2012/09/22

アイデアは組み合わせ:モノから情報への価値転換時代だからこそ覚えておきたい原理



社会構造を大きな視点で見ると、いくつかの変換点を経て今に至っています。梅棹忠夫は著書「情報の文明学」において、人類の産業の展開史は三段階を経たとしています。①農業の時代、②工業の時代、③精神産業の時代(以下、情報産業とします)。

梅棹の説明でおもしろいのは、農業・工業・情報産業を、生物学の比喩(メタファー)を使っている点にあります。受精卵が生まれ人間の身体が形成されるまでの、内胚葉、中胚葉、外胚葉の3つの段階です。ちなみに、内胚葉からは胃・腸などの消化器官、中胚葉からは骨・筋肉・血管、外胚葉からは脳神経や感覚器官がつくられます。社会構造変化の過程を、農業=内胚葉、工業=中胚葉、情報産業=外肺葉、となぞらえている。ここが梅棹の説明のユニークな点であり、おもしろいと思わせるアイデアの組み合わせなのです。

■S字波モデルから考える社会構造の変化

では、農業⇒工業⇒情報産業の移り変わりはどのように進んできた/進んでいるのか。これを考えるのに参考になるのが、書籍「情報社会のいま ―あたらしい智民たちへ」に出てくるS字波モデル。本書では、近代化の過程を軍事社会⇒産業社会⇒情報社会の3つに分けていますが、興味深いのはそれぞれが重なり合いながら変化してきている点です。

引用:書籍「情報社会のいま ―あたらしい智民たちへ」(公文俊平 NTT出版)

この図で太字で示されている近代化過程を分解すると、小さなS字波である軍事化・産業化・情報化になるのですが、現在図の縦の点線が示す通り、軍事化の定着、産業化の成熟、情報化の出現という3つの局面が同時に起こっています。注目しておきたいのは、特に産業化(工業化)がある程度発展しきって成熟に向かっていることと、情報産業化社会が今後急激に発展していくこと。

■モノから情報へ

工業化⇒情報化はどのような社会変化をもたらすのか。この点を詳しく書いているのが最近読んだ「モノから情報へ (-価値大転換社会の到来)」という本でした。本書の主張は「情報の価値がこれまでのモノに取って代わって、大きな役割を果たし始めている」というもの。

情報の価値の特徴に、モノの価値と比べて相対性が強いことを挙げています。情報の価値は受け手や、受け手自身の環境など、同じ情報でもTPOによりその価値が大きく変わります。例えば、ニュース記事もその問題/領域に関心がある人とそうでない人とでは、重要度が異なります。あるいは、リリース直後に読むのと、後から時間が経ってから知るのとでは情報の鮮度が違います。つまり同じ情報でも価値が異なる。もちろん、モノの価値も使い手によって変わりますが、より価値の相対性が強いのは情報のほうでしょう。

もう1つ、本書の指摘でおもしろかったのは、「情報の価値は組み合わせによって生まれる、組み合わせは相手を選ばない」、というもの。モノとモノの組み合わせパターンに比べて、情報や知識の組み合わせは多く、組み合わせから生まれる価値をいかにうまく活用するかという指摘です。その意味では、よく言われるクリエイティブ力とは、「それぞれの情報要素の関係を見極め、その関係性から新たな価値を生み出す/組み合わせる力」と言えます。

■アイデアは組み合わせである

情報の価値は組み合わせから生まれるというのは、名著「アイデアのつくり方」に書かれていることと同じです。本書では、アイデアをつくるための原理を、①アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない、②既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きい、としています。要するに、アイデアは組み合わせであり、そのためには関連性を見分ける才能が重要ということ。

そして、アイデアを生み出し具体化する方法が以下のプロセス。
  1. 資料・データ集め
  2. 資料・データの咀嚼
  3. 問題を放棄し、心の外にほうり出してしまう
  4. アイデアの誕生
  5. アイデアを具体化し、展開させる
興味深いのは3⇒4の部分で、情報を頭で理解・咀嚼した後はいったん置いておくこと。その間にアイデアが組み合わさり、誕生するのを待つ。「アイデアのつくり方」の原著の初版は1940年に出ていて、今なお読み継がれることは考えさせられるものです。

アイデアは組み合わせであり、いかに組み合わせるかがアイデアの価値の肝になります。そこで自分自身が意識しているのが、異なるものの共通点や類似点を考えてみることだったりします。以前のエントリーでAmazonとサザエさんに出てくる三河屋のサブちゃんの共通点を書いたことがあります。(参考:「仕組みの問題」で考えるAmazonと三河屋のサブちゃんの共通点|思考の整理日記

アマゾンに限らずレコメンドはいかに各ユーザーのことを知ることが重要になります。まずは性別や年齢などの基本属性情報、何が好きかなどの趣味・嗜好の特徴、そしてどんな行動をする人なのかの行動履歴。これらの情報をいかに集め、そこから何をレコメンドするか。

この点をアナログでうまくやっているのがサブちゃん。サブちゃんの登場シーンで思い浮かぶのは、「そろそろお醤油が切れかける頃だと思って持ってきました」と台所の勝手口に現れる。サザエさんも「ちょうど良かった。お醤油が切れかけてたの。 お味噌もいつものを持ってきてくれるかしら」と、追加で味噌も注文する。これはサブちゃんがサザエさん一家を知り尽くしているからこそなのです。

何も言わなくとも一回に頼む醤油の量も、どんな醤油が好みなのか、そろそろ醤油が切れかけていることも把握している。だから、頼まれなくても勝手口に現れて、「そろそろお醤油が切れかける頃だと思って持ってきました」というタイミングの絶妙さです。購買情報やユーザーの嗜好を知り尽くすことでタイミングよくレコメンドし、+1の商品も買ってもらう。アマゾンと三河屋のサブちゃんの共通する仕組みです。

表面的な違いではなく、仕組みに着目してみる。構造が見えてきたら、他の分野で当てはまらないかを考えてみる。これこそが、アイデアの組み合わせ具体例の1つだと思っています。冒頭で書いた梅棹が、農業⇒工業⇒情報産業の構造と、内胚葉⇒中胚葉⇒外胚葉の受精卵の成長過程の仕組みを組み合わせたように。


※参考情報

複雑な社会変化をシンプルに見せるとっておきのS字波モデル|思考の整理日記
梅棹忠夫とドラッカーから考える情報革命のこれから|思考の整理日記
アイデアをつくるシンプルな原理と方法|思考の整理日記
「仕組みの問題」で考えるAmazonと三河屋のサブちゃんの共通点|思考の整理日記


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