2012/12/30

「MAKERS」書評:Web世界で起こった革命がモノづくりでも起こる未来は明るいのか?

Web で起こったことがモノの世界でも起きる。それが21世紀の産業革命である。

こう主張するのは、かつてロングテールやフリーミアムの概念を提唱したクリス・アンダーソン氏です。「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる」という本の主題です。

■ Web の本質

そもそも、Web の世界で起こったこととは何だったのでしょうか。最近のエントリーでも触れたように、ウェブの本質は「個の情報発信」「双方向性(ネットワーク)」です。

重宝しているGunosyから考えるネットの本質と課題|思考の整理日記



ウェブ以前、あるいは普及前は情報発信をすること自体が今ほど手軽ではありませんでした。

それが、クラウドによるサーバーコスト低下、通信速度の向上、コンピューターやスマホ等の高性能かつ(一般ユーザーでも手に入る)安価なデバイスの普及で、ウェブが当たり前になり、個人レベルでの情報発信も容易になりました。これが1つ目の個の情報発信の背景です。

もう1つ、ウェブの世界で起こったことで大きかったのが、双方向性が実現したことです。つまりネットワークの構築です。

情報発信と合わせて捉えると、情報を発信して終わりではなく、双方向で情報のやり取りが可能になり、情報やアイデアはシェアされ、またたく間に拡散していきます。結果、ウェブ以降の世界は、情報量が爆発的に増えたのです。

■ Web で起こったことがモノの世界でも起きる

本書「MAKERS」の主題は、ウェブで起こったことがモノの世界でも起きることです。ここまで見た2点から考えると、モノの世界でも

  • 個人によるモノづくり
  • アイデア/設計/プロダクトの双方向性

が当てはまることになります。

個人によるモノづくり:本書では 3D プリンタ・3D スキャナ・レーザーカッター等のツールが紹介されています。従来は企業などの特定のプレイヤーでしか使われていなかったのが、今後はコストダウンやサイズのコンパクト化により個人レベルでも普及していきます。生産手段を個人が所有するようになる。プリンタで紙を印刷するようにモノをつくる、欲しいものは自分でつくってしまう、という状況です。

アイデア / 設計 / プロダクトの双方向性:ウェブの世界で情報がシェア・拡散していくように、モノの世界でもそれは起こります。すでにあるウェブに、モノの情報(アイデアや設計情報など)が載って双方向にやりとりされます。ウェブではソフトウェアのオープンソースの文化があるように、モノの設計情報やモノ自体がオープンソースとなって公開、シェアされます。

■ モノのロングテール、Web をベースにしたモノづくりのマネタイズ

個人によるモノづくりが普及していくと、ウェブの世界でも見られたロングテールがモノの世界でも起こるようになるとクリス・アンダーソンは言います。本書「MAKERS」から引用すると、
新しい時代とは大ヒット作がなくなる時代ではなく、大ヒット作による独占が終わる時代なのだ。

(中略)

ただ、「より多く」なるというだけなのだ。より多くの人が、より多くの場所で、より多くの小さなニッチに注目し、より多くのイノベーションを起こす。そんな新製品-目の肥えた消費者のための数千個単位で作られるニッチな商品-は、集合として工業経済を根本から変える。

(中略)

もの作りの世界を再形成することになるはずだ。

一方、著者の見方で興味深かったのが、新しいメーカーズ(もの作りプレイヤー)は、ウェブのフリーの恩恵をベースにモノでは収益を上げているという事例でした。

ウェブがなければ、新しいモノの発想やアイデアがあっても、それをつくって実現化させるのにハードルがありました。もしくは作ったとしても作っただけという「発明家」で終わっていました。しかし、今はウェブを活用すれば「起業家」になれると言います。

ウェブのフリーミアムを活用し、モノではマネタイズができるのでしょうか?

MAKERS を読んだ今の意見としては、モノの世界でもウェブ同様にマネタイズできて個人がモノ作りで食っていけるのは一握りではないかと思います。

■ モノづくり世界の「セミプロ vs プロ」

もう1つ思ったのが、モノの世界でもセミプロが増えっていった時に、セミプロ対プロはどんな競争の構図になるのかでした。

最近読んだ、こちらのエントリーで言われていることがモノの世界でも同じなのでは、という論点です。

[IT一般] セミプロに駆逐されるプロという構図|Nothing ventured, nothing gained.

この記事で書かれている内容は、

  • ネットの普及などにより、多くの人が情報発信するようになった。その中には今までは埋もれていた人(セミプロ)の知識や経験が発信され、支持されるようになる
  • しかし、アマチュアやセミプロの市場への参入というのは必ずしも良いことばかりでは無い気がする
  • なぜなら、その市場で今まで食べていたプロからするとコンテンツ流通価格の低下が進み、良質なコンテンツを提供するプロがいなくなるという事態に発展することも考えられるから

という懸念です。

もちろん、フェアな競争でプロとはいえセミプロに駆逐され、結果として市場が良質なものになるのであればよいと思います。しかし、プロが質の高いものを提供するモチベーションを阻害するような状況であれば、果たして大量のセミプロが存在する環境が本当に良いのでしょうか。考えさせられる問いです。

モノの世界でも、ウェブで起こったことが起こるとすると、セミプロ対プロの構図はできあがるはずです。もの作りのプロである企業が提案するプロダクトよりも、セミプロが自分でつくってしまうモノのほうが特定のニーズを持つ人には刺さることも十分考えられます。「そうそう、こんなのが欲しかった」と。

部分的には作り手と受け手のニーズが一致しウィンウィンですが、長期的に見れば大量のセミプロの市場参入によりプロが駆逐されるのでしょうか?それは本当に社会全体で見ると良いことなのでしょうか?まさにさきほどのウェブでの指摘と同じ構図です。

実際のところどうなるかはわからないし、そもそもまだ「モノの世界で大量のセミプロがマネタイズできていて市場参入している」というのも起こっていません。

★  ★  ★

「MAKERS」という本は読み応えのある内容でした。

クリスアンダーソンが主張する「モノの世界でもウェブで起こったことが起こる」は、そうだろうなと思います。その先の、本エントリーで考えたようなその先のロングテール現象、マネタイズ、セミプロ対プロ、など、色々な論点があり興味深い内容でした。


※参考情報
重宝しているGunosyから考えるネットの本質と課題|思考の整理日記
[IT一般] セミプロに駆逐されるプロという構図|Nothing ventured, nothing gained.
【レポート】「ブログやメルマガで食える人は本当に増えるのか?」、もしドラ作家・岩崎氏とブロガー小飼弾氏が一触即発の舌戦 (1) 川上氏「日本で唯一成功しているワールドワイドなプラットフォームは任天堂」|マイナビニュース


MAKERS―21世紀の産業革命が始まる
クリス・アンダーソン
NHK出版
売り上げランキング: 76

Kindle版はこちら


2012/12/29

2012年に読んだおすすめの本(後編)

今年読んだ本で書いたエントリーから、特に印象に残っているものをご紹介します。本エントリーは2つに分けた後編です。前編はこちら

なお、仕事関係の書籍は対象外としています(取り上げてもマニアックな内容になりそうなので)。





経営学(小倉昌男)

小倉昌男 経営学1975年当時、今では当たり前の家庭向け宅配サービスは民間業者はどこもやっていなく、「参入すれば絶対赤字になる」と言われていました。そんな常識に果敢に挑んだヤマト運輸。宅配便という民間業者が誰もやっていなかった家庭への宅配サービスへの挑戦。このあたりの新規事業開発、サービスイン、その後の拡大が詳しく書かれていたのが本書でした。

ヤマトの新規事業参入、ビジネスモデル構築の話は「なるほど」と思わせるものばかりで、ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件に出てくるSPとOCの戦略フレームと併せて考えると、おもしろいの一言。

このフレームはStrategic PositioningとOrganization Capabilityの略で簡単に言うと、SPが他社と違ったことを「する」に対して、OCは他社と違ったものを「持つ」こと。ヤマトの戦略は、
  • SP:差別化は翌日配達という利便性・定額というわかりやすい価格体系。翌日配達について、競合だった当時の郵便小包みは到着が早くて3日後、普通は4,5日かかることも珍しくなかった
  • OC:全国規模の配達ネットワークの構築と、セールスドライバー制度や独自トラック開発、情報システム導入。これにより、荷物の密度を濃くし、取り扱い荷物の総量を増やす。トラック一台あたりの集配個数をいかに増やすかで、配達ネットワークは宅配事業を行なう上での肝になるもの
ヤマトの宅配便参入を主導した故・小倉で印象的だったのは、常識に対して「本当にそうだろうか?」と問い、自分の見た/感じたものから自分の頭で考え続けたこと。徹底的に考え抜き、個人からの荷物の宅配は絶対儲かるとの確信に至ったのでした。

「絶対赤字」の非常識に挑んだクロネコヤマトの競争戦略|思考の整理日記
小倉昌男 経営学(Amazonリンク)



なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編(山田英夫)

なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編様々な企業のビジネスモデルが紹介されていて、他の類似本と違うのは単にビジネスモデルを紹介しているのではなく、ビジネスモデルの事例紹介⇒仕組みの一般化⇒他業界にある同様のモデル紹介と、具体化⇒抽象化⇒具体化、で説明されているところ。

同じビジネスモデルでも違う業界に適用されているのを考えるのは頭の体操にもなるし、モデルの本質的な仕組みがわかり示唆に富むものばかり。そのビジネスモデルを自分の業界や、自分の仕事に活かせないかと考えてみる。そんな良書。

あらためて考えさせられたのは、ビジネスモデルが成り立つ条件。以下の2つが重要と理解しています。
  • エンドユーザーや顧客に既存のモデルよりもより高い価値/低いコストが提供される
  • ビジネスモデルの関係プレイヤー(ステークホルダー)全員にWin-Winが成立する
下記の書評エントリーで取り上げたのは、小松製作所のビジネスモデルを構成するKOMTRAX(コムトラックス)というITサービス。上記の2点が満たされているし、すごいと思ったのはコムトラックスで収集する各建機データをうまく活用し、ユーザーや販売代理店への提供価値を上げ、自社の利益向上にもつなげている点。データ収集の仕組み構築と、データをうまく活用し価値を生み出す。コマツのビジネスモデルの中心的な存在になっている。ここにコムトラックスの本質があるように思いました。

KOMTRAX:コマツ建機の美しいビジネスモデル|思考の整理日記
なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編(Amazonリンク)



失敗の本質―日本軍の組織論的研究(野中郁次郎 他)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)すでに何回か読んでいましたが再読。言わずと知れた名著です。この本がおもしろいのは、6つの戦い(ノモンハン事件、ミッドウェー海戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦)から日本軍と米軍の戦略・組織特性比較を明らかにするだけではなく、そこからさらに突っ込んでなぜ日本軍は失敗したのか、そして現在にも活かせる失敗の教訓を残している点にあります。

本書で指摘されているのは、「日本軍の最大の失敗の本質は、特定の戦略原型に徹底的に適応しすぎて学習棄却ができず自己革新能力を失ってしまった」。

特定の戦略原型に徹底的に適応しすぎたとは「ガラパゴス化」であり、学習棄却ができず自己革新能力を失ってしまったとは「イノベーションを起こせなかった」ということ。「成功は失敗の素」となってしまったのです。

背景には環境の変化を認識できず、また気づいていても自らが変わることができなかったことがあります。環境は常に変わっていくもの。「強い者ではなく、環境に適応した者が生き残る」。これは進化論を唱えたダーウィンの言葉です。

こうして見ると当時の日本軍の失敗は、現在の起業や組織にもそのまま当てはまります。個人レベルでも自己革新をすること、時には自己否定もいとわないで変わっていくことも必要だなと。

書籍「失敗の本質」に見るガラパゴス化とイノベーション|思考の整理日記
失敗の本質―日本軍の組織論的研究(Amazonリンク)



MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体(田端信太郎)

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体メディアに関するいろんな論点が提示され、それでいて随所に示される豊富な具体例(抽象的な内容で終わらない)。読み応えのある本でした。

印象的だったのは、メディアのポジションを考えるための3つの軸:①ストックorフロー、②参加性or権威性、③リニアorノンリニア。源氏物語からニコ動までと、あらゆるコンテンツを分類する3次元マトリックスです。詳細はこちら

もう1つ興味深かったのが下記エントリーでも書いた、メディアの変化がコンテンツにも影響を及ぼし変化させるという考察。これ、メディアという「手段」が「目的」であるコンテンツを変化させるとも言えて、本書では音楽レコード⇒CDというアナログからデジタルの変化で起こったことの例に取り上げ、考えさせられるものでした。

書籍「MEDIA MAKERS」に書かれていた「メディア変化がコンテンツをも変える」論点がおもしろい|思考の整理日記
MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体(Amazonリンク)
Kindle版はこちら



経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか(野口悠紀雄)
大震災からの出発 ―ビジネスモデルの大転換は可能か(野口悠紀雄)


経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか大震災からの出発 ―ビジネスモデルの大転換は可能か2冊をまとめて読んだのがよかったです。世界と日本の経済の全体像が俯瞰されていて、「なるほど」と思うことも多く目から鱗とはこのこと、という感じ。第二次世界大戦から現在の歴史的な時間の流れというタテの比較、日本だけでなく先進国・新興国のヨコの比較により、色々と勉強になりました。

世界経済については、英米⇒独日⇒中露と工業化がシフトしていくとともに、工業化を経てそれぞれの国は繁栄の時代を迎えます。一方で、英米は工業化で一旦は高い成長を実現するも、その後の新興国との競争に敗れていく。次の方向性は脱工業化プロセスでした。

日本経済の失われた20年については、
  • 90年代以降の中国などの新興国の工業化で日本製品の競争相手は新興国製品になり、価格などの比較劣位から日本は次第に負けていく
  • それでも新興国製品に対抗するために行き着いた施策がリストラや非正規雇用への転換。結果、雇用が失われたり所得が減少した
  • 失われた雇用の受け皿が製造業より低生産のサービス業であったため、さらに所得減少に
ここに追い打ちをかけたのが3.11。短期的には東北地方が絡むサプライチェーンが壊れたことで生産・供給不足を引き起こしましたが、より影響が大きいのは中長期的に発生する電力制約。

新たな産業は高生産性サービス業というのが著者の野口氏の意見。例として、情報通信、金融・保険、不動産、医療福祉、教育・学習支援、など。重要なのは、新産業の生産性が製造業よりも高いこと。そうでなければ雇用の移転が起こって維持されても、所得は下がり日本は貧しくなってしまいます。

世界と日本の経済を俯瞰しておこう|思考の整理日記
経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか(Amazonリンク)
Kindle版はこちら
大震災からの出発 ―ビジネスモデルの大転換は可能か(Amazonリンク)
Kindle版はこちら



そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生(横石知二)

そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生ある田舎町で興した「葉っぱビジネス」について、仕掛け人である横石知二氏が書かれた本。少子高齢化や過疎が進み一時はどん底であった愛媛県上勝町。本書ではそこからいかに葉っぱビジネスが始まり、ビジネスとなり、町を再生していったかが紹介されています。

葉っぱビジネスを立ち上げるストーリーから、印象的だったのは、
  • 全てはビジョンから
  • マーケティング:強みを活かして差異化し価値を届ける
  • 当事者意識が人々と町を変える
詳細は下記エントリーに譲りますが、本書はリーダーシップという視点でも読むとおもしろく、リーダーとは未来のあるべき姿を実現するため、ビジョンを語り、まわりの人を導いていく。そして実現する様が描かれています。

自分たちの強みを活かして差別化し、お客さんに価値・ベネフィットを実感してもらう、というマーケの観点でも考えさせられます。葉っぱビジネスで強みとなったのが、実際の季節よりも先に花をほころばせるとか、狙った時期に小ぶりな葉っぱを採取するなどのおばあちゃんのノウハウ。おばあちゃんたちの根気強さ、丁寧さ、仕事への意欲もまた、上勝町の葉っぱビジネスに大きく貢献しました。

葉っぱビジネス立上げ当初は賛同者がほとんどいなかったのが、次第に「住民みんなが町のことを自分たちの問題として考えられるようなった」とは著者の言葉。当事者意識を持ったおばあちゃん・おじいちゃんが本当に町を変えてったのです。

あるおばあちゃんが横石さんにこんなことを言ったそうです。「世界中探したって、こんな楽しい仕事はないでよ」。葉っぱを売るという生きがいがあり、自分の取った葉っぱがお店でどう使われているかという自分がやっていることの価値を実感している。女の人もお年寄りもみんなが働いている社会。「ここに生まれて、本当によかった」と笑顔で言うおばあちゃん。自分が住んでいる町を誇りに思っている。実現されたのは横石さんのビジョンそのままでした。

おばあちゃんをとびっきりの笑顔にする「葉っぱビジネス」から学んだ3つのこと|思考の整理日記
そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生(Amazonリンク)


2012/12/27

2012年に読んだおすすめの本(前編)

数えてみると、今年は280冊くらいの本を読んでました。毎月コンスタントに20-25冊くらいは読むことができ、仕事にプライベートに色々あったわりにうまく時間が作れたかなと思っています。特に平日朝の出社前に、まとまった読書時間を確保したことがよかったです。仕事を片づけないといけない時は朝も本ではなく仕事だったりもするのですが。

今回のエントリーでは今年読んだ本について書いたエントリーから、特に印象に残っているものをご紹介します。自分が読んだ本をあらためて振り返る意味でも。なお、仕事関係の書籍は対象外としました(取り上げてもマニアックな内容になりそうなので)。





勝ち続ける意志力(梅原大吾)

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)著者はプロ格闘ゲーマーの梅原大悟氏。得意とするゲームは対戦型格闘ゲームで、ゲームセンターにあるストリートファイターとかです。

本書を一言でまとめると、「勝ち続ける意志力とは、勝つことではなく『自分が成長し続けること』を目的とすること」。

常に成長し続けたい、これって自分の価値観とドンピシャなんですよね。年齢を重ねると肉体的な衰えも起こると思いますが、経験や考え方、精神的なものも含め人としてトータルで昨日より今日、今日より明日で成長していたい、そんな価値観。

本書に出てくる印象的な内容としては、
  • 僕にとって生きることとは、チャレンジし続けること、成長し続けることだ。成長を諦めて惰性で過ごす姿は、生きているとはいえ生き生きしているとは言えない
  • 「結果を出す」ことと、「結果を出し続ける」ことは根本的に性質が異なる。勝つことに執着している人間は、勝ち続けることができない
  • 成長し続けるためにはどうすればよいか。それには変わり続けること、チャレンジし続けること。そして努力すること。自分にとって努力の適量を考える時に「その努力は10年続けられるものなのか?」と問う
勝ち続ける意志力:目的は「勝つこと」ではなく「成長し続けること」|思考の整理日記
勝ち続ける意志力(Amazonリンク)
Kindle版はこちら



採用基準(伊賀泰代)

採用基準タイトルは(マッキンゼーの)採用基準ですが、書かれていることはリーダーシップについて。平易な言葉でわかりやすく、かつ本質的なことが書かれているのが本書。

リーダーがやるべきことは4つあるとし、①目標を掲げる、②先頭を走る、③決める、④伝える(コミュニケーション)。また、マッキンゼー流のリーダーシップの身につけるためには、
  • 結果や成果を出す。「成果は何か」「付加価値は何か」を意識する
  • 自分の意見・考え方を持つ(本書ではポジションを持つと表現)
  • 自分の仕事のリーダーは自分自身という当事者意識を持つ
  • 会議で積極的にホワイトボードを使うなどリードする
著者の主張で共感できるのが、1人1人にリーダーシップを持つことの重要性。リーダーは1人かもしれないけど、「リーダーシップ」を持つのは1人でなくてもよい、むしろ全員が何かしらのリーダーシップを持つことが大事。そういう組織のほうが強い。このへんも共感できる内容でした。

今年は自分のリーダーシップをいかに高めるかを考えた1年でした。これからもリーダーシップとは、を意識したいし、実際に行動に移したいと思っています(それと結果も)。

マッキンゼーの採用基準から考える「僕らのリーダーシップ」|思考の整理日記
採用基準(Amazonリンク)



ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉(リンダ・グラットン)

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉この本が読者に投げかける問いは、2025年に私たちはどんなふうに働いているのか?というもの。本書がおもしろく、色々と自分事として考えさせられたのは、読んでいる中で随所に「自分の場合はどうなるのだろう?」と問いかけができる点でした。

本書から受けとったメッセージは、この先も漠然と生きるのではなく、よりよい未来を実現するために、私たち一人一人が未来について考え「じゃあどうすればよいか」と自分事化することだと理解しました。それが「主体的に築く未来」「自由で創造的な人生/社会」につながる。

主体的な行動をとることで、「今」をちょっと変え、その先に続く「未来」を変えていく。主体的に生きるために思うのは、当事者意識を持つこと・我が事化することであり、まずは自分のできることからやる。そしてコントロールできる範囲を広げていくこと。(コントロールできない)自分の身に何が起こるかよりも、焦点を当てるべきは起こったことに対して自分はどう解釈し反応するか、どう行動するか。これが大事と思っています。

もう1つ、本書に出てきた問いで考えさせられたのは、自分の専門性をいかに磨くかについての3つの質問でした。
  • その専門技能は価値を生み出せるのか?
  • その専門技能は希少性があるか?
  • その専門技能はまねされにくいか?
個人のキャリアにも当てはまるし、組織や企業の戦略やマーケティングにも通用する問い。自分の価値は何か?これからも問い続けたい質問です。

書籍「ワーク・シフト」まとめ:孤独と貧困から自由になる主体的な生き方|思考の整理日記
ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉(Amazonリンク)
Kindle版はこちら



自分でやったほうが早い病(小倉広)

自分でやった方が早い病 (星海社新書)本書が投げかける問題設定は、「この仕事は自分でやってしまったほうが早い」と思い、いつの間にか色々と自分が抱えている状況を病と捉えるべきだということ。この病の原因や治療法、そもそもなぜ克服しなければいけないのか、本当の仕事の任せ方や人の育て方も含め指南してくれる本です。

単にまわりに仕事を振るノウハウやテクニック的な話ではなく、なぜ「自分でやったほうが早い病」を克服しなければいけないのか。そのためにはどう考え方を変えていかなければならないのか。病を克服したあるべき姿(What)に対して、理由と(Why)マインドを変える処方箋(How)が書かれていたのが良かったです。

詳細は下記エントリーを参照いただく、もしくは本書を手に取っていただければと思いますが、この本を読んでからは本当に自分がやるべきこととそうではないことをより意識するようになりました。

誰も幸せにしない「自分がやった方が早い病」を克服する仕事の任せ方|思考の整理日記
自分でやった方が早い病(Amazonリンク)



ネット・バカ―インターネットがわたしたちの脳にしていること(ニコラス・G・カー)

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること2012年は特にプライベートでのネット利用時間を意図的に減らしてみた1年でした。それまでは朝起きてから夜寝るまでの間、ネット常時接続状態。リアルタイムウェブ中毒です。でもふと思ったのが、これって本当に自分がやるべきことなのか、本当に必要なことなのか、と。

そんな頃に読んだのが本書で、主題は、ネットを当たり前のように使うようなり人間の脳に変化が起こっている、具体的には脳が注意力散漫になることへの警鐘です。注意力散漫になるとは逆に言えば1つのことに長く集中できないという状態(頻繁にツイッターを見る、RSSをチェックする、メッセージ受信のアラートで作業を中断しメールを確認する)。この回数/頻度が多いほどそれ以外のことを長くやり続けることが困難になります。

とはいえ、じゃあネットを使わない生活に戻れるかというとそれは現実的ではない。結局のところ、ネット利用時間で無駄な内容(無目的なウェブ閲覧)をなくし、目的を持ってネットを使うようにしました。なんとなしにSNSやスマホを使わないようにすること。ネットの付き合いはこれからも試行錯誤が続きそうですが、本書を読んだのは問題意識を持つためのいいきっかけになりました。

リアルタイムウェブ中毒だった自分と今の自分|思考の整理日記
ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること(Amazonリンク)


★  ★  ★

他にもまだご紹介したい本について載せる予定が、長くなったので残りは別エントリーで更新します。今回は生き方とか考え方にフォーカスした本を中心に選びました。後半ではもう少しビジネスよりの、戦略とかビジネスモデルについて書かれた本を載せる予定です。

後編はこちら


2012/12/24

書籍「MEDIA MAKERS」に書かれていた「メディア変化がコンテンツをも変える」論点がおもしろい

話題の本『MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体』(Kindle版はこちら)を読みました。メディアに関するいろんな論点が提示され、それでいて随所に示される豊富な具体例(抽象的な内容で終わらない)。読み応えのある本でした。

■CDの普及で音楽も変わった

書かれている内容の中でも印象に残っている話として、音楽でのメディア変化であるアナログ盤(レコード)⇒CDに関する考察がおもしろかったです。

まずはその前に、そもそもメディアとは何か?ですが、簡単に言うと
  • メディアとは、発信者の思いが受信者に伝達する媒体・媒質となるもの
  • 送り手側の何かを伝えたいという思いがあり、それを受け手に伝達する「媒体・媒質」


本書で強調されていることとして、「メディアは必ず受け手を必要とする」「コミュニケーションにおいては受け手こそが王様」であり、単に情報を発信して終わり、ではないことを意味しています。

こう考えると、音楽におけるレコードやCDもメディアに属することが理解できます。曲をつくりファンやリスナーに自分たちの音楽を届けたいという思いがあり、送り手と受け手の間に存在する音楽というコンテンツを載せた媒体がCDやレコードなのです。

レコード盤からCDへの変化が何をもたらしたかに話を戻します。CDの登場・普及で起こったことは、曲の構成やタイトルの変化でした。曲の構成変化とは、サビ頭の曲の増加。CD以前の定番パターンは、Aメロ⇒Bメロ⇒サビだったのが、サビ⇒Aメロ⇒Bメロ⇒サビ。曲の最初にいきなりサビという一番盛り上がる部分をもってくる構成です。

なぜか。ここにレコード⇒CD、つまりアナログからデジタルのメディア変化が大きく影響しました。CDで音楽を聞くことで、曲単位のスキップや頭出しが簡単にできるように。その結果、サビが最初に来ないと「この曲なんだっけ?」となり、下手をするとサビに行く前に次の曲にスキップされてしまう。いわゆる結論を先に言えと同じで、リスナーはAメロ⇒Bメロ⇒サビと、気長には待ってくれなくなったのです。他にも、サビの歌詞の言葉を曲のタイトルにそのまま使う、なんてことも起こりました。

■手段(メディア)の変化が目的(コンテンツ)も変化させる

アナログからCDへの変化を一般化してみます。それは、メディアの変化がコンテンツそのものに変化を及ぼした、ということ。コンテンツを受け手に届ける役目にすぎなかったメディア(レコードやCDなどの媒体)がその中身であるコンテンツ(曲)の作り方にまで影響を与えました。

背景には、CDというデジタルが普及したことで、受け手であるリスナーが曲ごとに気軽にスキップ・頭出で自由に移動するようになった点があります。ポイントは曲を提供する送り手側の意図ではなく、あくまでユーザーが主導した変化だということ。そして、この変化は今のあらゆるメディア消費の変化の底流にあると著者の田端氏は言います。例えばネットビジネスでは、検索エンジンの進化、スマホやソーシャルメディアの普及により、コンテンツは作り手側の想定した文脈に関係なく、ユーザーは好き勝手につまみ食いをする。

メディアは、本来はコンテンツを送り手から受け手に届ける媒体にすぎなかったもの。重要なのはメディアに乗っているコンテンツ。しかし、ここまで見てきたのは、「手段(メディア)の変化が目的(コンテンツ)にも影響を及ぼし変化させる」、という現象です。

■本とTVのメディア変化はコンテンツを変えるのか

音楽では、メディアのデジタル化がコンテンツを変化させました。CDになり、iTunesでの1曲単位でダウンロードする環境が普通になったことで、この流れはより加速したように感じます。

ここ最近興味があるのが、同じことが本の世界でも起こっていくのかという点。ようやく日本でも電子書籍が本格普及してきている実感があり、これは楽天のkoboや何よりアマゾンのキンドルの日本版がついに発売されたことが大きいと思います。キンドルが出たことで、Kindle版も次々に発売されている印象でコンテンツが充実してきました。

私自身もキンドルを注文しましたが、このタイミングで購入ボタンをポチっと押したのは、読みたい本が少しずつキンドル対応がされてきたのが大きいです。電子書籍って、①ハード、②探す/買える仕組みが整ったプラットフォーム、③コンテンツの3層がどれだけ一体となっているかが重要で、③コンテンツの充実でようやく「買いたい」と思うようになりました。

で、間違いなく起こってくるであろうことは電子書籍端末というメディアが普及することで、コンテンツ自体の変化です。今はまだ紙の本をデジタル画面で表示させているにすぎません。単なる置き換え程度です。プラスアルファで辞書機能、ハイライト、検索はありますが、本質的には大きな変化は起こっていないと理解しています。アナログ⇒CDで起こったことが電子書籍においても起こるかもしれないですよね。期待したいのは電子書籍ならではの読書体験。コンテンツの変化です。

もう1つ、メディアのデジタル変化で期待したい領域はテレビ。今のところは地上波デジタルに切り替わるという、日本のTV史上では歴史的な転換があったわけですが、そのメリットは少なくとも視聴者であるユーザー側には十分に享受されていません。このへんの話は書き出すと止まらない感じになりそうなのであまり触れませんが、結局はユーザー視点に欠けた官民主導の政策でしかなかったのではないでしょうか。日本中で地デジ対応TVの総切替が半強制的に起こったわりに、TV番組やCMというコンテンツは従来のアナログの時とほぼ変わらないのはもったいなすぎる結果です。

メディアという手段の変化が目的であるコンテンツをも変化させる。そして、メディア環境変化が自分の思いを受け取ってほしいユーザーにどんな影響を与えるか、忘れずに持っておきたい視点です。


MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体
田端信太郎
宣伝会議
売り上げランキング: 760

Kindle版はこちら

2012/12/22

重宝しているGunosyから考えるネットの本質と課題

情報収集のツールは色々とありますが、その中でこれはオススメというのがGunosy(グノシー)です。ネット上のニュースやブログ記事を対象としたキュレーションツールで、気づけばほぼ毎日使ってます。

■Gunosyとは

Gunosyの特徴は以下の3つと思っています。
  • シンプルな仕組み:アカウントをつくるとユーザーそれぞれに最適化されたニュース記事を配信してくれます。アカウント登録はTwitter、Facebook、はてなブックマークのどれかでログイン。ピックアップしてくれるニュース記事等の閲覧方法は、GunosyのWebページを開くか、1日1回のメール配信の設定の2通り。Webページとメールには記事タイトルと本文見出しがリンク付で表示され、毎日更新されます。
  • 毎日のメール配信:メール配信というプッシュ型の通知が意外に便利だったりします。いつの間にかGunosyからのメールチェックが毎日の日課になりました。大抵のメール配信は来ること自体が面倒に感じるんですが、Gunosyはそれが全然ないんですよね。メール配信の設定は2つあって、何時に送ってもらうかの配信時刻と1回あたり何個記事を表示させるかの記事数を決めることができます。今のところは、朝5時配信で、10個記事と設定しています。欲を言えば朝のメール配信は3時とか4時も可能にしてほしいところ。
  • とにかく精度が高い:キュレーションツールの肝はどれだけユーザーごとに最適化できるか。Gunosyの精度は良いです。メールで10個の記事が送られてきますが、ほぼ1つ以上は気になる記事がありクリックしています。だいたい10個中、1~3個くらい。RSSに比べると打率はかなり高いし、良好な精度だからこそ毎日のメール配信も嫌じゃない。

■なぜGunosyの精度は高いのか

Gunosyを使っていての感触として、最適記事を抽出するのに活用されているのは、
  • 人気記事や話題性のあるもの:はてブ、ツイート、いいね!がたくさん付いているものなど、よくクリックされている記事がピックアップされる傾向がある
  • Twitterなどのログインツール内情報の利用:ツイッターであればユーザーのツイート内容などユーザー情報を参考に最適記事を選んでいる
  • Gunosyでの行動履歴:どの記事をユーザーがクリックしたかの情報が蓄積される。ユーザーがGunosyを使えば使うほどユーザーに最適化された記事が配信される仕組み
で、特に2点目と3点目のバランスが良く、結果的に高い精度が実現できていると感じます。

Gunosyを開発・立ち上げた東大大学院生3人へのインタビュー記事を見ると、「他のキュレーションサービスのほとんどは自分のSNSタイムライン上で『つながりのある人の間で話題になっている情報』を配信するものが多いのに対し、Gunosyはユーザーのソーシャルグラフではなく、あくまで自分自身の過去のポストやソーシャル上のアクティビティを分析対象として記事を選ぶ仕組み」というようなことが書かれています。(参考:「精度高すぎ」と話題のニュースキュレーション『Gunosy』は、どんな設計思想で作られているのか?|エンジニアtype

自分のアクティビティが分析対象とは、Gunosy配信の中から気になる記事をクリックするほど精度が高くなっていくのがまさにそれです。クリックする=その話題に興味があると判断され、次回以降のニュース記事ピックアップに活かされる。使えば使うほどユーザーに最適化された仕組みになっていく。

以前のエントリーでキュレーションアプリのZiteについて取り上げましたが、Ziteも同じような感じです。こっちは配信記事が英語のサイトなので、英語の勉強にもなります。(参考:重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記

■フィルターバブルと転職サービスへの挑戦

上のインタビュー記事の中にあったことで注目したのが、Gunosyでは「フィルターバブル」についても考慮、課題設定としている点です。

フィルターバブルというのは、情報の偏りすぎることでユーザーに不利益をもたらすのではという懸念です。過度にキュレーションすることで、ユーザーの興味や嗜好に合致しない情報は全部排除されてしまいかねません。

でも、実は除かれた情報の中にはユーザーにとって有益な内容もあり得るわけで、あまりに選定しすぎるのは良くないのではという問題意識。イメージはユーザーが自分の興味関心だけの泡の中に閉じこもり、未知の外の世界を知る機会がなくなる感じでしょうか。(参考:情報社会の未来:私たちはネットの世界に知らない間に閉じこもってしまうのか|思考の整理日記

だから時々そのバブルの外にも注目すべきと思うのですが、Gunosyではこの問題にどう対処するかはこれからの課題。要はキュレーションするのをどこまで絞るといいかのバランスで、ここは個人的にも注目しておきたい取り組みです。

もう1つ、Gunosyのサービスはニュース記事配信以外にもGunosy Careerという転職サービスもあります(正確には13年春のローンチを目標)。ニュース記事抽出/配信のデータマイニングやレコメンド技術を転職サービスに応用しようというもの。Gunosyの特徴である登録・設定・使い勝手のシンプルさや、高いマッチング精度を転職市場でも実現できるか。期待したいです。

■ネットの本質から考える今の「ネット上のバランスの悪さ」

何かと何かをマッチングさせる領域は、まだまだこれから発展するのではと思っています。マッチングとは単純化すればAとBの異なる要素をつなげることです。Gunosyでは、A:ネット上の情報、B:ユーザーをマッチングさせる仕組みだし、転職サービスのGunosy CareerはA:企業とB:人をマッチングさせようというもの。人と人をつなげるサービスはFacebookやLinkedinとかLineがあったり、情報と人を結ぶのはGoogleの検索サービスもそうですよね。

これらのマッチングの仕組みで共通しているのはネット上でつながっていること。インターネットが当たり前のように普及したことでネット上の情報量が爆発的に増えたけど、一方で増加する情報に追い付けていないのはマッチングだと思っています。必要な情報や人を探したり、つながるための仕組み。確かに何か知りたい時はグーグルの検索があるし、フェイスブックやラインで気軽に人とコミュニケーションが取れますが、まだ十分ではないように思います。

何が言いたいかと言うと、ネットは人やモノの情報が文字通り網の目のように入り組んだ世界ですが、ネットを構成する一つ一つのつながりが少ないor最適化されていなく、増える情報量に対してマッチングが不十分ということです。インターネットの本質って、人やモノという「個の情報発信」と「双方向性」なのではと思います。前者の情報発信はネットで実現できているけど、後者の双方向性、つまりマッチングとかつながりはこれからの領域。今はまだ情報量とマッチングのバランスが悪い状態です。だからこそ、Gunosyのようなテクノロジーでこれを解決するプレイヤーには期待したいです。

人や企業にはいろんなニーズがあり、中身は千差万別です。それらをどうつなげるか。ネットが進化してもう1つ上のレベルになるための課題と思っています。


※参考情報

Gunosy(グノシー)
「精度高すぎ」と話題のニュースキュレーション『Gunosy』は、どんな設計思想で作られているのか?|エンジニアtype
Gunosyが会社になりました。|Gunosy blog
あなたに最適化したニュースを届ける「Gunosy」が会社化|Itmediaニュース
重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記
情報社会の未来:私たちはネットの世界に知らない間に閉じこもってしまうのか|思考の整理日記
Gunosy Career


2012/12/16

Apple地図問題の本質とスマホ位置情報の可能性




iOS 6 がリリースされて最も話題を集めたことはアップルの独自地図でした。パチンコガンダムという名前の駅、羽田空港が大王製紙に、東京都公文書館が海上にある、などなど。iOS 純正なのに、地図完成度の低さが話題になりました。

この問題について、Apple やスマートフォンの事情に詳しいジャーナリストの西田宗千佳氏と、Yahoo! JAPAN で「ルートラボ」など位置情報サービスの開発にあたる地図のスペシャリスト河合太郎氏の対談記事が示唆に富み、おもしろかったです。今回のエントリーではこの対談から、アップルの地図問題について考えてみます。

2012/12/15

人生はスーパーマリオ

孫泰蔵氏はかつて起業したばかりの頃、資金繰りや社内の人間関係に苦しみ人生のどん底にあったと言います。

そんな時に兄でもあるソフトバンク孫正義社長から「人生はスーパーマリオ」というこんな話を聞いたそうです。

泰蔵、辛いやろ。苦しかろう。ばってん、お前は今いい経験をしよるとぞ。その苦労や経験は必ず実となって今後お前の人生に絶対に役に立つ。

人生はスーパーマリオみたいなものだ。

最初に1面を始めたときを考えてみい。ザコキャラのノコノコにすぐやられるし、雲に乗ることもできん。だんだん習熟してくるとボスキャラのクッパにたどり着けるようになる。だけど、本当にクッパを倒せるまでに何度も死ぬことになる。そこで挫折しそうになるのをこらえて挑戦を続けて、やっとクッパをやっつけてピーチ姫を助けることができる。次の2面はまた一段と難しくなっとる。そこで何度も何度も失敗するけど、努力と訓練でスキルを上げてクリアしてゆく。

いまのお前は1面で苦労している段階や。それでいかにも俺に助けてもらいたそうな顔をしているけど、プライドがあって言い出せんのだろう。最初に言っとくけど、俺は助けてやらん。お前の今の困難はおれも経験したし、助けてやるのは簡単やぞ。だけど、ここで助けてたらお前のためにならん。

『そこの土管から3面にワープできるぞ』と教えるのは簡単やけど、いまのお前の実力では3面にいったら瞬殺やぞ。だから、1面、2面で『必ず経験しておくべき失敗をして』、そのうえでクリアしていって、やっと3面のボスキャラに対抗できる実力が身に付く。ここで俺がお前を助けて3面に行かせてやったら、そこで致命的な失敗をする。だから、ここは逃げちゃいかん。お前の勝負どころやぞ。

書籍「僕たちがスタートアップした理由」より引用

当時、「死んでお詫びしよう」とまで考えたこともある孫泰蔵氏は、マリオという身近なストーリーであったこともあり気持ちが明るくなり、これをきっかけに苦境を乗り越えたとのことでした。

■ これまでの「今」の積み重ねが今の自分をつくっている

人生はスーパーマリオ。なかなかおもしろい例えだと思いました。そして自分の人生観ともわりと近いと思っています。

自分自身の考え方の1つに、これまでの「今」の積み重ねが今の自分をつくっている。いかに毎日きちんと生活するか、というものがあります。

これは自分の中でベースになっているもの。過去の積み重ねが今で、今を積み重ねると未来になる。だから、いつ何時も「今」というこの瞬間をいかに生きるかが大事、という考え方です。

マリオの話で言うと、1-1という最初のステージから始まり、目の前の障害を1つ1つクリアしていきます。その積み重ねで、マリオ(orプレイヤー)は成長するし、ステージを進んでいくことができます。

その過程で時には失敗もします。敵キャラにやられたり、穴に落ちてしまったり。でもゲームでは復活できるのでその経験は次に活かすことができる。実社会においても今失敗したことを次にどう活かすかは、失敗を糧にできるかどうかの分かれ目です。

失敗は、ミスってしまったその時は何かとんでもないことをやってしまった感じが大きいものですが、後から振り返ってみると、実はそんなに大したことではなかったと思うことがあります。1年後とかに当時を振り返ると、失敗をしたことで自分の経験値が増えたと思うこともあるし、失敗もポジティブに捉えられることもあります。

これはマリオの話で言うと、「泰蔵、辛いやろ。苦しかろう。ばってん、お前は今いい経験をしよるとぞ。その苦労や経験は必ず実となって今後お前の人生に絶対に役に立つ」という状況に近いのではと思います。

■ 風向きは変えられないが、帆の向きは変えられる

マリオの話で思ったのは、人生においては変えられることと変えられないことがある、ということです。

当たり前と言えばそれまでなのですが、マリオで言うと、ゲーム内に用意された各ステージはプレイヤーに変えることはできません。どうしてもクリアできないからと言って、敵の出現やステージ構成をいじることはできません。

しかし、各ステージや敵に対してどう対処するかは変えることができます。敵キャラをやっつけるのか、それとも攻撃をよけて先に進むのか。あるいは土管や雲の上に行くことでショートカットをするのかです。

この話は以前のエントリーで書いた、You can't control the wind but you can adjust your sails.(風向きは変えられないが、帆の向きは変えられる)、とも通じるものです。

自分がコントロールできないことと(風の向き)できること(帆の向き)を区別すること、そして自分のコントロールできることに集中することの重要性を示した言葉です。(参考:新入社員に伝えたい自分の頭で考えるための3つのこと|思考の整理日記

もう少し踏み込んで考えると、刺激に対して自分の反応・感情の間には選択の自由がある、という考え方です。何かが自分に起こった時に、それに対する自分の感情反応は1つではないこと、つまり選べるのです。

例えば、発車間際の電車に乗ろうとして目の前でドアが閉まり乗り損ねたとします。

この出来事に対してどう思うか、1つの感情は「今日はついてないな」とマイナスの反応で考えてしまうことです。でも、「次の電車はすぐ来るし、発車間際の電車より空いているかもしれない。待ち時間も有効に使おう、乗り遅れても数分の差で大したことない」と考えてみるとどうでしょうか。

起こってしまったことに対してポジティブな反応になっています。刺激に対して自分の反応は選択できること、選ぶならプラスの反応をしてみるのです。

■ 結果とプロセスのバランス感

もう1つ、マリオの話であらためて思ったのは、人生では結果(目的)とプロセスのバランスです。

スーパーマリオではクッパにさらわれたピーチ姫を助け出すという目的があります。一方で、救出という結果を出すまでには様々な敵キャラに対応し、各ステージをクリアするというプロセスがあります。

ゲーム自体はステージの難易度が絶妙に上がり、このプロセスでのスリルというかおもしろさがあるからこそ、マリオというゲームにハマります。

いくらピーチ姫を助け出すことができたという結果がうれしくても、そこに行き着くプロセスが楽しくなければマリオの楽しさは半減してしまうでしょう。

普段の過ごし方でも結果とプロセスのバランスは意識したいものです。

結果だけを追い求めすぎず、プロセスだけでもなくです。考え方は上に書いた「今の積み重ねが未来をつくる」です。プロセスを積み重ねることで結果や成果を出すことを意識しておきたいと思っています。


※参考情報
スーパーマリオとバックパッカー|TAIZO SON'S BLOG
新入社員に伝えたい自分の頭で考えるための3つのこと|思考の整理日記


僕たちがスタートアップした理由
MOVIDA JAPAN 株式会社 Seed Acceleration Div.
フォレスト出版
売り上げランキング: 93477


2012/12/09

世界と日本の経済を俯瞰しておこう

ちょっと前に読んだ本が野口悠紀雄氏の「経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか」「大震災からの出発 ―ビジネスモデルの大転換は可能か」の2冊。世界と日本の経済の全体像が俯瞰されていて、「なるほど!」と思うことも多く目から鱗とはこのこと、という感じでした。

第二次世界大戦から現在の歴史的な時間の流れというタテの比較、日本だけでなく先進国・新興国のヨコの比較。ようやく自分の理解も追いついてきたのでエントリーしています(書きながら頭の整理ができることを期待しつつ)。

■戦後の世界経済を俯瞰する

書籍「経済危機のルーツ」で印象的だったのは、工業化のシフトと脱工業化の新しい流れでした。ここについては、ちきりん氏のブログがとてもよくまとまっているので引用させていただきます。以下の表は第二次世界大戦後~2010年代までにおける、日本やアメリカなどの主な国の経済状況です。マトリクスにすることで俯瞰できるとてもわかりやすい図です。


引用:戦後の世界経済が俯瞰できる本|Chikirinの日記

戦勝国である米国・英国、敗戦国であったドイツと日本、そして共産国となった中国、ロシア(ソビエト)について、それぞれの時期に何があったかをまとめたのがこの表、グレーはその国の調子がよくなかった時代(濃いほど悪い)、オレンジはその国が調子がよかった時代を示しています。(濃いほど勢いがある時代)
表の手書きの赤丸はちきりん氏によるもので、工業化による経済成長を順に起こっています。イギリス・アメリカで最初に発生し、ドイツ・日本、中国と、それぞれの国で、農業から工業という第一次産業から第二次産業にシフトが起こり、生産性が大幅に改善しました。青い丸は工業化による経済成長を終えた国が、2番目の経済成長のための「脱工業化」プロセスです。

■日本経済の繁栄と苦難

このへんからはもう1冊の「大震災からの出発」に書かれてる内容に入っていきます。

上の表で1970年代と80年代の日本のところは「繁栄の時代!」とあるように、Made in Japanの工業製品が世界を席巻しました。アメリカなどの製品に比べて品質が良く、かつ低コスト生産による価格優位性があったためです。つまり、アメリカvs日本において、日本製品が勝り日本は工業化による経済成長を実現したのです。

ところが90年代以降、世界経済の産業構造はある変化が起こります。中国などの新興国の工業化。「世界の工場」とも呼ばれた中国製品は品質もそこそこ&低価格を武器に、次第に日本製品が負けるようになっていきます。今度は日本vs新興国において日本は優位性が保てなくなっていく。国内ではバブル崩壊の混乱、国外では世界の産業構造変化の荒波に飲みこまれ、それまでの繁栄がうそのように後に「失われた20年」と言われる苦難の時代へ。

90年代以降は自動車や家電、電気製品の工業製品の相手は新興工業国のそれでした。競争の中で起こったことは、低価格に対抗するためのコストを下げることでしたが、次第にコスト減の内容はリストラや非正規雇用への転換に行き着き、雇用や所得の減少を引き起こします。

製造業での失われた雇用の受け皿になったのがサービス業でした。雇用吸収先が製造業よりも低い生産性のサービス業で雇用形態が非正規雇用であったために、ますますの所得減少が起こった、これが野口氏の説明でした。

ちょっと長くなったのでまとめると、
  • 90年代以降の新興国の工業化で、日本製品の競争相手は新興国製品に。価格などの比較劣位から日本は次第に負けていく
  • それでも新興国製品に対抗するために行き着いた施策がリストラや非正規雇用への転換。結果、雇用が失われたり所得が減少した
  • 失われた雇用の受け皿が製造業より低生産のサービス業であったため、さらに所得減少に

■変化しなかった日本、対応したアメリカ

新興国工業化というのは、世界経済の産業構造の大きな変化でした。野口氏が書いていた内容で印象的だったのが、世界の構造変化に対して日本の産業構造は「変化しなかった」、という指摘。

企業のビジネスモデルや産業構造が変わらず、工業製品の輸出という外需依存の状態を続けます。新興国との競争の仕方が対アメリカの時代の競争と基本的に同じでした。本来は、製造業に代わる新しい基幹産業を国内につくり、異なる競争軸を目指すべきだった。でも実際は、政府は円安政策や金融緩和もあり古い産業構造が生き残り続けることに。

ちなみに、新しい競争軸を生み出したのがアメリカやイギリスでした。それが上の表にある青丸で囲まれた「ITと金融で再生」。製造業よりも付加価値の高いサービス業を創出し、脱工業化を実現したのです。

■東日本大震災の影響

新興国工業化による国内製造業の環境悪化に拍車をかけたのが、3.11の東日本大震災でした。短期的には東北地方が絡むサプライチェーンが壊れたことで生産・供給不足を引き起こしましたが、より影響が大きいのは中長期的に発生する電力制約です。

電力制約は2つあって、使える電力量の不足と、電力使用コストが上がること。福島原発事故の影響で、節電による産業に使える電気が強制的に制限されること、原発停止に伴いその分を火力発電で代替し原料をスポットの高い価格で輸入したことによる電気料金の値上げ。

当初は東京エリアを中心に電力制約が起こるはずが、全国的に原発稼働停止の流れで日本中で電力制約が発生、これに対して企業は生産拠点の海外移転を加速。結果、ますますの製造業の雇用減少という構図です。

■日本は産業構造を変化させられるのか

野口氏は著書の中で、本来あるべき姿は比較優位に即した国際分業である、と述べています。製造業は新興国に任せ、先進国は高い技術や専門性に立脚した産業に特化すべきである。重要なのは製造業の海外移転を引き止めることではなく、製造業に代わる産業を国内に作ることである、と。

新たな産業は高生産性サービス業というのが野口氏の意見です。例として、情報通信、金融・保険、不動産、医療福祉、教育・学習支援、など。重要なのは、新産業の生産性が製造業よりも高いこと。そうでなければ雇用の移転が起こって維持されても、所得は下がり日本は貧しくなってしまう。

個人的な意見として、製造業をゼロにすることは現実的ではないし、いきなりの変化は無理でしょう。製造業でも「先進国は高い技術や専門性に立脚した産業に特化」の例として思いつくのはアップルです。

iPhoneの裏にはこんなことが書かれています。Designed by Apple in California. Assembled in China. デザインはカリフォルニアにあるアップル、製造は中国。これは比較優位に即した国際分業の好例だと思います(もちろん、中国での製造は様々なリスクもあるし、これからも比較優位となり続けるかはわかりませんが)。

★  ★  ★

もう1つ、あるべき姿で触れておくべきは政府の役割。期待したいのは「政府が掲げる成長戦略」ではなく、「政府は何もしないこと」。市場に任せ、規制緩和など競争の邪魔をしないこと。既得権や特定産業を優先する施策は競争をゆがめ、めぐりめぐって経済成長が阻害されてしまいます。


※参考情報
戦後の世界経済が俯瞰できる本|Chikirinの日記


経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか
野口 悠紀雄
東洋経済新報社
売り上げランキング: 49432

大震災からの出発 ―ビジネスモデルの大転換は可能か
野口 悠紀雄
東洋経済新報社
売り上げランキング: 336517


2012/12/08

マッキンゼーの採用基準から考える「僕らのリーダーシップ」

今年は自分のリーダーシップをいかに高めるかを考えた1年でした。これは仕事上での理由が大きいのですが、日頃から結構意識しています。

最近読んだ本でおもしろかったのが「採用基準」でした。

著者の伊賀康代氏はマッキンゼーの採用マネージャーを12年務めた方で、現在はキャリア形成コンサルタントをされています。

採用基準というタイトルはマッキンゼーが何を基準に採用しているのか、どういう人材を求めているかからきています。マッキンゼーが採用するにあたり重視しているのはリーダーシップです。本書での表現を使うと「将来グローバルリーダーとして活躍できる人」です。

■ マッキンゼーが求める人材は将来のリーダー

マッキンゼーの採用基準は3つあると言います。

  1. リーダーシップがあること
  2. 地頭がいいこと
  3. 英語ができること

2つ目と3つ目はイメージ通りですが、1つ目は意外に思うかもしれません。

著者はマッキンゼーが求めている人は、リーダーシップポテンシャルをもっている人と明確に言います。地頭とか論理的思考よりも採用基準としてリーダーシップを大切にしているのです。

なぜマッキンゼーはリーダーシップを重視するのでしょうか。

コンサルタントは問題解決を高いレベルでクライアントから求められる立場にあります。それもクライアントが自分たちで解決できないような「答えのない」ものです。

それを現実に解決していくにはいかに他者を巻き込んでいくかが肝であり、そのためにはリーダーシップが問われます。

単に頭がよい、論理的思考ができる、というだけでは他者やまわりを効果的に巻き込むことはできません。クライアントの組織や仕組みをドラスティックに変える、提案だけではなく実行するために求められるのがリーダーシップです。

■ リーダーの役割と身につけ方

著者の言うリーダーがやるべきことは4つでした。

  1. 目標を掲げる
  2. 先頭を走る
  3. 決める
  4. 伝える(コミュニケーション)

まずはビジョンだったり未来のあるべき姿を描き、それを目標に落とし込むことです。そのゴールに向かって先頭に立つのがリーダーです。

ゴールに向かって何の障害もないケースは稀で、随所で意思決定が必要になります。その時にリーダーがいかに決断するか、そして決めたことをどう伝えるか、まわりを説得し共感を得て導いていけるかです。

この4つのことは、以前のエントリーでも触れた内容にわりと近いかなと思っています。(参考:裸踊りと桃太郎から考えるリーダーシップ論|思考の整理日記

ではリーダーシップを身につけるためにはどうすればよいのでしょうか?マッキンゼー流のリーダーシップの学び方は、

  • バリューを出す:ここで言うバリューは成果を出すこと。結果を出すこととも言えます。リーダーとは非情なポジションでもあり、結果がなんぼだったりします。だからリーダーシップを身につけるためにも、常日頃から自分がやったことに対して「成果は何か」「付加価値は何か」を意識する。もちろん努力したというようなプロセスも大事ですが、これをやったと言える成果を出すことを心がける
  • ポジションをとる:ポジションとは自分ならこう考え意見が言えること、イシュー/課題に対する自分の立ち位置。仮に自分が最終的な意思決定者でなくても、自分がその立場だったらと想定し、どう決断するかを考える。自分の意見を常に持っておく
  • 自分の仕事のリーダーは自分という意識:上司やクライアントも含めた関係者をどう使って、巻き込んで進めるか。そのためには自分の仕事は自分自身がリーダーという意識が重要と著者は言います。指示されたこと・言われたことを受け身でやるのではなく、主体的に進めること、当事者意識や自分ごと化することでリーダーシップも養われるという考え方
  • ホワイトボードの前に立つ:会議でホワイトボードを使うことでその場の議論を整理したり、まとめる。ホワイトボードに書き、それをもとに会議を進めることでメンバーをリードしていく。この過程でリーダーシップが鍛えられる

■リーダーシップがあると何が変わるか

本書で良かったのは、単にリーダーシップが重要ですとか、リーダーシップの鍛え方はこうです、で終わらないことです。

リーダーシップを身につけると何が変わるかまで書かれていることでした。

2つあって、皆がリーダーシップを身につけることで世の中はどう変わるかの社会的側面と、個々人の働き方やどういう人生を歩めるのかの個人的側面です。社会全体と個人のキャリア形成に触れている点が本書のユニークなところです。

1人1人がリーダーシップを持つと社会はどう変わるのでしょうか。

一言で言えば、誰かが決めてくれるのに従うという受動的な姿勢ではなく、自分たちで解決しよう、変えていこう、という主体性のある社会になります。

個人的な自分の身の回りのレベルから、社会問題のわりと大きなものまでです。政治家が悪い、景気が悪い、○○が悪い、ではなく、じゃあ自分たちでどう解決しようか、というスタンスです。

個人レベルでも同じことが言えます。リーダーシップがあることで自分の人生をコントロールできる、と理解しました。

ここでも受け身ではなく主体的なスタンスが重要で、リーダーシップを持つことで、自身が人生のコントロールを握ることができるようになります。ひいては自分の世界観が実現でき、世界が広がっていくのです。

■ 1人1人がリーダーシップを持つ重要性

著者の主張で共感できるのが、1人1人にリーダーシップを持つことの重要性でした。

チームや組織で「リーダー」と呼ばれる人は1人かもしれません。1人のリーダーがいて残りのメンバーがリーダーに従うという中央集権型です。これは日本社会が今も中央集権の構図だし、企業でも多い形態ではないでしょうか。

実感としてあるのが中央集権型の組織やチームは、1人のリーダーの力量=チームの力量になることです。良くも悪くもリーダーに依存する組織です。

一方で、高いパフォーマンスが出せるのは、分散型の組織だと思っています。リーダーはいるけど、各メンバーが自主的/主体的に動き自分の役割にリーダーシップを持っている組織です。



全体統括は上司だったりのリーダーが見ますが、個別の役割やタスクにおいては各自がリーダーになって、時には上司も使うなどしてまわりに対してリーダーシップを取ります。

そのタスクを一番わかっているのは上司ではなくそのメンバーなので、リーダーシップを持って巻き込んでいくことができているチームです。

自分の経験上、分散型のほうがよりチームで取り組んだ意味があると言えます。自分一人ではできないことがチームではできて、かつ高い成果を出すことができるからです。

3-5人くらいのチームでもそうだし、もっとスケールを上げていくと社会全体、日本全体でもこれが当てはまるのではないでしょうか。みんながリーダーシップを持つことの重要性はここにあるように思います。


採用基準
採用基準
posted with amazlet at 12.12.08
伊賀 泰代
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 33


2012/12/01

日本のマーケティングリサーチを変える「黒船」を考える

今週、JMRX勉強会の「次世代マーケティングリサーチ討論会」に参加してきました。

討論会の見どころは、マーケティングリサーチ(MR)の世界を30年ものあいだ牽引してきたRay Poynter(レイ・ポインター)氏と、トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長で書籍「次世代マーケティングリサーチ」の著者でもある萩原雅之氏との対談でした。

この討論会のサブタイトルは「黒船到来、日本のマーケティングリサーチはどう変わる?」。討論会の中で萩原氏が日本のMRの歴史を紹介し、リサーチ業界では10年おきにイノベーションが起きており、今また新たなイノベーションが起こりつつあると言われたように、MRがどう変わっていくかは関心の高いテーマです。



■日本のマーケティングリサーチを変える「黒船」とは何か?

だから討論会に出席してあらためて考えさせられたのは、日本のMRに変革を迫る「黒船」とは何か、ということ。

黒船という言葉は、当時のアメリカが260年鎖国が続いた日本に開国を迫り将軍と武士を中心とした江戸の社会を根本的に変えた「外部要因」を指すと理解しています。

MRの世界でも大きな変化が起こりつつある/起こっていると感じますが、何が変化を引き起こしているのかという論点です。討論会も踏まえ考えてみた日本のMRを変える要因は以下の通り。
  • 海外の新しいMR手法:MROCsなどの新しいリサーチ手法が日本に入ってきて日本のMR業界を変える。今回の討論会を聞いて感じたのは日本のMROCsは海外に比べ普及していない/事例が少ない印象でしたが、果たして今後は変えるのか
  • クライアントの変化:マーケティングリサーチとは一言で言えばクライアントのマーケティングの課題解決のため。よって、クライアントのマーケが変わればMRも変わる。マーケの考え方やリサーチ予算の縮小、あるいはROIをこれまで以上に求められれば、MRも変わっていかざるを得ない
  • テクノロジーの進化:脳波や脳内の血液変化を使ったニューロサイエンスや表情認識などの調査対象者本人ですら自覚できないようなことも技術進歩でわかるようになる。Webアクセスログなどのこれまでは収集できなかったビッグデータ、ハドゥープやクラウドの普及。こうしたテクノロジーの進化でMRに活用できるデータ領域が増える。また、技術進歩によりコストが下がりビジネスで使用できるようになったことも大きい
  • メディア/ネット環境の多様化:スマホやタブレットの普及、SNSやブログ・口コミサイトなど多様な環境をMRに活用することで、新しいリサーチ手法が登場する。これまでのネット調査はPCが前提だったが、モバイルを使うことでよりリアルなデータ、クイックな調査ができるようになる。ソーシャルメディアを活用したリサーチは今後のトレンドの1つに
  • 消費者の変化:メディア/ネット環境の多様化により消費者の情報発信、消費者同士のコミュニケーションが変化してきている。MRでは消費者中心/消費者理解の考え方が主要なものになってきており、消費者の変化がMRの変える
  • 政府・国:先日、日経が報じた「民間の個人情報売買解禁へ 政府、新事業創出を後押し」。これまでは個人情報保護の対応がMRに制約を与えてきたが(住民台帳がつかえなくなったりなど)、異なるデータをユーザーIDで紐づけてシングルソース化し、統合データをプレイヤー間でやりとりができるようになると、リサーチデータの価値も変わる
  • 異業種の参入:クックパッド、TポイントのCCC、豊富なソーシャルグラフや属性データを持つSNS。これらがリサーチ業界に参集することは既存のMR会社にとっては脅威。またGoogle Consumer Surveyなどの異業種からのDIY型リサーチも価格破壊を起こす可能性も

■異業種参入の意味

この中からか黒船を1つ選ぶとすると、異業種の参入が最も大きな変化を引き起こす要因になると思っています。

例えばクックパッド。クックパッドには膨大なレシピ情報があり、そこには消費者がどんな食材を使い、どんな調理方法をしているのか、季節ごとの具材や食卓へのニーズ、使っている食器具など、あらゆる料理関連のデータが蓄積されています。

これらのデータを活用することで、マーケティングに利用できるだけではなく、プロモーションにも活かせる。実際に食品会社ではリサーチ会社ではなくクックパッドのデータを使うようになったと聞くこともあります。

それは従来のリサーチ会社にはないデータ、できないデータ活用、わかることの広さ・深さがクライアントのマーケティング課題ニーズをとらえたのだと思います。異業種の参入の影響は今はまだ表面化していないかもしれませんが、水面下では大きな変化を起こしていると感じます。

クライアントからすると、やりたいことは自分たちのマーケティング課題の解決であって、そのための手段は何でもよい。これまではリサーチならリサーチ会社、広告/プロモーションなら広告会社(広告代理店)と、わりとわかりやすい選択肢だったのが、異業種の参入でクライアントにとってはリサーチ=リサーチ会社に依頼、という構図は過去のものになっていくはず。より高い価値を提供するところに頼むのは当然です。MR会社もそれに対抗し生き残っていくためには変わらざるを得ないのではないでしょうか。

異業種のリサーチ業界参入で思うのは、本業は別にあって、リサーチはあくまで本業からの副産物を使った事業であるということ。

クックパッドならレシピサイトの会員課金/広告のビジネスモデルが収益の基盤になっている上に、レシピ情報から蓄積されるユーザーの料理に関するあらゆるデータを副次的に使うことでマーケティングリサーチ/プロモーションという新たなビジネスにもしているところが、既存のリサーチ会社にとっては脅威だと感じます。

リサーチ会社が本業でやっていても得られないデータが、異業種はメインビジネスの結果として自然と集まってきているデータ。アマゾンや楽天の購買情報、CCCのTポイントで統合されたユーザーデータ、SNSのソーシャルグラフや詳細な属性情報、口コミサイトの商品利用データ、等々。結果、従来MR会社にはない提供価値/サービスがあり、差別化要因になっています。

■マーケティングリサーチ会社の価値

MR会社の価値、存在意義は何か。これまではクライアントに変わって/一緒になってリサーチを活用したクライアントのマーケティング課題解決を図るものでした。課題解決がクライアント自身でできるならばリサーチ会社は不要になるはずで、MR会社に仕事が来るということはそこにMR会社の存在意義があった。しかし、MR会社ではないプレイヤーが同じような、あるいはMR提供価値を超えるような価値を与えてくれるとなると、MRの存在意義は薄れていってしまいます。

もう1つの流れとして、リサーチ業界に頼まなくてもDIYリサーチを使えばクライアントは自分たちでリサーチができてしまうこともあります。自分たちでやってしまうほうが早いし安いとなると、これもMR会社の価値はなくなっていく。

MR会社にしかできない価値は何か。MR手法の開発、データ収集、調査企画提案、調査コントロール、データハンドリング/分析、リサーチからのインサイト抽出、報告書の作成、クライアントとのコミュニケーション(時にはクライアント内の異なる部署の橋渡しになるなど)、外部者だからこその提言、ひいてはクライアントの課題解決。これらの価値を提供できる限りは、リサーチ会社の存在意義は引き続きあるだろうし、できなくなれば淘汰されていくのではないでしょうか。

歴史を振り返ると、江戸幕府に開国を迫ったのは黒船であった諸外国でしたが、実際に社会を変える行動を起こしたのは、坂本竜馬・西郷隆盛・大久保利通などの「日本人」でした。黒船という外部圧力がきっかけとなったものの、変化を起こしたのは内部から。

これは黒船到来としている日本のマーケティングリサーチにおいても同じことだと思います。異業種参入などの外部要因はあくまでトリガーであり、そこから実際にマーケティングリサーチを変えていくのはリサーチ会社であるし、そうあるべき。逆にそれができるところがこの先もクライアントに価値が提供できるんだと思います。


※参考情報

次世代マーケティングリサーチ討論会 ~黒船到来、日本のマーケティングリサーチはどう変わる?~
「これまでのマーケティングリサーチは使えなくなる」 レイ・ポインター氏が示すリサーチの将来像とは?|MarkeZine(マーケジン)
No Surveys in Twenty Years?|The Future Place Blog
No Surveys in 18 years!|Vision Critical
従来型サーベイは消えるのか -『No Surveys in 18 years!』より-|マーケターのメモ帳
民間の個人情報売買解禁へ 政府、新事業創出を後押し|日本経済新聞


次世代マーケティングリサーチ
萩原 雅之
ソフトバンククリエイティブ
売り上げランキング: 21913


2012/11/25

スペイン旅行での発見

この1週間ほど休みを取りスペインに行ってきました。毎年一回は海外に旅行をしたいなと思っていて、旅行とはいえ外国に少しでも滞在すると普段の日常から離れられ、その国その国の考え方や習慣に触れると新しい発見がいくつもある。旅の魅力だと思っています。




■新しい発見と常識

新しい発見をするために旅行をする、と言ってもいいかもしれません。その国でしかできないことを体験しに行く。これが自分にとっての旅行の目的。だから、現地での生活に近いことができるのがおもしろいと思っています。お土産専門店での買いものよりも、地元のスーパーでミネラルウォーターや食べ物を買う、露店に近いようなそのへんの店で新聞とかお菓子を買ってみたり。今回のスペインだと店の人には英語が通じないことも普通で、片言のスペイン語とかジェスチャーで言いたいことを伝える。現地の人とのコミュニケーションも含めて体験する。これがおもしろいんですよね。

旅先での新しい発見は、自分には当たり前な常識をあらためて考えさせられることでもあります。日本での常識は外国では非常識だったりする。自分の「当たり前」が一度壊される感じです。

例えば、水。海外に行った時の飲み水の確保は普段以上に神経を使います。日本では当たり前のようにレストランや飲食店では水はお冷として無料で提供されます。外国ではこのサービスはなく、ソフトドリンクやアルコールなどと同じように、水は買うもの。スペインでも同様で、水の値段は普通のレストランでは2.5-3ユーロくらいで、ジュースやビールとかワインなどと同じだったりします。

考えてみると、水道水をそのまま飲める日本のような国は世界的にはレアです。確か、蛇口から直接水が飲める国は日本も含めて世界で11か国と本で読んだ記憶があります。私たちの水に対する感覚と、スペインでの水に対する感覚はあきらかに違う。水に対する日本の常識と外国での常識。この違いはそれだけ日本の水道水は品質が良く、水自体が日本には豊富にあるという再発見でもあるのです。


アルハンブラ宮殿。貴重な水だからこそ宮殿内で贅沢に使用することで、権力や富を誇示していた様子がわかる


バルセロナ近郊のタラゴナにある「ラスファレラス水道橋」。古代ローマ人により建てられたもの

外国に旅行して新しい発見をする、そこから自分にとって当たり前なこと・常識に気づく、自分や日本のことを客観視でき、相対化できる。外を知ることで内を知ることにつながる。自分の知識や常識はあくまでone of themでしかなく、世の中にはいろんな考え方・見方があり、どれが正しいとかでもない。多様性に触れることができるのが旅行の醍醐味だと思っています。


サグラダ・ファミリア。ガウディが残した傑作の1つ。右はサグラダ・ファミリアの中。外観も内観も圧倒されました

■旅と歴史

もう1つ、旅行の魅力はその国の歴史をよりリアルに感じられるところ。今回の旅行ではいくつかのキリスト教のカテドラル(大聖堂)に訪れましたが、スペインの大聖堂の特徴はキリスト教とイスラム教が共存しているところ。

これは歴史に大きく関係していて、スペインがあるイベリア半島は8世紀にアフリカからイスラム教徒の侵略が起こりました。スペインのほぼ全土まで広がります。その後、キリスト教によるレコンキスタという国土回復運動が起こり、1492年にイスラム最後の都市グラナダを奪還。今でもキリスト教にイスラム教の文化が残るのはこうした背景がありました。

レコンキスタ後、スペインは国内の動乱時代を終え大航海時代を迎えます。1492年というのは歴史に残る年で、コロンブスがアメリカ大陸を発見した年でもあります。レコンキスタを完了したことでようやく世界に目を向けることができた。当時のスペイン女王イサベルがコロンブスの計画を承認できたのも、国内を統一できたから。アメリカ大陸を発見し、スペインはその後、南米大陸へも進出していきます。インカ帝国などを滅ぼし、金銀などの貿易から莫大な資産を手に入れスペインは全盛時代を築きます。

今回のスペイン旅行で、このあたりの歴史に触れておもしろかったのは、去年行ったペルーとつながったことです。ペルーではマチュピチュなどのインカ文明遺産をいくつか見ましたが、インカ帝国を滅ぼしたスペインに今年行って、点と点がつながりました。歴史を大きな流れで捉えられることと、それを現地で当時の遺跡を直接歩きながら実感できるのも旅の魅力です。

去年行ったマチュピチュにて


2012/11/16

ヨーロッパ海外出張から学んだ「4つの視点」

先週は海外出張でヨーロッパに行っていました。目的の1つがESOMARというマーケティングリサーチ団体主催のカンファレンスに参加することでした。出席したのはこれ:ESOMAR 3D 2012

■講演後の違和感と悔しさ

カンファレンスの講演を聞き終えた時、ふと「あれ?」と思いました。違和感というか。スピーカーの講演発表後にはQ&Aの時間が少しあったのですが、発表を聞き終わった直後なのに質問が頭になかったんですよね。英語とは言えそれなりに聞けてたはずだし、メモも随所で取っていたのですが、なぜか質問が頭に思い浮かばない。

聞いていた内容はその時その時では頭に入れたはずが、終わった段階で話の全体構造がうまく体系立てて理解できていなかったことに気づきました。理解したようで、なんとなくでしか理解できていない状況。発表内容が頭の中にストックされず、フローとして流れていってしまった感じ。

なぜなのか。自分の結論は、講演内容を聞きすぎていたことでした。英語のリスニングに「集中しすぎてしまった」んです。英語を聞くこと自体にフォーカスしすぎてしまったために、表面的な理解にとどまってしまった。

発表内容の構成として、背景があり、課題の説明、目的、仮説や根拠などの詳細、結論、となっていました。ところが、聞いている最中には英語を聞くことばかりに集中してしまったため、前後関係や発表の構成を考えながら聞くことが不十分な状態でした。すごく受け身で英語をリスニングしている感じです。だから、講演発表を聞いている時、終わった直後で質問がすぐには考えられなかったんだと思います。表面的な理解しかできていなく、「問い」がつくれない。なんとも悔しい体験でした。

■体系立った理解のための「4つの視点」

日本語であれば発表内容を聞きながらも、自分の中で「なぜそう言えるのか?」「要するにどういうことか」なども同時に考えていたりします。聞く+解釈・考察を頭の中で同時にやっているので、それが理解にもつながるし、疑問から問いになり聞きたい質問も自分の中で持っておけます。それが英語だと聞くことに頭のリソースを使いすぎていた。聞くことばかりで自分なりの解釈が追い付いていなかったわけです。

じゃあどうすればよかったのか、講演をどういうふうに聞けばよかったのか。あらためて考えてみると、体系だった理解のためには4つの視点が必要だったと思っています。
  1. Whyで深掘り:聞いたことについて少し立ち止まって「なぜ?」と考えてみる。言われたことを鵜呑みにするのではなく、批判的に眺めてみることも時には必要だと思っています。「なぜそう言えるのか」を積極的に考えること。こうすることで能動的な聞き方になる。Why?⇒答え(仮説)⇒Why?⇒・・と下方向に深掘りをしていくイメージです。
  2. So whatで整理する:Whyが下方向ならSo whatは上方向に向けて考えていくことになります。「要するにどういうことか」「まとめるとどう表現できるか」と自分なりに解釈/理解を整理してみる。自分の言葉でまとめてみるのがポイントと思っています。WhyとSo whatは話を体系立てて理解するためにはとても重宝する問いかけ。
  3. 自分の知っていることと比較:ものごとは何かと比較をすることで相対化され、理解がより深まります。例えば、新しく知ったことについて過去の出来事と比べてみる、似たような経験や知識があるか思い出してみる、他業界の話を自分の業界/会社とどこが同じで何が違っているのかを考える。自分がすでに持っている知識や情報と新しく聞いた内容を比較することで、記憶にも定着しやすい。
  4. 自分の意見と根拠:Why、So what、既知情報との比較、あえて言えばこれだけでは単に聞いた内容を整理しただけです。本当に自分のものとして理解するためには、「じゃあ自分はどう思うのか」まで考えること。自分の意見とその根拠や理由も考える。講演で聞いたことにすごいと感じたら、それは何がどうすごいと思ったのかの理由を自分の中で持っておく。

4つの視点を図にするとこんな感じでしょうか。聞いたことに対して上下左右に考え、そこから自分の意見・根拠を出す。

今思い返しても、参加したESOMARのカンファレンスでは講演発表を聞いている時は4つの視点が不十分でした。その結果はすでに書いた通りです。今思い返しても悔しいな、と。

あらためて考えてみると、普段の仕事で海外のパートナー企業だったりベンダーとはテレカン(電話会議)などでは英語のやりとりもするのですが、ミーティングではすぐにその場で質問したり議論したりと、聞いてばかりではなくてこちらも発言します。「なぜなのか?」と確認したり、相手の言っていることを整理する、あるいはこれまでの自分の経験と比較する。クライアントとのやりとりでは英語を聞いていると同時にこうしたこともやっていました。それに比べると、ESOMARの講演では聴きすぎてしまった。英語のリスニング自体が目的化してしまった。本来は英語は手段であり、講演内容を体系立てて理解するためのツールのはず。

今回取り上げた4つの視点は、講演だけではなくて普段の会議とかでもその場の議論やミーティング内容を自分なりに理解するのに役立つと思っています。よくやるのは、4つの視点を意識しながらノートにメモを書く。こうすると頭の中で会議で発言もしやすくなるし、内容の理解も深まります。おすすめですので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。


※参考情報
ESOMAR 3D DIGITAL DIMENSIONS 2012 (ONLINE + SOCIAL MEDIA + MOBILE) RESEARCH

2012/11/10

Suicaが実現した「未来の当たり前」

イノベーションとは何か?

自分の中の定義は「現在はない、未来の当たり前をつくること」だと思っています。現時点やその時にはないものでも、イノベーションを起こす人には見えている「未来」や「あるべき姿」、かつ人々はまだ気づいていないことを実現する。そんなイメージです。

ここ10年ちょっとくらいで人々の「当たり前」になったものに、IC乗車カードのSuicaがあります。首都圏の朝の通勤時間帯ではおそらくほぼ100%に近い人がICカードであるスイカもしくはパスモを使って改札機を通っています。

ピッ、ピッ、と通勤客が滞りなく改札機を通過する当たり前になった通勤ラッシュの風景。でもほんの10年くらい前は磁気式の定期券を改札機に入れることが普通でした。今回のエントリーでは、ちょっと前に読んだ「Suicaが世界を変える JR東日本が起こす生活革命」から、スイカの開発秘話をご紹介したいと思います。

■Why:なぜスイカは開発されたのか?

そもそも、なぜスイカは生まれたのか。開発背景は大きく2つありました。

スイカをJR東日本の経営を支える新たな柱にする必要があった:1つ目が当時のJR東日本にとって鉄道以外のビジネスチャンスをつくらなければいけない状況にありました。90年代から利用客数伸び悩む状況にあり、将来的にも人口が伸びない・少子高齢化により客数増加は期待できない。客数停滞に歯止めをかけどう利益を上げるかという鉄道事業会社としては根本的な構造問題です。鉄道と相乗効果により新たな収益源が期待できるICカードのスイカだったのです。

「改札機や券売機は本当に便利なのだろうか?」という疑問:開発背景2つ目。スイカが導入される前はほぼ全ての客が、切符や定期券を改札機に入れる⇒改札機が切符/定期を読み取る⇒客が改札機を通過する、という流れでした。ここで問題になるのが、切符や定期を一度改札機内部を通過させることでどうしても内部で詰まったり、時には自分の切符ではなく前の人の切符が出るという「ズレ」が発生することでした。切符が客の手を離れることで生じる仕組みの問題です。これが起こるとその度に駅員が対応しないといけないし、定期的な改札機内のメンテコスト負担も莫大だったそうです。こうした状況を著者の椎橋氏は「切符がよく詰まる改札機や、切符をいちいち券売機で買わなくてはならないことは、お客さまにとって果たして便利なのだろうか」という思いを抱きます。

■海外に行くと気付く日本の鉄道の特殊事業

海外旅行とかで電車を利用するとあらためて思うのが、日本との改札機の違いです。写真のような感じでスムーズに通りにくい。設計思想として切符がない無賃などの不正乗車を防ぐことを優先している印象です。人の通りやすさは二の次という感じ。あと海外には改札機のどちらの方向からでも出入りできるのがあまり見かけないような気がします。

この違いに日本の鉄道事情が見て取れます。日本の改札機では重要視している点は切符やICカード処理の正確性と何よりスピードだと思います。いかに乗客をスムーズに通貨させるか。

他にも海外との違いで感じるのは、特に首都圏ではJR以外にも各私鉄や地下鉄が多く存在し相互乗り入れなど複雑な運行、従って運賃体系も細かく複雑、朝の通勤ラッシュによる激しい混雑、時刻ダイヤ通りの正確すぎるほどの運行、等々。これら日本特有の鉄道事情はスイカ開発のハードルの高さにそのままつながったと椎橋氏は言います。

■How:スイカはどのように開発されたのか?

スイカのには5つの開発コンセプトがありました。
  1. サービスアップ:切符や定期を改札機に入れることなく通れること。いちいち切符を自券売機で買わなくてもいいこと、乗り越し時に精算のわずらわしさをなくすこと。定期券を紛失しても再発行できること。
  2. システムチェンジ:切符の詰まりのトラブルを減らし、改札機の保守業務を減らすこと。切符を買わないことで駅のキャッシュレス化とチケットレス化から駅業務のシステムを変える
  3. コストダウン:改札機のメンテ/保守コスト削減、券売機の台数減。ICカード専用改札機導入によるコスト減
  4. セキュリティアップ:キセル行為や偽造カード等による不正乗車の防止
  5. ニュービジネス:スイカというICカードにより新しいサービスや事業展開の可能性
1点目のサービスアップで顧客の利便性向上を目指しつつ、JR東の内部に抱えていた問題を解決する(2~4点目)、その上で5点目で「新しい事業の柱に」という位置づけです。

コンセプトが固まり、社内でも経営陣による開発GOが出ますが、その後の開発プロセスは苦難の連続だったことがうかがえます。こういう「今まで世の中にないもの」をゼロから生み出す新規事業開発というのは本当に難しいと思います。私自身も自分の仕事が新規事業開発にあたりますが、とにかく予想外の問題が次々に発生するもの。起こるエラーが予想できる内容ならいいほうで、想定外の問題が「このタイミングで起こるのか」という状況で起こります。スイカの開発プロセスの部分はうなづける内容が多くありました。「そうそう、問題ってこうも次から次に起こるんだよな」と。

1つ具体例を挙げておきます。スイカの特徴はネットワーク化とID管理システムにあります。スイカではシステム構造が3層になっていて、①センターサーバー、②駅のサーバー、③端末(改札機)。3つが独立で稼働しつつ、ネットワークでつながっている仕組みで専門的には自律分散システムと呼ぶそう。メリットは例えば万が一、ネットワークが切断したりサーバーがダウンしても3日間は端末だけで改札機の機能が使えること。最低限のインフラ機能は提供できます。

ただし、ネットワーク化はもろ刃の剣でもあり、開発のハードルを間違いなく上げました。これがスイカ開発の各テストを進めていく中で判明します。テストの初期段階ではなるべくシンプルなテスト環境をつくるのですが(スタンドアローン)、この段階では問題が露呈しなくてもネットワーク化を再現したテスト環境では途端に多くの問題が出てくる。それを解決しても、一般公募モニターに協力してもらったフィールドテストではまた新たな問題が発生する。机上の議論/シュミレーションでは万全のはずが、実際の現場テストでは思ってもみない問題が次々起こるものなんですよね。よくわかります。

■What:スイカは何を変えたのか?

2001年11月18日(日)。この日がスイカが導入された日です。その後、スイカはJR東日本だけではなく、JR西日本やJR東海などのJR各社でICカードの相互利用を開始しただけではなく、2007年からは首都圏の各私鉄およびバスでも連携を実現しました。

1枚のカードが乗るたびの切符を買ったり、清算も不要。同じカードが定期にもなるし乗車切符にもなる。これがJRだけではなく各私鉄やバスでも使えるという利便性はあらためて考えると公共交通を変えた存在だと思います。

またスイカにチャージされたお金が電子マネーとしても利用できることも便利です。(あまり利用しないですが)朝の売店の購買はスイカなどの電子マネーが普通に使われることでかなりスムーズになったはず。駅ナカだけではなく、町のコンビニ等でも使えるスイカ。スイカは鉄道の利便性を変えただけではなく、社会を変えました。何より、一部の人たちしか使わないのではなく、普通の人たちが普通に使えるツールにしたこと。冒頭で書いた「未来の当たり前をつくること」というイノベーションそのものです。ちなみに、スイカの普及状況はこんな感じです。


出所:おかげさまでSuicaは 10 周年を迎えます|JR東日本


■これからのスイカに期待すること

Before/Afterで便利になったスイカですが、それでもまだ改善の余地は残っていると感じます。例えばチャージ機能。現状では追加は1回では1万円までという入金額の上限があり、残高が不足する度に券売機や精算機でチャージが必要です。もちろんスイカ機能のあるクレジットカードを持つなどの対策もあるのですが。せっかくID機能を持っているわけで、スイカの考え方は事前にチャージした金額を使うというプリペイド方式ですが、使った分をまとめて請求される携帯電話などと同じポストペイ方式のほうが便利なのでは、と思います。

もっとその先には、スイカに実現してほしいのはそもそもの改札機自体をなくすこと。改札機があることで、駅では必ず人は改札を通る必要があります。駅を利用する度に改札機を通るという設計なので、改札機がボトルネックになっていると感じます。人の動線は自由度が制限されてしまっている。切符を毎回買って改札機に入れる、という当時の当たり前を変えたスイカ。これからも社会インフラという使命を果たしつつ、さらに進化を遂げるという2つの難しさを実現してほしいです。

★  ★  ★

と、言ってみたものの・・、改札機がなくなった時、前提として乗客の誰もが乗車を認識できる何かしらのIDシステムが必要になります。一方で、今後日本は外国人を観光に誘致し経済を活性化するという方向性も大事だと思うわけで、海外から日本にやってきた旅行者のことを考えると改札機を全てなくす、というのは難しいかも。


※参考情報

Suica|JR東日本
Suica|Wikipedia
おかげさまでSuicaは 10 周年を迎えます|JR東日本


Suicaが世界を変える JR東日本が起こす生活革命
椎橋 章夫
東京新聞出版局
売り上げランキング: 88969


2012/11/03

ロジカルシンキングを鍛える一石二鳥のメール術

相手に何かを伝える場合、当たり前ですが重要なのは伝えたいことを相手にどれだけ理解してもらえるかでしょう。特に仕事では、自分の考えや提案を同僚だったり上司にまずは理解してもらうこと。理解してもらって、ようやくその考えが妥当なのか、提案方針で進めるかどうかの判断ができるようになります。

相手に理解してもらうというのは2つあって、正確な理解と、いかに早く理解してもらえるか。そのためには伝える内容が論理的かどうかが大切なポイントです。ロジカルシンキングができているかどうか、とも言えます。

では、ロジカルシンキングとは何か。一言で表現すると、ピラミッドをつくることだと思っています。ここで言うピラミッドとは二次元を想定していて、ピラミッドをつくるには縦と横が構成要素となります。縦とは、例えば結論-根拠の組み合わせがそうですね。これはAである、なぜならBだから、という関係。横とは、結論に対する根拠が複数ある場合の根拠1、根拠2、根拠3、・・、と並べること。図にするとこんなイメージ。



いかにピラミッドをつくるか、ピラミッドの構成要素としてタテとヨコをきっちりとつくれるか。これがロジカルシンキングに求められることで、論理的な考え方や文章には例外なくきれいなピラミッドがあります。

■論理的かどうかを判断するのは受け手である

もう少し「論理的とは何か」を考えてみると、「論理的かどうかはそれを受け取る側が判断するもの」だと思っています。これは伝えたい内容を理解するのは相手、というある意味自明なことにも通じるのですが、いくら自分が論理的と思っていても、相手にとっては必ずしも論理的であると限りません。

受け手側が論理的なのかを判断する点に、ロジカルシンキングの難しさがあると思います。だから同じことを論理的に考えピラミッドをつくっていく場合でも、背景や状況をあまり共有できていない相手にははとても細かいピラミッドで説明する必要があるし、前提や知識レベルが同じであれば、ざっくりとしたピラミッドでも十分伝わる。相手の理解と、そもそもの相手を誰に設定するか、ここが実はロジカルシンキングの肝だと思っています。

自分の中では論理的につながっていたとしても、相手にとっては①「本当にそうなのか?」と思った場合、②「本当にそれだけなの?」と思った場合。①の本当にそうなのか?は縦の論理が相手には伝わっていないことになるし、②の本当にそれだけなの?は横の論理が伝わっていない状況。伝わっていない、というのは2つあって1つは自分には当たり前のことなので省略しているケース、もう1つは自分でもしっかり考えていなくて抜けているケース。ロジカルシンキングの難しさは特に後者の場合にあるのではないでしょうか。

■ロジカルシンキングを鍛えるメールの工夫

ではどうすればよいか。これはもう受け手である相手のことを徹底的に考えるしかないように思います。相手の立場で考えること、相手の置かれている状況や立場はどうか、背景や知識などの情報レベルは同じか、などなど。

「自分がその人だったらこれをどう思うか」。相手視点というこの意識を持って考えるだけでも違ってくるのではないかと思います。身近なトレーニング方法としては、仕事で出すメール。メールって普段は何気なく使うツールだと思いますが、論理的思考を鍛える絶好のチャンスです。メールを書く時にピラミッドを意識する、相手の視点で考える、書いたメールを読み返す。こんな感じの少しの工夫で、相手に伝わるメールになるだろうし、自分のロジカルシンキングも鍛えられる。いくつかメールを書く時に意識していることを書いておきます。
  • メールを出す目的は明確か?:意外に見落としがちなのですが、そもそもなぜメールを出すのかという目的を明確にするのが1つ目のステップ。単に報告等の情報共有だけのためなのか、わからないことを聞く質問のため、相談したいのか、何かを依頼するメールなのか。で、こちらの意図に対して相手に何を望むのかも大事で、読むだけでよいのか、返答が欲しいのか、それとも依頼したアクションを起こしてほしいのか。メール出す目的は、こちらの意図×相手の行動の2つで考えるとよいです。
  • メール内容をピラミッドで考える:メールの構成としては、一番上に最も伝えたいキーとなるメッセージ、その下に根拠だったり、依頼したいことの具体的な内容が続きます。キーメッセージと根拠という縦の論理と、複数の根拠が漏れなく並んでいるとい横の論理。メールを書く前に頭の中でピラミッドを組み立ててみるだけでも、書きあがるメール内容は違ってくるし、わかりやすいメールにできると思います。
  • 相手視点で件名を書く:相手の立場に立ったメールをつくるために、工夫できることは色々あります。まず、メールの受け手側にとってはメールを受信したら何をするかというと、送信者と件名を見て、そのメールを読むべきかどうか、読む場合は今すぐか・後でいいのかを判断するはずです。工夫できる1つ目は件名で、ここはピラミッドで考えた一番上にあるキーメッセージの要約が望ましいと思います。かつ、相手に何をしてほしいかがわかる件名。共有なのか、依頼なのか、相談なのかが件名からわかること。パッと見た時の件名のわかりやすさも大事。
  • 相手視点でメールを書く:メールで目的がはっきり書かれ、ピラミッドがもとになった文章構成や件名になっていること。もう1つ重要なのは受け手側が何をいつまでにしなければいけないのかも書いておくこと。依頼する場合は今週中に結果を報告してほしいとか、自分の質問に対して明日までに回答が欲しい、など。受け手側のNext Stepが書かれていると読む側としてもこちらが伝えたいことが最後まで理解してもらいやすくなると思います。
以上のことを意識して実践してみるだけでも、メールも見違えるような上達が期待できるはず。自分のロジカルシンキングが鍛えられるだけではなく、仕事もより円滑に進むようにもなるという一石二鳥だと思うので、メールの書き方を工夫してみて損はないと思います。

★  ★  ★

今回のエントリー内容で伝えたかったことをまとめておくと、
  • 自分が伝えたいことを相手に理解してもらうためには、ロジカルシンキングが重要。ロジカルシンキングとはピラミッドで縦と横の論理構成ができているか
  • 論理的か否かは相手が判断することである
  • 日々のメールはロジカルシンキングを鍛える良いツール。相手視点でいかにメールを書けるかで、ロジカルシンキングが上達するだけではなく、仕事も円滑に進むように


関連本はこちら、ロジカルシンキングについて実践法がわかりやすく書かれています。

入門 考える技術・書く技術
山崎 康司
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 3264


この本のもとになっているのが、ロジカルシンキングで世界的なベストセラーであるこちらです。

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則
バーバラ ミント グロービスマネジメントインスティテュート
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 1168


2012/10/27

KOMTRAX:コマツ建機の美しいビジネスモデル

ビジネスモデルが成り立つ条件として、以下の2つが重要だと考えています。

  • エンドユーザーや顧客に既存のモデルよりもより高い価値/低いコストが提供される
  • ビジネスモデルの関係プレイヤー(ステークホルダー)全員にWin-Winが成立する

最近読んだ「なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編」という本で取り上げられていたビジネスモデルの1つに、小松製作所の仕組みがありました。

日本の世界に誇る建設機械・重機械メーカーで Wikipedia を見ると、建設機械の日本でのシェアは1位、世界で2位です。日本以外にも南北アメリカ、ヨーロッパ、CIS、中近東、アフリカ、東南アジア、オセアニア、中国にグループ企業を展開しています。TOPIX Core30 銘柄の一社に選ばれています。

紹介されていたコマツのビジネスモデルは、KOMTRAX(コムトラックス)という IT サービスを中心にしたものです。

そこには、建機というモノの販売からもう一歩踏み込んだ秀逸なビジネスモデルがありました。今回のエントリーでは、冒頭で書いたビジネスモデルが成立する2つの要素について、コムトラックスを例にして考えてみます。

2012/10/20

裸踊りと桃太郎から考えるリーダーシップ論



最近リーダーについて考える機会があったのですが、あらためて思ったのは「リーダーとは結果論」だということです。

リーダーは英語ではleaderと書き、何かをリードする、誰かをリードするという意味です。つまり、リードされる人とリーダーはセットであり、リーダーについていく人がいて初めてリーダーが成立します。もう少し踏み込んで考えると、リーダーはフォロワーがついた結果としてリーダーになるのであり、(将来的に)リーダーになる人も何かの行動を起こした始めの時点ではまだリーダーではない、と言えると思っています。

■1人のバカをリーダーへと変えるのは最初のフォロワーである

リーダーとフォロワーの関係を的確に説明するプレゼンがあります。TEDの「How to start a movement(社会運動はどうやって起こすか)」。言葉であれこれ説明するよりも、実際にプレゼンの様子を見てもらったほうがよいのですが、わずか3分ほどのプレゼンでわかりやすくリーダーとフォロワーについて紹介されています。

デレク・シヴァーズ 「社会運動はどうやって起こすか」|TED


プレゼン内容を一言でまとめると、「最初のフォロワーの存在が1人のバカをリーダーへと変える」。

プレゼン内で紹介される動画では、ある男性が上半身裸で1人踊っているところシーンから始まります。傍から見れば単にクレイジーな人にしか見えません(笑)。しかし、ここで別の1人がダンスに加わります。次第にダンスへの参加者が増えていき、途中からは我先にと次々に人々が踊りの輪に参加していく。始めは1人で踊っていたところに、フォロワーがついたことで裸踊りを始めた男性はリーダーになったのです。これ、まさに「リーダーとは結果論」だなと。

■桃太郎に見るリーダーとフォロワー

後にリーダーとなる立場でも行動開始した時点では1人、その後にフォロワーがつくことでリーダーになる。このあたりがうまく描かれているのが、おとぎ話の桃太郎だと思っています。

桃太郎のあらすじは、桃から生まれた桃太郎は人々を苦しめる鬼ヶ島の鬼を退治するために旅立ち、途中で出会う犬・猿・きじを仲間にする。鬼ヶ島の鬼を退治し、桃太郎は鬼たちが人々から奪っていた財宝を持ち帰り、おじいさんとおばあさんと幸せに暮らす。そんなストーリーです。

鬼退治に出かけると決意した時点では桃太郎はまだリーダーではありませんでしたが、その後、鬼退治をするという桃太郎の思いと、キビ団子というインセンティブもあり、イヌ・サル・キジというフォロワーが生まれる。結果、桃太郎は2匹と1羽を鬼退治という共通の目標に向かって先導するリーダーになったのです。

■リーダーシップを身につけるための3つのこと

ここからは、どうやってリーダーシップを身につけていけばよいかを考えてみます。リーダーの要素を3つ挙げるとすると、以下と思っています。
  • 構想力
  • 決断力
  • 人間力
構想力:リーダーとは目標やゴールという未来に向けて先導する人。だからこそ、いかに未来という夢を描けるかが大事です。それもなるべく鮮明に、具体的なイメージとして。未来を絵にするためには、その未来が自分の中で見えていないといけません。もう少し言うと、他の人には見えていないものがリーダーとなる人には見えている必要があります。

描いた絵を自分だけで終わらせずに、人々に示し、語ること。人々にはまだ見えていない/気づいていない未来なので、始めは受け入れられないかもしれません。始めは単なるバカに映ることもあり得ます。ここで大事なのが「最初のフォロワーの存在が1人のバカをリーダーへと変える」。未来を示し続けることで共感してくれるフォロワーが生まれることで、1人の夢がみんなの夢になる。この瞬間にその人はリーダーになるのです。

決断力:誰が考えても答えが1つしかないような場合はリーダーは特に不要でしょう。答えのない状況こそ、リーダーが必要になると思っています。よく思うことなのですが、大事な決断を迫られる場面に限って、AかBで甲乙つけがたいもの。ほんと50:50という感じに見え、それを51:49にいかに決断できるかが問われます。トレードオフの世界で、選ばない選択肢をいかに捨てるか。どれだけ腹をくくれるかがリーダーには求められると思っています。

人間力:リーダーとはフォロワーという存在がいてはじめて成立するもの。フォロワーの立場からすると、この人ならついていっても良いと思える魅力。魅力的な人間であることもリーダーの大事な要素です。どこか人を惹きつける魅力がある、リーダーシップとは人間力に尽きると言ってもいいかもしれません。

人間力と一言で言っても多様なもので、未来を語ること自体が魅力的に映るかもしれないし、始めに起こした行動がフォロワーを惹きつけるのかもしれません。大事な場面での決断や責任感、あるいは人々を明るくさせるユーモア、うそをつかない誠実な態度なのかもしれない。人間力とはよく考えればすごく抽象的な表現です。人としてこうあるべきという絶対的な指標があるわけではないですが、自分なりに人間力を高めていきたいと思っています。

★  ★  ★

リーダーシップとは、もしかすると3段階に分かれるのかもしれません。行動を起こすという自分自身をリードする段階、次にフォロワーとなる人を巻き込んでいく段階、最後に共感してくれたみんなを未来に導いていく段階。であるならば、大事なのは、まずは自分で第一歩を踏み出すちょっとした勇気。


※参考情報
デレク・シヴァーズ 「社会運動はどうやって起こすか」|TED
Derek Sivers: How to start a movement|TED

2012/10/13

「沈黙を破り、今すべてを語る」:本田圭佑への独占インタビューがおもしろい



サッカー日本代表の本田圭祐選手へのインタビュー記事をご紹介します。

『沈黙を破り、今すべてを語る』 本田圭佑 独占2万字インタビュー全公開|SOCCER KING

2万字インタビューとあるように掲載量は多いのですが、読んでいて長いとは感じなく、読み応えのあるインタビュー内容です。

■「問い」がインタビューをおもしろくする

インタビューは、サッカーのプレーの話から始まります。テーマは「ボールをもらう前の動きの質」です。ボールを持っていない時に、いかに相手選手のマークをかわしてフリーになるかんついて、本田選手のプレーの以前と現在との変化に迫ります。

本田選手がどう考え、何を目指しているかがよくわかる内容でした。インタビュアーの質問が非常によかったからです。

2012/10/06

ぼんやり頭にさようなら。脳が冴える日常生活のちょっとした工夫

最近なんとなく頭がぼんやりする。集中力が続かない。記憶力が衰えたような気がする。そんなふうに感じること、あったりしないでしょうか?

こんな状況をなおすには一時的な脳トレではなく、日常生活の少しの工夫次第で脳にとって良い習慣を身につけることができる。ちょっと前に読んだ「脳が冴える15の習慣―記憶・集中・思考力を高める」という本には、そのための具体的な方法が書かれていました。誰にでも簡単にできる方法が多く載っていて、実際に自分の生活に取り入れてみると確かに効果が実感できたので、いくつかをご紹介します。

2012/09/29

Googleの自動走行車は普及するのか?

グーグルは先日25日、研究を進めている自動走行車について「5年以内に一般の人が利用できるようになる」との見通しを示しました。



以下は、日経産業新聞の記事引用です。(2012年9月27日)
グーグルは2010年に自動走行車の開発に着手。これまでに30万マイル(約48万キロメートル)の走行試験を実施した。この計画を担当するブリン氏は「視覚障害者など自動車の恩恵に浴していない人の生活を改善できる」と指摘。交通事故の減少や渋滞緩和にも効果があると説明した。実用化に関連しては「センサーの性能向上などが課題となる」という。自社製造ではなく、自動車メーカーへの技術供与を検討している。
5年以内というともうすぐという感じです。ちなみにブリン氏の「5年以内に一般の人が利用できるようになる」というコメントは、アメリカ・カリフォルニア州知事がグーグル本社を訪れて自動走行車の公道走行試験を後押しする法案に署名したのですが、その時の式典後に開いた記者会見でのもの。アメリカでは公道を自動走行車が走れるよう法案ができているのです(一部の州に限りますが)。

■自動走行車が普及するための条件・ハードル

ただ、テクノロジーで自動走行車が実現しても、実際に普及させるには様々なハードルがあります。いくつか思いついたものを書いておくと、

1.安全性:自動走行車は本当に人の運転に比べて安全なのか。「自動走行車は安全」という認識が人々の中に定着するのは普及への絶対条件だと思います。ただ、グーグルはすでに48万kmをテストしていること、他には飛行機なんかは自動運転とパイロットとの手動運転を組み合わせていることも考えると、自動走行は人の手で運転されるよりも安全性は高いのではと思います。あとは普通の人々が、人間が運転しない自動走行を心理的に受け入れるようになるかどうか。

2.利便性:車を運転できない人も自動車の恩恵を受けられるようになる、渋滞や交通事故が減少する、自動運転により省エネドライブができガソリン消費が抑えられる、予定時間通りに目的地に到着する、人のドライブよりも自動走行のほうが早く目的地に到着(?)、といった利便性が感じられること。

3.価格:グーグルの自動走行車のビジネスモデルは技術・ライセンス提供と読み取れますが、自動走行車の価格は現行の車と同程度か、高くなったとしても許容範囲内なのか。

4.法律:自動走行車が公道を走ることを可能とするように法律も見直すことになる。あとは自動走行車のナンバーも、それとわかるものになるのかも。

5.使用条件:自動走行車を使う時の使用条件も詰める必要がありそうです。誰も人が乗らない完全無人走行を許すのか、(運転はしなくても)同乗者は1人以上必要とするのか。同乗者は免許を持っている人とするのか。同乗者が居眠りしていると居眠り運転、同乗者がお酒を飲んでいると酒気帯び運転、とか。このへんは法律とも関連しそうです。ただ、同乗者=免許保有者という条件になると、今は車を運転しない/できない人への恩恵に制約がでそうです。

6.違反や事故の責任:自動走行車で万が一の事故が発生した場合、その責任は誰が取るのか。技術提供をしたグーグルなのか、自動走行車を販売した車メーカーなのか、自動走行車の保有者なのか、同乗者なのか。このあたりも明確化必要。

7.保険や車検:自動車保険の仕組みも新たに設計し直すことになりそう。それと車検も検査項目が増える。

8.国ごとで統一できるか:日本ではあまり考えなくてもよさそうですが、ヨーロッパとかは国境をまたいでの走行も普通にありそうなので、各国で法律や使用条件などを統一しておかないと不便そう。

以上がざっと考えられる普及条件です。

■自動走行車はどのセグメントで普及するのか

以上の普及へのハードルが解消されるとして、次に考えてみたいのがどこで普及するのか。自動走行車は自動車利用のどのカテゴリーと相性が良さそうか、ということ。

まずはカテゴリー分けですが、大きくは個人利用と業務利用に分けられます(他にはレースなどの特殊利用もありますが割愛)。個人利用を考えてみると、移動や運搬としての「手段」か、走ること自体が楽しいなどの「目的」か、どちらの要素がより強いかで利用シーン分けられます。ドライブ自体が目的であれば自動走行車へのニーズは小さいので、手段としての車利用に自動走行車は使えそうです。

ただ、個人的には自動走行車が普及するのは、まずは業務用のほうではないかと思っています。業務用のカテゴリーを考えた時に
  • 配達やコンビニ配送車・工場出荷物などのモノを運ぶ物流
  • バス・タクシーや救急車などの人を運ぶ
  • 警察車両・消防車や清掃車などの治安維持系
これらの業務用のうち、定型的な使われ方をするものが自動走行車とマッチしそうに思います。定型的というのは、毎日決まったコースでモノを届けるなどで、工場-販売先などの物流や定時で各駅を回るバス、清掃車なんかも掃除する道は決まっていそうなので、このあたりは自動走行車が使えそう。

シナリオとしては、業務用で自動走行車が普及していき、価格も下がっていく。そのうちに人々の中にも自動走行車への心理的な抵抗が薄れていって個人でも自動走行車を使う人が出てくる。有人走行車がゼロになることはないと思いますが、純粋に車の操縦を楽しみたいというドライブニーズ以外は自動走行車に取って代わる未来もあり得そうです。

■普及した時の自動走行車の恩恵

では、自動走行車が普通に走る未来は良いシナリオなのか。普及した時の私たちの恩恵としては、

1.運転からの解放:車の運転自体をあまり純粋に楽しめない人、つまり移動や運搬の「手段」と捉えている人にとっては、車を運転する時間を他に使えるメリットがあります。渋滞が緩和されるだけでも社会全体への恩恵は大きいように思います。

2.交通事故や環境負荷の減少:これも社会全体への影響は大きいです。自動走行になることで、自動車による死亡や怪我、物品破損等のマイナスが減ることは期待したいです。また、ガソリンや電気等の消費エネルギー量を抑えられればそれだけ環境への負荷は小さくなります。ただ、これまで電車を使っていた人が新たに自動走行車を使うようになると、環境への影響減少と単純には言えなそうですが。

3.移動手段の獲得:車の運転をしない/できない高齢者や体に不自由な方などへの恩恵。

これらが自動走行車に望むこと。実際に自動走行車が普及するには、テクノロジーの進化よりも社会や人々が受け入れるかが一番のハードルと思います。自動走行車によって、個人レベルのメリットからより良い社会が形成される。そんな未来を期待しています。


※参考情報
グーグルの自動運転車、5年以内に一般利用を可能に--ブリン氏発言|CNET Japan
米グーグルの自律走行車、カリフォルニアでも公道走行が可能に|AFPBB News

2012/09/22

アイデアは組み合わせ:モノから情報への価値転換時代だからこそ覚えておきたい原理



社会構造を大きな視点で見ると、いくつかの変換点を経て今に至っています。梅棹忠夫は著書「情報の文明学」において、人類の産業の展開史は三段階を経たとしています。①農業の時代、②工業の時代、③精神産業の時代(以下、情報産業とします)。

梅棹の説明でおもしろいのは、農業・工業・情報産業を、生物学の比喩(メタファー)を使っている点にあります。受精卵が生まれ人間の身体が形成されるまでの、内胚葉、中胚葉、外胚葉の3つの段階です。ちなみに、内胚葉からは胃・腸などの消化器官、中胚葉からは骨・筋肉・血管、外胚葉からは脳神経や感覚器官がつくられます。社会構造変化の過程を、農業=内胚葉、工業=中胚葉、情報産業=外肺葉、となぞらえている。ここが梅棹の説明のユニークな点であり、おもしろいと思わせるアイデアの組み合わせなのです。

■S字波モデルから考える社会構造の変化

では、農業⇒工業⇒情報産業の移り変わりはどのように進んできた/進んでいるのか。これを考えるのに参考になるのが、書籍「情報社会のいま ―あたらしい智民たちへ」に出てくるS字波モデル。本書では、近代化の過程を軍事社会⇒産業社会⇒情報社会の3つに分けていますが、興味深いのはそれぞれが重なり合いながら変化してきている点です。

引用:書籍「情報社会のいま ―あたらしい智民たちへ」(公文俊平 NTT出版)

この図で太字で示されている近代化過程を分解すると、小さなS字波である軍事化・産業化・情報化になるのですが、現在図の縦の点線が示す通り、軍事化の定着、産業化の成熟、情報化の出現という3つの局面が同時に起こっています。注目しておきたいのは、特に産業化(工業化)がある程度発展しきって成熟に向かっていることと、情報産業化社会が今後急激に発展していくこと。

■モノから情報へ

工業化⇒情報化はどのような社会変化をもたらすのか。この点を詳しく書いているのが最近読んだ「モノから情報へ (-価値大転換社会の到来)」という本でした。本書の主張は「情報の価値がこれまでのモノに取って代わって、大きな役割を果たし始めている」というもの。

情報の価値の特徴に、モノの価値と比べて相対性が強いことを挙げています。情報の価値は受け手や、受け手自身の環境など、同じ情報でもTPOによりその価値が大きく変わります。例えば、ニュース記事もその問題/領域に関心がある人とそうでない人とでは、重要度が異なります。あるいは、リリース直後に読むのと、後から時間が経ってから知るのとでは情報の鮮度が違います。つまり同じ情報でも価値が異なる。もちろん、モノの価値も使い手によって変わりますが、より価値の相対性が強いのは情報のほうでしょう。

もう1つ、本書の指摘でおもしろかったのは、「情報の価値は組み合わせによって生まれる、組み合わせは相手を選ばない」、というもの。モノとモノの組み合わせパターンに比べて、情報や知識の組み合わせは多く、組み合わせから生まれる価値をいかにうまく活用するかという指摘です。その意味では、よく言われるクリエイティブ力とは、「それぞれの情報要素の関係を見極め、その関係性から新たな価値を生み出す/組み合わせる力」と言えます。

■アイデアは組み合わせである

情報の価値は組み合わせから生まれるというのは、名著「アイデアのつくり方」に書かれていることと同じです。本書では、アイデアをつくるための原理を、①アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない、②既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きい、としています。要するに、アイデアは組み合わせであり、そのためには関連性を見分ける才能が重要ということ。

そして、アイデアを生み出し具体化する方法が以下のプロセス。
  1. 資料・データ集め
  2. 資料・データの咀嚼
  3. 問題を放棄し、心の外にほうり出してしまう
  4. アイデアの誕生
  5. アイデアを具体化し、展開させる
興味深いのは3⇒4の部分で、情報を頭で理解・咀嚼した後はいったん置いておくこと。その間にアイデアが組み合わさり、誕生するのを待つ。「アイデアのつくり方」の原著の初版は1940年に出ていて、今なお読み継がれることは考えさせられるものです。

アイデアは組み合わせであり、いかに組み合わせるかがアイデアの価値の肝になります。そこで自分自身が意識しているのが、異なるものの共通点や類似点を考えてみることだったりします。以前のエントリーでAmazonとサザエさんに出てくる三河屋のサブちゃんの共通点を書いたことがあります。(参考:「仕組みの問題」で考えるAmazonと三河屋のサブちゃんの共通点|思考の整理日記

アマゾンに限らずレコメンドはいかに各ユーザーのことを知ることが重要になります。まずは性別や年齢などの基本属性情報、何が好きかなどの趣味・嗜好の特徴、そしてどんな行動をする人なのかの行動履歴。これらの情報をいかに集め、そこから何をレコメンドするか。

この点をアナログでうまくやっているのがサブちゃん。サブちゃんの登場シーンで思い浮かぶのは、「そろそろお醤油が切れかける頃だと思って持ってきました」と台所の勝手口に現れる。サザエさんも「ちょうど良かった。お醤油が切れかけてたの。 お味噌もいつものを持ってきてくれるかしら」と、追加で味噌も注文する。これはサブちゃんがサザエさん一家を知り尽くしているからこそなのです。

何も言わなくとも一回に頼む醤油の量も、どんな醤油が好みなのか、そろそろ醤油が切れかけていることも把握している。だから、頼まれなくても勝手口に現れて、「そろそろお醤油が切れかける頃だと思って持ってきました」というタイミングの絶妙さです。購買情報やユーザーの嗜好を知り尽くすことでタイミングよくレコメンドし、+1の商品も買ってもらう。アマゾンと三河屋のサブちゃんの共通する仕組みです。

表面的な違いではなく、仕組みに着目してみる。構造が見えてきたら、他の分野で当てはまらないかを考えてみる。これこそが、アイデアの組み合わせ具体例の1つだと思っています。冒頭で書いた梅棹が、農業⇒工業⇒情報産業の構造と、内胚葉⇒中胚葉⇒外胚葉の受精卵の成長過程の仕組みを組み合わせたように。


※参考情報

複雑な社会変化をシンプルに見せるとっておきのS字波モデル|思考の整理日記
梅棹忠夫とドラッカーから考える情報革命のこれから|思考の整理日記
アイデアをつくるシンプルな原理と方法|思考の整理日記
「仕組みの問題」で考えるAmazonと三河屋のサブちゃんの共通点|思考の整理日記


情報の文明学 (中公文庫)
梅棹 忠夫
中央公論新社
売り上げランキング: 41398

情報社会のいま ―あたらしい智民たちへ
公文 俊平
エヌティティ出版
売り上げランキング: 315390

モノから情報へ (-価値大転換社会の到来)
佐藤 典司
経済産業調査会
売り上げランキング: 21193

アイデアのつくり方
アイデアのつくり方
posted with amazlet at 12.09.22
ジェームス W.ヤング
阪急コミュニケーションズ
売り上げランキング: 630


follow us in feedly このエントリーをはてなブックマークに追加

Facebook Page

バックナンバー

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...