまでは個人情報保護の対応がMRに制約を与えてきたが(住民台帳がつかえなくなったりなど)、異なるデータをユーザーIDで紐づけてシングルソース化し、統合データをプレイヤー間でやりとりができるようになると、リサーチデータの価値も変わる
  • 異業種の参入:クックパッド、TポイントのCCC、豊富なソーシャルグラフや属性データを持つSNS。これらがリサーチ業界に参集することは既存のMR会社にとっては脅威。またGoogle Consumer Surveyなどの異業種からのDIY型リサーチも価格破壊を起こす可能性も

■異業種参入の意味

この中からか黒船を1つ選ぶとすると、異業種の参入が最も大きな変化を引き起こす要因になると思っています。

例えばクックパッド。クックパッドには膨大なレシピ情報があり、そこには消費者がどんな食材を使い、どんな調理方法をしているのか、季節ごとの具材や食卓へのニーズ、使っている食器具など、あらゆる料理関連のデータが蓄積されています。

これらのデータを活用することで、マーケティングに利用できるだけではなく、プロモーションにも活かせる。実際に食品会社ではリサーチ会社ではなくクックパッドのデータを使うようになったと聞くこともあります。

それは従来のリサーチ会社にはないデータ、できないデータ活用、わかることの広さ・深さがクライアントのマーケティング課題ニーズをとらえたのだと思います。異業種の参入の影響は今はまだ表面化していないかもしれませんが、水面下では大きな変化を起こしていると感じます。

クライアントからすると、やりたいことは自分たちのマーケティング課題の解決であって、そのための手段は何でもよい。これまではリサーチならリサーチ会社、広告/プロモーションなら広告会社(広告代理店)と、わりとわかりやすい選択肢だったのが、異業種の参入でクライアントにとってはリサーチ=リサーチ会社に依頼、という構図は過去のものになっていくはず。より高い価値を提供するところに頼むのは当然です。MR会社もそれに対抗し生き残っていくためには変わらざるを得ないのではないでしょうか。

異業種のリサーチ業界参入で思うのは、本業は別にあって、リサーチはあくまで本業からの副産物を使った事業であるということ。

クックパッドならレシピサイトの会員課金/広告のビジネスモデルが収益の基盤になっている上に、レシピ情報から蓄積されるユーザーの料理に関するあらゆるデータを副次的に使うことでマーケティングリサーチ/プロモーションという新たなビジネスにもしているところが、既存のリサーチ会社にとっては脅威だと感じます。

リサーチ会社が本業でやっていても得られないデータが、異業種はメインビジネスの結果として自然と集まってきているデータ。アマゾンや楽天の購買情報、CCCのTポイントで統合されたユーザーデータ、SNSのソーシャルグラフや詳細な属性情報、口コミサイトの商品利用データ、等々。結果、従来MR会社にはない提供価値/サービスがあり、差別化要因になっています。

■マーケティングリサーチ会社の価値

MR会社の価値、存在意義は何か。これまではクライアントに変わって/一緒になってリサーチを活用したクライアントのマーケティング課題解決を図るものでした。課題解決がクライアント自身でできるならばリサーチ会社は不要になるはずで、MR会社に仕事が来るということはそこにMR会社の存在意義があった。しかし、MR会社ではないプレイヤーが同じような、あるいはMR提供価値を超えるような価値を与えてくれるとなると、MRの存在意義は薄れていってしまいます。

もう1つの流れとして、リサーチ業界に頼まなくてもDIYリサーチを使えばクライアントは自分たちでリサーチができてしまうこともあります。自分たちでやってしまうほうが早いし安いとなると、これもMR会社の価値はなくなっていく。

MR会社にしかできない価値は何か。MR手法の開発、データ収集、調査企画提案、調査コントロール、データハンドリング/分析、リサーチからのインサイト抽出、報告書の作成、クライアントとのコミュニケーション(時にはクライアント内の異なる部署の橋渡しになるなど)、外部者だからこその提言、ひいてはクライアントの課題解決。これらの価値を提供できる限りは、リサーチ会社の存在意義は引き続きあるだろうし、できなくなれば淘汰されていくのではないでしょうか。

歴史を振り返ると、江戸幕府に開国を迫ったのは黒船であった諸外国でしたが、実際に社会を変える行動を起こしたのは、坂本竜馬・西郷隆盛・大久保利通などの「日本人」でした。黒船という外部圧力がきっかけとなったものの、変化を起こしたのは内部から。

これは黒船到来としている日本のマーケティングリサーチにおいても同じことだと思います。異業種参入などの外部要因はあくまでトリガーであり、そこから実際にマーケティングリサーチを変えていくのはリサーチ会社であるし、そうあるべき。逆にそれができるところがこの先もクライアントに価値が提供できるんだと思います。


※参考情報

次世代マーケティングリサーチ討論会 ~黒船到来、日本のマーケティングリサーチはどう変わる?~
「これまでのマーケティングリサーチは使えなくなる」 レイ・ポインター氏が示すリサーチの将来像とは?|MarkeZine(マーケジン)
No Surveys in Twenty Years?|The Future Place Blog
No Surveys in 18 years!|Vision Critical
従来型サーベイは消えるのか -『No Surveys in 18 years!』より-|マーケターのメモ帳
民間の個人情報売買解禁へ 政府、新事業創出を後押し|日本経済新聞


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2012/11/25

スペイン旅行での発見

この1週間ほど休みを取りスペインに行ってきました。毎年一回は海外に旅行をしたいなと思っていて、旅行とはいえ外国に少しでも滞在すると普段の日常から離れられ、その国その国の考え方や習慣に触れると新しい発見がいくつもある。旅の魅力だと思っています。




■新しい発見と常識

新しい発見をするために旅行をする、と言ってもいいかもしれません。その国でしかできないことを体験しに行く。これが自分にとっての旅行の目的。だから、現地での生活に近いことができるのがおもしろいと思っています。お土産専門店での買いものよりも、地元のスーパーでミネラルウォーターや食べ物を買う、露店に近いようなそのへんの店で新聞とかお菓子を買ってみたり。今回のスペインだと店の人には英語が通じないことも普通で、片言のスペイン語とかジェスチャーで言いたいことを伝える。現地の人とのコミュニケーションも含めて体験する。これがおもしろいんですよね。

旅先での新しい発見は、自分には当たり前な常識をあらためて考えさせられることでもあります。日本での常識は外国では非常識だったりする。自分の「当たり前」が一度壊される感じです。

例えば、水。海外に行った時の飲み水の確保は普段以上に神経を使います。日本では当たり前のようにレストランや飲食店では水はお冷として無料で提供されます。外国ではこのサービスはなく、ソフトドリンクやアルコールなどと同じように、水は買うもの。スペインでも同様で、水の値段は普通のレストランでは2.5-3ユーロくらいで、ジュースやビールとかワインなどと同じだったりします。

考えてみると、水道水をそのまま飲める日本のような国は世界的にはレアです。確か、蛇口から直接水が飲める国は日本も含めて世界で11か国と本で読んだ記憶があります。私たちの水に対する感覚と、スペインでの水に対する感覚はあきらかに違う。水に対する日本の常識と外国での常識。この違いはそれだけ日本の水道水は品質が良く、水自体が日本には豊富にあるという再発見でもあるのです。


アルハンブラ宮殿。貴重な水だからこそ宮殿内で贅沢に使用することで、権力や富を誇示していた様子がわかる


バルセロナ近郊のタラゴナにある「ラスファレラス水道橋」。古代ローマ人により建てられたもの

外国に旅行して新しい発見をする、そこから自分にとって当たり前なこと・常識に気づく、自分や日本のことを客観視でき、相対化できる。外を知ることで内を知ることにつながる。自分の知識や常識はあくまでone of themでしかなく、世の中にはいろんな考え方・見方があり、どれが正しいとかでもない。多様性に触れることができるのが旅行の醍醐味だと思っています。


サグラダ・ファミリア。ガウディが残した傑作の1つ。右はサグラダ・ファミリアの中。外観も内観も圧倒されました

■旅と歴史

もう1つ、旅行の魅力はその国の歴史をよりリアルに感じられるところ。今回の旅行ではいくつかのキリスト教のカテドラル(大聖堂)に訪れましたが、スペインの大聖堂の特徴はキリスト教とイスラム教が共存しているところ。

これは歴史に大きく関係していて、スペインがあるイベリア半島は8世紀にアフリカからイスラム教徒の侵略が起こりました。スペインのほぼ全土まで広がります。その後、キリスト教によるレコンキスタという国土回復運動が起こり、1492年にイスラム最後の都市グラナダを奪還。今でもキリスト教にイスラム教の文化が残るのはこうした背景がありました。

レコンキスタ後、スペインは国内の動乱時代を終え大航海時代を迎えます。1492年というのは歴史に残る年で、コロンブスがアメリカ大陸を発見した年でもあります。レコンキスタを完了したことでようやく世界に目を向けることができた。当時のスペイン女王イサベルがコロンブスの計画を承認できたのも、国内を統一できたから。アメリカ大陸を発見し、スペインはその後、南米大陸へも進出していきます。インカ帝国などを滅ぼし、金銀などの貿易から莫大な資産を手に入れスペインは全盛時代を築きます。

今回のスペイン旅行で、このあたりの歴史に触れておもしろかったのは、去年行ったペルーとつながったことです。ペルーではマチュピチュなどのインカ文明遺産をいくつか見ましたが、インカ帝国を滅ぼしたスペインに今年行って、点と点がつながりました。歴史を大きな流れで捉えられることと、それを現地で当時の遺跡を直接歩きながら実感できるのも旅の魅力です。

去年行ったマチュピチュにて


2012/11/16

ヨーロッパ海外出張から学んだ「4つの視点」

先週は海外出張でヨーロッパに行っていました。目的の1つがESOMARというマーケティングリサーチ団体主催のカンファレンスに参加することでした。出席したのはこれ:ESOMAR 3D 2012

■講演後の違和感と悔しさ

カンファレンスの講演を聞き終えた時、ふと「あれ?」と思いました。違和感というか。スピーカーの講演発表後にはQ&Aの時間が少しあったのですが、発表を聞き終わった直後なのに質問が頭になかったんですよね。英語とは言えそれなりに聞けてたはずだし、メモも随所で取っていたのですが、なぜか質問が頭に思い浮かばない。

聞いていた内容はその時その時では頭に入れたはずが、終わった段階で話の全体構造がうまく体系立てて理解できていなかったことに気づきました。理解したようで、なんとなくでしか理解できていない状況。発表内容が頭の中にストックされず、フローとして流れていってしまった感じ。

なぜなのか。自分の結論は、講演内容を聞きすぎていたことでした。英語のリスニングに「集中しすぎてしまった」んです。英語を聞くこと自体にフォーカスしすぎてしまったために、表面的な理解にとどまってしまった。

発表内容の構成として、背景があり、課題の説明、目的、仮説や根拠などの詳細、結論、となっていました。ところが、聞いている最中には英語を聞くことばかりに集中してしまったため、前後関係や発表の構成を考えながら聞くことが不十分な状態でした。すごく受け身で英語をリスニングしている感じです。だから、講演発表を聞いている時、終わった直後で質問がすぐには考えられなかったんだと思います。表面的な理解しかできていなく、「問い」がつくれない。なんとも悔しい体験でした。

■体系立った理解のための「4つの視点」

日本語であれば発表内容を聞きながらも、自分の中で「なぜそう言えるのか?」「要するにどういうことか」なども同時に考えていたりします。聞く+解釈・考察を頭の中で同時にやっているので、それが理解にもつながるし、疑問から問いになり聞きたい質問も自分の中で持っておけます。それが英語だと聞くことに頭のリソースを使いすぎていた。聞くことばかりで自分なりの解釈が追い付いていなかったわけです。

じゃあどうすればよかったのか、講演をどういうふうに聞けばよかったのか。あらためて考えてみると、体系だった理解のためには4つの視点が必要だったと思っています。
  1. Whyで深掘り:聞いたことについて少し立ち止まって「なぜ?」と考えてみる。言われたことを鵜呑みにするのではなく、批判的に眺めてみることも時には必要だと思っています。「なぜそう言えるのか」を積極的に考えること。こうすることで能動的な聞き方になる。Why?⇒答え(仮説)⇒Why?⇒・・と下方向に深掘りをしていくイメージです。
  2. So whatで整理する:Whyが下方向ならSo whatは上方向に向けて考えていくことになります。「要するにどういうことか」「まとめるとどう表現できるか」と自分なりに解釈/理解を整理してみる。自分の言葉でまとめてみるのがポイントと思っています。WhyとSo whatは話を体系立てて理解するためにはとても重宝する問いかけ。
  3. 自分の知っていることと比較:ものごとは何かと比較をすることで相対化され、理解がより深まります。例えば、新しく知ったことについて過去の出来事と比べてみる、似たような経験や知識があるか思い出してみる、他業界の話を自分の業界/会社とどこが同じで何が違っているのかを考える。自分がすでに持っている知識や情報と新しく聞いた内容を比較することで、記憶にも定着しやすい。
  4. 自分の意見と根拠:Why、So what、既知情報との比較、あえて言えばこれだけでは単に聞いた内容を整理しただけです。本当に自分のものとして理解するためには、「じゃあ自分はどう思うのか」まで考えること。自分の意見とその根拠や理由も考える。講演で聞いたことにすごいと感じたら、それは何がどうすごいと思ったのかの理由を自分の中で持っておく。

4つの視点を図にするとこんな感じでしょうか。聞いたことに対して上下左右に考え、そこから自分の意見・根拠を出す。

今思い返しても、参加したESOMARのカンファレンスでは講演発表を聞いている時は4つの視点が不十分でした。その結果はすでに書いた通りです。今思い返しても悔しいな、と。

あらためて考えてみると、普段の仕事で海外のパートナー企業だったりベンダーとはテレカン(電話会議)などでは英語のやりとりもするのですが、ミーティングではすぐにその場で質問したり議論したりと、聞いてばかりではなくてこちらも発言します。「なぜなのか?」と確認したり、相手の言っていることを整理する、あるいはこれまでの自分の経験と比較する。クライアントとのやりとりでは英語を聞いていると同時にこうしたこともやっていました。それに比べると、ESOMARの講演では聴きすぎてしまった。英語のリスニング自体が目的化してしまった。本来は英語は手段であり、講演内容を体系立てて理解するためのツールのはず。

今回取り上げた4つの視点は、講演だけではなくて普段の会議とかでもその場の議論やミーティング内容を自分なりに理解するのに役立つと思っています。よくやるのは、4つの視点を意識しながらノートにメモを書く。こうすると頭の中で会議で発言もしやすくなるし、内容の理解も深まります。おすすめですので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。


※参考情報
ESOMAR 3D DIGITAL DIMENSIONS 2012 (ONLINE + SOCIAL MEDIA + MOBILE) RESEARCH

2012/11/10

Suica が実現した 「未来の当たり前」 というイノベーション




イノベーションとは何でしょうか?


イノベーションは未来の当たり前をつくること


現在はない 「未来の当たり前」 をつくることです。現時点やその時にはないものでも、イノベーションを起こす人には見えている 「未来」 や 「あるべき姿」 で、かつ人々はまだ気づいていないことを実現することです。

2012年現在、過去10年程度で人々の当たり前になった1つは、IC 乗車カードのスイカがあります。首都圏の朝の通勤時間帯では、ほぼ 100% に近い人が IC カードのスイカもしくはパスモを使って改札機を通っています。

ピッ、ピッ、と通勤客が滞りなく改札機を通過する当たり前になった通勤ラッシュの風景です。しかし、10~15年前は磁気式の定期券を、改札機に入れることが普通でした。


Suica はどのように開発されたのか


15年前にはなかったスイカは、その後に未来の当たり前になりました。

スイカはどのように開発されたのでしょうか。今回のエントリーでは、Suica が世界を変える - JR 東日本が起こす生活革命 という本から、スイカの開発秘話をご紹介します。

2012/11/03

ロジカルシンキングを鍛える一石二鳥のメール術


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相手に何かを伝える場合、当たり前ですが重要なのは伝えたいことを相手にどれだけ理解してもらえるかでしょう。


相手に理解してもらうために


特に仕事では、自分の考えや提案を同僚や上司にまずは理解してもらえるかどうかです。理解してもらって、ようやくその考えが妥当なのか、提案方針で進めるかどうかの判断ができます。

相手に理解してもらうというのは2つあります。正確な理解と、いかに早く理解してもらえるかです。そのためには伝える内容が論理的かどうかが大切なポイントです。ロジカルシンキングができているかどうかです。


ロジカルシンキングとは


では、ロジカルシンキングとは何でしょうか。一言で表現すると、ピラミッドをつくることです。この場合のピラミッドは二次元で、縦と横が構成要素です。

  • 縦:例えば結論と根拠。A である、なぜなら B だからという関係
  • 横:根拠が複数ある場合に、根拠 1、根拠 2、根拠 3 、… と並ぶ

図にすると以下のイメージです。




どんなピラミッドをつくるか、ピラミッドの縦と横をきっちりとつくれるかです。これがロジカルシンキングに求められ、論理的な考え方や文章はきれいなピラミッドができています。


論理的かどうかを判断するのは受け手である


では、ロジカルシンキングから構成されたものが論理的かどうかは、どのように決まるのでしょうか。

先に結論を書くと、論理的かどうかを判断するのは受け手です。いくら自分が論理的と思っていても、相手にとってそうでなければ、それは論理的ではないのです。


ここから言えるのは、伝える内容や伝え方は相手次第で変わるということです。

背景や状況を共有できていない相手であれば、細かいピラミッドで説明する必要があります。前提や知識レベルが同じであれば、粗いピラミッドでも十分伝わります。

大切なのは、相手を誰に設定するか、その相手への理解度です。


相手が論理的だと思わない2つのパターン


自分には論理的につながっていたとしても、相手にとって論理的ではないパターンは2つです。

  • 本当にそうなのか
  • 本当にそれだけなのか

1つ目の 「本当にそうなのか」 は、縦の論理が相手には伝わっていない状態です。2つ目の 「本当にそれだけなのか」 は、横の論理が伝わっていません。

伝わっていない、というのは2つあります。1つは自分には当たり前のことなので省略しているケース、もう1つは自分でもしっかり考えていなくて抜けているケースです。


ロジカルシンキングを鍛えるメールの工夫


ではどうすればよいのでしょうか。

受け手である相手のことを徹底的に考えるしかないようでしょう。相手の立場で考えること、相手の置かれている状況や立場はどうか、背景や知識などの情報レベルは同じかです。

自分がその人だったらこれをどう思うかです。相手視点という意識を持って考えるだけでも違ってくるでしょう。

身近なトレーニング方法は、仕事で出すメールです。メールは日常的に使うツールですが、論理的思考を鍛えるチャンスです。

メールを書く時にピラミッドを意識する、相手の視点で考える、書いたメールを読み返すなどの工夫で、相手に伝わるメールになり、自分のロジカルシンキングも鍛えられます。

以下は、メールを書く時にロジカルシンキングを意識できるポイントです。


メールを出す目的は明確か?

意外に見落としがちなのですが、そもそもなぜメールを出すのかという目的を明確にするのが1つ目のステップ。

単に報告等の情報共有だけのためなのか、わからないことを聞く質問のため、相談したいのか、何かを依頼するメールなのか。こちらの意図に対して相手に何を望むのかも大事。読むだけでよいのか、返答が欲しいのか、それとも依頼したアクションを起こしてほしいのか。メール出す目的は、こちらの意図 × 相手の行動の2つで考えるとよい。


メール内容をピラミッドで考える

メールの構成は、一番上に最も伝えたいキーとなるメッセージ、その下に根拠や依頼したいことの具体的な内容が続く。キーメッセージと根拠という縦の論理と、複数の根拠が漏れなく並んでいるという横の論理。

メールを書く前に頭の中でピラミッドを組み立ててみるだけでも、書きあがるメール内容は洗練され、わかりやすいメールになる。


相手視点で件名を書く

相手の立場に立ったメールをつくるために、工夫できることは色々ある。メールの受け手側にとってはメールを受信したら何をするかというと、送信者と件名を見て、そのメールを読むべきかどうか、読む場合は今すぐか・後でいいのかを判断する。

ピラミッドで考えた一番上にあるキーメッセージの要約が望ましい。相手に何をしてほしいかがわかる件名がよい。共有なのか、依頼なのか、相談なのかが件名からわかること。パッと見た時の件名のわかりやすさも大事。


相手視点でメールを書く

メールで目的がはっきり書かれ、ピラミッドがもとになった文章構成や件名になっていること。

受け手側が何をいつまでにしなければいけないのかも書いておく。依頼する場合は今週中に結果を報告してほしい、自分の質問に対して明日までに回答が欲しいなど。受け手側の 具体的なアクションが書かれていると、読む側にこちらが伝えたいことが理解してもらいやすくなる。


以上のことを意識して実践してみるだけでも、メールも見違えるような上達が期待できます。自分のロジカルシンキングが鍛えられるだけではなく、仕事もより円滑に進むようにもなる一石二鳥です。メールの書き方を工夫してみて損はありません。



まとめ


今回のエントリー内容で伝えたかったことをまとめておきます。

  • 自分が伝えたいことを相手に理解してもらうためには、ロジカルシンキングが重要。ロジカルシンキングとはピラミッドで縦と横の論理構成ができているか
  • 論理的か否かは相手が判断することである
  • 日々のメールはロジカルシンキングを鍛える良いツール。相手視点でいかにメールを書けるかで、ロジカルシンキングが上達するだけではなく、仕事も円滑に進むように


最後に


関連本を2冊です。ロジカルシンキングについて実践法がわかりやすく書かれています。




この本のもとになっているのが、ロジカルシンキングで世界的なベストセラーであるこちらです。



2012/10/27

KOMTRAX:コマツ建機の美しいビジネスモデル




なぜ、あの会社は儲かるのか? - ビジネスモデル編 という本で取り上げられていたビジネスモデルの1つに、小松製作所の KOMTRAX (コムトラックス) がありました。



小松製作所


小松製作所は日本の世界に誇る建設機械・重機械メーカーで。 Wikipedia を見ると、建設機械の日本でのシェアは1位、世界で2位です。日本以外にも南北アメリカ、ヨーロッパ、CIS、中近東、アフリカ、東南アジア、オセアニア、中国にグループ企業を展開しています。TOPIX Core30 銘柄の一社に選ばれています。

紹介されていたコマツのビジネスモデルは、KOMTRAX という IT サービスを中心にしたものです。そこには、建機というモノの販売からもう一歩踏み込んだ秀逸なビジネスモデルがありました。


良いビジネスモデルの条件


ビジネスモデルが成り立つ条件として、以下の2つが重要だと考えています。

  • エンドユーザーや顧客に既存のモデルよりもより高い価値 / 低いコストが提供される
  • ビジネスモデルの関係プレイヤー (ステークホルダー) 全員に Win-Win が成立する

今回のエントリーでは、冒頭で書いたビジネスモデルが成立する2つの要素について、コムトラックスを例にして考えてみます。

2012/10/20

裸踊りと桃太郎から考えるリーダーシップ論


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最近リーダーについて考える機会があったのですが、あらためて思ったのは 「リーダーとは結果論」 だということです。

リーダーは英語では leader と書きます。何かをリードする、誰かをリードするという意味です。リーダーする人とリードされる人はセットです。リーダーが成立するのは、リーダーについていく人がいる必要があります。


1人のバカをリーダーへと変えるのは最初のフォロワーである


リーダーとフォロワーの関係を的確に説明するプレゼンがあります。

TED の 「How to start a movement (社会運動はどうやって起こすか) 」 です。実際にプレゼンの様子を見てもらうとわかりやすいです。3分ほどのプレゼンでリーダーとフォロワーについて紹介されています。

2012/10/13

沈黙を破り、今すべてを語る:本田圭佑への独占インタビューがおもしろい


引用:SOCCER KING


サッカー日本代表 (2012年現在) の本田圭祐選手へのインタビュー記事をご紹介します。

『沈黙を破り、今すべてを語る』 本田圭佑 独占2万字インタビュー全公開|SOCCER KING (2012年10月11日)

2万字インタビューとあるように掲載量は多いのですが、読んでいて長いとは感じなく、読み応えのあるインタビュー記事でした。


「問い」 がインタビューをおもしろくする


インタビューは、本田選手の具体的なプレーの話から始まります。

テーマは、ボールをもらう前の動きの質です。ボールを持っていない時に、いかに相手選手のマークをかわしてフリーになるかです。本田選手のプレーの以前と現在との変化に迫ります。

本田選手がどう考え、何を目指しているかがよくわかる内容でした。インタビュアーの質問が非常によかったからです。

2012/10/06

ぼんやり頭にさようなら。脳が冴える日常生活のちょっとした工夫


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最近なんとなく頭がぼんやりする。集中力が続かない。記憶力が衰えたような気がする。そんなふうに感じることはないでしょうか。

このような状況を改善するには一時的な脳トレではなく、日常生活の少しの工夫次第で、脳に良い習慣を身につけることがよい。脳が冴える15の習慣 - 記憶・集中・思考力を高める という本には、そのための具体的な方法が書かれています。



誰にでも簡単にできる方法が多く載っています。実際に自分の生活に取り入れてみると確かに効果が実感できました。

今回のエントリーでは、脳が冴える日常生活の工夫をご紹介します。

2012/09/29

Google が 「自動運転車は5年以内に一般の人が利用できる」 との見通し (2012年9月) 。自動運転車は普及するのか?


グーグルの自動運転車


グーグルは2012年9月25日、研究を進めている自動運転車について 「5年以内に一般の人が利用できるようになる」 との見通しを示しました。


グーグルの見通し


以下は、日経産業新聞の記事からの引用です (2012年9月27日) 。

グーグルは2010年に自動走行車の開発に着手。これまでに30万マイル (約48万キロメートル) の走行試験を実施した。

この計画を担当するブリン氏は 「視覚障害者など自動車の恩恵に浴していない人の生活を改善できる」 と指摘。交通事故の減少や渋滞緩和にも効果があると説明した。

実用化に関連しては 「センサーの性能向上などが課題となる」 という。自社製造ではなく、自動車メーカーへの技術供与を検討している。

2012/09/22

アイデアは組み合わせ:モノから情報への価値転換時代だからこそ覚えておきたい原理



社会構造を大きな視点で見ると、いくつかの変換点を経て今に至っています。梅棹忠夫は著書「情報の文明学」において、人類の産業の展開史は三段階を経たとしています。①農業の時代、②工業の時代、③精神産業の時代(以下、情報産業とします)。

梅棹の説明でおもしろいのは、農業・工業・情報産業を、生物学の比喩(メタファー)を使っている点にあります。受精卵が生まれ人間の身体が形成されるまでの、内胚葉、中胚葉、外胚葉の3つの段階です。ちなみに、内胚葉からは胃・腸などの消化器官、中胚葉からは骨・筋肉・血管、外胚葉からは脳神経や感覚器官がつくられます。社会構造変化の過程を、農業=内胚葉、工業=中胚葉、情報産業=外肺葉、となぞらえている。ここが梅棹の説明のユニークな点であり、おもしろいと思わせるアイデアの組み合わせなのです。

■S字波モデルから考える社会構造の変化

では、農業⇒工業⇒情報産業の移り変わりはどのように進んできた/進んでいるのか。これを考えるのに参考になるのが、書籍「情報社会のいま ―あたらしい智民たちへ」に出てくるS字波モデル。本書では、近代化の過程を軍事社会⇒産業社会⇒情報社会の3つに分けていますが、興味深いのはそれぞれが重なり合いながら変化してきている点です。

引用:書籍「情報社会のいま ―あたらしい智民たちへ」(公文俊平 NTT出版)

この図で太字で示されている近代化過程を分解すると、小さなS字波である軍事化・産業化・情報化になるのですが、現在図の縦の点線が示す通り、軍事化の定着、産業化の成熟、情報化の出現という3つの局面が同時に起こっています。注目しておきたいのは、特に産業化(工業化)がある程度発展しきって成熟に向かっていることと、情報産業化社会が今後急激に発展していくこと。

■モノから情報へ

工業化⇒情報化はどのような社会変化をもたらすのか。この点を詳しく書いているのが最近読んだ「モノから情報へ (-価値大転換社会の到来)」という本でした。本書の主張は「情報の価値がこれまでのモノに取って代わって、大きな役割を果たし始めている」というもの。

情報の価値の特徴に、モノの価値と比べて相対性が強いことを挙げています。情報の価値は受け手や、受け手自身の環境など、同じ情報でもTPOによりその価値が大きく変わります。例えば、ニュース記事もその問題/領域に関心がある人とそうでない人とでは、重要度が異なります。あるいは、リリース直後に読むのと、後から時間が経ってから知るのとでは情報の鮮度が違います。つまり同じ情報でも価値が異なる。もちろん、モノの価値も使い手によって変わりますが、より価値の相対性が強いのは情報のほうでしょう。

もう1つ、本書の指摘でおもしろかったのは、「情報の価値は組み合わせによって生まれる、組み合わせは相手を選ばない」、というもの。モノとモノの組み合わせパターンに比べて、情報や知識の組み合わせは多く、組み合わせから生まれる価値をいかにうまく活用するかという指摘です。その意味では、よく言われるクリエイティブ力とは、「それぞれの情報要素の関係を見極め、その関係性から新たな価値を生み出す/組み合わせる力」と言えます。

■アイデアは組み合わせである

情報の価値は組み合わせから生まれるというのは、名著「アイデアのつくり方」に書かれていることと同じです。本書では、アイデアをつくるための原理を、①アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない、②既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きい、としています。要するに、アイデアは組み合わせであり、そのためには関連性を見分ける才能が重要ということ。

そして、アイデアを生み出し具体化する方法が以下のプロセス。
  1. 資料・データ集め
  2. 資料・データの咀嚼
  3. 問題を放棄し、心の外にほうり出してしまう
  4. アイデアの誕生
  5. アイデアを具体化し、展開させる
興味深いのは3⇒4の部分で、情報を頭で理解・咀嚼した後はいったん置いておくこと。その間にアイデアが組み合わさり、誕生するのを待つ。「アイデアのつくり方」の原著の初版は1940年に出ていて、今なお読み継がれることは考えさせられるものです。

アイデアは組み合わせであり、いかに組み合わせるかがアイデアの価値の肝になります。そこで自分自身が意識しているのが、異なるものの共通点や類似点を考えてみることだったりします。以前のエントリーでAmazonとサザエさんに出てくる三河屋のサブちゃんの共通点を書いたことがあります。(参考:「仕組みの問題」で考えるAmazonと三河屋のサブちゃんの共通点|思考の整理日記

アマゾンに限らずレコメンドはいかに各ユーザーのことを知ることが重要になります。まずは性別や年齢などの基本属性情報、何が好きかなどの趣味・嗜好の特徴、そしてどんな行動をする人なのかの行動履歴。これらの情報をいかに集め、そこから何をレコメンドするか。

この点をアナログでうまくやっているのがサブちゃん。サブちゃんの登場シーンで思い浮かぶのは、「そろそろお醤油が切れかける頃だと思って持ってきました」と台所の勝手口に現れる。サザエさんも「ちょうど良かった。お醤油が切れかけてたの。 お味噌もいつものを持ってきてくれるかしら」と、追加で味噌も注文する。これはサブちゃんがサザエさん一家を知り尽くしているからこそなのです。

何も言わなくとも一回に頼む醤油の量も、どんな醤油が好みなのか、そろそろ醤油が切れかけていることも把握している。だから、頼まれなくても勝手口に現れて、「そろそろお醤油が切れかける頃だと思って持ってきました」というタイミングの絶妙さです。購買情報やユーザーの嗜好を知り尽くすことでタイミングよくレコメンドし、+1の商品も買ってもらう。アマゾンと三河屋のサブちゃんの共通する仕組みです。

表面的な違いではなく、仕組みに着目してみる。構造が見えてきたら、他の分野で当てはまらないかを考えてみる。これこそが、アイデアの組み合わせ具体例の1つだと思っています。冒頭で書いた梅棹が、農業⇒工業⇒情報産業の構造と、内胚葉⇒中胚葉⇒外胚葉の受精卵の成長過程の仕組みを組み合わせたように。


※参考情報

複雑な社会変化をシンプルに見せるとっておきのS字波モデル|思考の整理日記
梅棹忠夫とドラッカーから考える情報革命のこれから|思考の整理日記
アイデアをつくるシンプルな原理と方法|思考の整理日記
「仕組みの問題」で考えるAmazonと三河屋のサブちゃんの共通点|思考の整理日記


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2012/09/15

「仕組み」 から考える雑誌のビジネスモデルいろいろ




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