2012/01/28

重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化

最近よく思ったり実感したりすることに、今後の方向性として「パーソナライズ化」があります。パーソナライズ化とは、「あなただけにカスタマイズされたサービス」というイメージ。今回のエントリーではパーソナライズ化というキーワードで少し考えてみます。

去年の後半ぐらいから、それまではRSSやツイッターが中心だった情報収集ツールに加えて新しいツールを使いだすようになりました。具体的には、Flipboardvingowzite。特にziteは重宝してます。


ziteはiPhone/iPad用のアプリで、パーソナライズ化されるデジタルマガジンアプリです。自分の興味あるテーマの記事を自動的に集めてくれるもので、例えば「ソーシャルメディア」、「モバイル」、「マーケティング」、「Google」、「Facebook」などのキーワードで登録しておくと、関連する記事が表示されます。

■ziteのここがすごい

ziteを気に入っている理由を一言で言うとパーソナライズされている実感があるからです。ziteの仕組みですが、初めて使う登録時にツイッターやGoogle readerと連携させることで、自分がフォローしている人のツイート内にあるウェブページや、Googleリーダーで登録しているRSSフィードを取り込むことができます。さらにこれがziteのすごい点ですが、ziteを使い続けることでさらにパーソナライズ化されていく仕組み。zite内で実際に読んだ/読まなかった記事が記録されその情報から各ユーザーの関心の領域を把握するようです。これによりツイッターやRSSにない記事でも、関心のあるテーマと判断される記事が集まってきます。ちなみに、各記事の下に親指の上下マークがあり(いいねボタンみたいなイメージ)、その評価も記事選定の情報になります。

ユーザーがzite内での記事閲覧行動履歴データを集め、独自のアルゴリズムでパーソナライズ化してくれ、使えば使うほど「あなただけのデジタルマガジン」になる。雑誌には編集者がいますが、ziteの編集者は行動履歴データに基づくアルゴリズムなのです。従来はRSSを使う時間が少しずつziteをにシフトしてきています。それに合わせて、RSSの登録数も減らしました。ziteはツイッターとかフェイスブック投稿、メール送信もできるので、おもしろかった記事はツイッターにシェアしたり、仕事に関係しそうな記事は会社のメールアドレスに送ったりと重宝してます。

■パーソナライズ化する電話、されていないTV

パーソナライズ化という視点で見ると、例えばスマートフォンは自分の好きなアプリをどんどん追加していくことで、外見は同じiPhoneでも中身は全く違ったりすることがよくあります。入っているアプリが違えば使い方も変わってくるので、「あなただけのスマートフォン」という状態です。携帯電話がなかった時代は電話と言えば家の固定電話か公衆電話で、そこにはパーソナライズの要素はほぼゼロでした(娘が自分専用にしていた子機くらい?)。それが携帯電話が普及し1人1台状態になり、スマホとアプリでパーソナライズの方向に進んでいることがわかります。(個人的にはスマホを「電話」のカテゴリーとして捉えるのは違うと思っていますが、これは別の議論なので省略)

一方、パーソナライズ化がほぼ進んでいないと思うのがテレビ。固定電話-携帯-スマートフォンの流れと比較するとよくわかりますが、未だにテレビは誰が見ても同じ番組しか選べないものです。つまりリビングにあるテレビは固定電話、自分の部屋にあるテレビはせいぜい子機みたいなもので、携帯でワンセグ機能があるとはいえ、電話に比べるとパーソナライズ化が全くといって実現されていない状態。

■これからのTVはこうなってほしい

逆に言うと、ここにテレビの可能性があるのではと思っています。デバイスとしては同じテレビなんだけど、使う人(TVの前に座る人)によっておすすめされる番組が違ってくるイメージ。理想的には、各個人の好きなジャンルや(属性データ)、これまでにどんな番組を見たか(視聴行動履歴データ)、あるいはフェイスブックなどのSNSでの友達のやりとりも参考にする(ソーシャルデータ)。上記のziteのように使えば使うほど、つまり番組を見れば見るほど「あなただけのテレビ」になっていく。近い未来には当たり前になっていてほしいテレビです。

これからのテレビを考える時に、単に物理的な機械(デバイス)というハード面だけの視点では不十分だと思います。デバイスも含めた4つの層で考えることが重要だと思っていて、それぞれ、プラットフォーム層、デバイス層、アプリケーション層、コンテンツ層です。この4層をテレビに当てはめた場合にどこでパーソナライズ化できそうかというと、アプリケーション層かプラットフォーム層だと思います。アプリでTVのパーソナライズ化するにはテレビ番組が見られるアプリがあり、そのアプリが上記の属性データ、TV視聴行動履歴、ソーシャルと連携することです。

アプリ層より難易度は上がりますが、プロットフォーム層でのパーソナライズ化の実現も考えられます。具体的にはFacebook上でテレビ番組が見られるようにし、FB上のあらゆるデータと連動させる。これを突き詰めていくと、自分の興味あるTV番組や、ネット上の動画などあらゆるコンテンツから各ユーザーに最適化された(関心の高い)ものをすすめてくれたり、選んだりできるTVです。

今回のエントリーではパーソナライズ化という視点でいくつか例を書きましたが、個人的にはパーソナライズ化は今年のキーワードになりそうだなと注目しています。


2012/01/21

「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ(In the Plex)」から考えるデータ至上主義とGoogleの描く未来

グーグルというのは、図のような無料でサービスを提供する代わりに、膨大なユーザーデータを取得し、それをさらなるサービスの利便性向上や、ユーザーデータをグーグルの主要ビジネスモデルであるネット広告事業に活かしています。この集まってくる膨大なデータ活用がグーグルの本質的な部分だと思っています。


ここ最近読んだ中ではダントツでおもしろかったものに「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ」という本があります。なぜこの本がおもしろかったかというと、書かれている内容がとてもリアルだったから。著者はグーグルの中に入ることを許可され取締役会などにも参加し、延べ数百人にもわたる関係者への取材から書かれています。だからグーグル創業から検索ビジネスはどう立ち上がったのか、検索エンジンのロジック、現在もグーグルの収益の大部分を支える広告事業はいかにして生まれたのか、自分も使っている多くのサービスのローンチ経緯、中国進出・撤退の経緯、等々、その時々に何を考え、どう意思決定しその後のプロセスがどうなったかが生々しく描かれています。著者がグーグルという巨人の内側に密着取材をしたからこそ完成したドキュメントであり、グーグルの歴史がよくわかりました。

で、あらためて考えさせられたのが上のモデル。他にも本書から考えたことはあるのですが、今回のエントリーではグーグルとデータというテーマに絞って書いてみたいと思います。

■Googleのデータ至上主義

本書で印象的だったことの1つに、何よりもデータを重視するというグーグルの考え方でした。これは「データ至上主義」と表現してもいいくらい確固たる信念のようもの。グーグルはデータからユーザーについて学び、サービスをさらに便利にし続けてきました。例えばグーグルの検索エンジン。グーグルはユーザーがどういう検索をしたのかの全ての行動履歴(ログ)を持っています。検索のために入力されたキーワード、その組み合わせ、入力された回数、検索結果のどれをクリックしたのか、など、ユーザーのあらゆる行動データが手に入る。グーグルはこれらの膨大なログを解析しユーザーを知り学ぶことで、検索精度をさらに高めています。具体的には、検索キーワードを間違って入力しても「もしかして」と正しいであろうキーワードが表示されますし、あるキーワードを入力すると関連のあるワードが自動的にいくつか表示されたりします。例えばGoogleと打ち込むと、Google map、Google カレンダーなどと自動で表示されますが、これは多くのユーザーがこのような組み合わせで検索をした結果から学んだ結果です。

もう1つ、グーグルがユーザーデータから学んだ事例としておもしろいものがありました。音声認識についてで、グーグルはあるサービスを使って人間の話し言葉をデータから学習しました。無料の電話番号案内を開始し、ユーザーが連絡したい相手の企業名などを伝えれば、グーグルは番号を教え希望すれば相手先につなげるというもの。ユーザーメリットはこれを無料で使えるというものですが、一方のグーグルはその見返りとして人間がどう発話するかを学習していたのでした。人が声で何かを尋ねる時の声のトーンや大きさ、話すスピード、聞いた言葉の認識の正解/不正解は相手とのやりとりでわかり、間違った場合は相手の反応でどこで間違ったかも判断できたそうです。こうしてユーザーから学習することで、音声認識技術に活かされるのです。

グーグルはデータを取得することで学びサービス改善や新しいサービスを開発する、それによりユーザーは利便性を享受できますます使うようになる。グーグルはさらにデータを取得する・・、という好循環があり、これが冒頭でのモデル図の意味するところです。

■Googleの描く未来

グーグルの創業者の1人であり現CEOのラリー・ペイジはグーグルの未来像について「人間の脳の一部になるのでは」と言っています。もう1人の創業者であるセルゲイ・ブリンもこれに同意し、「現時点では検索で文字を入力する必要あるが、将来的にはもっと操作を簡単にし周囲の状況から自動的に有益な情報を提示するかもしれない。最終的には脳内に機器が移植され、質問を考えただけですぐに答えを教えてくれるだろう」と語っています(本書102-103ページあたり)。

脳への移植はさすがにすぐの実現は難しそうですが、すでに自分で何を探しているのか明確でなくてもグーグルが勝手に教えてくれるサービスは提供されていることに気づきます。グーグルインスタントという機能がそれで、検索ワードを入力している最中に候補がいくつか表示され、かつ検索結果が打ち終わる前に表示されます。(参考:Google インスタント検索について|Google

■未来を描き直しはじめたGoogle

ブリンとペイジは創業当初からグーグルは人工知能の会社であると定義し、2人の目標は膨大なデータを集め自動学習アルゴリズムから処理することで、人間の脳を補強するものを開発することであったと書かれていました。グーグルが検索エンジンロジックを考案する時、検索結果の判定を人間の判断で行なうのではなく、データに基づいてアルゴリズムを活用したほうが偏見のない公平な結果が得られるはずと考えたようです。

しかし、今、グーグルは岐路に立たされていると思います。「世界中の情報を整理してアクセスできるようにする」ことを使命としていて、ウェブ上のデータをかき集めてアルゴリズム処理から実現しようと邁進してきたものの、そのために必要なのに、一部で集められないデータが増えてきているのです。それがフェイスブックなどでユーザーがやりとりする、近況や写真の共有などの情報。これはグーグルが思い描いてきた情報収集と整理をテクノロジーで実現する世界とは異なる未来でしょう。

グーグルのロジックは非常にシンプルなものでした。人々がネットを使えば使うほど、グーグルの提供する検索などのサービスを使う機会も増えユーザーの役に立つことができる、そして、そこに表示される広告からマネタイズもできる。しかし、SNSで過ごす時間が増えることでネットを使うことが増えても、増加する大部分はグーグルの領域の外で、このロジックが成り立たなくなってしまうのです。

本書の最後のほうでは、グーグルの一部の社員がソーシャルの可能性に気づき、サービス開始や拡大を主張するものの、結局はグーグルという会社としては積極的な姿勢を打ち出すことはなかったことが書かれていました。そこにはツイッターやフォースクエア、フェイスブックのようなアイデアやサービスが生まれようとしていたのです。現実は、それを横目にフェイスブックは拡大を続け、ツイッターや他のソーシャルサービスもグーグル以外のプレイヤーが展開しています。

1つ前のエントリーでグーグルがなぜソーシャル検索に取り組むかを取り上げました(参考:Googleがソーシャル検索にシフトするのはウェブの世界が変わりつつあるから |思考の整理日記)。別の表現をすれば、ソーシャルというユーザー同士のつながりデータも使うという、これまでのグーグルの考え方から大きく舵を切ってきている印象です。前回エントリーで書いたように簡単なことではないと思いますが、それでもグーグルの未来はGoogle+に託されました。本書では執筆時点はグーグル+という名称はまだ明らかになっておらず、「エメラルドシー」という開発コードネームが使われていました。本書の続きは今後どうなっていくのか。これからも冒頭のグーグルのモデルが成立するのか。複数のグーグルサービスを重宝している自分としては興味深いテーマです。


※参考情報

Google インスタント検索について|Google
Googleがソーシャル検索にシフトするのはウェブの世界が変わりつつあるから |思考の整理日記
Googleが検索の歴史を6分のビデオにまとめる–9.11のときはニュースが検索できなかった!|TechCrunch Japan

グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ
スティーブン・レヴィ
阪急コミュニケーションズ
売り上げランキング: 486


2012/01/14

Googleがソーシャル検索にシフトするのはウェブの世界が変わりつつあるから

グーグルがソーシャル検索という新しい検索機能をリリースしました。
Search, plus Your World|Official Google Blog



■3つのソーシャル検索機能

ソーシャル検索とは、検索結果をパーソナライズ化(個人への最適化)することであり、同じ検索をしても人によって異なる結果が返ってくるものです。なぜ各個人で結果が変わるかというと、例えばユーザーの属性情報(性別・年齢・居住地域・等)、ネット行動情報(閲覧履歴)、ソーシャルネットワークのユーザー同士のつながりや行動(発信情報、いいね/+1)、などの情報も考慮され検索結果を返すからです。今回グーグルが発表したソーシャル検索ではGoogle+での情報を検索と統合するようで、具体的に新しく追加されたのは3つです:Personal Results、Profiles in Search、People and Page

1.Personal Results
グーグルプラス内での友人と共有している情報やグーグルの写真共有サービスのPicasa情報が検索結果として表示される機能。例えば「沖縄」と検索すると、G+内で沖縄に関する情報を発信した友人が表示されたり、友達がピカサでアップした沖縄の写真が検索結果に表示されます。これらの情報はその友達とG+でつながっていない限りは検索結果のページ上位には表示されないので、検索結果がパーソナライズ化されていると言えます。検索結果はPersonalとPublicというボタンを使い分けることで、ソーシャル検索のON/OFFができるようです。

2.Profiles in Search
これから会う人だったりの名前を直接グーグルで検索する場合、検索結果にその人のGoogle+でのプロフィール(顔写真も)が表示される機能。イメージとしてはフェイスブックの友人検索に近い感じ。

3.People and Page
検索キーワードに関係性の強い人やGoogle+ページが表示され、その場でフォローできるもの。ここで言うフォローとは、Google+のAdd to circlesのこと。例えば「Music」と検索するとMusicに関連する著名人のGoogle+アカウントやGoogle+ページが表示されるようになるとのこと。

参考記事:Googleが、Google+連携でソーシャル検索を実現。ここ数年で最も大きな検索の進化と発表|in the looop

■指摘されている問題点2つ

発表されたグーグルのソーシャル検索については、問題点を指摘する声もあります。大きくは2つで、ソーシャルの情報ソースの偏りとプライバシー。情報ソースの偏りとは、要するにGoogle+やPicasaなどのグーグルの情報のみが検索結果に反映され、ツイッターやフェイスブックでソーシャル情報は対象外となっていること。ツイッターはグーグルのソーシャル検索を公式に批判しており、「この変更はサイト運営者、ニュース事業者、Twitterユーザーその他全員の不利益になる」と主張しています。(参考:Twitter、Google+とGoogle検索との連携を激しく攻撃|TechCrunch Japan

グーグルが今回の発表を「Search, plus Your World」と表現していますが、グーグルの言うYour Worldとは結局はグーグル内の世界にすぎないじゃないか、ということ。この主張は理解できると思っていて、グーグルの使命に「世界中の情報を整理しアクセスできるようにすること」がありますが、今回整理されたのはGoogle+の情報のみ。多くの人がそうだと思いますが、ソーシャル系でよく使うのはツイッターだったりフェイスブックなわけで、その情報が検索結果に反映されないのであれば、パーソナライズ化された検索結果と言って果たしていいのかどうか。どこまで「あなただけの検索結果」を返してくれるのかに疑問だったりします。

もう1つの指摘されている問題点はプライバシーで、検索結果をパーソナライズすることで、Google+のユーザーの個人データがさらにアクセスしやすくなってしまい、プライバシー問題が生じるという懸念です。(参考:プライバシー保護団体がグーグル「Search plus Your World」に異議|CNET Japan

■なぜGoogleはソーシャル検索なのか

ここからは、「なぜグーグルはソーシャル検索を強化するのか」について考えてみます。色々考えてみて自分の現時点での結論としては、「ウェブの世界が変わりつつあり、その変化に対応せざるを得なかったから」だと思っています。

ウェブの変化について。ウェブの特徴は双方向性だと思っていますが、双方向の例として各ウェブページ同士がリンクによりつながっています。様々なページがリンクされることでページごとの関係性が見えてきます。これを検索に応用したのが、グーグルがサイトの評価に用いているページランク。グーグルがやっているのは、あらゆるサイトを自動クロールさせることで各ページ内情報とリンク情報を収集・整理(インデックス化)し、検索キーワードに関連がある順番に検索結果として表示させています。

で、変化というのは、ソーシャルメディアが広く普及したことで、ウェブの世界にはユーザー同士が直接つながるという、これまでのページ単位でのリンクとは異なるリンクが存在するようになったということです。もちろん従来もウェブ上でユーザー同士のやりとりなどのつながりは存在していましたが、ユーザーアカウントが直接つながるソーシャルグラフが形成されてきた、というのがここでいうウェブ世界での変化。

グーグルの「世界中の情報を整理する」ことを実現するためには、これまでサイト情報を収集・整理していた方法では捉えきれなくなりつつあると思います。グーグルはフェイスブック内情報を全て捕捉しておらず、ツイッター情報も10年7月でグーグルのリアルタイム検索が突然終了してしまったように検索対象としては不十分な状況です。

しかし、この状況がこのまま続いてしまうと、グーグルの情報整理の対象がウェブの一部分になってしまう。これではグーグルは困るわけです。グーグルの基幹サービスは検索にあり、グーグルのビジネスモデルは、無料で検索や各種サービスを提供⇒Googleユーザー増⇒検索結果や各種サービス(Gメール等)に連動する広告から収入を得る、という確固たるもので、このモデルは今後もしばらくはマネタイズの主役であり続けるでしょう。ところが、上記のようなウェブの変化に対応しないと、このモデルが崩れかねない状況です。だからここ最近のグーグルの動きは、これまで独立していた様々なサービスをGoogle+をソーシャルを中心に据えた統合をものすごい勢いで進めているのだと思います。大きな視点に立つと、今回のソーシャル検索も検索サービス自体をGoogle+と統合したことを意味します。
Google+でプロダクト全体最適を進めるグーグル|思考の整理日記

■ソーシャル検索への期待。理想と現実

ソーシャル検索というコンセプト自体は実現されれば便利な機能になると思います。「実現されれば」とあえて書いたのは、現時点では少なくとも自分の場合はソーシャル検索が便利とはまだまだ思えず、それは今回のグーグルのソーシャル機能も同様です。Google+でのつながりはツイッターやフェイスブックでのそれに比べて少なく、その情報が検索結果に反映されても自分の求める情報が得られるのはごくわずかなケースに限られます。すなわち、Google+だけの情報がソーシャル検索結果のソースとなるのは不十分なのです。かと言ってツイッターやフェイスブックとの連携も簡単ではない。ここにグーグルのジレンマを感じるし、だから独自のソーシャルであるGoogle+を核とした形をつくらざるを得ないのではと思います。

グーグルの理想は全世界の70億人の人々がGoogle+やグーグルのいろんなサービスを使ってくれること。そうすれば人のつながりでも世界中の情報が整理できます。一方で、それは現時点では非常に難しいことも彼らは理解しているはずで、その中でどう情報やデータを集めるのか。Google+としては単純なユーザー数を追うのではなく、グーグルサービスをG+で統合することで最低限必要なウェブの世界の情報を取ることに注力しているのかもしれません。グーグルの新しいソーシャル検索はhttps://www.google.comでしか使えない(日本のgoogle.co.jpではまだ)ので取組みとしては始まったばかりですが、検索のパーソナライズ化は今後も注目しておきたいです。


※参考情報

Search, plus Your World|Official Google Blog
Googleが、Google+連携でソーシャル検索を実現。ここ数年で最も大きな検索の進化と発表|in the looop
Twitter、Google+とGoogle検索との連携を激しく攻撃|TechCrunch Japan
Googleの言う「あなたの世界」は、Google+だけの世界|TechCrunch Japan
プライバシー保護団体がグーグル「Search plus Your World」に異議|CNET Japan
プライバシー保護団体、グーグル新検索機能の調査をFTCに要請|CNET Japan
Google+でプロダクト全体最適を進めるグーグル|思考の整理日記


Search, plus Your World|YouTube

2012/01/07

なぜゲームにハマるのかを考えるのがゲーミフィケーション理解のコツだったりする

ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足2011年の前半~中頃あたりから「ゲーミフィケーション」という言葉を見かけるようになりました。始めは海外の記事でちらほらと出始め、その後は日本語でも目にするようになっていった記憶があります。2012年になり、今年のキーワードはゲーミフィケーションという意見もあるようです。

記事としてエントリーをするきっかけになったのは、「ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足」という本を昨年末に読んだことでした。この本のタイトルにもあるソーシャルゲームについてや、ゲーミフィケーションについて体系的にまとめられていて基本的な内容を理解するのには良い本だと思います。

■ゲーミフィケーションとは何か

まずはゲーミフィケーションの定義から。「Game-Based Marketing」の著者Gabe Zichermann氏によれば、ゲーミフィケーションは次のように定義されているようです。「ゲーミフィケーションとは、ゲーム的思考やゲームメカニズムを使って問題を解決したりユーザを盛り上がる仕掛けのことである」(p.216)。この翻訳は著者によるもので、原文はこちら:Gamification is the process of using game thinking and game mechanics to solve problems and engage users.

個人的な理解としては、要するにゲームのメカニズムを使ってユーザーのモチベーションをを高めること。自分自身、ゲームに夢中になったことが子どもの頃にありましたが、あの時間を忘れてゲームに「ハマる」というメカニズムを様々なものに応用しようという考え方です。

Gamificationという単語の形から単に「ゲーム化」という日本語として当てはめてしまうとゲーミフィケーションへの理解をミスリードしてしまうと思いました。例えば、既存のサービスにむやみにゲームのような競争要素を追加、ランク付けをする、バッジを与えるというようなことを導入するだけでは、ゲーミフィケーションの効果も限定的でしょう。「ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足」という本では、このあたりも具体的な事例も織り交ぜてわかりやすく書かれています。

■ゲームのプレイサイクル

ゲーミフィケーションを考えるうえで、まずはゲームのメカニズムを理解することが大切だと思いました。そこで、ここからは本書で説明されていたゲームメカニズムについて書いておきます。まず、本書でゲームの基本サイクルとして提示されていたのが下図になります。これはあらゆるゲームで適用されるサイクルだと思い、ゲームメカニズムの理解に役立ちます。

引用:「ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足」

ユーザーにとって、ゲームをする目的があります。目的は単に暇つぶしなのかもしれないし、もう少し明確にゲームをクリアすることかもしれません。で、目的を達成するためには大小さまざまな目標が設定されています。クリアに必要なアイテムを獲得することなど。目標を達成するために、ユーザーに行動の選択をしてもらいます。例えば、アイテムを探してゲットしてもらうなど。アイテム獲得が難しくなりすぎず簡単になりすぎないような行動選択の設計が大事になります。こうして目標を達成させることで、次のプレイサイクルに入ります。ゲーム設計として望ましいのは、初めてプレイする初心者のプレイサイクルから始まり、中級者~上級者のそれぞれに向けたサイクルがループするように用意されていることだと言います。すなわち、そのゲームに飽きることなく継続して遊んでくれるように。

■プレイサイクル例:「スーパーマリオ」と「釣り★スタ」

具体的なゲームをイメージしてもう少しゲームサイクルを考えてみます。パッと思いついたのがスーパーマリオシリーズ。今でも任天堂を支えるゲームソフトなわけですが、スーパーマリオブラザーズというゲームの目的は最後までクリアしピーチ姫をクッパから取り戻すことで、そのための目標が各ステージをクリアしていくことです。行動の選択は簡単に言ってしまうと、ステージを左から右に進みゴールすること。途中の様々な障害に対処しながら、時には土管に入るなどの寄り道をするなど上下移動がありますが、最終的には右へ右へ進みゴールすること(最近では3Dの要素が入り単純に左から右ではないですが話を簡単にするため2Dを想定しました)。ゴールという達成を経て次の目標(次のステージクリア)に入ります。このサイクルは次第に難しくなり、必要なアイテムや要求される操作技術も高くなります。

こうして飽きさせることなくサイクルを回し続けることで、最終的には目的を達成すること。これがスーパーマリオの基本的なプレイサイクルと言えます。一度全てのステージをクリアしてもさらに難易度の高いステージが用意されているなど、上級者にも楽しんでもらえる仕掛けもあったりします。ゲームサイクルを盛り上げる要素として、クリアする時間の制限があり、得点がプレイ内容によって変わって結果がプレイヤーに表示されたり、遊びのステージが用意されていたりなど、達成感をより満たしてくれたり、飽きさせない工夫が多く施されていることに気づきます。マリオですごいと思うのは、85年のスーパーマリオブラザーズの登場以来、基本的な考え方・コンセプトは今も色あせていないんだなと。

マリオのゲームのメカニズムを書いてみましたが、このプレイサイクルはソーシャルゲームにも基本的には当てはまります。例えば「釣り★スタ」。GREEで提供されているこのソーシャルゲームの目的は「釣りを楽しむ」としてよさそうです。ゲームを進めていくと新しい釣り場で釣りができるようになりますが、既存の釣り具ではなかなか成功しなくなります。そこで釣りポイントを稼いで、いい釣り具を獲得して今まで釣れなかった魚が手に入る、さらに次の釣り場で新しい魚に挑戦する、ゲーム開始初期ではこうしたサイクルが用意されています。

ソーシャルゲームの特徴として仲間と協力しながら遊ぶ要素がありますが、釣り★スタでもチームを組み定期的に開催される大会に出場することができます。大会で勝つためにはチームでのコミュニケーションや協力が不可欠のようですし、上位に入賞すると相応のポイントがもらえます。大会は一度きりではないので、また次もあり飽きさせることのない工夫が見られます。このように一人で遊ぶプレイサイクルに加え、チームプレイでのサイクルも効果的に用意されています。

■プレイサイクルを効果的に回す「可視化」と「フィードバック」

プレイサイクルを回っていくために、可視化とフィードバックという要素も大切だと思いました。可視化の例としてはプレイヤーの強さや状態を示すステータスであったり、次のステージに行くマップであったり、まだクリアしていないステージを見せることも可視化に含まれます。また、ゲームで何かを達成した場合に「クリア!」などと演出効果を出すことで、プレイヤーの達成感を満たすこともあります。

フィードバックはプレイヤーが何かしらの行動を取った場合に返すものとのことで、フィードバックをすることでその行動が正しかったことを明示する意味や、プレイヤーにとっては成長や達成を感じることができるます。フィードバックの例としては報酬やゲームポイントを付与するなど。

可視化やフィードバックとは要するに、目的/目標・行動の選択・達成というプレイサイクルをプレイヤーに回ってもらうためのモチベーション喚起の工夫です。私自身も経験がありますが、RPGで「次のレベルまで必要な経験値はあと○○○」と表示されると、もう少しがんばってきりのいい次のレベルまではゲームを続けようなどと思ったものです。これは次のレベルという目標が可視化されており、レベルが上がるという達成までゲームを続けたことになります。この次のプレイサイクルとしては、レベルが上がったので必要なアイテムが手に入る洞窟に進めるなどでしょうか。

ゲームプレイサイクルと可視化やフィードバックを整理すると、こんな感じです。

引用:「ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足」

■モチベーション維持と顧客ロイヤリティ

あらためてゲームのメカニズムを見てみると、プレイヤーに飽きさせない工夫が数多く用意されていることに気づきます。特に最近のソーシャルゲームでは、遊び始めるのには無料な場合がほとんどで、ゲーム開始のハードルが低い分、どれだけ飽きずにゲームを続けてもらうかに工夫をこらしています。ゲームリリースして終わりではなくKPI(重要業績指標)として継続率や離脱率を設定することが多いようですが、これはいかに飽きずに遊び続けてもらうかを重視していることをよく表しています。

「ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足」という本に、人間の動機付けには外発的動機付けと内発的動機付けという2種類があると書かれていました。これは心理学者のデシから提示されたもので、外発的動機付けとは主に金銭などの外部からの報酬に基づく動機付け、内発的動機付けとは自分の内側から湧いてくる好奇心・興味に基づく動機付け。デシの主張は外発的動機付けでは短期的な効果しか得られず、モチベーションを維持するためには報酬を与え続ける必要がある、よって、内発的動機付けでモチベーションを維持・向上すべきというものだそうです。

外発的動機付けとは、ある意味で他者から動機付けをされることで、確かに自分自らが好奇心によりやりたいと思える状態のほうがモチベーションが高まるというのは理解できます。そこであらためて気づかされるのが、ゲームで遊ぶという行為はあくまでプレイヤーが自分の意志で楽しむことであり、ゲーム提供者がそれを強制しているわけではない、という本書での指摘。ゲーム提供者側にできるのは、プレイヤーが楽しみながらゲームを続けることを手助けすることだと。本書で紹介されていた、デシの「本当の問いは『どのようにすれば他者が自らを動機付ける条件を生み出せるか』」という言葉にあったように、いかにプレイヤーにゲームをやらされている感を抱かせることなく、自発的に遊んでいる感覚を持ってもらうか。これが重要だと理解しました。

ゲームプレイヤーにとってはいかにモチベーションを高め、維持できているかですが、これがゲーム提供者側からの視点で見ると、いかにゲームにハマってもらうか。もう少しビジネスっぽい表現をすれば、いかにロイヤリティの高い顧客を獲得できるかとなります。ロイヤリティをエンゲージメントと表現してもよさそうです。

ゲーミフィケーションの考え方は、ゲームのメカニズムをゲーム以外の様々なものに活用することと冒頭で書きましたが、ゲームの要素を使って顧客ロイヤリティが高められれば、ゲーミフィケーションは応用範囲もゲーム以外に広がりそうです。マーケティングではまだ買ったことのない人にどうやって商品を買ってもらうか(新規顧客)、1回買った人に次もまた買ってもらうか(リピート)、継続的に買ってもらうか(ファン)というようにいかに顧客からの商品やブランドへのロイヤリティを上げるかが重要なわけですが、ここにはゲームのプレイサイクルに見たようなサイクルがあります。このサイクルをどう維持し続けるか。

とはいえ、一口にゲームのメカニズムをゲーム以外に適用し、さらには効果を上げるというのは実際にやってみるとそうは簡単ではないように思います。まずは自分たちの顧客を理解し、顧客が何を望んでいるのか(目的の理解)。こちらから強制させることなく自発的にどう行動の選択をさせるのか。顧客に何をすると喜んでもらえる・楽しんでもらえるのか、ここに可視化やフィードバックというゲームの要素をどう組み込むのか。ゲーミフィケーションは確かにおもしろいコンセプトですが、一方で、実現し効果を上げるには知恵の見せ所だと感じます。


※参考情報

Gamification: How Competition Is Reinventing Business, Marketing & Everyday Life|Mashable
「モチベーションの理解がゲーミフィケーション理解のコツ」―Gabe Zichermann緊急来日! Gamificationセミナー報告【鈴木まなみ】|TechWave
How Gamification Can Make News Sites More Engaging|Mashable
寄稿記事:Gamificationを取り入れて大成功したTurntable.fm。 なぜ「Turntable.fm」はユーザーを夢中にさせるのか|ASSIOMA
なぜゲーミフィケーションは効果的なのか?(Why Gamification Works?)|NOTE
「ゲーミフィケーション」でウェブサイトを活性化|日経ビジネスオンライン


ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足
深田 浩嗣
ソフトバンククリエイティブ
売り上げランキング: 801



最新エントリー

多田 翼 (書いた人)