2012/03/31

ここ最近考えている4層フレームワークと、コミュニケーションとコンテンツの話

当たり前のように使っているiPhoneや、ツイッターなどのソーシャルメディア。このへんを自分が使いだしたのはここ5年以内くらいであることにふと気づきます。

今から5年前の2007年当時を思い返してみると、携帯電話はケータイと表現される今でいうフィーチャーフォンでした。SNSと言えばmixiだったし、ソーシャルゲームも今ほど話題を呼んではいなかった。当時、ケータイを使って何をしていたかというと、キャリアのメールや電話のコミュニケーションが中心で、今スマホでやっているようなネット閲覧、ソーシャルサービスの利用、あるいは動画などのコンテンツを見る/遊ぶのようなことはほとんどしていなかったはずです。ちょっと話が脱線しますが、最近は「ケータイ」という表現をあまり見なくなったように思います。「スマホ」が多い。もしかしたらケータイという言葉は死語になりつつあるのかも。

2007年と今を比べると、ここ5年くらいで大きく変わったんだなとつくづく思います。その要因をあらためて考えてみると、(1)ネットワークのインフラは高速/大容量通信がコストを下げながら実現され、(2)モバイルデバイスは2007年にiPhoneという新しいスマートフォンの登場とGoogleがAndroid OSの無料オープンにしたことでアンドロイド端末との競争、(3)ツイッターやフェイスブックあるいはGREEやモバゲーなどのプラットフォームが次々につくられ、(4)プラットフォーム上で音楽・動画・ゲームなどのコンテンツプロバイダーが展開する。これら4つの要素:インフラ、デバイス、プラットフォーム、コンテンツプロバイダーの成長や変化がここ5年くらいで多くを変えてしまったのではと思います。

■4層のフレームワーク

この4層は、今の状況がどうなっているのか、あるいは今後はどう変わるのかを考えるために役に立つ切り口だと思っています。例えば2007年くらいというのは、4層は携帯キャリアがほぼ独占できていたように思います。ドコモなんかが典型で、
  • インフラ:ドコモが提供する携帯回線
  • デバイス:ドコモ仕様で携帯製造メーカーが作ったケータイ
  • プラットフォーム:iモード
  • コンテンツプロバイダー:iモード向けに様々なコンテンツを提供
こうして見ると、きれいに囲い込みができていますよね。ドコモ以外の例えばauでもez webというプラットフォームを持っていて、それぞれのキャリアが4層で独自のエコシステムを展開していました。

ところが2012年現在を考えると、4層には様々なプレイヤーが存在しキャリアの影響力は小さくなっている状況がうかがえます。
  • インフラ:キャリアが提供する携帯回線、Wi-Fiなど
  • デバイス:iPhone、Android。スマホやタブレットなど種類も増加。必ずしもキャリアに依存していない
  • プラットフォーム:フェイスブック、ツイッター、グーグル。GREE、モバゲーなどのコンテンツプラットフォーム。LINEなどのコミュニケーションプラットフォーム
  • コンテンツプロバイダー:ソーシャルメディアと連携された音楽/動画、ゲーム、など

最近、仕事でスマホを使うことがあったのですが、発注して新しく届いたアンドロイド端末を使用してみて思ったのは、使うのにあまりキャリアを意識することがなかったことでした。どういうことかと言うと、アカウントはGoogleアカウントで登録し、メールも@docomoではなく@gmailがあれば十分。電話もスカイプとかLINEなどのアプリを使えばいいし、ちょっとしたコミュニケーションだったらフェイスブックからもできてしまう。動画はYouTubeやTEDのアプリで余りあるほど見られるし、ゲームもAngry BirdsとかGREEとかいろんなアプリが用意されている。携帯会社というキャリアは携帯回線の4層で言うインフラ部分くらいです。

■コミュニケーションとコンテンツの2つに

ところで、自分がネット上でやりとりしている情報(データ)は大きく分けてしまうと、コミュニケーションとコンテンツの2つだと思っています。それぞれ具体的には
  • コミュニケーション:通話・メール・チャット。検索した言葉や何を買ったかなど人が発する情報も含む
  • コンテンツ:映画/動画・音楽・ニュースなどの情報やゲームなどのエンターテイメント
ニコニコ動画などは、動画を複数ユーザーで視聴しながらコメントをつけるなどのコミュニケーションの要素もあるので、コミュニケーションとコンテンツの両方を要素を持つ場合もありますが。

大きな方向性として、コミュニケーションは無料化の方向に、コンテンツは無料化と一部有料化に分かれると考えています。コミュニケーションは人と人とのやりとりなので、本来はそこにお金はかからないもの。コミュニケーションをする相手が目の前にいれば直接話すので、特にお金がかかるとかはありません。コミュニケーションを物理的に離れた人と、あるいはメールなどで時間差を使って行なうニーズが起こり、そのためにはコミュニケーションインフラを使うことになった。インフラ構築/維持にコストがかかるのでその分をユーザーが負担するため、携帯電話で電話をしたりメールを送るのに相応の料金が発生しています。

それが、技術の進歩やビジネスモデルを工夫することで無料で使える様々なコミュニケーションサービスがでてきています。電話であれば、スカイプやLINE、Viber、050プラスなどは基本無料。メールもドコモなどの携帯キャリアが提供するアカウントではなくGmailを使えばタダ。これが前述のコミュニケーションが無料化する流れです。

次にコンテンツの無料化と一部有料化。無料コンテンツの代表例は天気や電車/交通情報、ニュースなどでしょう。ニュースは日経や朝日が有料化に積極的ですが、国内外の出来事をざっと知るくらいであれば無料で手に入ってしまいます。これに比べ、お金を払ってでも見たい/遊びたいコンテンツは有料モデルが成立します。有料モデルとはユーザーへの課金モデルのことで、身近な例ではソーシャルゲームが当てはまります。もちろん基本無料で遊べますが、ゲームにハマってしまうと有料アイテムを使うケースも増えユーザーへの課金が発生します。逆に言えば、ユーザーはゲーム内のアイテムにお金を払ってでも遊びたい、ゲームを続けたいというニーズです。有料コンテンツは海外のほうが整備されている印象で、NetflixやHuluなどの有料動画サービス、Spotifyといった課金モデルの音楽サービスなど。無料登録だけでも利用できますが、有料会員になることでより便利に使えるようになります。フりーミアムモデルとも呼ばれている世界です。

■4層への影響

コミュニケーションの無料化と、コンテンツは無料化/有料化は、4層それぞれに影響を与えます。

インフラ:無料コミュニケーションにシフトしコンテンツ使用のためのデータ通信量が増大。ドコモやauなどの通信障害がたびたび発生しましたが、今後も増え続けるスマホユーザーとユーザーごとの利用データ量のダブルで増えるのでインフラ構築コストがかさみます。それに耐えられなくなったときに定額制がデータ従量制になるかもしれません。ネットワークの中立性という継続課題もあります。

デバイス:コミュニケーションとコンテンツ利用をするには不可欠なデバイス。スマホは先進国だけではなく低価格で多機能な端末提供されると新興国でもユーザーが爆発的に増えそうです。PCはないけどモバイルはある、コミュニケーションインフラが整っていない新興国ではモバイルでのコミュニケーションが無料というのは大きい。その後はゲームなどのコンテンツユーザーも増えるのでビジネスチャンスは広がりそうです。

プラットフォーム:コミュニケーションやコンテンツを提供するプラットフォーム。人間関係が構築されるフェイスブック、人間関係+興味のツイッター、ビジネスでの人間関係のリンクトイン。グローバル展開を加速させているGREEやモバゲーなどのゲームコンテンツプラットフォーム。プラットフォーム上ではコミュニケーションが行われ、ユーザーはコンテンツを利用する。無料サービスは今のところ広告モデルで成立させ、一部コンテンツを有料化するというビジネスモデルです。

コンテンツプロバイダー:同じコンテンツでも利用範囲が制限される無料版は広告モデルで、より便利なサービスは有料版でコンテンツを提供します。コンテンツが、お金を払ってでも利用したくなるようなプレミアムなものと、CGM(Consumer Generated Media:消費者生成メディア)などの無料で利用できるものに分かれていく。

■最後に

冒頭で2007年と2012年現在を比べましたが、5年後の2017年には今とは大きく変わっているはずです。変化の幅は07年⇒12年よりもっと大きく変わっているかもしれません。「そういえばあのころはフェイスブックとかあったよね」みたいな会話をすることになるのかもしれません。人間関係のプラットフォームは今のところはフェイスブックですが、5年後もそうとは限らないのです。

インフラ、デバイス、プラットフォーム、コンテンツプロバイダーの4層で、これから何が変わり、何が変わらないのか。変化の激しい時代にいますが、表面的なことに振り回されず本質を見落とさないようにしたいものです。

2012/03/24

「ドラッカー」と「チキンラーメン」から考えるイノベーション

ドラッカーの「マネジメント - 基本と原則」を久々に読み直しました。ドラッカーは、企業の目的を「顧客を創造することである」と定義しています。そして、企業の基本的な機能に、マーケティングとイノベーションの2つがあるとします。マーケティングについてドラッカーは、顧客の欲求から考えることから始めよと説きます。顧客は何を買いたいのか、顧客が求めている価値は何か。

もう1つのイノベーション。ドラッカーはイノベーションとは「いまだかつで誰も行ったことがないことを行なうこと。誰も知らないことをすること」だと言います。科学や技術そのものでではなく価値であり、その組織の中だけではなく、組織の外にもたらす変化。よって、イノベーションの尺度は外の世界にいかに影響を与えられるかである、と。

■チキンラーメンとカップヌードルに見るイノベーション

最近あらためて思った「これはイノベーションだ」という商品にチキンラーメンがあります。今でこそ家庭で調理するインスタントラーメンは当たり前のようにどの家庭にも台所に1つくらいは置いてありそうですが、チキンラーメンが世に出た50年以上も前の時は、ラーメンが今ほど気軽に食べられる状況ではなかったのです。

世界で初めてインスタントラーメンに商品化に成功したのがチキンラーメンであると言われています。チキンラーメンを発明したのがインスタントラーメンの父とも呼ばれ日清食品創業者の故・安藤百福です。安藤百福は今でいう典型的なベンチャー起業家。チキンラーメンを発売した1958年、当時の安藤は48歳でした。それまでの半生において安藤は様々な事業を展開します。繊維会社の設立に始まり、光学機器や精密機械の製造事業、軍用部品工場、製塩事業などなどです。自伝「魔法のラーメン発明物語―私の履歴書」を読むとその波乱万丈な人生に驚くばかりです。

太平洋戦争の終戦直後、安藤は焼け野原での闇市である光景を目にします。屋台のラーメンに人々がつくる行列。1杯のラーメンを食べるために20-30mくらいの長い行列ができており、並んでいる人は粗末な衣服を着、寒さに震えながらラーメンを口にできるのを待っていたと述懐しています。安藤はここにラーメンへの人々の大きなニーズを見たのです。

実はその後のチキンラーメンとなるインスタントラーメンの開発に着手した当時の安藤は、理事長をやっていた信用組合倒産により無一文になっていた状況でした。自分の資産は自宅だけ。ここで安藤百福がすごいのは、この状況でこれまで全く手がけたことがないラーメン開発に着手したこと。安藤はインスタントラーメンを開発するにあたり、5つの目標を立てます。
  1. おいしくて飽きがこない味にする
  2. 家庭の台所に常備されるような保存性の高いものにする
  3. 調理に手間がかからない簡便な食品にする
  4. 値段が安いこと
  5. 人に口に入るものだから安全で衛生的でなければならない
興味深いのは、どの目標も現代でも十分に通じることです。むしろ、5つ全てを満たしている食品は少ないのではと思ってしまいます。

多くの試行錯誤を乗り越え、チキンラーメンは世に売り出されます。85g入りで1袋35円でした。その当時、うどん玉1個で6円、普通の乾麺1個が25円の時代。それに比べるとチキンラーメンは高い印象です。しかし、チキンラーメンには他にはない価値を持っていました。「お湯をかけて2分でできるラーメン」(当時は3分ではなかった)のキャッチフレーズに見られる利便性。もう1つ価値を持っていたのはチキンラーメンの持つ栄養成分でした。チキンラーメンの鶏がらスープをつくるためにトサカや骨から様々な栄養成分が抽出されていて、発売当時の厚生省は「妊産婦の健康食品」としてチキンラーメンを推奨します。発売当時のチキンラーメンのパッケージには「体力をつくる 最高の栄養と美味を誇る完全食」と書かれていてます(ちょっと言い過ぎな気もしますが(笑))。利便性と栄養食品としての品質、これがチキンラーメンの強みだったのです。発売後、チキンラーメンは「魔法のラーメン」と人々から呼ばれるようになります。

その後、安藤はカップラーメンという新しい市場をつくります。これもチキンラーメン同様にイノベーションです。安藤が発明したカップヌードル以前はインスタントラーメンはどんぶりに自分で麺を入れてお湯をかけるというスタイルでしたが、麺が始めからカップに入れてありお湯を注ぐだけ。よりインスタントなラーメンです。カップヌードルのヒントは、安藤がアメリカにチキンラーメンを売り込みに行った時に見た、アメリカ人はチキンラーメンをいくつかに割り、カップに入れてお湯を注ぎフォークで食べたことから。安藤のそれまでの「インスタントラーメンはどんぶりに入れて箸で食べる」という常識を捨てたことが、後のカップヌードルにつながったのです。

チキンラーメン同様、カップヌードルも発売開始当時、それまでになかった商品だったため、流通には受け入れられませんでした。安藤はその状況でどうすればいいかを考え、カップヌードル用のお湯が出る自動販売機をつくったり、百貨店、遊園地、キオスク、官公庁、警察/消防署、自衛隊、麻雀店、パチンコ店、旅館など、あらゆるルートに営業をかけます。そこにあったのは安藤の「いい商品は必ず世の中が気づく。それまでの辛抱だ」思いでした。

カップヌードルでは発売したその年(1971年)に、銀座の歩行者天国での試食販売も実施したようです。長髪、ジーンズ、ミニスカートの若者がカップヌードルに集まり、立ったまま食べる姿。安藤は、カップヌードル発売前の発表会で立ったまま食べるのは良風美俗に反するから売れないと言われたことを思い出したと言います。

銀座の歩行者天国でカップヌードルを食べる若者(1971年11月)

■イノベーションとは未来の「当たり前」をつくること

安藤百福のラーメン開発。イノベーションという視点で見ても色々と考えさせられます。単に「儲かりそうだ」といった気持ちではなく、「今の社会にない」という問題意識からの開発着手。社会の問題解決を自分の使命とし、市場をつくり、ビジネスチャンスをものにしたのです。

あらためてイノベーションとは何だろうと考えた時に、自分の理解では、イノベーションとは未来の「当たり前」をつくることだと思っています。現在はそれがないが、未来にはあることが当たり前になっているものを世の中につくりだすこと。世の中で当たり前のように受け入れられるということは、それだけ人々のニーズがあったということだし、普及したことの表れでもあります。

安藤百福は、チキンラーメンだけではなくその後のカップヌードルや様々な派生商品を日本だけではなく世界に展開しました。安藤はラーメンを世界の食べ物にしたと言っていいと思います。晩年は宇宙食としてのインスタントラーメン開発にも取り組み、2005年に宇宙食ラーメンの「スペース・ラム」が宇宙飛行士である野口聡一氏も搭乗したスペースシャトル「ディスカバリー」に持ち込まれました。安藤の死後、ニューヨークタイムズは社説で「Mr. Noodle」というタイトルで安藤の功績に対して最大級の賛辞を送っています。Ramen noodles have earned Mr. Ando an eternal place in the pantheon of human progress. (ラーメンにより安藤は人類の進歩の殿堂の不朽の地位を得た)。参考:Mr. Noodle|New York Times

自分の今の仕事も、新規ビジネスの開発プロジェクトに携わっています。マーケティングとかイノベーション、すなわち「自分がつくろうとしている価値は何なのか」「その価値は顧客の問題を解決するのか」を日々考え悩む状況ですが、チキンラーメンというどこのスーパーにも当たり前のように売っている商品からも色々と考えさせられました。というわけで久しぶりにチキンラーメンを食べたくなってきました。


※参考情報

日清食品クロニクル|日清食品
Made by 日清食品|日清食品
チキンラーメン ニッポン・ロングセラー考|COMZINE
インスタントラーメン大研究 半世紀に渡る進化の歴史と次の商品|日経トレンディネット
その時、偉人たちはどう動いたのか? 日清食品創業者 安藤百福 - 起業事例|DREAM GATE
Mr. Noodle|New York Times
安藤百福|Wikipedia


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2012/03/20

できない社員が一気に伸びる「行動科学マネジメント」はゲーミフィケーションでもあった

組織や部下のマネジメント方法の1つに、WILL PMが提唱する「行動科学マネジメント」というものがあります。

組織以外にも自分自身にも使える考え方だったので、行動科学マネジメントについてご紹介します。

■行動科学マネジメントとは

行動科学マネジメントとは名前に行動科学とあるように、人の行動そのものに焦点を当て、行動をより具体的に分解して目標を達成させる手法です。

結果だけではなく、結果を生むプロセスに目を向けるもの。ベースとなる考え方は「結果とは行動の積み重ねによって生まれる『産物』である」。行動科学マネジメントは3つのステップで成り立っています。

  1. 行動が起こせるレベルまで分解する
  2. チェックリストをつくる
  3. 行動することに「快」を与える(例.ほめる)

人が行動を起こせない要因を分解すると、「仕事のやり方がわからない」場合と「仕事のやり方はわかっているけど、継続の仕方がわからない」場合の2つがあるとします。

そこで行動科学マネジメントでは、行動を分析してその1つ1つを順番にこなしていくことを徹底させます。

分解をするポイントは行動を起こせる具体的なレベルまで落とすこと。そこまで分解し、提示するあるいはプロセスを考えさせることで、行動ができるようになっていくのです。

行動を分解するという考え方は、目的と目標を設定するとも言えます。

目的とは最終的なゴールイメージですが、ありがちなのが目的が大きすぎ/漠然としすぎで、これだけだと行動に起こせないパターン。もしくは目的までの選択肢が多すぎて、何から始めればよいのかわからない。

そこで、目的を達成するための細かい達成事項(マイルストーン)が目標にあたります。イメージとしては、目標というスモールゴールを1つずつクリアしていくことで、本来のゴール(目的)に近づいていく感じです。


引用:石田淳の行動科学マネジメント講座|株式会社日立ソリューションズ

前述の行動科学マネジメントの3ステップを自分なりに解釈すると、次のようになります。

  1. 「目的」を行動が起こせる具体的な「目標」レベルまで分解する
  2. チェックリストをつくり、リストに沿って行動を起こす
  3. 行動から達成したことにインセンティブ(快)を与える

この考え方は、部下や組織に適用できるだけではなく、自分自身にも使えると思っています。

例えば、ダイエットをするでも、勉強を開始する/続ける、子どもへの教育にも応用できそうです。

私自身よくやるのが、仕事でどうも手をつける気分にならないタスクでも、細かすぎるくらいToDoを分解し、超細かいタスクの1つ目だけでも手をつけてみる。1つ目って3分とかでできるもので、必要な資料を取りに行く、作業フォルダをつくる、企画書/報告書のパワーポイントのテンプレートを作業フォルダに保存する、などです。

半歩にも満たないような1つ目に取り組むことで、意外とその次以降の ToDo にすんなり入っていくものです。これも行動科学マネジメントを自分に使っている状態です。

■ゲーミフィケーションとは

ところで、ゲーミフィケーションです。ゲーミフィケーションについては以前のエントリー(なぜゲームにハマるのかを考えるのがゲーミフィケーション理解のコツだったりする|思考の整理日記)でも取り上げています。

ゲーミフィケーションとは、ゲームのメカニズムを使ってユーザーのモチベーションを高めることだと理解しています。

ゲームに夢中になったことがある方も多いと思いますが、あの時間を忘れてゲームに「ハマる」というメカニズムを様々なものに応用しようという考え方です。

ゲームにハマるということは、それだけゲーム設計がうまくできているということだと思います。

例えば GREE の「釣り★スタ」では、ゲームを開始すると案内役のキャラクターが、釣りを体験させてくれます。

これはメッセージに沿って進めていくとゲームの基本的な遊び方を体験できるつくりになっている。で、ゲームを進めていくと新しい釣り場で釣りができるようになりますが、既存の釣り具ではなかなか成功しなくなります。

そこで釣りポイントを稼いで、いい釣り具を獲得して今まで釣れなかった魚が手に入る、さらに次の釣り場で新しい魚に挑戦する、釣り★スタではこうしたサイクルが用意されています。

仲間と協力しながら遊ぶという要素も用意されています。

釣り★スタではチームを組み定期的に開催される大会に出場することができます。大会で勝つためにはチームでのコミュニケーションや協力が不可欠のようですし、上位に入賞すると相応のポイントがもらえます。大会は定期的に用意され、飽きさせることのない工夫が見られます。

このように一人で釣りゲームを楽しむ遊び方と、チームプレイで釣りを楽しむ両方が効果的に用意されていると思っています。

■ゲーミフィケーションを支えるゲームサイクル

ゲーミフィケーションを理解する上でおすすめの本の「ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足」に提示されていたゲームサイクルは以下のような図でした。

引用:書籍「ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足

これを「釣り★スタ」で見てみます。

初めてゲームをするとき、まずはゲーム内での釣りゲームを体感するという「目標」があり、案内役のナミがどうすれば釣りができるかという「行動の選択」をわかりやすく提示します。

おそらく1回目の釣りは簡単に釣れるように設定してあるはずなので、魚を釣るという「達成」が体感できる。これが釣り★スタで用意されている1つ目の「目的・目標⇒行動の選択⇒達成」というゲームサイクルです。

■ゲームサイクルと行動科学マネジメント

このゲームサイクルと前述の行動科学マネジメントを見比べると、驚くほどその構図が似ていることに気づきました。

行動科学マネジメントでは、目的を目標レベルに分解し、行動を起こしやすくする。達成をチェックリストで管理し、行動したことに褒めるなどの快を与える。

このサイクルを繰り返すことで目標をクリアし続け、最終的に目的を達成する。これって、ゲームサイクルと同じ考え方です。

ゲーミフィケーションを単にものごとをゲーム化すると捉えると、表面的な理解にとどまってしまうと思っています。

なぜゲームにハマるかの仕組み・要因・構造を理解し、エッセンスを他にも応用する。

時にはゲームのように点数化をして競わせることも有効かもしれませんが、あくまで行動の目的・目標がまずあり、それに対してどう行動を起こさせるか。起こした行動を評価/フィードバックし、次の行動(目標)にスムーズにつなげるか、このサイクルをどう回し続けるか。

もう少し言えば、上司から強制的に回させるのではなく、本人が自発的に行動を起こしていくサイクルが理想でしょう。外発的動機付けではなく、いかに内発的動機付けを持ってもらうか。マネジメントを考える上で欠かせない視点だと思っています。

最後に、書籍「ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足」にあった、ソーシャルゲームのフレームワークの図を引用しておきます。

これは、色々と応用できるのではないかなと思っています。


引用:ソーシャルゲームはなぜハマるのか 深田浩嗣氏インタビュー|日本経済新聞(電子版 2012/3/5)


※参考情報

行動科学マネジメント|WILL PM
第1回 業種・業態・企業規模、一切関係なし!短期間で組織を変える行動科学マネジメントとは?|「できない社員」が一気に伸びる 石田淳の行動科学マネジメント講座|株式会社日立ソリューションズ
第2回 「できない社員」を「できる社員」に変えるマネジメント|「できない社員」が一気に伸びる 石田淳の行動科学マネジメント講座|株式会社日立ソリューションズ
第4回 セルフマネジメントへの応用 ― 意志・やる気に頼らない「続けさせる技術」|「できない社員」が一気に伸びる 石田淳の行動科学マネジメント講座|株式会社日立ソリューションズ
なぜゲームにハマるのかを考えるのがゲーミフィケーション理解のコツだったりする|思考の整理日記
ソーシャルゲームはなぜハマるのか 深田浩嗣氏インタビュー|日本経済新聞(電子版 2012/3/5)


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2012/03/17

情報社会の未来:私たちはネットの世界に知らない間に閉じこもってしまうのか

ここ最近よく考えるのは「パーソナライズ化」というキーワードです。パーソナライズ化とは、簡単に言えば「あなただけにカスタマイズされたサービス」というイメージで、例えばアマゾンではこれまで買った商品と関連のあるものを「あなたへのおすすめ」という形でレコメンドする機能があります。同じアマゾンを利用しても購買行動によりパーソナライズ化がされています。あなたが見ているアマゾンと、私が見ているアマゾンは同じではないのです。

■パーソナライズ化って何?

ウェブでのパーソナライズ化は実はいろんなところで起こっています。自分のアカウントでログインして利用するサービスは、多かれ少なかれほぼ全てでパーソナライズ化されていると思っていいでしょう。例えばツイッターやフェイスブックではフォローする人やつながっている友達により中身が全然違ってきます。

あるいはグーグル。グーグルの検索では、自分のアカウントでログインしている状態とログアウトしている時での検索結果は、同じ検索キーワードでも微妙に違っていたりします(試しにやってみると実感できるかと思います)。なぜこのようなことが起こるかと言うと、グーグルでは過去の検索履歴やウェブ閲覧履歴、すなわちウェブでの行動履歴を取っているので、そこからグーグルはアカウントごとに特徴づけています。つまり、グーグルはウェブ行動から「あなたはこういう人だよね」という人物像をつくっていて、検索結果はそれに最適なものを返している。だからアカウントでのログイン状態(パーソナライズ化)でとログアウト状態(匿名化)では結果が異なるのです。

■なぜパーソナライズ化をするのか

ではなぜグーグルはパーソナライズ化をしているのでしょうか。同じキーワードでの検索結果は誰がやっても同じ結果を返すほうが仕組みとしてはシンプルです。でもグーグルはアカウントごとに「あなたにはこの検索結果が欲しかったんだよね」とカスタマイズしてくれているのです。

1つの理由は、ユーザーにとってより使いやすいサービスの提供です。同じキーワードでの検索でも、人によって知りたいことは違っていたりします。であれば、その人に最適なサービスを提供しよう、そうすればもっと自分たちのサービスを使ってもらえる、ユーザーも自分たちもWin-Winになれる、そういう考え方です。

別の側面としては、広告のパーソナライズ化でしょう。実はこっちがグーグルが本当にやりたいこと。広告のパーソナライズ化はあなたにとっての最適な広告を表示させることで、実現すればより効果的な広告をユーザーに提供できます。効果的というのは、より興味関心の持ってもらえる広告だったり、買いたくなるもの、一度買ったものをもう一度買いたくなるような広告です。グーグルの収益の大部分はネット広告から上げているので、これは企業としては当然の考え方だと思います。

■メリット

パーソナライズ化は一見するとユーザーにとってはとても便利に思えます。以前のエントリーでもパーソナライズ化について取り上げていますが(参考:重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記)、今もよく使っているキュレーションアプリであるzite。ziteとはiPhone/iPad用のアプリで、パーソナライズ化されるデジタルマガジンみたいな感じです。自分の興味あるテーマの記事を自動的に集めてくれるもので、例えば「ソーシャルメディア」、「モバイル」、「マーケティング」、「Google」、「Facebook」などのキーワードで登録しておくと、関連する記事が表示されます。さらに、ziteでの記事閲覧行動履歴データを集め、独自のアルゴリズムでパーソナライズ化してくれ、使えば使うほど「あなただけのデジタルマガジン」になる。雑誌には編集者がいますが、ziteの編集者は行動履歴データに基づくアルゴリズムというイメージ。

グーグルもアマゾンも自分に最適な情報を提供してくれる、より探していたもの、知りたかったこと、買いたかったものを見つけるメリットは大きいでしょう。あるいは、フェイスブックではよく知っている友達がいて、人間関係のパーソナライズ化ができている。これらはパーソナライズ化のメリットです。

■デメリット(問題点)

いきすぎたパーソナライズ化に警鐘を鳴らしているのが、最近読んで考えさせられた「閉じこもるインターネット―グーグル・パーソナライズ・民主主義」という本です。原題は「The Filter Bubble: What the Internet Is Hiding from You」。この本ではインターネットでパーソナライズ化されている状況をFilter Bubble(フィルターバブル)と表現していて、ユーザーがパーソナライズ化するフィルターで囲まれてしまった状態をあたかもバブル(泡)に包まれていると表現したもの。で、サブタイトルのWhat the Internet Is Hiding from You(ネットで見えなくなっているもの)はまさに著者の問題意識です。



パーソナライズ化とは、自分が見たい情報だけを取捨選択してくれる状態です。これは過去の大量の行動履歴データと高度に発達したアルゴリズムなどにより実現できている・されようとしているもの。著者はそこに落とし穴があると指摘します。私たちの考え方・思想、行動、そして民主主義にも悪影響を及ぼすとの主張です。

自分が見たい情報だけが見られるということは、逆に言えば自分と異なる考え方や未知なるものとの出会いが減っていくと著者は言います。これは例えばツイッターを考えると、自分の興味関心に近いユーザーをフォローする傾向にあるので、自分のタイムラインに流れる内容はわりと自分に近い考え方という状況がそれです。つまり、このようなタイムラインだけを見ていると、自分とは違った考え方、異なる視点でのものの見方に触れることができない、そうなるとますます偏った考え方になってしまうのではないか、これが懸念される影響です。

著者が問題視するものの1つに、パーソナライズ化は企業が勝手にやっているが故に、私たちはどうパーソナライズ化されているか見えないし、パーソナライズ化を訂正することが難しい、さらにはそもそも自分がパーソナライズ化されているとは気づかない点があります。「あなたが見ているネットと、わたしが見ているネットは同じではない」という状況に気づかない。人々の思想を変えるということは、極端なことを言うとパーソナライズ化をちょっとずつ調整することで、世の中の意見や世論もコントロールすることもできるのではないかというのが、著者の意見です。

もう少し現実的なイメージをすると、例えばレコメンドサービス。これは自分が今までに買ったものを参考にしているという認識だったのが(「XX」を買ったんだから「XX vol.2」も買うよねというレコメンド)、実は購買履歴以外にも広告販促費をより多くもらっていえる商品がレコメンドに含まれている場合でも、それはどういうロジックでレコメンドなのかこっちにはわからない。知らず知らずのうちに、何かを買うという行動もパーソナライズ化によってコントロールされることだってあり得るわけです。

■So What?

ネットでのパーソナライズ化の是非。正直これはまだ自分の中での結論は出ていません。今のところは自分に最適化されたサービスは、そうではないものより便利だと感じています。前述のziteがそうですし、アマゾンでもレコメンドを参考に本を買うこともあります。ツイッターでも情報が自分の興味・関心にだけ絞られているからこそ、おもしろい情報が流れています。こうしたサービスがもたらされること自体がすごいことだと思うし、これがなければ日々入ってくる情報の確度はもっと下がってしまうはず。その意味で情報を取捨選択してくれるパーソナライズ化の恩恵は一定は受けていると思います。

一方、こうしたパーソナライズ化された情報の外側はあえて知ろうとしないとわかることができないわけで、これがフィルターバブルの内側に閉じこもっている状態。これまでと違う考え方、自分とは違う価値観に触れる機会が減るというのは確かにあまり良くないかなとも思います。未知との遭遇があるからこそ、自分の中で考え方など何かが変わるのだと思うし、そういう複眼的なものの見方は意識してしておきたいもの。フィルタリングされることで自分に興味がないものは目に入らなくなるとすれば、考え方によっては全体像がどうなっているかがわからないとも言えます。つまり、目の前の情報がどの程度の代表性を持つか/偏っているかの判断できないのではないと。

間違いなくネットではパーソナライズ化の方向で進んでいくと思います。3月1日からグーグルのプライバシーポリシーが変更されましたが、これはグーグルが提供する各種のサービスでのユーザー利用情報を1つに統合するという変更。統合することでもっとユーザーのことがわかるようにしたいわけです。グーグルが強調しているのは統合することでより使いやすくなるとしていますが、本当にやりたいことはユーザー情報を統合し、その人により関連性のある広告を表示したいという意図でしょう。前述の「なぜパーソナライズ化をするのか」に書いた通りです。

では自分にできることは何か。今のところの考えは、あえてバブルの外側に出る、あるいは一度バブル自体を割ってしまうことではないでしょうか。例えばグーグルの過去の検索履歴やクッキー等をクリアすること。ひと手間をかけて違う意見や一次情報に当たってみること、そんなところから始める感じでしょうか。それと、自分が見ているものはパーソナライズ化されているという認識、「わたしのネットはあたなのネットと同じではない」こうした意識も持つことだと思っています。


※参考情報

重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記
The personalized web is just an interest graph away|GigaOM
グーグル広告部門幹部、「次なる狙いは検索と広告のパーソナライズ」と発言|Computerworld
プライバシー ポリシー|Google
Googleがソーシャル検索にシフトするのはウェブの世界が変わりつつあるから|思考の整理日記
「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ(In the Plex)」から考えるデータ至上主義とGoogleの描く未来|思考の整理日記


閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義
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2012/03/11

映画「Time」を見て考えさせられた人生の本質


少し前に映画「Time」を見てきました。

■ 映画「Time /タイム」の世界

ストーリー設定は、全ての人は25歳になると(肉体的な)成長が止まる近未来で、25歳の誕生日を迎えると自分の左手には「ボディクロック」が起動します。

ボディクロックとはデジタル時計で、そこに表示される時間は自分の残された時間、すなわち余命がカウントダウンされているのです。

その世界での最も大きな特徴は「時間=通貨」です。文字通り「時は金なり」の世界で、人々は物やサービスを買うために自分の時間を使います。

例えば、コーヒー:4分、バスの運賃:2時間、1ヵ月の家賃:36時間などです。物・サービスに時間を支払うということは、自分の残りの人生の時間を差し出すことを意味します。家賃に36時間を払うというのは、余命が36時間減るということです。

余命を増やすためには仕事をすることになります。例えば、8時間働いて24時間稼ぎます。仕事をして時間報酬をもらわなければ自分の残された時間はゼロになり、その瞬間に死んでしまいます。

自分の時間を相手に分け与えたり、もらったりも可能です。自分の余命を全てボディクロックに入れておかなくても、銀行へ預けることもできます。

時間経済の世界なので、例えば物価や金利(時利?)が上がると、それだけ自分の時間を払わなければいけません。

映画ではバスの運賃が1時間から2時間に上がるなどのインフレが起こっていましたが、物価が上がるということはその分だけ人々の余命が少なるなくなることを意味します。余命という時間が通貨であるが故に、物価上昇が起こると死んでしまう人が増えることになります。

大きく見ると物価上昇の増減と人口増減が一致するような世界です。

自分の残された時間=余命が全ての人間の左腕にデジタルで表示されてて、それが現在の貨幣の役割も担います。

時間が人々の欲望の対象になっている世界は正直怖かったです。でもよく考えると、私たちの現実の世界でも誰もが余命は有限で、今この瞬間も人生の残りの時間は刻一刻となくなっています。

映画の世界との違いは、自分にはあとどれくらい時間が残っているかは知らないだけです。残された時間はあと24時間かもしれないし、50年かもしれません。

わかっているのは人は皆いつか必ず死ぬことです。そんなことをあらためて考えさせられた映画でした。

■ 時間配分の見直し

現実の世界では時間は完全にフローなものです。1秒たりともストックすることはできません。時々刻々と流れる時間で自分は何をするか、どう使うかというのはここ最近は特によく考えることだったりします。

以前のエントリー「自分を変えた「時間配分の見直し」と「片づけ」の方法」でも少し書きましたが、2012年の今年になって自分の時間配分の見直しをしました。やったことはいたってシンプルで、

  1. 日々の無駄な時間を見える化
  2. いつ/何に無駄があるかを確認
  3. 優先順位づけをして「やらないこと」を決めた

の3ステップでした。やる/やらないを決めることで、本当にやるべきことの優先順位が明確になりました。

3つ目の「やらないこと」を決めた効果は思った以上に大きく、何をやらないかを決めたことで平日でも結構時間ができるものです。

特に出勤までの朝の時間配分の変化が大きく、あわせて去年より1時間ほど早く起きるようにしたこともあり、朝にまとまった時間が生まれました。その時間は読書だったり勉強だったりと、生活スタイルを変えたことで、かなり効果が出ていると実感しています。

時間が有意義に使えていると感じるし、勉強も今の仕事で必要になるものなので結構活かされています。

■ 人生の本質

映画「Time」の世界では、自分の時間を仕事で稼ぐことができました。あるいは富裕層の人々はカジノを興じることで永遠とも言える時間を手に入れていました。

しかし、私たちは自分の余命は限られています。この限られた自分の時間をどう過ごすかというのは、人生を考えた時に最も大切なことなのではないかと思います。

結局のところ、この1秒や1分、そして今日という1日をどう過ごすか、この積み重ねが自分の人生を形作るのではないでしょうか。そう考えると、いかに毎日をきちんと生活することができるかが人生の本質です。

「きちんと生活する」という中身は人によって違います。

仕事をばりばりこなす、家族と過ごす時間、遊ぶこと大切にする、などなど、どれか1つだけではないにしろ、人それぞれの価値観があり(明確に意識しているかどうかは別として)、優先順位があるはずです。

今の自分を形成しているのは、日常の習慣・生きる姿勢/考え方が積み重なったものです。過去の積み重ねが現在の自分です。こう考えると、過去は変えられないものですが、現在の自分を変えようとすることで未来は変えられるのです。

※参考情報
映画「TIME /タイム」オフィシャルサイト


2012/03/03

アフリカで人々の生活を変えた電子マネーイノベーション:M-PESA

「仕送り」という行為があります。例えば出稼ぎ労働者の場合は、自分の収入を故郷に残した家族に仕送りをします。学生の時に私も親から仕送りをもらっていました。仕送りなどでお金を誰かに送るには、送り先相手の銀行口座に振り込むのが便利です。口座間の振り込みや、直接相手の口座への振り込みもできます。

そう考えると、もし送り先相手が口座を持っていなかった場合、あるいは郵送などのインフラが整っていない環境では遠く離れた家族などにお金を渡すには手軽にではなくなってしまいます。直接自分が行って手で渡す、または誰かにお願いして家族にお金を渡してもらう、くらいでしょうか。

アフリカのケニアでは、まさにこの状況が起こっていました。出稼ぎで都市に働く人は遠く離れた故郷に住む家族へ仕送りをするためには、毎週のように自分がお金を持って渡しに帰ったり、信頼できるバスドライバーに仕送りのお金を預けて家族に渡してもらっていました(参考)。背景にはケニアでは多くの人が、私たちにとって当たり前のように持っている銀行口座を保有していないという現実があります。

■M-PESAという電子マネーのイノベーション

この問題を解決したのが、携帯電話を使った送金サービスの「M-PESA」。サービスの使い方イメージは、
  • プリペイドで携帯にお金をチャージする
  • 送金相手に送りたい金額を明記してメールを送る
  • メール受信者はM-PESA契約店舗で身分証明し、メールを提示すればメール内の金額を現金化
という感じで、仕送りをするのに銀行口座は不要で携帯電話があれば簡単にできます。ちなみにPESAとはスワヒリ語で「お金」を表す言葉、MはモバイルなのでM-PESAとはモバイルマネーという意味。M-PESAはアフリカの携帯キャリアであるSafaricomが提供するサービスで、利用者はケニアで1500万人、Safaricom利用者の80%が使っているそうです(参考:Learning from Kenya: Mobile money transfer and co-working spaces|thenextweb.com)。ちなみにSafaricomのケニアでのシェアは75%とのこと。

この参考記事では、Waceke Mbugua氏(director of marketing and communication at Sararicom)の説明として、M-PESAでの送金金額はケニアGNPの25%分に相当し、また、1回あたりの送金金額は50セント以下であるとしています。ケニアのGNPがどれくらいかや物価水準は詳しく調べていないのですが、M-PESAでは多くの人が少額での送金のやりとりをしていることがうかがえます。日本のように銀行やATMが整備されていないケニアでは、M-PESAは人々の生活支える重要なインフラになっているのです。

引用:Learning from Kenya: Mobile money transfer and co-working spaces|thenextweb.com

■覚えておきたいモバイルの3つの特性

M-PESAの事例を考えた時に、このサービスが成り立つのはモバイルの3つの特徴がうまく活かされているからだと思っています。すなわち、本人性、携帯性、ネットワーク性。本人性とは、携帯電話は基本的には1人1台の保有なので、所有者を特定できることになります。M-PESAの例で言うとお金を渡される相手(仕送り先)とメール受信者が同一人物である必要があり、それが携帯電話を使うことで成立しています。

携帯性とは文字通り、携帯電話を「いつでも」「どこでも」持ち歩くという特性。常に手元にあるのでお金がM-PESAのメールで送られてくることもわかるし、買い物へ行く時にも常時持っているので、支払いや換金が携帯電話を使ってその場でできてしまう利便性があります。3つ目のネットワーク性とは、携帯電話がメールやネットを通して他の携帯電話、つまり他の人とつながっていることで、M-PESAのケースではネットワーク性が存在することで、簡単に仕送りができてしまいます。このように、携帯電話の持つ3つの特性である本人性、携帯性、ネットワーク性が、かつては遠く離れた家族に直接渡しに行ったり、誰かにお金を預けて渡すしかなかった状況にイノベーションを起こしたのです。

■モバイルの可能性

携帯電話は私たちの生活にとって必需品です。興味深いのは先進国だけではなく、アフリカのケニアのような国にとっても欠かせない存在になっていることです。世界人口は70億人を突破しましたが、いずれはモバイル端末利用者が世界人口とほぼ同等の水準に普及するはずです。

利用者が増えるということは、マーケットがしばらくは拡大し続けるので、いろんなプレイヤーがモバイル事業に参入してきます。M-PESAを提供するSafaricomのようなキャリア、アップルやサムスンなどのハード端末提供プレイヤー、Androidを無償提供するGoogleやWindowsなどのOS、FacebookやZynga、GREEなどのプラットフォーム、アプリや動画・ゲーム等のコンテンツプロバイダーなど、いろんな層で動きが活発になり利用者の獲得が激しくなります。

各プレイヤーが最終的に何で/いつ/どうやって収益を稼ぐのか。直接利用者から収益を得るのか、広告により間接的に利用者から売上を上げるのか。利用者から直接収益を上げるにしても、有料アプリやゲーム内の有料アイテムへの課金、あるいはモバイルから物を買うことで手数料で稼ぐのか、提供サービスを月額で提供するのか、など単発的に収入を得るか継続的に稼ぐかでもビジネスモデルが違ってきます。Facebookがモバイル用アプリ内にもついに広告を表示させるという話ですが、モバイル広告は今後も有用なのか、投資対効果があるのかも気になるところです。

以上はモノ・サービスの提供者側の視点ですが、一方のユーザーにとってはモバイルでどういう「価値」がもたらされるのか。アフリカでのM-PESAのように人々の生活に欠かせない価値は、色々な領域ででてきそうですし、そうなることを期待しています。


※参考情報

Learning from Kenya: Mobile money transfer and co-working spaces|thenextweb.com
M-PESA|Safaricom
M-Pesa|Wikipedia

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