2012/11/25

スペイン旅行での発見

この1週間ほど休みを取りスペインに行ってきました。毎年一回は海外に旅行をしたいなと思っていて、旅行とはいえ外国に少しでも滞在すると普段の日常から離れられ、その国その国の考え方や習慣に触れると新しい発見がいくつもある。旅の魅力だと思っています。




■新しい発見と常識

新しい発見をするために旅行をする、と言ってもいいかもしれません。その国でしかできないことを体験しに行く。これが自分にとっての旅行の目的。だから、現地での生活に近いことができるのがおもしろいと思っています。お土産専門店での買いものよりも、地元のスーパーでミネラルウォーターや食べ物を買う、露店に近いようなそのへんの店で新聞とかお菓子を買ってみたり。今回のスペインだと店の人には英語が通じないことも普通で、片言のスペイン語とかジェスチャーで言いたいことを伝える。現地の人とのコミュニケーションも含めて体験する。これがおもしろいんですよね。

旅先での新しい発見は、自分には当たり前な常識をあらためて考えさせられることでもあります。日本での常識は外国では非常識だったりする。自分の「当たり前」が一度壊される感じです。

例えば、水。海外に行った時の飲み水の確保は普段以上に神経を使います。日本では当たり前のようにレストランや飲食店では水はお冷として無料で提供されます。外国ではこのサービスはなく、ソフトドリンクやアルコールなどと同じように、水は買うもの。スペインでも同様で、水の値段は普通のレストランでは2.5-3ユーロくらいで、ジュースやビールとかワインなどと同じだったりします。

考えてみると、水道水をそのまま飲める日本のような国は世界的にはレアです。確か、蛇口から直接水が飲める国は日本も含めて世界で11か国と本で読んだ記憶があります。私たちの水に対する感覚と、スペインでの水に対する感覚はあきらかに違う。水に対する日本の常識と外国での常識。この違いはそれだけ日本の水道水は品質が良く、水自体が日本には豊富にあるという再発見でもあるのです。


アルハンブラ宮殿。貴重な水だからこそ宮殿内で贅沢に使用することで、権力や富を誇示していた様子がわかる


バルセロナ近郊のタラゴナにある「ラスファレラス水道橋」。古代ローマ人により建てられたもの

外国に旅行して新しい発見をする、そこから自分にとって当たり前なこと・常識に気づく、自分や日本のことを客観視でき、相対化できる。外を知ることで内を知ることにつながる。自分の知識や常識はあくまでone of themでしかなく、世の中にはいろんな考え方・見方があり、どれが正しいとかでもない。多様性に触れることができるのが旅行の醍醐味だと思っています。


サグラダ・ファミリア。ガウディが残した傑作の1つ。右はサグラダ・ファミリアの中。外観も内観も圧倒されました

■旅と歴史

もう1つ、旅行の魅力はその国の歴史をよりリアルに感じられるところ。今回の旅行ではいくつかのキリスト教のカテドラル(大聖堂)に訪れましたが、スペインの大聖堂の特徴はキリスト教とイスラム教が共存しているところ。

これは歴史に大きく関係していて、スペインがあるイベリア半島は8世紀にアフリカからイスラム教徒の侵略が起こりました。スペインのほぼ全土まで広がります。その後、キリスト教によるレコンキスタという国土回復運動が起こり、1492年にイスラム最後の都市グラナダを奪還。今でもキリスト教にイスラム教の文化が残るのはこうした背景がありました。

レコンキスタ後、スペインは国内の動乱時代を終え大航海時代を迎えます。1492年というのは歴史に残る年で、コロンブスがアメリカ大陸を発見した年でもあります。レコンキスタを完了したことでようやく世界に目を向けることができた。当時のスペイン女王イサベルがコロンブスの計画を承認できたのも、国内を統一できたから。アメリカ大陸を発見し、スペインはその後、南米大陸へも進出していきます。インカ帝国などを滅ぼし、金銀などの貿易から莫大な資産を手に入れスペインは全盛時代を築きます。

今回のスペイン旅行で、このあたりの歴史に触れておもしろかったのは、去年行ったペルーとつながったことです。ペルーではマチュピチュなどのインカ文明遺産をいくつか見ましたが、インカ帝国を滅ぼしたスペインに今年行って、点と点がつながりました。歴史を大きな流れで捉えられることと、それを現地で当時の遺跡を直接歩きながら実感できるのも旅の魅力です。

去年行ったマチュピチュにて


2012/11/16

ヨーロッパ海外出張から学んだ「4つの視点」

先週は海外出張でヨーロッパに行っていました。目的の1つがESOMARというマーケティングリサーチ団体主催のカンファレンスに参加することでした。出席したのはこれ:ESOMAR 3D 2012

■講演後の違和感と悔しさ

カンファレンスの講演を聞き終えた時、ふと「あれ?」と思いました。違和感というか。スピーカーの講演発表後にはQ&Aの時間が少しあったのですが、発表を聞き終わった直後なのに質問が頭になかったんですよね。英語とは言えそれなりに聞けてたはずだし、メモも随所で取っていたのですが、なぜか質問が頭に思い浮かばない。

聞いていた内容はその時その時では頭に入れたはずが、終わった段階で話の全体構造がうまく体系立てて理解できていなかったことに気づきました。理解したようで、なんとなくでしか理解できていない状況。発表内容が頭の中にストックされず、フローとして流れていってしまった感じ。

なぜなのか。自分の結論は、講演内容を聞きすぎていたことでした。英語のリスニングに「集中しすぎてしまった」んです。英語を聞くこと自体にフォーカスしすぎてしまったために、表面的な理解にとどまってしまった。

発表内容の構成として、背景があり、課題の説明、目的、仮説や根拠などの詳細、結論、となっていました。ところが、聞いている最中には英語を聞くことばかりに集中してしまったため、前後関係や発表の構成を考えながら聞くことが不十分な状態でした。すごく受け身で英語をリスニングしている感じです。だから、講演発表を聞いている時、終わった直後で質問がすぐには考えられなかったんだと思います。表面的な理解しかできていなく、「問い」がつくれない。なんとも悔しい体験でした。

■体系立った理解のための「4つの視点」

日本語であれば発表内容を聞きながらも、自分の中で「なぜそう言えるのか?」「要するにどういうことか」なども同時に考えていたりします。聞く+解釈・考察を頭の中で同時にやっているので、それが理解にもつながるし、疑問から問いになり聞きたい質問も自分の中で持っておけます。それが英語だと聞くことに頭のリソースを使いすぎていた。聞くことばかりで自分なりの解釈が追い付いていなかったわけです。

じゃあどうすればよかったのか、講演をどういうふうに聞けばよかったのか。あらためて考えてみると、体系だった理解のためには4つの視点が必要だったと思っています。
  1. Whyで深掘り:聞いたことについて少し立ち止まって「なぜ?」と考えてみる。言われたことを鵜呑みにするのではなく、批判的に眺めてみることも時には必要だと思っています。「なぜそう言えるのか」を積極的に考えること。こうすることで能動的な聞き方になる。Why?⇒答え(仮説)⇒Why?⇒・・と下方向に深掘りをしていくイメージです。
  2. So whatで整理する:Whyが下方向ならSo whatは上方向に向けて考えていくことになります。「要するにどういうことか」「まとめるとどう表現できるか」と自分なりに解釈/理解を整理してみる。自分の言葉でまとめてみるのがポイントと思っています。WhyとSo whatは話を体系立てて理解するためにはとても重宝する問いかけ。
  3. 自分の知っていることと比較:ものごとは何かと比較をすることで相対化され、理解がより深まります。例えば、新しく知ったことについて過去の出来事と比べてみる、似たような経験や知識があるか思い出してみる、他業界の話を自分の業界/会社とどこが同じで何が違っているのかを考える。自分がすでに持っている知識や情報と新しく聞いた内容を比較することで、記憶にも定着しやすい。
  4. 自分の意見と根拠:Why、So what、既知情報との比較、あえて言えばこれだけでは単に聞いた内容を整理しただけです。本当に自分のものとして理解するためには、「じゃあ自分はどう思うのか」まで考えること。自分の意見とその根拠や理由も考える。講演で聞いたことにすごいと感じたら、それは何がどうすごいと思ったのかの理由を自分の中で持っておく。

4つの視点を図にするとこんな感じでしょうか。聞いたことに対して上下左右に考え、そこから自分の意見・根拠を出す。

今思い返しても、参加したESOMARのカンファレンスでは講演発表を聞いている時は4つの視点が不十分でした。その結果はすでに書いた通りです。今思い返しても悔しいな、と。

あらためて考えてみると、普段の仕事で海外のパートナー企業だったりベンダーとはテレカン(電話会議)などでは英語のやりとりもするのですが、ミーティングではすぐにその場で質問したり議論したりと、聞いてばかりではなくてこちらも発言します。「なぜなのか?」と確認したり、相手の言っていることを整理する、あるいはこれまでの自分の経験と比較する。クライアントとのやりとりでは英語を聞いていると同時にこうしたこともやっていました。それに比べると、ESOMARの講演では聴きすぎてしまった。英語のリスニング自体が目的化してしまった。本来は英語は手段であり、講演内容を体系立てて理解するためのツールのはず。

今回取り上げた4つの視点は、講演だけではなくて普段の会議とかでもその場の議論やミーティング内容を自分なりに理解するのに役立つと思っています。よくやるのは、4つの視点を意識しながらノートにメモを書く。こうすると頭の中で会議で発言もしやすくなるし、内容の理解も深まります。おすすめですので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。


※参考情報
ESOMAR 3D DIGITAL DIMENSIONS 2012 (ONLINE + SOCIAL MEDIA + MOBILE) RESEARCH

2012/11/10

Suicaが実現した「未来の当たり前」

イノベーションとは何か?

自分の中の定義は「現在はない、未来の当たり前をつくること」だと思っています。現時点やその時にはないものでも、イノベーションを起こす人には見えている「未来」や「あるべき姿」、かつ人々はまだ気づいていないことを実現する。そんなイメージです。

ここ10年ちょっとくらいで人々の「当たり前」になったものに、IC乗車カードのSuicaがあります。首都圏の朝の通勤時間帯ではおそらくほぼ100%に近い人がICカードであるスイカもしくはパスモを使って改札機を通っています。

ピッ、ピッ、と通勤客が滞りなく改札機を通過する当たり前になった通勤ラッシュの風景。でもほんの10年くらい前は磁気式の定期券を改札機に入れることが普通でした。今回のエントリーでは、ちょっと前に読んだ「Suicaが世界を変える JR東日本が起こす生活革命」から、スイカの開発秘話をご紹介したいと思います。

■Why:なぜスイカは開発されたのか?

そもそも、なぜスイカは生まれたのか。開発背景は大きく2つありました。

スイカをJR東日本の経営を支える新たな柱にする必要があった:1つ目が当時のJR東日本にとって鉄道以外のビジネスチャンスをつくらなければいけない状況にありました。90年代から利用客数伸び悩む状況にあり、将来的にも人口が伸びない・少子高齢化により客数増加は期待できない。客数停滞に歯止めをかけどう利益を上げるかという鉄道事業会社としては根本的な構造問題です。鉄道と相乗効果により新たな収益源が期待できるICカードのスイカだったのです。

「改札機や券売機は本当に便利なのだろうか?」という疑問:開発背景2つ目。スイカが導入される前はほぼ全ての客が、切符や定期券を改札機に入れる⇒改札機が切符/定期を読み取る⇒客が改札機を通過する、という流れでした。ここで問題になるのが、切符や定期を一度改札機内部を通過させることでどうしても内部で詰まったり、時には自分の切符ではなく前の人の切符が出るという「ズレ」が発生することでした。切符が客の手を離れることで生じる仕組みの問題です。これが起こるとその度に駅員が対応しないといけないし、定期的な改札機内のメンテコスト負担も莫大だったそうです。こうした状況を著者の椎橋氏は「切符がよく詰まる改札機や、切符をいちいち券売機で買わなくてはならないことは、お客さまにとって果たして便利なのだろうか」という思いを抱きます。

■海外に行くと気付く日本の鉄道の特殊事業

海外旅行とかで電車を利用するとあらためて思うのが、日本との改札機の違いです。写真のような感じでスムーズに通りにくい。設計思想として切符がない無賃などの不正乗車を防ぐことを優先している印象です。人の通りやすさは二の次という感じ。あと海外には改札機のどちらの方向からでも出入りできるのがあまり見かけないような気がします。

この違いに日本の鉄道事情が見て取れます。日本の改札機では重要視している点は切符やICカード処理の正確性と何よりスピードだと思います。いかに乗客をスムーズに通貨させるか。

他にも海外との違いで感じるのは、特に首都圏ではJR以外にも各私鉄や地下鉄が多く存在し相互乗り入れなど複雑な運行、従って運賃体系も細かく複雑、朝の通勤ラッシュによる激しい混雑、時刻ダイヤ通りの正確すぎるほどの運行、等々。これら日本特有の鉄道事情はスイカ開発のハードルの高さにそのままつながったと椎橋氏は言います。

■How:スイカはどのように開発されたのか?

スイカのには5つの開発コンセプトがありました。
  1. サービスアップ:切符や定期を改札機に入れることなく通れること。いちいち切符を自券売機で買わなくてもいいこと、乗り越し時に精算のわずらわしさをなくすこと。定期券を紛失しても再発行できること。
  2. システムチェンジ:切符の詰まりのトラブルを減らし、改札機の保守業務を減らすこと。切符を買わないことで駅のキャッシュレス化とチケットレス化から駅業務のシステムを変える
  3. コストダウン:改札機のメンテ/保守コスト削減、券売機の台数減。ICカード専用改札機導入によるコスト減
  4. セキュリティアップ:キセル行為や偽造カード等による不正乗車の防止
  5. ニュービジネス:スイカというICカードにより新しいサービスや事業展開の可能性
1点目のサービスアップで顧客の利便性向上を目指しつつ、JR東の内部に抱えていた問題を解決する(2~4点目)、その上で5点目で「新しい事業の柱に」という位置づけです。

コンセプトが固まり、社内でも経営陣による開発GOが出ますが、その後の開発プロセスは苦難の連続だったことがうかがえます。こういう「今まで世の中にないもの」をゼロから生み出す新規事業開発というのは本当に難しいと思います。私自身も自分の仕事が新規事業開発にあたりますが、とにかく予想外の問題が次々に発生するもの。起こるエラーが予想できる内容ならいいほうで、想定外の問題が「このタイミングで起こるのか」という状況で起こります。スイカの開発プロセスの部分はうなづける内容が多くありました。「そうそう、問題ってこうも次から次に起こるんだよな」と。

1つ具体例を挙げておきます。スイカの特徴はネットワーク化とID管理システムにあります。スイカではシステム構造が3層になっていて、①センターサーバー、②駅のサーバー、③端末(改札機)。3つが独立で稼働しつつ、ネットワークでつながっている仕組みで専門的には自律分散システムと呼ぶそう。メリットは例えば万が一、ネットワークが切断したりサーバーがダウンしても3日間は端末だけで改札機の機能が使えること。最低限のインフラ機能は提供できます。

ただし、ネットワーク化はもろ刃の剣でもあり、開発のハードルを間違いなく上げました。これがスイカ開発の各テストを進めていく中で判明します。テストの初期段階ではなるべくシンプルなテスト環境をつくるのですが(スタンドアローン)、この段階では問題が露呈しなくてもネットワーク化を再現したテスト環境では途端に多くの問題が出てくる。それを解決しても、一般公募モニターに協力してもらったフィールドテストではまた新たな問題が発生する。机上の議論/シュミレーションでは万全のはずが、実際の現場テストでは思ってもみない問題が次々起こるものなんですよね。よくわかります。

■What:スイカは何を変えたのか?

2001年11月18日(日)。この日がスイカが導入された日です。その後、スイカはJR東日本だけではなく、JR西日本やJR東海などのJR各社でICカードの相互利用を開始しただけではなく、2007年からは首都圏の各私鉄およびバスでも連携を実現しました。

1枚のカードが乗るたびの切符を買ったり、清算も不要。同じカードが定期にもなるし乗車切符にもなる。これがJRだけではなく各私鉄やバスでも使えるという利便性はあらためて考えると公共交通を変えた存在だと思います。

またスイカにチャージされたお金が電子マネーとしても利用できることも便利です。(あまり利用しないですが)朝の売店の購買はスイカなどの電子マネーが普通に使われることでかなりスムーズになったはず。駅ナカだけではなく、町のコンビニ等でも使えるスイカ。スイカは鉄道の利便性を変えただけではなく、社会を変えました。何より、一部の人たちしか使わないのではなく、普通の人たちが普通に使えるツールにしたこと。冒頭で書いた「未来の当たり前をつくること」というイノベーションそのものです。ちなみに、スイカの普及状況はこんな感じです。


出所:おかげさまでSuicaは 10 周年を迎えます|JR東日本


■これからのスイカに期待すること

Before/Afterで便利になったスイカですが、それでもまだ改善の余地は残っていると感じます。例えばチャージ機能。現状では追加は1回では1万円までという入金額の上限があり、残高が不足する度に券売機や精算機でチャージが必要です。もちろんスイカ機能のあるクレジットカードを持つなどの対策もあるのですが。せっかくID機能を持っているわけで、スイカの考え方は事前にチャージした金額を使うというプリペイド方式ですが、使った分をまとめて請求される携帯電話などと同じポストペイ方式のほうが便利なのでは、と思います。

もっとその先には、スイカに実現してほしいのはそもそもの改札機自体をなくすこと。改札機があることで、駅では必ず人は改札を通る必要があります。駅を利用する度に改札機を通るという設計なので、改札機がボトルネックになっていると感じます。人の動線は自由度が制限されてしまっている。切符を毎回買って改札機に入れる、という当時の当たり前を変えたスイカ。これからも社会インフラという使命を果たしつつ、さらに進化を遂げるという2つの難しさを実現してほしいです。

★  ★  ★

と、言ってみたものの・・、改札機がなくなった時、前提として乗客の誰もが乗車を認識できる何かしらのIDシステムが必要になります。一方で、今後日本は外国人を観光に誘致し経済を活性化するという方向性も大事だと思うわけで、海外から日本にやってきた旅行者のことを考えると改札機を全てなくす、というのは難しいかも。


※参考情報

Suica|JR東日本
Suica|Wikipedia
おかげさまでSuicaは 10 周年を迎えます|JR東日本


Suicaが世界を変える JR東日本が起こす生活革命
椎橋 章夫
東京新聞出版局
売り上げランキング: 88969


2012/11/03

ロジカルシンキングを鍛える一石二鳥のメール術

相手に何かを伝える場合、当たり前ですが重要なのは伝えたいことを相手にどれだけ理解してもらえるかでしょう。特に仕事では、自分の考えや提案を同僚だったり上司にまずは理解してもらうこと。理解してもらって、ようやくその考えが妥当なのか、提案方針で進めるかどうかの判断ができるようになります。

相手に理解してもらうというのは2つあって、正確な理解と、いかに早く理解してもらえるか。そのためには伝える内容が論理的かどうかが大切なポイントです。ロジカルシンキングができているかどうか、とも言えます。

では、ロジカルシンキングとは何か。一言で表現すると、ピラミッドをつくることだと思っています。ここで言うピラミッドとは二次元を想定していて、ピラミッドをつくるには縦と横が構成要素となります。縦とは、例えば結論-根拠の組み合わせがそうですね。これはAである、なぜならBだから、という関係。横とは、結論に対する根拠が複数ある場合の根拠1、根拠2、根拠3、・・、と並べること。図にするとこんなイメージ。



いかにピラミッドをつくるか、ピラミッドの構成要素としてタテとヨコをきっちりとつくれるか。これがロジカルシンキングに求められることで、論理的な考え方や文章には例外なくきれいなピラミッドがあります。

■論理的かどうかを判断するのは受け手である

もう少し「論理的とは何か」を考えてみると、「論理的かどうかはそれを受け取る側が判断するもの」だと思っています。これは伝えたい内容を理解するのは相手、というある意味自明なことにも通じるのですが、いくら自分が論理的と思っていても、相手にとっては必ずしも論理的であると限りません。

受け手側が論理的なのかを判断する点に、ロジカルシンキングの難しさがあると思います。だから同じことを論理的に考えピラミッドをつくっていく場合でも、背景や状況をあまり共有できていない相手にははとても細かいピラミッドで説明する必要があるし、前提や知識レベルが同じであれば、ざっくりとしたピラミッドでも十分伝わる。相手の理解と、そもそもの相手を誰に設定するか、ここが実はロジカルシンキングの肝だと思っています。

自分の中では論理的につながっていたとしても、相手にとっては①「本当にそうなのか?」と思った場合、②「本当にそれだけなの?」と思った場合。①の本当にそうなのか?は縦の論理が相手には伝わっていないことになるし、②の本当にそれだけなの?は横の論理が伝わっていない状況。伝わっていない、というのは2つあって1つは自分には当たり前のことなので省略しているケース、もう1つは自分でもしっかり考えていなくて抜けているケース。ロジカルシンキングの難しさは特に後者の場合にあるのではないでしょうか。

■ロジカルシンキングを鍛えるメールの工夫

ではどうすればよいか。これはもう受け手である相手のことを徹底的に考えるしかないように思います。相手の立場で考えること、相手の置かれている状況や立場はどうか、背景や知識などの情報レベルは同じか、などなど。

「自分がその人だったらこれをどう思うか」。相手視点というこの意識を持って考えるだけでも違ってくるのではないかと思います。身近なトレーニング方法としては、仕事で出すメール。メールって普段は何気なく使うツールだと思いますが、論理的思考を鍛える絶好のチャンスです。メールを書く時にピラミッドを意識する、相手の視点で考える、書いたメールを読み返す。こんな感じの少しの工夫で、相手に伝わるメールになるだろうし、自分のロジカルシンキングも鍛えられる。いくつかメールを書く時に意識していることを書いておきます。
  • メールを出す目的は明確か?:意外に見落としがちなのですが、そもそもなぜメールを出すのかという目的を明確にするのが1つ目のステップ。単に報告等の情報共有だけのためなのか、わからないことを聞く質問のため、相談したいのか、何かを依頼するメールなのか。で、こちらの意図に対して相手に何を望むのかも大事で、読むだけでよいのか、返答が欲しいのか、それとも依頼したアクションを起こしてほしいのか。メール出す目的は、こちらの意図×相手の行動の2つで考えるとよいです。
  • メール内容をピラミッドで考える:メールの構成としては、一番上に最も伝えたいキーとなるメッセージ、その下に根拠だったり、依頼したいことの具体的な内容が続きます。キーメッセージと根拠という縦の論理と、複数の根拠が漏れなく並んでいるとい横の論理。メールを書く前に頭の中でピラミッドを組み立ててみるだけでも、書きあがるメール内容は違ってくるし、わかりやすいメールにできると思います。
  • 相手視点で件名を書く:相手の立場に立ったメールをつくるために、工夫できることは色々あります。まず、メールの受け手側にとってはメールを受信したら何をするかというと、送信者と件名を見て、そのメールを読むべきかどうか、読む場合は今すぐか・後でいいのかを判断するはずです。工夫できる1つ目は件名で、ここはピラミッドで考えた一番上にあるキーメッセージの要約が望ましいと思います。かつ、相手に何をしてほしいかがわかる件名。共有なのか、依頼なのか、相談なのかが件名からわかること。パッと見た時の件名のわかりやすさも大事。
  • 相手視点でメールを書く:メールで目的がはっきり書かれ、ピラミッドがもとになった文章構成や件名になっていること。もう1つ重要なのは受け手側が何をいつまでにしなければいけないのかも書いておくこと。依頼する場合は今週中に結果を報告してほしいとか、自分の質問に対して明日までに回答が欲しい、など。受け手側のNext Stepが書かれていると読む側としてもこちらが伝えたいことが最後まで理解してもらいやすくなると思います。
以上のことを意識して実践してみるだけでも、メールも見違えるような上達が期待できるはず。自分のロジカルシンキングが鍛えられるだけではなく、仕事もより円滑に進むようにもなるという一石二鳥だと思うので、メールの書き方を工夫してみて損はないと思います。

★  ★  ★

今回のエントリー内容で伝えたかったことをまとめておくと、
  • 自分が伝えたいことを相手に理解してもらうためには、ロジカルシンキングが重要。ロジカルシンキングとはピラミッドで縦と横の論理構成ができているか
  • 論理的か否かは相手が判断することである
  • 日々のメールはロジカルシンキングを鍛える良いツール。相手視点でいかにメールを書けるかで、ロジカルシンキングが上達するだけではなく、仕事も円滑に進むように


関連本はこちら、ロジカルシンキングについて実践法がわかりやすく書かれています。

入門 考える技術・書く技術
山崎 康司
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この本のもとになっているのが、ロジカルシンキングで世界的なベストセラーであるこちらです。

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則
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