2012/12/30

「MAKERS」書評:Web世界で起こった革命がモノづくりでも起こる未来は明るいのか?

Web で起こったことがモノの世界でも起きる。それが21世紀の産業革命である。

こう主張するのは、かつてロングテールやフリーミアムの概念を提唱したクリス・アンダーソン氏です。「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる」という本の主題です。

■ Web の本質

そもそも、Web の世界で起こったこととは何だったのでしょうか。最近のエントリーでも触れたように、ウェブの本質は「個の情報発信」「双方向性(ネットワーク)」です。

重宝しているGunosyから考えるネットの本質と課題|思考の整理日記



ウェブ以前、あるいは普及前は情報発信をすること自体が今ほど手軽ではありませんでした。

それが、クラウドによるサーバーコスト低下、通信速度の向上、コンピューターやスマホ等の高性能かつ(一般ユーザーでも手に入る)安価なデバイスの普及で、ウェブが当たり前になり、個人レベルでの情報発信も容易になりました。これが1つ目の個の情報発信の背景です。

もう1つ、ウェブの世界で起こったことで大きかったのが、双方向性が実現したことです。つまりネットワークの構築です。

情報発信と合わせて捉えると、情報を発信して終わりではなく、双方向で情報のやり取りが可能になり、情報やアイデアはシェアされ、またたく間に拡散していきます。結果、ウェブ以降の世界は、情報量が爆発的に増えたのです。

■ Web で起こったことがモノの世界でも起きる

本書「MAKERS」の主題は、ウェブで起こったことがモノの世界でも起きることです。ここまで見た2点から考えると、モノの世界でも

  • 個人によるモノづくり
  • アイデア/設計/プロダクトの双方向性

が当てはまることになります。

個人によるモノづくり:本書では 3D プリンタ・3D スキャナ・レーザーカッター等のツールが紹介されています。従来は企業などの特定のプレイヤーでしか使われていなかったのが、今後はコストダウンやサイズのコンパクト化により個人レベルでも普及していきます。生産手段を個人が所有するようになる。プリンタで紙を印刷するようにモノをつくる、欲しいものは自分でつくってしまう、という状況です。

アイデア / 設計 / プロダクトの双方向性:ウェブの世界で情報がシェア・拡散していくように、モノの世界でもそれは起こります。すでにあるウェブに、モノの情報(アイデアや設計情報など)が載って双方向にやりとりされます。ウェブではソフトウェアのオープンソースの文化があるように、モノの設計情報やモノ自体がオープンソースとなって公開、シェアされます。

■ モノのロングテール、Web をベースにしたモノづくりのマネタイズ

個人によるモノづくりが普及していくと、ウェブの世界でも見られたロングテールがモノの世界でも起こるようになるとクリス・アンダーソンは言います。本書「MAKERS」から引用すると、
新しい時代とは大ヒット作がなくなる時代ではなく、大ヒット作による独占が終わる時代なのだ。

(中略)

ただ、「より多く」なるというだけなのだ。より多くの人が、より多くの場所で、より多くの小さなニッチに注目し、より多くのイノベーションを起こす。そんな新製品-目の肥えた消費者のための数千個単位で作られるニッチな商品-は、集合として工業経済を根本から変える。

(中略)

もの作りの世界を再形成することになるはずだ。

一方、著者の見方で興味深かったのが、新しいメーカーズ(もの作りプレイヤー)は、ウェブのフリーの恩恵をベースにモノでは収益を上げているという事例でした。

ウェブがなければ、新しいモノの発想やアイデアがあっても、それをつくって実現化させるのにハードルがありました。もしくは作ったとしても作っただけという「発明家」で終わっていました。しかし、今はウェブを活用すれば「起業家」になれると言います。

ウェブのフリーミアムを活用し、モノではマネタイズができるのでしょうか?

MAKERS を読んだ今の意見としては、モノの世界でもウェブ同様にマネタイズできて個人がモノ作りで食っていけるのは一握りではないかと思います。

■ モノづくり世界の「セミプロ vs プロ」

もう1つ思ったのが、モノの世界でもセミプロが増えっていった時に、セミプロ対プロはどんな競争の構図になるのかでした。

最近読んだ、こちらのエントリーで言われていることがモノの世界でも同じなのでは、という論点です。

[IT一般] セミプロに駆逐されるプロという構図|Nothing ventured, nothing gained.

この記事で書かれている内容は、

  • ネットの普及などにより、多くの人が情報発信するようになった。その中には今までは埋もれていた人(セミプロ)の知識や経験が発信され、支持されるようになる
  • しかし、アマチュアやセミプロの市場への参入というのは必ずしも良いことばかりでは無い気がする
  • なぜなら、その市場で今まで食べていたプロからするとコンテンツ流通価格の低下が進み、良質なコンテンツを提供するプロがいなくなるという事態に発展することも考えられるから

という懸念です。

もちろん、フェアな競争でプロとはいえセミプロに駆逐され、結果として市場が良質なものになるのであればよいと思います。しかし、プロが質の高いものを提供するモチベーションを阻害するような状況であれば、果たして大量のセミプロが存在する環境が本当に良いのでしょうか。考えさせられる問いです。

モノの世界でも、ウェブで起こったことが起こるとすると、セミプロ対プロの構図はできあがるはずです。もの作りのプロである企業が提案するプロダクトよりも、セミプロが自分でつくってしまうモノのほうが特定のニーズを持つ人には刺さることも十分考えられます。「そうそう、こんなのが欲しかった」と。

部分的には作り手と受け手のニーズが一致しウィンウィンですが、長期的に見れば大量のセミプロの市場参入によりプロが駆逐されるのでしょうか?それは本当に社会全体で見ると良いことなのでしょうか?まさにさきほどのウェブでの指摘と同じ構図です。

実際のところどうなるかはわからないし、そもそもまだ「モノの世界で大量のセミプロがマネタイズできていて市場参入している」というのも起こっていません。

★  ★  ★

「MAKERS」という本は読み応えのある内容でした。

クリスアンダーソンが主張する「モノの世界でもウェブで起こったことが起こる」は、そうだろうなと思います。その先の、本エントリーで考えたようなその先のロングテール現象、マネタイズ、セミプロ対プロ、など、色々な論点があり興味深い内容でした。


※参考情報
重宝しているGunosyから考えるネットの本質と課題|思考の整理日記
[IT一般] セミプロに駆逐されるプロという構図|Nothing ventured, nothing gained.
【レポート】「ブログやメルマガで食える人は本当に増えるのか?」、もしドラ作家・岩崎氏とブロガー小飼弾氏が一触即発の舌戦 (1) 川上氏「日本で唯一成功しているワールドワイドなプラットフォームは任天堂」|マイナビニュース


MAKERS―21世紀の産業革命が始まる
クリス・アンダーソン
NHK出版
売り上げランキング: 76

Kindle版はこちら


2012/12/29

2012年に読んだおすすめの本(後編)

今年読んだ本で書いたエントリーから、特に印象に残っているものをご紹介します。本エントリーは2つに分けた後編です。前編はこちら

なお、仕事関係の書籍は対象外としています(取り上げてもマニアックな内容になりそうなので)。





経営学(小倉昌男)

小倉昌男 経営学1975年当時、今では当たり前の家庭向け宅配サービスは民間業者はどこもやっていなく、「参入すれば絶対赤字になる」と言われていました。そんな常識に果敢に挑んだヤマト運輸。宅配便という民間業者が誰もやっていなかった家庭への宅配サービスへの挑戦。このあたりの新規事業開発、サービスイン、その後の拡大が詳しく書かれていたのが本書でした。

ヤマトの新規事業参入、ビジネスモデル構築の話は「なるほど」と思わせるものばかりで、ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件に出てくるSPとOCの戦略フレームと併せて考えると、おもしろいの一言。

このフレームはStrategic PositioningとOrganization Capabilityの略で簡単に言うと、SPが他社と違ったことを「する」に対して、OCは他社と違ったものを「持つ」こと。ヤマトの戦略は、
  • SP:差別化は翌日配達という利便性・定額というわかりやすい価格体系。翌日配達について、競合だった当時の郵便小包みは到着が早くて3日後、普通は4,5日かかることも珍しくなかった
  • OC:全国規模の配達ネットワークの構築と、セールスドライバー制度や独自トラック開発、情報システム導入。これにより、荷物の密度を濃くし、取り扱い荷物の総量を増やす。トラック一台あたりの集配個数をいかに増やすかで、配達ネットワークは宅配事業を行なう上での肝になるもの
ヤマトの宅配便参入を主導した故・小倉で印象的だったのは、常識に対して「本当にそうだろうか?」と問い、自分の見た/感じたものから自分の頭で考え続けたこと。徹底的に考え抜き、個人からの荷物の宅配は絶対儲かるとの確信に至ったのでした。

「絶対赤字」の非常識に挑んだクロネコヤマトの競争戦略|思考の整理日記
小倉昌男 経営学(Amazonリンク)



なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編(山田英夫)

なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編様々な企業のビジネスモデルが紹介されていて、他の類似本と違うのは単にビジネスモデルを紹介しているのではなく、ビジネスモデルの事例紹介⇒仕組みの一般化⇒他業界にある同様のモデル紹介と、具体化⇒抽象化⇒具体化、で説明されているところ。

同じビジネスモデルでも違う業界に適用されているのを考えるのは頭の体操にもなるし、モデルの本質的な仕組みがわかり示唆に富むものばかり。そのビジネスモデルを自分の業界や、自分の仕事に活かせないかと考えてみる。そんな良書。

あらためて考えさせられたのは、ビジネスモデルが成り立つ条件。以下の2つが重要と理解しています。
  • エンドユーザーや顧客に既存のモデルよりもより高い価値/低いコストが提供される
  • ビジネスモデルの関係プレイヤー(ステークホルダー)全員にWin-Winが成立する
下記の書評エントリーで取り上げたのは、小松製作所のビジネスモデルを構成するKOMTRAX(コムトラックス)というITサービス。上記の2点が満たされているし、すごいと思ったのはコムトラックスで収集する各建機データをうまく活用し、ユーザーや販売代理店への提供価値を上げ、自社の利益向上にもつなげている点。データ収集の仕組み構築と、データをうまく活用し価値を生み出す。コマツのビジネスモデルの中心的な存在になっている。ここにコムトラックスの本質があるように思いました。

KOMTRAX:コマツ建機の美しいビジネスモデル|思考の整理日記
なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編(Amazonリンク)



失敗の本質―日本軍の組織論的研究(野中郁次郎 他)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)すでに何回か読んでいましたが再読。言わずと知れた名著です。この本がおもしろいのは、6つの戦い(ノモンハン事件、ミッドウェー海戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦)から日本軍と米軍の戦略・組織特性比較を明らかにするだけではなく、そこからさらに突っ込んでなぜ日本軍は失敗したのか、そして現在にも活かせる失敗の教訓を残している点にあります。

本書で指摘されているのは、「日本軍の最大の失敗の本質は、特定の戦略原型に徹底的に適応しすぎて学習棄却ができず自己革新能力を失ってしまった」。

特定の戦略原型に徹底的に適応しすぎたとは「ガラパゴス化」であり、学習棄却ができず自己革新能力を失ってしまったとは「イノベーションを起こせなかった」ということ。「成功は失敗の素」となってしまったのです。

背景には環境の変化を認識できず、また気づいていても自らが変わることができなかったことがあります。環境は常に変わっていくもの。「強い者ではなく、環境に適応した者が生き残る」。これは進化論を唱えたダーウィンの言葉です。

こうして見ると当時の日本軍の失敗は、現在の起業や組織にもそのまま当てはまります。個人レベルでも自己革新をすること、時には自己否定もいとわないで変わっていくことも必要だなと。

書籍「失敗の本質」に見るガラパゴス化とイノベーション|思考の整理日記
失敗の本質―日本軍の組織論的研究(Amazonリンク)



MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体(田端信太郎)

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体メディアに関するいろんな論点が提示され、それでいて随所に示される豊富な具体例(抽象的な内容で終わらない)。読み応えのある本でした。

印象的だったのは、メディアのポジションを考えるための3つの軸:①ストックorフロー、②参加性or権威性、③リニアorノンリニア。源氏物語からニコ動までと、あらゆるコンテンツを分類する3次元マトリックスです。詳細はこちら

もう1つ興味深かったのが下記エントリーでも書いた、メディアの変化がコンテンツにも影響を及ぼし変化させるという考察。これ、メディアという「手段」が「目的」であるコンテンツを変化させるとも言えて、本書では音楽レコード⇒CDというアナログからデジタルの変化で起こったことの例に取り上げ、考えさせられるものでした。

書籍「MEDIA MAKERS」に書かれていた「メディア変化がコンテンツをも変える」論点がおもしろい|思考の整理日記
MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体(Amazonリンク)
Kindle版はこちら



経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか(野口悠紀雄)
大震災からの出発 ―ビジネスモデルの大転換は可能か(野口悠紀雄)


経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか大震災からの出発 ―ビジネスモデルの大転換は可能か2冊をまとめて読んだのがよかったです。世界と日本の経済の全体像が俯瞰されていて、「なるほど」と思うことも多く目から鱗とはこのこと、という感じ。第二次世界大戦から現在の歴史的な時間の流れというタテの比較、日本だけでなく先進国・新興国のヨコの比較により、色々と勉強になりました。

世界経済については、英米⇒独日⇒中露と工業化がシフトしていくとともに、工業化を経てそれぞれの国は繁栄の時代を迎えます。一方で、英米は工業化で一旦は高い成長を実現するも、その後の新興国との競争に敗れていく。次の方向性は脱工業化プロセスでした。

日本経済の失われた20年については、
  • 90年代以降の中国などの新興国の工業化で日本製品の競争相手は新興国製品になり、価格などの比較劣位から日本は次第に負けていく
  • それでも新興国製品に対抗するために行き着いた施策がリストラや非正規雇用への転換。結果、雇用が失われたり所得が減少した
  • 失われた雇用の受け皿が製造業より低生産のサービス業であったため、さらに所得減少に
ここに追い打ちをかけたのが3.11。短期的には東北地方が絡むサプライチェーンが壊れたことで生産・供給不足を引き起こしましたが、より影響が大きいのは中長期的に発生する電力制約。

新たな産業は高生産性サービス業というのが著者の野口氏の意見。例として、情報通信、金融・保険、不動産、医療福祉、教育・学習支援、など。重要なのは、新産業の生産性が製造業よりも高いこと。そうでなければ雇用の移転が起こって維持されても、所得は下がり日本は貧しくなってしまいます。

世界と日本の経済を俯瞰しておこう|思考の整理日記
経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか(Amazonリンク)
Kindle版はこちら
大震災からの出発 ―ビジネスモデルの大転換は可能か(Amazonリンク)
Kindle版はこちら



そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生(横石知二)

そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生ある田舎町で興した「葉っぱビジネス」について、仕掛け人である横石知二氏が書かれた本。少子高齢化や過疎が進み一時はどん底であった愛媛県上勝町。本書ではそこからいかに葉っぱビジネスが始まり、ビジネスとなり、町を再生していったかが紹介されています。

葉っぱビジネスを立ち上げるストーリーから、印象的だったのは、
  • 全てはビジョンから
  • マーケティング:強みを活かして差異化し価値を届ける
  • 当事者意識が人々と町を変える
詳細は下記エントリーに譲りますが、本書はリーダーシップという視点でも読むとおもしろく、リーダーとは未来のあるべき姿を実現するため、ビジョンを語り、まわりの人を導いていく。そして実現する様が描かれています。

自分たちの強みを活かして差別化し、お客さんに価値・ベネフィットを実感してもらう、というマーケの観点でも考えさせられます。葉っぱビジネスで強みとなったのが、実際の季節よりも先に花をほころばせるとか、狙った時期に小ぶりな葉っぱを採取するなどのおばあちゃんのノウハウ。おばあちゃんたちの根気強さ、丁寧さ、仕事への意欲もまた、上勝町の葉っぱビジネスに大きく貢献しました。

葉っぱビジネス立上げ当初は賛同者がほとんどいなかったのが、次第に「住民みんなが町のことを自分たちの問題として考えられるようなった」とは著者の言葉。当事者意識を持ったおばあちゃん・おじいちゃんが本当に町を変えてったのです。

あるおばあちゃんが横石さんにこんなことを言ったそうです。「世界中探したって、こんな楽しい仕事はないでよ」。葉っぱを売るという生きがいがあり、自分の取った葉っぱがお店でどう使われているかという自分がやっていることの価値を実感している。女の人もお年寄りもみんなが働いている社会。「ここに生まれて、本当によかった」と笑顔で言うおばあちゃん。自分が住んでいる町を誇りに思っている。実現されたのは横石さんのビジョンそのままでした。

おばあちゃんをとびっきりの笑顔にする「葉っぱビジネス」から学んだ3つのこと|思考の整理日記
そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生(Amazonリンク)


2012/12/27

2012年に読んだおすすめの本(前編)

数えてみると、今年は280冊くらいの本を読んでました。毎月コンスタントに20-25冊くらいは読むことができ、仕事にプライベートに色々あったわりにうまく時間が作れたかなと思っています。特に平日朝の出社前に、まとまった読書時間を確保したことがよかったです。仕事を片づけないといけない時は朝も本ではなく仕事だったりもするのですが。

今回のエントリーでは今年読んだ本について書いたエントリーから、特に印象に残っているものをご紹介します。自分が読んだ本をあらためて振り返る意味でも。なお、仕事関係の書籍は対象外としました(取り上げてもマニアックな内容になりそうなので)。





勝ち続ける意志力(梅原大吾)

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)著者はプロ格闘ゲーマーの梅原大悟氏。得意とするゲームは対戦型格闘ゲームで、ゲームセンターにあるストリートファイターとかです。

本書を一言でまとめると、「勝ち続ける意志力とは、勝つことではなく『自分が成長し続けること』を目的とすること」。

常に成長し続けたい、これって自分の価値観とドンピシャなんですよね。年齢を重ねると肉体的な衰えも起こると思いますが、経験や考え方、精神的なものも含め人としてトータルで昨日より今日、今日より明日で成長していたい、そんな価値観。

本書に出てくる印象的な内容としては、
  • 僕にとって生きることとは、チャレンジし続けること、成長し続けることだ。成長を諦めて惰性で過ごす姿は、生きているとはいえ生き生きしているとは言えない
  • 「結果を出す」ことと、「結果を出し続ける」ことは根本的に性質が異なる。勝つことに執着している人間は、勝ち続けることができない
  • 成長し続けるためにはどうすればよいか。それには変わり続けること、チャレンジし続けること。そして努力すること。自分にとって努力の適量を考える時に「その努力は10年続けられるものなのか?」と問う
勝ち続ける意志力:目的は「勝つこと」ではなく「成長し続けること」|思考の整理日記
勝ち続ける意志力(Amazonリンク)
Kindle版はこちら



採用基準(伊賀泰代)

採用基準タイトルは(マッキンゼーの)採用基準ですが、書かれていることはリーダーシップについて。平易な言葉でわかりやすく、かつ本質的なことが書かれているのが本書。

リーダーがやるべきことは4つあるとし、①目標を掲げる、②先頭を走る、③決める、④伝える(コミュニケーション)。また、マッキンゼー流のリーダーシップの身につけるためには、
  • 結果や成果を出す。「成果は何か」「付加価値は何か」を意識する
  • 自分の意見・考え方を持つ(本書ではポジションを持つと表現)
  • 自分の仕事のリーダーは自分自身という当事者意識を持つ
  • 会議で積極的にホワイトボードを使うなどリードする
著者の主張で共感できるのが、1人1人にリーダーシップを持つことの重要性。リーダーは1人かもしれないけど、「リーダーシップ」を持つのは1人でなくてもよい、むしろ全員が何かしらのリーダーシップを持つことが大事。そういう組織のほうが強い。このへんも共感できる内容でした。

今年は自分のリーダーシップをいかに高めるかを考えた1年でした。これからもリーダーシップとは、を意識したいし、実際に行動に移したいと思っています(それと結果も)。

マッキンゼーの採用基準から考える「僕らのリーダーシップ」|思考の整理日記
採用基準(Amazonリンク)



ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉(リンダ・グラットン)

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉この本が読者に投げかける問いは、2025年に私たちはどんなふうに働いているのか?というもの。本書がおもしろく、色々と自分事として考えさせられたのは、読んでいる中で随所に「自分の場合はどうなるのだろう?」と問いかけができる点でした。

本書から受けとったメッセージは、この先も漠然と生きるのではなく、よりよい未来を実現するために、私たち一人一人が未来について考え「じゃあどうすればよいか」と自分事化することだと理解しました。それが「主体的に築く未来」「自由で創造的な人生/社会」につながる。

主体的な行動をとることで、「今」をちょっと変え、その先に続く「未来」を変えていく。主体的に生きるために思うのは、当事者意識を持つこと・我が事化することであり、まずは自分のできることからやる。そしてコントロールできる範囲を広げていくこと。(コントロールできない)自分の身に何が起こるかよりも、焦点を当てるべきは起こったことに対して自分はどう解釈し反応するか、どう行動するか。これが大事と思っています。

もう1つ、本書に出てきた問いで考えさせられたのは、自分の専門性をいかに磨くかについての3つの質問でした。
  • その専門技能は価値を生み出せるのか?
  • その専門技能は希少性があるか?
  • その専門技能はまねされにくいか?
個人のキャリアにも当てはまるし、組織や企業の戦略やマーケティングにも通用する問い。自分の価値は何か?これからも問い続けたい質問です。

書籍「ワーク・シフト」まとめ:孤独と貧困から自由になる主体的な生き方|思考の整理日記
ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉(Amazonリンク)
Kindle版はこちら



自分でやったほうが早い病(小倉広)

自分でやった方が早い病 (星海社新書)本書が投げかける問題設定は、「この仕事は自分でやってしまったほうが早い」と思い、いつの間にか色々と自分が抱えている状況を病と捉えるべきだということ。この病の原因や治療法、そもそもなぜ克服しなければいけないのか、本当の仕事の任せ方や人の育て方も含め指南してくれる本です。

単にまわりに仕事を振るノウハウやテクニック的な話ではなく、なぜ「自分でやったほうが早い病」を克服しなければいけないのか。そのためにはどう考え方を変えていかなければならないのか。病を克服したあるべき姿(What)に対して、理由と(Why)マインドを変える処方箋(How)が書かれていたのが良かったです。

詳細は下記エントリーを参照いただく、もしくは本書を手に取っていただければと思いますが、この本を読んでからは本当に自分がやるべきこととそうではないことをより意識するようになりました。

誰も幸せにしない「自分がやった方が早い病」を克服する仕事の任せ方|思考の整理日記
自分でやった方が早い病(Amazonリンク)



ネット・バカ―インターネットがわたしたちの脳にしていること(ニコラス・G・カー)

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること2012年は特にプライベートでのネット利用時間を意図的に減らしてみた1年でした。それまでは朝起きてから夜寝るまでの間、ネット常時接続状態。リアルタイムウェブ中毒です。でもふと思ったのが、これって本当に自分がやるべきことなのか、本当に必要なことなのか、と。

そんな頃に読んだのが本書で、主題は、ネットを当たり前のように使うようなり人間の脳に変化が起こっている、具体的には脳が注意力散漫になることへの警鐘です。注意力散漫になるとは逆に言えば1つのことに長く集中できないという状態(頻繁にツイッターを見る、RSSをチェックする、メッセージ受信のアラートで作業を中断しメールを確認する)。この回数/頻度が多いほどそれ以外のことを長くやり続けることが困難になります。

とはいえ、じゃあネットを使わない生活に戻れるかというとそれは現実的ではない。結局のところ、ネット利用時間で無駄な内容(無目的なウェブ閲覧)をなくし、目的を持ってネットを使うようにしました。なんとなしにSNSやスマホを使わないようにすること。ネットの付き合いはこれからも試行錯誤が続きそうですが、本書を読んだのは問題意識を持つためのいいきっかけになりました。

リアルタイムウェブ中毒だった自分と今の自分|思考の整理日記
ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること(Amazonリンク)


★  ★  ★

他にもまだご紹介したい本について載せる予定が、長くなったので残りは別エントリーで更新します。今回は生き方とか考え方にフォーカスした本を中心に選びました。後半ではもう少しビジネスよりの、戦略とかビジネスモデルについて書かれた本を載せる予定です。

後編はこちら


2012/12/24

書籍「MEDIA MAKERS」に書かれていた「メディア変化がコンテンツをも変える」論点がおもしろい

話題の本『MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体』(Kindle版はこちら)を読みました。メディアに関するいろんな論点が提示され、それでいて随所に示される豊富な具体例(抽象的な内容で終わらない)。読み応えのある本でした。

■CDの普及で音楽も変わった

書かれている内容の中でも印象に残っている話として、音楽でのメディア変化であるアナログ盤(レコード)⇒CDに関する考察がおもしろかったです。

まずはその前に、そもそもメディアとは何か?ですが、簡単に言うと
  • メディアとは、発信者の思いが受信者に伝達する媒体・媒質となるもの
  • 送り手側の何かを伝えたいという思いがあり、それを受け手に伝達する「媒体・媒質」


本書で強調されていることとして、「メディアは必ず受け手を必要とする」「コミュニケーションにおいては受け手こそが王様」であり、単に情報を発信して終わり、ではないことを意味しています。

こう考えると、音楽におけるレコードやCDもメディアに属することが理解できます。曲をつくりファンやリスナーに自分たちの音楽を届けたいという思いがあり、送り手と受け手の間に存在する音楽というコンテンツを載せた媒体がCDやレコードなのです。

レコード盤からCDへの変化が何をもたらしたかに話を戻します。CDの登場・普及で起こったことは、曲の構成やタイトルの変化でした。曲の構成変化とは、サビ頭の曲の増加。CD以前の定番パターンは、Aメロ⇒Bメロ⇒サビだったのが、サビ⇒Aメロ⇒Bメロ⇒サビ。曲の最初にいきなりサビという一番盛り上がる部分をもってくる構成です。

なぜか。ここにレコード⇒CD、つまりアナログからデジタルのメディア変化が大きく影響しました。CDで音楽を聞くことで、曲単位のスキップや頭出しが簡単にできるように。その結果、サビが最初に来ないと「この曲なんだっけ?」となり、下手をするとサビに行く前に次の曲にスキップされてしまう。いわゆる結論を先に言えと同じで、リスナーはAメロ⇒Bメロ⇒サビと、気長には待ってくれなくなったのです。他にも、サビの歌詞の言葉を曲のタイトルにそのまま使う、なんてことも起こりました。

■手段(メディア)の変化が目的(コンテンツ)も変化させる

アナログからCDへの変化を一般化してみます。それは、メディアの変化がコンテンツそのものに変化を及ぼした、ということ。コンテンツを受け手に届ける役目にすぎなかったメディア(レコードやCDなどの媒体)がその中身であるコンテンツ(曲)の作り方にまで影響を与えました。

背景には、CDというデジタルが普及したことで、受け手であるリスナーが曲ごとに気軽にスキップ・頭出で自由に移動するようになった点があります。ポイントは曲を提供する送り手側の意図ではなく、あくまでユーザーが主導した変化だということ。そして、この変化は今のあらゆるメディア消費の変化の底流にあると著者の田端氏は言います。例えばネットビジネスでは、検索エンジンの進化、スマホやソーシャルメディアの普及により、コンテンツは作り手側の想定した文脈に関係なく、ユーザーは好き勝手につまみ食いをする。

メディアは、本来はコンテンツを送り手から受け手に届ける媒体にすぎなかったもの。重要なのはメディアに乗っているコンテンツ。しかし、ここまで見てきたのは、「手段(メディア)の変化が目的(コンテンツ)にも影響を及ぼし変化させる」、という現象です。

■本とTVのメディア変化はコンテンツを変えるのか

音楽では、メディアのデジタル化がコンテンツを変化させました。CDになり、iTunesでの1曲単位でダウンロードする環境が普通になったことで、この流れはより加速したように感じます。

ここ最近興味があるのが、同じことが本の世界でも起こっていくのかという点。ようやく日本でも電子書籍が本格普及してきている実感があり、これは楽天のkoboや何よりアマゾンのキンドルの日本版がついに発売されたことが大きいと思います。キンドルが出たことで、Kindle版も次々に発売されている印象でコンテンツが充実してきました。

私自身もキンドルを注文しましたが、このタイミングで購入ボタンをポチっと押したのは、読みたい本が少しずつキンドル対応がされてきたのが大きいです。電子書籍って、①ハード、②探す/買える仕組みが整ったプラットフォーム、③コンテンツの3層がどれだけ一体となっているかが重要で、③コンテンツの充実でようやく「買いたい」と思うようになりました。

で、間違いなく起こってくるであろうことは電子書籍端末というメディアが普及することで、コンテンツ自体の変化です。今はまだ紙の本をデジタル画面で表示させているにすぎません。単なる置き換え程度です。プラスアルファで辞書機能、ハイライト、検索はありますが、本質的には大きな変化は起こっていないと理解しています。アナログ⇒CDで起こったことが電子書籍においても起こるかもしれないですよね。期待したいのは電子書籍ならではの読書体験。コンテンツの変化です。

もう1つ、メディアのデジタル変化で期待したい領域はテレビ。今のところは地上波デジタルに切り替わるという、日本のTV史上では歴史的な転換があったわけですが、そのメリットは少なくとも視聴者であるユーザー側には十分に享受されていません。このへんの話は書き出すと止まらない感じになりそうなのであまり触れませんが、結局はユーザー視点に欠けた官民主導の政策でしかなかったのではないでしょうか。日本中で地デジ対応TVの総切替が半強制的に起こったわりに、TV番組やCMというコンテンツは従来のアナログの時とほぼ変わらないのはもったいなすぎる結果です。

メディアという手段の変化が目的であるコンテンツをも変化させる。そして、メディア環境変化が自分の思いを受け取ってほしいユーザーにどんな影響を与えるか、忘れずに持っておきたい視点です。


MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体
田端信太郎
宣伝会議
売り上げランキング: 760

Kindle版はこちら

2012/12/22

重宝しているGunosyから考えるネットの本質と課題

情報収集のツールは色々とありますが、その中でこれはオススメというのがGunosy(グノシー)です。ネット上のニュースやブログ記事を対象としたキュレーションツールで、気づけばほぼ毎日使ってます。

■Gunosyとは

Gunosyの特徴は以下の3つと思っています。
  • シンプルな仕組み:アカウントをつくるとユーザーそれぞれに最適化されたニュース記事を配信してくれます。アカウント登録はTwitter、Facebook、はてなブックマークのどれかでログイン。ピックアップしてくれるニュース記事等の閲覧方法は、GunosyのWebページを開くか、1日1回のメール配信の設定の2通り。Webページとメールには記事タイトルと本文見出しがリンク付で表示され、毎日更新されます。
  • 毎日のメール配信:メール配信というプッシュ型の通知が意外に便利だったりします。いつの間にかGunosyからのメールチェックが毎日の日課になりました。大抵のメール配信は来ること自体が面倒に感じるんですが、Gunosyはそれが全然ないんですよね。メール配信の設定は2つあって、何時に送ってもらうかの配信時刻と1回あたり何個記事を表示させるかの記事数を決めることができます。今のところは、朝5時配信で、10個記事と設定しています。欲を言えば朝のメール配信は3時とか4時も可能にしてほしいところ。
  • とにかく精度が高い:キュレーションツールの肝はどれだけユーザーごとに最適化できるか。Gunosyの精度は良いです。メールで10個の記事が送られてきますが、ほぼ1つ以上は気になる記事がありクリックしています。だいたい10個中、1~3個くらい。RSSに比べると打率はかなり高いし、良好な精度だからこそ毎日のメール配信も嫌じゃない。

■なぜGunosyの精度は高いのか

Gunosyを使っていての感触として、最適記事を抽出するのに活用されているのは、
  • 人気記事や話題性のあるもの:はてブ、ツイート、いいね!がたくさん付いているものなど、よくクリックされている記事がピックアップされる傾向がある
  • Twitterなどのログインツール内情報の利用:ツイッターであればユーザーのツイート内容などユーザー情報を参考に最適記事を選んでいる
  • Gunosyでの行動履歴:どの記事をユーザーがクリックしたかの情報が蓄積される。ユーザーがGunosyを使えば使うほどユーザーに最適化された記事が配信される仕組み
で、特に2点目と3点目のバランスが良く、結果的に高い精度が実現できていると感じます。

Gunosyを開発・立ち上げた東大大学院生3人へのインタビュー記事を見ると、「他のキュレーションサービスのほとんどは自分のSNSタイムライン上で『つながりのある人の間で話題になっている情報』を配信するものが多いのに対し、Gunosyはユーザーのソーシャルグラフではなく、あくまで自分自身の過去のポストやソーシャル上のアクティビティを分析対象として記事を選ぶ仕組み」というようなことが書かれています。(参考:「精度高すぎ」と話題のニュースキュレーション『Gunosy』は、どんな設計思想で作られているのか?|エンジニアtype

自分のアクティビティが分析対象とは、Gunosy配信の中から気になる記事をクリックするほど精度が高くなっていくのがまさにそれです。クリックする=その話題に興味があると判断され、次回以降のニュース記事ピックアップに活かされる。使えば使うほどユーザーに最適化された仕組みになっていく。

以前のエントリーでキュレーションアプリのZiteについて取り上げましたが、Ziteも同じような感じです。こっちは配信記事が英語のサイトなので、英語の勉強にもなります。(参考:重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記

■フィルターバブルと転職サービスへの挑戦

上のインタビュー記事の中にあったことで注目したのが、Gunosyでは「フィルターバブル」についても考慮、課題設定としている点です。

フィルターバブルというのは、情報の偏りすぎることでユーザーに不利益をもたらすのではという懸念です。過度にキュレーションすることで、ユーザーの興味や嗜好に合致しない情報は全部排除されてしまいかねません。

でも、実は除かれた情報の中にはユーザーにとって有益な内容もあり得るわけで、あまりに選定しすぎるのは良くないのではという問題意識。イメージはユーザーが自分の興味関心だけの泡の中に閉じこもり、未知の外の世界を知る機会がなくなる感じでしょうか。(参考:情報社会の未来:私たちはネットの世界に知らない間に閉じこもってしまうのか|思考の整理日記

だから時々そのバブルの外にも注目すべきと思うのですが、Gunosyではこの問題にどう対処するかはこれからの課題。要はキュレーションするのをどこまで絞るといいかのバランスで、ここは個人的にも注目しておきたい取り組みです。

もう1つ、Gunosyのサービスはニュース記事配信以外にもGunosy Careerという転職サービスもあります(正確には13年春のローンチを目標)。ニュース記事抽出/配信のデータマイニングやレコメンド技術を転職サービスに応用しようというもの。Gunosyの特徴である登録・設定・使い勝手のシンプルさや、高いマッチング精度を転職市場でも実現できるか。期待したいです。

■ネットの本質から考える今の「ネット上のバランスの悪さ」

何かと何かをマッチングさせる領域は、まだまだこれから発展するのではと思っています。マッチングとは単純化すればAとBの異なる要素をつなげることです。Gunosyでは、A:ネット上の情報、B:ユーザーをマッチングさせる仕組みだし、転職サービスのGunosy CareerはA:企業とB:人をマッチングさせようというもの。人と人をつなげるサービスはFacebookやLinkedinとかLineがあったり、情報と人を結ぶのはGoogleの検索サービスもそうですよね。

これらのマッチングの仕組みで共通しているのはネット上でつながっていること。インターネットが当たり前のように普及したことでネット上の情報量が爆発的に増えたけど、一方で増加する情報に追い付けていないのはマッチングだと思っています。必要な情報や人を探したり、つながるための仕組み。確かに何か知りたい時はグーグルの検索があるし、フェイスブックやラインで気軽に人とコミュニケーションが取れますが、まだ十分ではないように思います。

何が言いたいかと言うと、ネットは人やモノの情報が文字通り網の目のように入り組んだ世界ですが、ネットを構成する一つ一つのつながりが少ないor最適化されていなく、増える情報量に対してマッチングが不十分ということです。インターネットの本質って、人やモノという「個の情報発信」と「双方向性」なのではと思います。前者の情報発信はネットで実現できているけど、後者の双方向性、つまりマッチングとかつながりはこれからの領域。今はまだ情報量とマッチングのバランスが悪い状態です。だからこそ、Gunosyのようなテクノロジーでこれを解決するプレイヤーには期待したいです。

人や企業にはいろんなニーズがあり、中身は千差万別です。それらをどうつなげるか。ネットが進化してもう1つ上のレベルになるための課題と思っています。


※参考情報

Gunosy(グノシー)
「精度高すぎ」と話題のニュースキュレーション『Gunosy』は、どんな設計思想で作られているのか?|エンジニアtype
Gunosyが会社になりました。|Gunosy blog
あなたに最適化したニュースを届ける「Gunosy」が会社化|Itmediaニュース
重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記
情報社会の未来:私たちはネットの世界に知らない間に閉じこもってしまうのか|思考の整理日記
Gunosy Career


2012/12/16

Apple地図問題の本質とスマホ位置情報の可能性




iOS 6 がリリースされて最も話題を集めたことはアップルの独自地図でした。パチンコガンダムという名前の駅、羽田空港が大王製紙に、東京都公文書館が海上にある、などなど。iOS 純正なのに、地図完成度の低さが話題になりました。

この問題について、Apple やスマートフォンの事情に詳しいジャーナリストの西田宗千佳氏と、Yahoo! JAPAN で「ルートラボ」など位置情報サービスの開発にあたる地図のスペシャリスト河合太郎氏の対談記事が示唆に富み、おもしろかったです。今回のエントリーではこの対談から、アップルの地図問題について考えてみます。

2012/12/15

人生はスーパーマリオ

孫泰蔵氏はかつて起業したばかりの頃、資金繰りや社内の人間関係に苦しみ人生のどん底にあったと言います。

そんな時に兄でもあるソフトバンク孫正義社長から「人生はスーパーマリオ」というこんな話を聞いたそうです。

泰蔵、辛いやろ。苦しかろう。ばってん、お前は今いい経験をしよるとぞ。その苦労や経験は必ず実となって今後お前の人生に絶対に役に立つ。

人生はスーパーマリオみたいなものだ。

最初に1面を始めたときを考えてみい。ザコキャラのノコノコにすぐやられるし、雲に乗ることもできん。だんだん習熟してくるとボスキャラのクッパにたどり着けるようになる。だけど、本当にクッパを倒せるまでに何度も死ぬことになる。そこで挫折しそうになるのをこらえて挑戦を続けて、やっとクッパをやっつけてピーチ姫を助けることができる。次の2面はまた一段と難しくなっとる。そこで何度も何度も失敗するけど、努力と訓練でスキルを上げてクリアしてゆく。

いまのお前は1面で苦労している段階や。それでいかにも俺に助けてもらいたそうな顔をしているけど、プライドがあって言い出せんのだろう。最初に言っとくけど、俺は助けてやらん。お前の今の困難はおれも経験したし、助けてやるのは簡単やぞ。だけど、ここで助けてたらお前のためにならん。

『そこの土管から3面にワープできるぞ』と教えるのは簡単やけど、いまのお前の実力では3面にいったら瞬殺やぞ。だから、1面、2面で『必ず経験しておくべき失敗をして』、そのうえでクリアしていって、やっと3面のボスキャラに対抗できる実力が身に付く。ここで俺がお前を助けて3面に行かせてやったら、そこで致命的な失敗をする。だから、ここは逃げちゃいかん。お前の勝負どころやぞ。

書籍「僕たちがスタートアップした理由」より引用

当時、「死んでお詫びしよう」とまで考えたこともある孫泰蔵氏は、マリオという身近なストーリーであったこともあり気持ちが明るくなり、これをきっかけに苦境を乗り越えたとのことでした。

■ これまでの「今」の積み重ねが今の自分をつくっている

人生はスーパーマリオ。なかなかおもしろい例えだと思いました。そして自分の人生観ともわりと近いと思っています。

自分自身の考え方の1つに、これまでの「今」の積み重ねが今の自分をつくっている。いかに毎日きちんと生活するか、というものがあります。

これは自分の中でベースになっているもの。過去の積み重ねが今で、今を積み重ねると未来になる。だから、いつ何時も「今」というこの瞬間をいかに生きるかが大事、という考え方です。

マリオの話で言うと、1-1という最初のステージから始まり、目の前の障害を1つ1つクリアしていきます。その積み重ねで、マリオ(orプレイヤー)は成長するし、ステージを進んでいくことができます。

その過程で時には失敗もします。敵キャラにやられたり、穴に落ちてしまったり。でもゲームでは復活できるのでその経験は次に活かすことができる。実社会においても今失敗したことを次にどう活かすかは、失敗を糧にできるかどうかの分かれ目です。

失敗は、ミスってしまったその時は何かとんでもないことをやってしまった感じが大きいものですが、後から振り返ってみると、実はそんなに大したことではなかったと思うことがあります。1年後とかに当時を振り返ると、失敗をしたことで自分の経験値が増えたと思うこともあるし、失敗もポジティブに捉えられることもあります。

これはマリオの話で言うと、「泰蔵、辛いやろ。苦しかろう。ばってん、お前は今いい経験をしよるとぞ。その苦労や経験は必ず実となって今後お前の人生に絶対に役に立つ」という状況に近いのではと思います。

■ 風向きは変えられないが、帆の向きは変えられる

マリオの話で思ったのは、人生においては変えられることと変えられないことがある、ということです。

当たり前と言えばそれまでなのですが、マリオで言うと、ゲーム内に用意された各ステージはプレイヤーに変えることはできません。どうしてもクリアできないからと言って、敵の出現やステージ構成をいじることはできません。

しかし、各ステージや敵に対してどう対処するかは変えることができます。敵キャラをやっつけるのか、それとも攻撃をよけて先に進むのか。あるいは土管や雲の上に行くことでショートカットをするのかです。

この話は以前のエントリーで書いた、You can't control the wind but you can adjust your sails.(風向きは変えられないが、帆の向きは変えられる)、とも通じるものです。

自分がコントロールできないことと(風の向き)できること(帆の向き)を区別すること、そして自分のコントロールできることに集中することの重要性を示した言葉です。(参考:新入社員に伝えたい自分の頭で考えるための3つのこと|思考の整理日記

もう少し踏み込んで考えると、刺激に対して自分の反応・感情の間には選択の自由がある、という考え方です。何かが自分に起こった時に、それに対する自分の感情反応は1つではないこと、つまり選べるのです。

例えば、発車間際の電車に乗ろうとして目の前でドアが閉まり乗り損ねたとします。

この出来事に対してどう思うか、1つの感情は「今日はついてないな」とマイナスの反応で考えてしまうことです。でも、「次の電車はすぐ来るし、発車間際の電車より空いているかもしれない。待ち時間も有効に使おう、乗り遅れても数分の差で大したことない」と考えてみるとどうでしょうか。

起こってしまったことに対してポジティブな反応になっています。刺激に対して自分の反応は選択できること、選ぶならプラスの反応をしてみるのです。

■ 結果とプロセスのバランス感

もう1つ、マリオの話であらためて思ったのは、人生では結果(目的)とプロセスのバランスです。

スーパーマリオではクッパにさらわれたピーチ姫を助け出すという目的があります。一方で、救出という結果を出すまでには様々な敵キャラに対応し、各ステージをクリアするというプロセスがあります。

ゲーム自体はステージの難易度が絶妙に上がり、このプロセスでのスリルというかおもしろさがあるからこそ、マリオというゲームにハマります。

いくらピーチ姫を助け出すことができたという結果がうれしくても、そこに行き着くプロセスが楽しくなければマリオの楽しさは半減してしまうでしょう。

普段の過ごし方でも結果とプロセスのバランスは意識したいものです。

結果だけを追い求めすぎず、プロセスだけでもなくです。考え方は上に書いた「今の積み重ねが未来をつくる」です。プロセスを積み重ねることで結果や成果を出すことを意識しておきたいと思っています。


※参考情報
スーパーマリオとバックパッカー|TAIZO SON'S BLOG
新入社員に伝えたい自分の頭で考えるための3つのこと|思考の整理日記


僕たちがスタートアップした理由
MOVIDA JAPAN 株式会社 Seed Acceleration Div.
フォレスト出版
売り上げランキング: 93477


2012/12/09

世界と日本の経済を俯瞰しておこう

ちょっと前に読んだ本が野口悠紀雄氏の「経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか」「大震災からの出発 ―ビジネスモデルの大転換は可能か」の2冊。世界と日本の経済の全体像が俯瞰されていて、「なるほど!」と思うことも多く目から鱗とはこのこと、という感じでした。

第二次世界大戦から現在の歴史的な時間の流れというタテの比較、日本だけでなく先進国・新興国のヨコの比較。ようやく自分の理解も追いついてきたのでエントリーしています(書きながら頭の整理ができることを期待しつつ)。

■戦後の世界経済を俯瞰する

書籍「経済危機のルーツ」で印象的だったのは、工業化のシフトと脱工業化の新しい流れでした。ここについては、ちきりん氏のブログがとてもよくまとまっているので引用させていただきます。以下の表は第二次世界大戦後~2010年代までにおける、日本やアメリカなどの主な国の経済状況です。マトリクスにすることで俯瞰できるとてもわかりやすい図です。


引用:戦後の世界経済が俯瞰できる本|Chikirinの日記

戦勝国である米国・英国、敗戦国であったドイツと日本、そして共産国となった中国、ロシア(ソビエト)について、それぞれの時期に何があったかをまとめたのがこの表、グレーはその国の調子がよくなかった時代(濃いほど悪い)、オレンジはその国が調子がよかった時代を示しています。(濃いほど勢いがある時代)
表の手書きの赤丸はちきりん氏によるもので、工業化による経済成長を順に起こっています。イギリス・アメリカで最初に発生し、ドイツ・日本、中国と、それぞれの国で、農業から工業という第一次産業から第二次産業にシフトが起こり、生産性が大幅に改善しました。青い丸は工業化による経済成長を終えた国が、2番目の経済成長のための「脱工業化」プロセスです。

■日本経済の繁栄と苦難

このへんからはもう1冊の「大震災からの出発」に書かれてる内容に入っていきます。

上の表で1970年代と80年代の日本のところは「繁栄の時代!」とあるように、Made in Japanの工業製品が世界を席巻しました。アメリカなどの製品に比べて品質が良く、かつ低コスト生産による価格優位性があったためです。つまり、アメリカvs日本において、日本製品が勝り日本は工業化による経済成長を実現したのです。

ところが90年代以降、世界経済の産業構造はある変化が起こります。中国などの新興国の工業化。「世界の工場」とも呼ばれた中国製品は品質もそこそこ&低価格を武器に、次第に日本製品が負けるようになっていきます。今度は日本vs新興国において日本は優位性が保てなくなっていく。国内ではバブル崩壊の混乱、国外では世界の産業構造変化の荒波に飲みこまれ、それまでの繁栄がうそのように後に「失われた20年」と言われる苦難の時代へ。

90年代以降は自動車や家電、電気製品の工業製品の相手は新興工業国のそれでした。競争の中で起こったことは、低価格に対抗するためのコストを下げることでしたが、次第にコスト減の内容はリストラや非正規雇用への転換に行き着き、雇用や所得の減少を引き起こします。

製造業での失われた雇用の受け皿になったのがサービス業でした。雇用吸収先が製造業よりも低い生産性のサービス業で雇用形態が非正規雇用であったために、ますますの所得減少が起こった、これが野口氏の説明でした。

ちょっと長くなったのでまとめると、
  • 90年代以降の新興国の工業化で、日本製品の競争相手は新興国製品に。価格などの比較劣位から日本は次第に負けていく
  • それでも新興国製品に対抗するために行き着いた施策がリストラや非正規雇用への転換。結果、雇用が失われたり所得が減少した
  • 失われた雇用の受け皿が製造業より低生産のサービス業であったため、さらに所得減少に

■変化しなかった日本、対応したアメリカ

新興国工業化というのは、世界経済の産業構造の大きな変化でした。野口氏が書いていた内容で印象的だったのが、世界の構造変化に対して日本の産業構造は「変化しなかった」、という指摘。

企業のビジネスモデルや産業構造が変わらず、工業製品の輸出という外需依存の状態を続けます。新興国との競争の仕方が対アメリカの時代の競争と基本的に同じでした。本来は、製造業に代わる新しい基幹産業を国内につくり、異なる競争軸を目指すべきだった。でも実際は、政府は円安政策や金融緩和もあり古い産業構造が生き残り続けることに。

ちなみに、新しい競争軸を生み出したのがアメリカやイギリスでした。それが上の表にある青丸で囲まれた「ITと金融で再生」。製造業よりも付加価値の高いサービス業を創出し、脱工業化を実現したのです。

■東日本大震災の影響

新興国工業化による国内製造業の環境悪化に拍車をかけたのが、3.11の東日本大震災でした。短期的には東北地方が絡むサプライチェーンが壊れたことで生産・供給不足を引き起こしましたが、より影響が大きいのは中長期的に発生する電力制約です。

電力制約は2つあって、使える電力量の不足と、電力使用コストが上がること。福島原発事故の影響で、節電による産業に使える電気が強制的に制限されること、原発停止に伴いその分を火力発電で代替し原料をスポットの高い価格で輸入したことによる電気料金の値上げ。

当初は東京エリアを中心に電力制約が起こるはずが、全国的に原発稼働停止の流れで日本中で電力制約が発生、これに対して企業は生産拠点の海外移転を加速。結果、ますますの製造業の雇用減少という構図です。

■日本は産業構造を変化させられるのか

野口氏は著書の中で、本来あるべき姿は比較優位に即した国際分業である、と述べています。製造業は新興国に任せ、先進国は高い技術や専門性に立脚した産業に特化すべきである。重要なのは製造業の海外移転を引き止めることではなく、製造業に代わる産業を国内に作ることである、と。

新たな産業は高生産性サービス業というのが野口氏の意見です。例として、情報通信、金融・保険、不動産、医療福祉、教育・学習支援、など。重要なのは、新産業の生産性が製造業よりも高いこと。そうでなければ雇用の移転が起こって維持されても、所得は下がり日本は貧しくなってしまう。

個人的な意見として、製造業をゼロにすることは現実的ではないし、いきなりの変化は無理でしょう。製造業でも「先進国は高い技術や専門性に立脚した産業に特化」の例として思いつくのはアップルです。

iPhoneの裏にはこんなことが書かれています。Designed by Apple in California. Assembled in China. デザインはカリフォルニアにあるアップル、製造は中国。これは比較優位に即した国際分業の好例だと思います(もちろん、中国での製造は様々なリスクもあるし、これからも比較優位となり続けるかはわかりませんが)。

★  ★  ★

もう1つ、あるべき姿で触れておくべきは政府の役割。期待したいのは「政府が掲げる成長戦略」ではなく、「政府は何もしないこと」。市場に任せ、規制緩和など競争の邪魔をしないこと。既得権や特定産業を優先する施策は競争をゆがめ、めぐりめぐって経済成長が阻害されてしまいます。


※参考情報
戦後の世界経済が俯瞰できる本|Chikirinの日記


経済危機のルーツ ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか
野口 悠紀雄
東洋経済新報社
売り上げランキング: 49432

大震災からの出発 ―ビジネスモデルの大転換は可能か
野口 悠紀雄
東洋経済新報社
売り上げランキング: 336517


2012/12/08

マッキンゼーの採用基準から考える「僕らのリーダーシップ」

今年は自分のリーダーシップをいかに高めるかを考えた1年でした。これは仕事上での理由が大きいのですが、日頃から結構意識しています。

最近読んだ本でおもしろかったのが「採用基準」でした。

著者の伊賀康代氏はマッキンゼーの採用マネージャーを12年務めた方で、現在はキャリア形成コンサルタントをされています。

採用基準というタイトルはマッキンゼーが何を基準に採用しているのか、どういう人材を求めているかからきています。マッキンゼーが採用するにあたり重視しているのはリーダーシップです。本書での表現を使うと「将来グローバルリーダーとして活躍できる人」です。

■ マッキンゼーが求める人材は将来のリーダー

マッキンゼーの採用基準は3つあると言います。

  1. リーダーシップがあること
  2. 地頭がいいこと
  3. 英語ができること

2つ目と3つ目はイメージ通りですが、1つ目は意外に思うかもしれません。

著者はマッキンゼーが求めている人は、リーダーシップポテンシャルをもっている人と明確に言います。地頭とか論理的思考よりも採用基準としてリーダーシップを大切にしているのです。

なぜマッキンゼーはリーダーシップを重視するのでしょうか。

コンサルタントは問題解決を高いレベルでクライアントから求められる立場にあります。それもクライアントが自分たちで解決できないような「答えのない」ものです。

それを現実に解決していくにはいかに他者を巻き込んでいくかが肝であり、そのためにはリーダーシップが問われます。

単に頭がよい、論理的思考ができる、というだけでは他者やまわりを効果的に巻き込むことはできません。クライアントの組織や仕組みをドラスティックに変える、提案だけではなく実行するために求められるのがリーダーシップです。

■ リーダーの役割と身につけ方

著者の言うリーダーがやるべきことは4つでした。

  1. 目標を掲げる
  2. 先頭を走る
  3. 決める
  4. 伝える(コミュニケーション)

まずはビジョンだったり未来のあるべき姿を描き、それを目標に落とし込むことです。そのゴールに向かって先頭に立つのがリーダーです。

ゴールに向かって何の障害もないケースは稀で、随所で意思決定が必要になります。その時にリーダーがいかに決断するか、そして決めたことをどう伝えるか、まわりを説得し共感を得て導いていけるかです。

この4つのことは、以前のエントリーでも触れた内容にわりと近いかなと思っています。(参考:裸踊りと桃太郎から考えるリーダーシップ論|思考の整理日記

ではリーダーシップを身につけるためにはどうすればよいのでしょうか?マッキンゼー流のリーダーシップの学び方は、

  • バリューを出す:ここで言うバリューは成果を出すこと。結果を出すこととも言えます。リーダーとは非情なポジションでもあり、結果がなんぼだったりします。だからリーダーシップを身につけるためにも、常日頃から自分がやったことに対して「成果は何か」「付加価値は何か」を意識する。もちろん努力したというようなプロセスも大事ですが、これをやったと言える成果を出すことを心がける
  • ポジションをとる:ポジションとは自分ならこう考え意見が言えること、イシュー/課題に対する自分の立ち位置。仮に自分が最終的な意思決定者でなくても、自分がその立場だったらと想定し、どう決断するかを考える。自分の意見を常に持っておく
  • 自分の仕事のリーダーは自分という意識:上司やクライアントも含めた関係者をどう使って、巻き込んで進めるか。そのためには自分の仕事は自分自身がリーダーという意識が重要と著者は言います。指示されたこと・言われたことを受け身でやるのではなく、主体的に進めること、当事者意識や自分ごと化することでリーダーシップも養われるという考え方
  • ホワイトボードの前に立つ:会議でホワイトボードを使うことでその場の議論を整理したり、まとめる。ホワイトボードに書き、それをもとに会議を進めることでメンバーをリードしていく。この過程でリーダーシップが鍛えられる

■リーダーシップがあると何が変わるか

本書で良かったのは、単にリーダーシップが重要ですとか、リーダーシップの鍛え方はこうです、で終わらないことです。

リーダーシップを身につけると何が変わるかまで書かれていることでした。

2つあって、皆がリーダーシップを身につけることで世の中はどう変わるかの社会的側面と、個々人の働き方やどういう人生を歩めるのかの個人的側面です。社会全体と個人のキャリア形成に触れている点が本書のユニークなところです。

1人1人がリーダーシップを持つと社会はどう変わるのでしょうか。

一言で言えば、誰かが決めてくれるのに従うという受動的な姿勢ではなく、自分たちで解決しよう、変えていこう、という主体性のある社会になります。

個人的な自分の身の回りのレベルから、社会問題のわりと大きなものまでです。政治家が悪い、景気が悪い、○○が悪い、ではなく、じゃあ自分たちでどう解決しようか、というスタンスです。

個人レベルでも同じことが言えます。リーダーシップがあることで自分の人生をコントロールできる、と理解しました。

ここでも受け身ではなく主体的なスタンスが重要で、リーダーシップを持つことで、自身が人生のコントロールを握ることができるようになります。ひいては自分の世界観が実現でき、世界が広がっていくのです。

■ 1人1人がリーダーシップを持つ重要性

著者の主張で共感できるのが、1人1人にリーダーシップを持つことの重要性でした。

チームや組織で「リーダー」と呼ばれる人は1人かもしれません。1人のリーダーがいて残りのメンバーがリーダーに従うという中央集権型です。これは日本社会が今も中央集権の構図だし、企業でも多い形態ではないでしょうか。

実感としてあるのが中央集権型の組織やチームは、1人のリーダーの力量=チームの力量になることです。良くも悪くもリーダーに依存する組織です。

一方で、高いパフォーマンスが出せるのは、分散型の組織だと思っています。リーダーはいるけど、各メンバーが自主的/主体的に動き自分の役割にリーダーシップを持っている組織です。



全体統括は上司だったりのリーダーが見ますが、個別の役割やタスクにおいては各自がリーダーになって、時には上司も使うなどしてまわりに対してリーダーシップを取ります。

そのタスクを一番わかっているのは上司ではなくそのメンバーなので、リーダーシップを持って巻き込んでいくことができているチームです。

自分の経験上、分散型のほうがよりチームで取り組んだ意味があると言えます。自分一人ではできないことがチームではできて、かつ高い成果を出すことができるからです。

3-5人くらいのチームでもそうだし、もっとスケールを上げていくと社会全体、日本全体でもこれが当てはまるのではないでしょうか。みんながリーダーシップを持つことの重要性はここにあるように思います。


採用基準
採用基準
posted with amazlet at 12.12.08
伊賀 泰代
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 33


2012/12/01

日本のマーケティングリサーチを変える「黒船」を考える

今週、JMRX勉強会の「次世代マーケティングリサーチ討論会」に参加してきました。

討論会の見どころは、マーケティングリサーチ(MR)の世界を30年ものあいだ牽引してきたRay Poynter(レイ・ポインター)氏と、トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長で書籍「次世代マーケティングリサーチ」の著者でもある萩原雅之氏との対談でした。

この討論会のサブタイトルは「黒船到来、日本のマーケティングリサーチはどう変わる?」。討論会の中で萩原氏が日本のMRの歴史を紹介し、リサーチ業界では10年おきにイノベーションが起きており、今また新たなイノベーションが起こりつつあると言われたように、MRがどう変わっていくかは関心の高いテーマです。



■日本のマーケティングリサーチを変える「黒船」とは何か?

だから討論会に出席してあらためて考えさせられたのは、日本のMRに変革を迫る「黒船」とは何か、ということ。

黒船という言葉は、当時のアメリカが260年鎖国が続いた日本に開国を迫り将軍と武士を中心とした江戸の社会を根本的に変えた「外部要因」を指すと理解しています。

MRの世界でも大きな変化が起こりつつある/起こっていると感じますが、何が変化を引き起こしているのかという論点です。討論会も踏まえ考えてみた日本のMRを変える要因は以下の通り。
  • 海外の新しいMR手法:MROCsなどの新しいリサーチ手法が日本に入ってきて日本のMR業界を変える。今回の討論会を聞いて感じたのは日本のMROCsは海外に比べ普及していない/事例が少ない印象でしたが、果たして今後は変えるのか
  • クライアントの変化:マーケティングリサーチとは一言で言えばクライアントのマーケティングの課題解決のため。よって、クライアントのマーケが変わればMRも変わる。マーケの考え方やリサーチ予算の縮小、あるいはROIをこれまで以上に求められれば、MRも変わっていかざるを得ない
  • テクノロジーの進化:脳波や脳内の血液変化を使ったニューロサイエンスや表情認識などの調査対象者本人ですら自覚できないようなことも技術進歩でわかるようになる。Webアクセスログなどのこれまでは収集できなかったビッグデータ、ハドゥープやクラウドの普及。こうしたテクノロジーの進化でMRに活用できるデータ領域が増える。また、技術進歩によりコストが下がりビジネスで使用できるようになったことも大きい
  • メディア/ネット環境の多様化:スマホやタブレットの普及、SNSやブログ・口コミサイトなど多様な環境をMRに活用することで、新しいリサーチ手法が登場する。これまでのネット調査はPCが前提だったが、モバイルを使うことでよりリアルなデータ、クイックな調査ができるようになる。ソーシャルメディアを活用したリサーチは今後のトレンドの1つに
  • 消費者の変化:メディア/ネット環境の多様化により消費者の情報発信、消費者同士のコミュニケーションが変化してきている。MRでは消費者中心/消費者理解の考え方が主要なものになってきており、消費者の変化がMRの変える
  • 政府・国:先日、日経が報じた「民間の個人情報売買解禁へ 政府、新事業創出を後押し」。これまでは個人情報保護の対応がMRに制約を与えてきたが(住民台帳がつかえなくなったりなど)、異なるデータをユーザーIDで紐づけてシングルソース化し、統合データをプレイヤー間でやりとりができるようになると、リサーチデータの価値も変わる
  • 異業種の参入:クックパッド、TポイントのCCC、豊富なソーシャルグラフや属性データを持つSNS。これらがリサーチ業界に参集することは既存のMR会社にとっては脅威。またGoogle Consumer Surveyなどの異業種からのDIY型リサーチも価格破壊を起こす可能性も

■異業種参入の意味

この中からか黒船を1つ選ぶとすると、異業種の参入が最も大きな変化を引き起こす要因になると思っています。

例えばクックパッド。クックパッドには膨大なレシピ情報があり、そこには消費者がどんな食材を使い、どんな調理方法をしているのか、季節ごとの具材や食卓へのニーズ、使っている食器具など、あらゆる料理関連のデータが蓄積されています。

これらのデータを活用することで、マーケティングに利用できるだけではなく、プロモーションにも活かせる。実際に食品会社ではリサーチ会社ではなくクックパッドのデータを使うようになったと聞くこともあります。

それは従来のリサーチ会社にはないデータ、できないデータ活用、わかることの広さ・深さがクライアントのマーケティング課題ニーズをとらえたのだと思います。異業種の参入の影響は今はまだ表面化していないかもしれませんが、水面下では大きな変化を起こしていると感じます。

クライアントからすると、やりたいことは自分たちのマーケティング課題の解決であって、そのための手段は何でもよい。これまではリサーチならリサーチ会社、広告/プロモーションなら広告会社(広告代理店)と、わりとわかりやすい選択肢だったのが、異業種の参入でクライアントにとってはリサーチ=リサーチ会社に依頼、という構図は過去のものになっていくはず。より高い価値を提供するところに頼むのは当然です。MR会社もそれに対抗し生き残っていくためには変わらざるを得ないのではないでしょうか。

異業種のリサーチ業界参入で思うのは、本業は別にあって、リサーチはあくまで本業からの副産物を使った事業であるということ。

クックパッドならレシピサイトの会員課金/広告のビジネスモデルが収益の基盤になっている上に、レシピ情報から蓄積されるユーザーの料理に関するあらゆるデータを副次的に使うことでマーケティングリサーチ/プロモーションという新たなビジネスにもしているところが、既存のリサーチ会社にとっては脅威だと感じます。

リサーチ会社が本業でやっていても得られないデータが、異業種はメインビジネスの結果として自然と集まってきているデータ。アマゾンや楽天の購買情報、CCCのTポイントで統合されたユーザーデータ、SNSのソーシャルグラフや詳細な属性情報、口コミサイトの商品利用データ、等々。結果、従来MR会社にはない提供価値/サービスがあり、差別化要因になっています。

■マーケティングリサーチ会社の価値

MR会社の価値、存在意義は何か。これまではクライアントに変わって/一緒になってリサーチを活用したクライアントのマーケティング課題解決を図るものでした。課題解決がクライアント自身でできるならばリサーチ会社は不要になるはずで、MR会社に仕事が来るということはそこにMR会社の存在意義があった。しかし、MR会社ではないプレイヤーが同じような、あるいはMR提供価値を超えるような価値を与えてくれるとなると、MRの存在意義は薄れていってしまいます。

もう1つの流れとして、リサーチ業界に頼まなくてもDIYリサーチを使えばクライアントは自分たちでリサーチができてしまうこともあります。自分たちでやってしまうほうが早いし安いとなると、これもMR会社の価値はなくなっていく。

MR会社にしかできない価値は何か。MR手法の開発、データ収集、調査企画提案、調査コントロール、データハンドリング/分析、リサーチからのインサイト抽出、報告書の作成、クライアントとのコミュニケーション(時にはクライアント内の異なる部署の橋渡しになるなど)、外部者だからこその提言、ひいてはクライアントの課題解決。これらの価値を提供できる限りは、リサーチ会社の存在意義は引き続きあるだろうし、できなくなれば淘汰されていくのではないでしょうか。

歴史を振り返ると、江戸幕府に開国を迫ったのは黒船であった諸外国でしたが、実際に社会を変える行動を起こしたのは、坂本竜馬・西郷隆盛・大久保利通などの「日本人」でした。黒船という外部圧力がきっかけとなったものの、変化を起こしたのは内部から。

これは黒船到来としている日本のマーケティングリサーチにおいても同じことだと思います。異業種参入などの外部要因はあくまでトリガーであり、そこから実際にマーケティングリサーチを変えていくのはリサーチ会社であるし、そうあるべき。逆にそれができるところがこの先もクライアントに価値が提供できるんだと思います。


※参考情報

次世代マーケティングリサーチ討論会 ~黒船到来、日本のマーケティングリサーチはどう変わる?~
「これまでのマーケティングリサーチは使えなくなる」 レイ・ポインター氏が示すリサーチの将来像とは?|MarkeZine(マーケジン)
No Surveys in Twenty Years?|The Future Place Blog
No Surveys in 18 years!|Vision Critical
従来型サーベイは消えるのか -『No Surveys in 18 years!』より-|マーケターのメモ帳
民間の個人情報売買解禁へ 政府、新事業創出を後押し|日本経済新聞


次世代マーケティングリサーチ
萩原 雅之
ソフトバンククリエイティブ
売り上げランキング: 21913


最新エントリー

多田 翼 (書いた人)