2012/02/25

自分を変えた「時間配分の見直し」と「片づけ」の方法




今年の初め(2012年1月2日)に高3の時の同窓会がありました。

企画した時にせっかくなので担任の先生も呼ぼうということで実現したもので、先生と会うのは高校卒業以来でした。同窓会の締めのあいさつで先生からメッセージをもらいました。

  • 妥協することなく挑戦してほしい
  • ビジョンを持って行動してほしい
  • 自立した人になってほしい

「妥協するな、挑戦しろ」というのは、高3の時の進路指導の時にも言われたことがあり(先生も覚えてくれてました)、これまでの自分の人生にも少なからず影響している言葉です。2012年は自分にとって大事な勝負の年でもあるので、先生からのメッセージはあらためて考えさせられました。

同窓会はちょうど1月2日の年が明けてすぐだったこともあり、2012年を過ごすにあたって自分の何を変えるかどうかを帰りの電車で考えていました。思い出したのは、大前研一氏が言っていた「人間が変わる3つの方法」でした。

  • 時間配分を変える
  • 住む場所を変える
  • つきあう人を変える

この3つの要素でしか人間は変わらないとあり、最も無意味なのは「決意を新たにすること」とのことです。決意を新たにすることが無意味だというのは、決意するだけではなく実際に行動しないと変わらないという意味です。

この3要素の順番はそのまま変えやすさの順番と理解しています。まずは時間配分を変えることを考えました。

■ 時間配分の見直すと本当に自分が変わる

時間配分を変えたことはシンプルです。

  1. 日々の無駄な時間を見える化
  2. いつ/何に無駄があるかを確認
  3. 優先順位づけをして「やらないこと」を決めた

無駄な時間の見える化は、数日~1週間程度の自分の時間の使い方を Google カレンダーで記録を取ってみると一目瞭然でした。これまでの時間で最も無駄だと思えたのは、目的のないインターネット使用時間でした。

特に、自宅でのなんとなくで使う iPhone と iPad です。ツイッターや RSS、zite などのキュレーションツール、他には Facebook などです。

これらの時間を最低限にして、それ以上は「やらないこと」と決めました。他にやらないことを決めるにあたって、自分のやりたいこと/やるべきことを全てリストに書き出し、同時に「やらないこと」もリスト化しました。

「やらない」と決めると、平日でも時間ができます。

特に出勤までの朝の時間配分の変化が大きく、加えて去年より1時間ほど早く起きるようにしたので、朝にまとまった時間が生まれました。

その時間は読書や仕事関係の勉強をしているので、生活スタイルを変えてから2ヵ月弱で効果が出ています。時間が有意義に使えていると感じます。

■ 片づけられたのは全体像を把握できたから

時間配分を変えることに間接的につながることとして、家の片づけをしました。

朝に読書/勉強をするためには集中できる場所が欲しく、書斎スペースをつくる必要がありました。ですが、それまでのモノの量だと物理的にスペースを確保するのが難しかったので、片づけをしスペースをつくりました。

片づけでやったのは、

  1. 全体像の把握
  2. いる/いらない基準を決め、徹底的に捨てる
  3. 置き場所/仕舞う場所を決める

という、プロセスにするとシンプルなものです。

(1) 全体像の把握

モノは自分の知らない間に意外と増えています。ほぼ全てが買った/人からもらった、などその時その時は把握しているのに、いつの間にか自分がどれだけのモノを持っているかが見えなくなっていました。

まず最初にやったこのが、自分が今どれだけのモノに囲まれているかを知るようにしました。具体的には、書籍・衣類・CD・靴・電子機器・小物とカテゴリーを分けて把握しました。

(2) いる/いらない基準を決め、徹底的に捨てる

書籍・衣類・CD・靴・電子機器・小物とカテゴリーの順番で進めていく中で、「いる/いらない」の基準を自分の中でクリアにしました。基準というのは、これからもそれが本当に必要かを見極めることです。

なんとなく過去の惰性で持っていないか、いつか使うかも程度は徹底的に捨てました。この基準で見ると、自分の持っているモノに対して将来価値がないと思うものは多く出てきます。

これらをなくした今になって思うのが、モノが少なくてもそれまでとあまり変わらず生活できることです。もしかしたら今後、捨てたモノが必要になるかもしれませんが、その時は買えばいいくらいの気持ちを持つと、かなりのモノが捨てられます。

(3) 置き場所/仕舞う場所を決める

モノの場所が把握できていると全体像が把握できます。置き場所がクリアになっていると、その後もあまりモノが散らかりません。自分がきちんと把握できるだけの量に絞り込んだので全体を把握し続けられ、自分の家での生活がとてもシンプルになりました。

■ 片づけ後に思うこと

片づけの目的は、必要になった書斎スペースの確保でした。確保できたことに加え、実感しているのは住空間の改善です。

自分に必要なモノだけに絞ったこと、自分が持っているモノの全体感がつかめていること、モノがどこにあるかが把握できるようになったことは、「住む場所を変える」と同様のことでした。

家の位置は変わっていないのですが、家の中での住み心地が変わり、日々の生活がより充実しています。

今後も片づけは定期的に行なうようにしたいです。片づけをやる/やらないのポイントは「全体像が把握できているか」です。モノが増えてきたなと思うのは全体感がつかめていないことと同じです。

2012年を過ごす下準備はできました。


2012/02/18

Screenwise panelから考えるGoogleの「本質」と貪欲なまでのデータ至上主義

以下のモデル図は、グーグルとユーザーの関係を簡単に表したものです。

グーグルは無料で検索やGmail、YouTubeなどの様々なサービスをユーザーに提供してくれます。その代わりにグーグルが得ているのは膨大なユーザーデータであり、それをさらなるサービスの利便性向上や、グーグルの主要ビジネスモデルであるネット広告事業に活かしています。ユーザーは利便性を享受し、グーグルも集めたデータを有効活用/マネタイズしているというウィンウィンが成立している。この集まってくる膨大なデータ(ビッグデータ)活用がグーグルの本質的な部分だと思っています。

■Googleが集める個人データの価値

そういえば、「グーグルがユーザーから集めているデータの価値は、年間1人あたり50ドル~5,000ドルの価値がある」との報道が以前にありました(参考:Who Would Pay $5,000 to Use Google? (You)|Real-Time Advice - SmartMoney)。日本円にすると4,000~400,000円(1ドル80円とした)になるわけで、これだけのお金を支払う価値があると思っているのは、主に広告主でしょう。広告主にとって価値があるのは、ユーザーデータにより自分たちのターゲットとする層に広告を出せること。上記で、グーグルは収集したデータをマネタイズしているとしましたが、本当に個人データにこれだけの価値があるとすると、グーグルはこの金額×ユーザー数だけの売上やそこから利益を広告ビジネスから得ていることになります(もちろん、データ価値分を全て売上につなげているかはわからないので、単純な計算にはならないとは思いますが)。

私たちは普段ウェブを当たり前のように使い、検索やGmailなどのグーグル提供サービスを利用しています。利用状況がデータとなり積み重なると、私たちの利用データの価値は最大40万円になるというのはなかなか信じられないかもしれません。直接グーグルから「個人データをくれてありがとう。これをお礼に」などとお金をもらっているわけじゃないですしね。

■Googleの新しい取り組み

ところが、先日のグーグル関連のニュースで実際にグーグルが直接ユーザーにお金を支払うというものがありました。
ネット閲覧を追跡させてくれたら25ドル--グーグルがギフトカードを進呈|CNET Japan
Googleが協力してくれた人に礼金を払って詳細なWeb利用実態調査を|TechCrunch Japan

グーグルが始めるのは、自分が訪問するウェブサイトと利用方法の追跡で、許可してくれたユーザーに対し、最大で年間25ドルを支払うとしています(支払われるのはAmazonギフトカードで)。グーグルによると、協力許可してくれたユーザーに支払うのは「我々なりの『ありがとう』の気持ちの伝え方」とのことです。追跡の方法はGoogle Chromeにブラウザ拡張システムをインストールし、そいつがユーザーの利用データを自動収集しグーグルに送られるもの。グーグルによれば目的は、人々がインターネットをどのように利用しているかを調査することで、製品およびサービスの向上を図るためだと述べています。

グーグルはさらに詳細なユーザーデータを集めようとしていて、専用のルーターをユーザーに配布し自宅のネット接続環境に組み込んでもらうようで、そのルーターがより詳細にネット利用状況を記録する仕組みです(Screenwise Panelと言うそう)。また、特定のサイトに訪れた人にアンケート調査をすることもあるようで、これに協力してくれた人には、謝礼として最初に100ドル、その後は毎月20ドル支払うそうです。ルーターを使うとクロームブラウザを使った追跡以上のかなりのデータが取れるんだと思います。おそらく、ウェブ利用のあらゆるデータがルーターで収集されるイメージ。もちろん、個人情報は匿名化され個人を特定しないなどの処置は取られるとは思いますが、ウェブで何を検索したか、どういうサイトに訪れたか、どんな動画を見たか、何のゲームをしたか、・・・などなど。

グーグルがユーザーに直接お金を支払ってユーザーデータを集める。これを図にすると以下のイメージです。あらためて考えると、グーグルが直接ユーザーにお金を払うパターンって、これまでなかったような気がします。


■ちょっと話が専門的になって「調査の代表性」の話

グーグルに協力すると伝え専用ルーターを自宅設置で8000円、その後は協力し続ける限り毎月1600円がもらえる。単純計算で年間に27,200円、いかがでしょうか?これってやってみてもいいかなと思いますか?

これは人により意見が分かれ、「ウェブでの利用データなんてすでに取られているわけだしそれにお金がもらえるんなら協力してもいい」と言う人と、「自分のウェブ利用履歴が取られるのはお金もらってもイヤ」と言う人がいると思います。協力してもいいと言う人には、単にお金がもらえちょっとした小遣い稼ぎになるというだけの人もいるかもしれません。

実はこれって結構大事なポイントだったりします。クロームからにしても、専用ルーターからにしてもグーグルが集めるデータが何に使われるかの具体的な目的はグーグルに聞いてみないとわかりませんが、いずれにせよ一定規模の人たちからデータを集めないと、あまり有効に活用できないのです。ちなみに専用ルーターを配布するのは2,500世帯と書かれていましたが、まずは小規模でスモールスタートし、各種課題に目処がつけば対象世帯を拡大させるのだと思います。

で、さっき大事なポイントになると言ったのは、協力する人の「偏り」がどの程度発生するか、です。具体的には、いくら多くの人から協力許可を得てもその人たちが「普通の」人ではないとすると、その人たちの集まりは一般的な人からずれることになるので、データの価値に疑問が生まれてしまいます。極端なイメージとしては、協力する人が特定のサイトばかり利用する場合(例.YouTubeの利用が普通の人よりやたらと多い)、それがあたかも世の中全般のことのように見えてしまう。そうすると、そのデータを使った意思決定をミスリードする可能性があるのです。

専門的な表現をすると「調査の代表性」と言うのですが、まあでもこれはグーグルにとっては百も承知でしょう。そもそもグーグルは今回の事例のように礼金を払わない方法で普段からユーザーの利用データは集めているわけで、そこではある程度の代表性は担保されているように思います。それ以上のデータをあえて集めたいので礼金を直接ユーザーに支払うという形をとっているので、それに対するメリット/デメリットは十分に議論されての結論なはず。

個人的には、ユーザーが自分に関するデータで直接対価がもらえるのはアリだと思っています。前提として、自分の個人データが「誰が」「何の目的で」使うかを把握した上でというのが望ましいと思いますが。これって、以前のエントリーで触れたビッグデータにおける「第三の壁」を超えた世界なんですよね。詳細は省略しますが、この流れを期待していますし、世の中はその方向に動いていくのかなと思っています。
ビッグデータに付加価値を与えた企業が次世代の覇者となる|思考の整理日記


※参考情報

Who Would Pay $5,000 to Use Google? (You)|Real-Time Advice - SmartMoney
Help Us Make Google Better||Google
Google paying users to track 100% of their Web usage via little black box|ars technica
Google Screenwise: New Program Pays You To Give Up Privacy & Surf The Web With Chrome|search engine land
ネット閲覧を追跡させてくれたら25ドル--グーグルがギフトカードを進呈|CNET Japan
Googleが協力してくれた人に礼金を払って詳細なWeb利用実態調査を|TechCrunch Japan
ビッグデータに付加価値を与えた企業が次世代の覇者となる|思考の整理日記


2012/02/11

なぜ「10分1000円」のQBハウスに人は並ぶのか

以下のイラストを見るといつも、これはよくあるなと思う1枚です。思い当たる方も多いかもしれませんが、往々にして関係者の間での理解/認識のずれというのは発生するものです。

 引用:顧客が欲しいのは「タイヤのブランコ」|ベンチャー社長で技術者で

この絵の場合、顧客の言ったことに最も近い理解をしたのはプロジェクトリーダーですが、現場(アナリスト⇒プログラマー)にいくと徐々に違うものとして理解されます。また、要件定義書とかWBSなどのプロジェクト計画書類は具体的に詰め切れていないのに実行フェーズに入っていき、社内調整が難航し得られるサポートはごくわずか。それらしく出来上がったものの、顧客の説明や本当に必要だったもの(ブランコ)がない、すなわち顧客が期待する価値がないものができあがる。営業は大きく表現していて、請求額も過大になる。顧客の説明に対して、立場が違う人で理解が大きく異なることをおもしろく表現したイラストですが、なかなかうまく表しています。

このイラストでもう一つおもしろいのは、顧客が本当に望んでいたことと、説明された内容が微妙に異なるということです。イラストでは説明は木製のブランコでしたが、実はタイヤのブランコが必要だった。この話は、顧客が望んでいる価値は何のか、自分たちが顧客に提供できる価値は何か、この2つをいかにマッチングできるか、に行きつくように思います。

■「10分1000円」のQBハウスが提供するサービスとは

かなり前の話になるのですが、顧客への提供価値についてあらためて考えさせられたのが、ヘアカットのQBハウスでした。「10分1000円」というわかりやすいメッセージを伝えていて、よく駅前や駅ナカとかにあるQBハウスです。

自分の通勤で使う駅にもQBハウスはあり、平日でも休日でもほぼカット待ちの人が並んでいます。QBハウスの前を通り待っている人を見ると、なぜ並んでまでQBハウスなんだろうという疑問があり、1年くらい前とかなんですが、試しに行ってみることにしました。

それであらためて思ったのは、「安い」「早い」という利便性をヘアカットで追求している点で、そこには確かにニーズがあるんだなということ。ざっくりと表現すると、QBハウスがターゲットとしているのは、
 ・髪が伸びたからそろそろ切るか、くらいの人で
 ・髪型を変えるよりも、身だしなみを整える程度に
 ・でも自分でor家族に切ってもらうわけではなく
 ・遠くにでかけるのは面倒なので、近所or通勤経路で
 ・なるべく安く、早く髪を切りたい人
というイメージだと思いました。お客で多いのは圧倒的に男性で、年齢的にも30代後半以上という印象です。

QBハウスはここに価値を見出し提供するスタンスだと思うので、それ以外のことは「やらない」という考え方。美容院や床屋さんなどと比較すると、シャンプー、カラーリング、パーマ、ブロー、セット、髭剃り、眉カット、マッサージ、などのサービスは無し、設備面でも、電話、シャンプー用洗面台、待ち時間に読んでもらう雑誌などもなく、本当に「ヘアカット」のみに特化していました。ちなみにシャンプーの代わりに、表現は良くないかもしれませんが掃除機のような機械で散髪後の切った髪を吸い取ってくれます(正式にはエアウォッシャーと呼ばれている)。スタッフも最低限の人数で、受付は自動発券機で(1000円札しか使えない)、スタッフ指定も無しなので、だいたい2-3人くらいしか各店舗にいないのではないでしょうか。過剰な設備/スタッフがいないので店舗面積も美容院などに比べかなり小さく、店舗運営のランニングコストは人件費と店舗賃貸費が主だと思いました。

このように、徹底的にコスト要因を見直した結果、安く早くヘアカットサービスを提供できるようになり、「10分1000円」を実現したのだと思います。ちなみに、これはQBハウスを利用して初めて知ったのですが、10分以上時間がかかっても1000円料金は変わらず(時間従量制ではない)、カット時間が10分程度以内で終わることが多いために、10分1000円という表現をしているのだそう。行く前は30分くらいかかったとしたら、普通の床屋さんと変わらないのではと思っていたのですが、ジャスト1000円でした。

■QBハウスの価値

普段は美容院を使っているので、美容院で髪を切るのと比べると、QBハウスの提供価値は大きく違います。両者を比べた評価としては、美容院で担当してもらっている美容師さんの技術は高く、流行なども踏まえた提案をしてもらえますが、QBハウスは技術面においては、少なくとも自分が感じた範囲では劣りました。一方で、QBハウスに行ったことで、美容院が提供してくれている価値は過剰とも感じるようになりました。念入りにやってくれるシャンプー、マッサージなどがそれで、自分の場合はそれよりも早く効率良く終わってくれたほうが価値があります。提供サービスを少なくする代わりに時間をつくるほうがいい。

QBハウスのホームページには、「『あらゆる人にゆとりの時間を…』~ヘアカットからはじまる新しいライフスタイルの提案~」とあり、そこには「ヘアカットの施術時間を効率化により短縮することで、お客様の生活にゆとりの時間を提供することを企業理念に掲げております。」と書いてあります。(参考:理・美容師採用トップ|QBハウス

結局、QBハウスに行ったのはそれっきりで今は使っていないのですが、多くの人が並ぶサービスを体感できたのはいい経験だったし、ヘアカットサービスについて価値とは何かというのも考えられたことはよかったと思っています。QBハウスは、安く・早くというコンセプトは良いと思うのですが、だいたい並んでいて、カット時間よりも長く並ぶのが個人的には本末転倒な気がしたというのが大きいです。

戦略とは、自分の強みを敵の弱みにぶつけ、自らの強みを活かして差別化していくことです。強みとは、あくまで顧客にとって価値があり、かつ競合と差別化できているもの。だから、強みは相対的であり競合や市場により変わるものという理解です。

QBハウスの例では、髪を切るという1点に特化しているので、他のサービスがないことは、流行の髪型やパーマ/カラーでオシャレを楽しみたい、自分では決してできないシャンプーで気持ち良く頭を洗ってほしい、髪型をかわいく仕上げて出かけたい、などに価値を見出す人にとってはQBハウスのサービスは弱みになります。しかし、ただ髪が伸びた分だけ「安く」「早く」切ればいいという人には、QBハウスのサービスは価値があることになります。このようにターゲットとする人たちを誰に設定するかで、強み/弱みが180度変わる例もあるのです。(ちょっと話が脱線しますが、SWOT分析をやって深みにハマってしまうのは、Sだと思っていたものが、いつの間にかWじゃないか、と思えて、状況を整理しているはずがだんだんわからなくなってしまう時だったりします)

QBハウスをvs美容院で考えましたが、これがvs近所の床屋さんとなると話が変わってきます。今度は床屋さんに対しての差別化、強みは何か?となります。繰り返しになりますが、強みはあくまで相対的なもので、競合をどう設定するかで変わるもの。QBハウスと同じような「安い」「早い」競合では、既存のQBハウスの強みでは差別化できなくなります。もし、広い店舗でQBハウスのようなサービスをしかけられたら、待たなくてすむだけQBハウスから顧客が取られるかもしれない。その時のQBハウスは駅ナカなどの顧客にとって行きやすい・入りやすい立地が強みになるかのかもしれません。結局のところ、顧客視点で考えると、髪を切ろうと思った時にお客の頭の中で思い浮かぶ選択肢は何か:QBハウス、床屋さん、自分で切る、奥さんに切ってもらう、からQBハウスに価値を感じてもらい選んでもらう。こうして初めて来店してもらえるのです。

冒頭のイラストのように、顧客が求めている価値を理解することと、それに見合う価値をつくりあげ提供することは簡単ではありません。「顧客はモノやサービスを買うのではなく価値を買う」とよく言われ、有名な例えに「顧客はドリルを買うのではなく穴をあけるために買う」という表現があったりするくらいです。

顧客を求めていることを理解するには、相手視点で考えることなのかなと思っていますが、一方で顧客の言うことを120%実現しようとすると、それはそれでWin-Winにならないこともあるので、難しいところです(参考:マーケティング脳を鍛えるバリュープロポジションという考え方|思考の整理日記)。今回のエントリーは何かまとまりのない内容になってしまい申し訳ない感じですが、「顧客にとっての本当の価値は何か」「自分たちは結局のところどんな価値を提供するのか」という問いが最近よく考えることなので、徒然に書いてしまいました。


※参考情報
顧客が欲しいのは「タイヤのブランコ」|ベンチャー社長で技術者で
理・美容師採用トップ|QBハウス
マーケティング脳を鍛えるバリュープロポジションという考え方|思考の整理日記


2012/02/05

ソーシャルデザイン:自分ごとの「問いかけ」から始めるのが素敵な未来をつくっていくヒント

「ソーシャルデザイン (アイデアインク)」という本をご紹介します。


ソーシャルデザイン (アイデアインク)

朝日出版社
売り上げランキング: 283





本のサブタイトルは「社会をつくるグッドアイデア集」です。

この本はウェブメディアである greenz.jp が発信している社会をよくするアイデアがたくさん載っています。greenz(グリーンズ)の社会を自分たちでよりよくしたいというエッセンスが併せて書かれています。

■ 2匹のパンダが配るたった1枚のチラシが28万人に共有された

おもしろいアイデアや事例が多く紹介されているので、それだけを読んでも考えさせられる内容です。

アイデア集の中で印象深かった事例は、WWF(世界自然保護基金)が2011年7月にハンガリーで実施したプロモーション活動でした。

ハンガリーでは、支払う税金の 1% をチャリティ団体に寄付できる制度があるようで、WWF がハンガリーの人々に寄付を呼びかけをチラシで行なうプロモーション事例でした。

たった1枚だけのチラシ紙で、28万人以上の人にメッセージを伝えたというのです。どんなプロモーションだったかはこの動画を見てもらうとイメージがつきやすいです。


Pandas in the mall. The greenest leaflet campaign for WWF.|YouTube

1枚のチラシを配ったのはパンダの着ぐるみを来た2人組です。

ショッピングモールのエスカレーターの上と下にスタンバイします。パンダ1号がエスカレーターに乗るお客さんにチラシを渡し、エスカレーターで上るまで間にチラシを見てもらいます。

ここからが普通のチラシ配りとは違うのですが、エスカレーターの終わりでパンダ2号がチラシを回収するのです。

そのチラシを今度はエスカレーターを降りる人に渡し、パンダ1号がエスカレーターの下でチラシを回収します。

この繰り返しです。エスカレーターの上下のパンダ2人と、エスカレーターの中だけで1枚のチラシがぐるぐる回っています。

エスカレーターの昇り降りの隙間時間をうまく使っています。

エスカレータでの移動時間は、わずか数十秒くらいです。その時間に読めるくらいの情報量です。パンダの着ぐるみが配るというのもインパクトがあります。

このプロモーション活動の様子は YouTub e等のメディアでも取り上げられ、話題を呼び、結果として28万人以上の人に伝わったという事例でした(本書での少し物足りない点を挙げるとすると、これだけの人々に伝わった結果どうなったかというその後の話でした。メッセージが届いた28万人の次の行動は、寄付は増えたのかです)。

■ 自分事から始める「問いかけ」

greenz が考える「ソーシャルデザイン」とは、社会的な課題解決と新たな価値を創出する画期的な仕組みをつくることとのことです。本書では、WWF の先ほどのプロモーション事例ようなユニークな興味深いアイデアが紹介されていいます。

共通してるのは、「何とかしたい」とか「こうなればいいのに」という個人的な思いから始まっていることです。

あとから話を聞けば、多くの人が同じように抱えることでも、それを強い問題意識として捉え、その人ならではのアイデアや解決方法を考え、実行し解決していくのです。「楽しさ」も併せ持ったアイデアです。

始めは自分事として取り組んだもので、次第に共感を呼び「自分たち事」になっていたのでしょう。世の中に影響を及ぼし、社会をよりよく変えました。

問題を認識していても(もしくは問題とすら意識されないものを)、誰かがやるだろうという他人事では生まれなかったはずです。自分事や自分たち事という1人称の世界だからこそ世の中を動かしたのではないでしょうか。

本書の最後のほうで、次のことが書かれていました。

1 + 4 = ? を教えるのが日本の教育です。? + ? = 5 を教えるのが海外の教育だという話をよく聞く。

前者は与えられた問題に「正解」を考えさせ、後者は問題という「問いかけ」自体を考えさせるものです。

これは示唆に富みます。問いかけとは課題設定であり、イシューから考えること、論点を整理することです。

自分で立てた「問いかけ」に対して答えを考え実行し、その答えは必ずしも正解ではないかもしれません。あくまで個別解かもしれません。

前述の自分ごとにもつながる話で、個別解を共通解としていくこと、その出発点は問いかけから始めるという姿勢は大切です。ここは本書でも特に印象に残った内容でした。

※ 参考情報

greenz.jp
greenzこそがメディアの未来形 社会の問題を楽しく解決する「ソーシャルデザイン」(グリーンズ著)【湯川】|TechWave
Pandas in the mall. The greenest leaflet campaign for WWF.|YouTube
“1枚のリーフレットの到達力”を着ぐるみパンダが実験 ― WWFの面白キャンペーン|Markezine


ソーシャルデザイン (アイデアインク)

朝日出版社
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2012/02/04

マーケティング脳を鍛えるバリュープロポジションという考え方

マーケティングの活動を図にすると、大まかには以下のような流れになると思っています。


そしてマーケティングで目指すところは、顧客が欲しいもの(価値)を提供し喜んでもらうこと、かつ自社の売上と利益が上がるという、顧客と企業の両方を満足が両立するような好循環を築くことだと理解しています。

■本当の顧客中心主義とは

このようにマーケティングにとって顧客中心主義は大切な視点ですが、顧客中心主義をあらためて考えさせられたのが「100円のコーラを1000円で売る方法」(永井孝尚 中経出版)という本でした。著者の本書での問題意識は次の通りです。

「顧客が言うことは何でも引き受ける」という日本人の勤勉さは高度成長期を通じて無類の強さを発揮しました。しかし、それは同時に過当競争を生み出し、差別化ポイントを失わせ、「高品質ななのに低収益というアイロニカルな矛盾を生み出しています。
本書のテーマ――顧客中心主義とは、「顧客に振り回される」のではなく、「顧客の課題に対して、自社ならではの価値を徹底的に考え、提供する」ということなのです。(あとがきより抜粋)

本書は小説のようなストーリーで、マーケティングの基本的な考え方がわかるようなつくりになっています。「もしドラ」のマーケティング版と表現するとイメージがつきやすいかもしれませんが、主人公の久美は物語当初、顧客の言うことは絶対という考えからお客さんから言われたあらゆる要望/不満を全て盛り込んだ新商品企画を出します。しかし上司の与田には全く受け入れられず(与田はマーケティングの考え方を久美に伝授するという設定。もしドラで言うと「マネジメント」が担っていた役割)、ターゲットとなる顧客は誰なのか、ターゲットのどんな問題を解決するのか、本当のところはどんな価値を提供すると喜ばれるかなどを考えるようになり、新商品企画を修正し、最後は新しい市場を開拓するというストーリーです。

本書ではカスタマーマイオピアという言葉が出てきます。マイオピア(myopia)とは近視眼的/短絡的なことという意味ですが、これは久美の顧客要望を表面的にとらえ、顧客が抱えている本当の課題とそれに対してどんな価値を提供できるのかを考えていない状況に対して使われたもの。長期的に見るとお客さんが離れていってしまう状態です。

■バリュープロポジションという考え方

「顧客の課題に対して、自社ならではの価値を徹底的に考え、提供する」ためにはどんな視点が有効なのか。本書では図のようなバリュープロポジションという考え方が提示されています。バリュープロポジションとは、
1.顧客が望んでいる価値
2.競合他社が提供できない価値
3.自社が提供できる価値
の3つを満たすもの。つまり、競合ができなくて自社にできるという差別化された価値で、それが顧客が本当に望んでいる価値を提供するという考え方です。

引用:書籍「100円のコーラを1000円で売る方法」(永井孝尚 中経出版)

先ほどのカスタマーマイオピアとは、一見すると顧客が望んでいる価値の円の中に入るように思うが、実は長い目で見ると外側にあるものしか見えていない状態です。いかに上記の3つを満たすものを見出し、実行し、顧客に価値を届けて喜んでもらうか。

この円で考えた時に、中央の領域(顧客が望んでいる×競合他社が提供できる×自社が提供できる価値)は過当競争が起きます。ゆくゆくはコモディティ化となり価格競争になる。結局は売れない/売っても利益が出ない、という状態になってしまいます。あるいは、自社が(他社も)提供できるが、顧客が望んでいない(顧客が望んでいる価値の外側)過剰に高品質/高機能などを盛り込んでしまうというのも、手元にあるボタンの多すぎるTVリモコンなどを見ているとついつい思ってしまいます。

■キシリトールガムが創り出した歯医者さんの新しいビジネスモデル

バリュープロポジションの例として本書で紹介されていたのがキシリトールガムの事例でした。これはご存知の方も多いかもしれませんが、キシリトールガムはそれまでになかった「虫歯を予防するガム」という新しい市場を創りだしました。それまでのガムが提供していた価値は、味・香り・眠気防止などでした(そういえば歯磨き効果を謳うガムもあったような)。

キシリトールガムを普及させるやり方がうまいと思ったのは、歯医者さんを巻き込んでプロモーションをかけていった点です。プロモを成功させるカギは歯医者さんの賛同を得ることと考えたようですが、当初はうまくいきませんでした。なぜなら、ガムで虫歯予防をされてしまうと虫歯治療をする歯医者さんの仕事が減ってしまうと思われたからです。儲からなくなることへの拒否反応が起こった。そこで発想を変え、「歯医者の仕事は虫歯予防」というという新しい考え方で提案したのでした。この考えはキシリトールで虫歯を予防するというコンセプトにもうまく一致します。歯医者さんとしても、治療者ではなく予防したい顧客という新しい層を取り込める。歯医者さんとのWin-Winの実現を目指したのでした。提供する価値として目指したのは虫歯予防をすることで、本来の健康的な歯を維持するという考え方だったのでしょう。これがキシリトールガムのバリュープロポジションでした。

■最後に本書の所感を少し

本書は小説仕立てなのでさらっと気軽に読めてしまうものです。ただ、新商品のコンセプト(どんなターゲットにどんな自社にしかできないどんな価値を提供するか)が決まるまでにページ数を使い、その後の新商品開発の進め方や売っていく実行プロセスはかなり省略されていると感じました。実行フェーズでは、キャズムを超えるためにイノベーターやアーリーアダプター気質な顧客に集中することで事例をつくり、一定普及した後にその他80%の顧客に展開するというものくらいで、ここはもう少し内容があってもよかったです。

もう1つ、本書について思ったのはタイトルでもある「100円のコーラを1000円で売る」について。意味するところはいかに価値を上げるかだと思いますし、実際に本書で紹介されていたのはリッツカールトンのルームサービスで提供される1035円のコーラという話でした。具体的には部屋から電話で注文をすると、ちょうどよい冷え具合の温度に冷やされライムと氷が入ったコーラがグラスで運ばれてきたというもの。中身はコーラですが、サービスという目に見えない価値をつけることでトータルの「体験」を考えると与田は安いと感じた、というストーリーです。

あまり指摘されていなかったのは、リッツカールトンで1000円のコーラを売るやりかたは、ディスカウント店などで売るよりもそれ相応のコストがかかっていること。人件費だったり材料費などで、価格を1000円にしてもそこにどれだけの利益があるかという視点です。思うに、安いディスカウント店で1本当たり58円でコーラが売っていても、その裏で大量仕入れなどでコストが圧縮されており売って利益が出るようであれば良いわけで。タイトルだけを見ると1000円でコーラを売ることが正しいとも取れてしまいますが、100円でコーラを買うニーズがあり、そこに自社の利益があるのであれば、それはそれで顧客と企業の両方の満足が両立しているはず。「100円のコーラを1000円で売る方法」というタイトルは、本書で言いたいことの具体例の1つでしかないので、そこはちょっと違うかなと思いました。

100円のコーラを1000円で売る方法
永井 孝尚
中経出版
売り上げランキング: 305

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