2012/04/30

ドリルを売ろうとしたSonyと、穴を開けるサポートをしたAmazon

今日で4月が終わるので、2012年も3分の1が経過したことになります。時計で言うとちょうど20分のところに針がある状態。

12年の今年は今のところコンスタントに本が読めていて、1ヶ月で20-25冊程度、4ヶ月ではほぼ100冊くらい読みました。このうちの8割以上はアマゾンから買った本です。感覚的には9割に近いくらいかもです。それくらい本はアマゾン経由で手に入れています。

本をアマゾンで買うのに何が魅力かって、中古も含めた豊富な品揃え、モバイルからでも手っ取り早く注文ができて、安定した配送の仕組みですぐ届く、送料無料、あたりかなと思っています。トータルでの提供サービスが素晴らしい。

■電子書籍を理解する3つのフレーム

そんなアマゾンですが、次に期待したいのはキンドルです。電子書籍を読める環境のサービス提供。電子書籍は、電子書籍端末という「デバイス」、電子化された本という「コンテンツ」、電子書籍を手に入れるための「プラットフォーム」という3つの層で考えるといいと思っていますが、アマゾンへの期待はデバイス、コンテンツ、プラットフォームというトータルでの電子書籍サービスの提供です。

逆に言うと、現在の日本での電子書籍環境はこの3つがうまくつながっていないと感じています。デバイスはいくつか売られていますがコンテンツはまだまだ少ないし、プラットフォームもばらばらです。いくつかの電子書籍アプリがiPhone/iPadのiOSやAndroid向けに提供されているけど、アプリの中にそのアプリでしか読めない本しか入ってないし、アプリ自体が本だったりと、本の管理自体も大変。アプリが違うと設定や操作も微妙に違うので、ユーザーからするととても使い勝手が良いとは言えません。デバイス、コンテンツ、プラットフォームの3つでの全体設計がうまくいっていない。

■なぜ後発のキンドルは成功したのか

キンドルについて、日経におもしろい記事がありました:ソニーの誤算と成算、「キンドル」迎え撃つ老舗の意地|日本経済新聞(12年4月24日)。

記事の趣旨は、ソニーの電子書籍端末「リーダー」はキンドルに勝てるのか、というものでしたが、個人的におもしろいと思ったのは、ソニーのリーダーとキンドルの違いでそこにはアマゾンの本質と言える内容がありました。

記事の背景をまず書いておくと、北米市場ではキンドルよりもソニーのりーダーのほうが先に発売されていました。価格は300ドルと当時にしては安価な設定で、世界の名だたるデザイン賞「インダストリアル・デザイン・エクセレンス・アワード」を受賞するなど読書家の中高年を中心に人気を博したようです。ところが07年11月にアマゾンがキンドルで参入すると状況は一変します。リーダーは後発のアマゾンに完全に抜き去られたのです。

リーダーとキンドルの何が違ったのか?日経には次のような説明がありました。
見た目も性能もソニーの端末と似ていた。が、コンテンツとその入手方法が大きく違った。携帯電話網を利用した通信機能が搭載されていたのだ。
利用者はいつでもどこでもキンドル向けの電子書店にアクセスでき、10万タイトル以上の電子書籍をほぼ9.99ドルで購入することができた。しかも、その通信利用料は無料。ソニーはというと、電子書籍の購入はパソコンで行い、USB経由で端末にデータを移す必要があった。しかも対応する電子書店の品ぞろえは数万冊で、価格は十数ドルとキンドル版より高かった。

つまり、キンドルのほうが端末が安く、本の品揃えも豊富で、買いやすい。ユーザーにとっての使い勝手が良かったのです。特に注目したいのは、キンドルは携帯電話回線を使ってアクセスでき、そのまま本が買えるという特徴です。そして、その通信利用料が無料という点。

無料にはカラクリがあって、通信料は実は電子書籍の価格の中に含まれています。アマゾンはコンテンツの中で通信料をしっかり回収しているのですが、「通信料」という名目では取っていないので、ユーザーにとってはあたかも通信料が無料に見える。これは「ウィスパーネット」と呼ばれる仕組み。一方の当時のソニー「リーダー」では本はPCで買って端末をUSBでPCにつなぎ、データを転送して初めて読めるようになります。どちらが使い勝手が良いかは一目瞭然ですよね。

■ドリルを売ろうとしたソニーと、穴を開けるサポートをしたアマゾン

記事では、ソニーで電子書籍事業を統括するデジタルリーディング事業部の野口不二夫部長の当時の状況を振り返っています。
「電子ペーパーの端末で、他社に負けていると思ったことは一度もない。ソニーらしく、ものづくりに徹底的にこだわり、常に我々が先に先に動いていた。競合他社のみなさんは、我々の進化を見て、追随してきた。ただ、通信機能を搭載したキンドルには、本音で言うと『やられた感』がありました。アマゾンさんが非常に素晴らしいビジネスモデルを作ってきた。」 
「キンドルはコンテンツ購入者のネットワークコストをゼロにした。これに、非常にショックを受けた。」 
「携帯電話モジュールの搭載は想像していたけれど、料金プランがどうなるのかは、なかなか見えていませんでした。当時、ソニー社内では、携帯通信を載せるんだったら、多少お金を(利用者から)いただかないと回らないよねと議論していた。本を買いにいくのは、電車賃もかかるし、そのくらいのお金だったら払ってくれるんじゃないかと。」
「ソニーは『ハード』から入りますけれど、やっぱりアマゾンさんは『サービス』から入られているなと。端末自体の価格も、先行して低価格を打ち出していった。」
最後の「ソニーはハードから入って、アマゾンはサービスから入る」という指摘はとても示唆に富みます。サービスから入るというのはアマゾンの本質的な部分だと思っています。以下の図は「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件」という本にあったアマゾンのビジネスモデルですが、この図はアマゾンのジェフ・ベゾスCEOがアマゾンを始める当初から思い描いていたものだそうです。

注目したいのは、打ち手や結果が全て「顧客の経験」に結びついていることです。つまり、アマゾンのベースなっている考え方はユーザー体験を重視するもの。これは上記の野口氏の「アマゾンさんはサービスから入る」という言葉にもつながります。

電子書籍で言うユーザー体験とは、快適な読書環境の提案/提供でしょう。そのためにアマゾンがやったことは、端末価格を下げ、品揃えを豊富にし、キンドルから通信無料で本を買えるという使い勝手の良さ。あくまで顧客経験のためで、これらの施策は一貫しています。

ユーザーにとって電子書籍端末をなぜ買うかというと、自分の読みたい本を読むためです。電子書籍端末というデバイスはあくまで手段であり、ユーザーはデバイス自体が欲しいからではないのです。この考え方は重要だと思っていて、マーケティングでは「ドリルを買いにきた顧客は本当はドリルが欲しいのではなく、壁に穴が開けたいから」という有名な例えがあったります。電子書籍端末もこれと同じ。「ソニーはハードから入って、アマゾンはサービスから入る」という言葉には、07年当時のソニーはリーダーというドリルを売ろうとし、アマゾンは穴を開けたい顧客にどうすればよいかを考えていたのではないでしょうか。

先の日経の記事内には日本でも発売されたソニーのリーダーについて、次のようなコメントが載っていました。
「日本での初動は、予想通りの売れ行き。11年11月には3Gの通信料を組み込んだ製品も投入し、日本でもこういうモノができるんだということを他社よりも先に実現できた。書籍購入にかかる通信料は最大2年間、無料。」
最後の「最大2年間は無料」という設定/考え方は、どうもまだ違うんじゃないかと思ってしまいます。


※参考情報
ソニーの誤算と成算、「キンドル」迎え撃つ老舗の意地|日本経済新聞(12年4月24日)
Amazonの競争戦略ストーリー|思考の整理日記
Amazonに期待したい「書籍+iTunes Match」という読書体験|思考の整理日記
書籍 「iPad vs. キンドル」|思考の整理日記




2012/04/28

「象の足を見るな」:新入社員の時に教えられ、今もなお考えさせられる話

「象の足を見るな」。この言葉は新社会人となって会社に入社してすぐくらいに、当時の副社長に言われたものです。

その心は、全体像を見ることの大切さ。

今でもよく思い出す教えで、それくらい当時も今も変わらず心がけています。象の足になるなという例えは、「群盲象を評す」という寓話をもとにした話でした。Wikipediaから引用すると、
盲人達は、それぞれゾウの鼻や牙など別々の一部分だけを触り、その感想について語り合う。しかし触った部位により感想が異なり、それぞれが自分が正しいと主張して対立が深まる。しかし何らかの理由でそれが同じ物の別の部分であると気づき、対立が解消する、というもの。
盲人は6人いて、象に触れた時の各自の答えは全く違ったという話:象の鼻を触った者は「蛇」、耳を触った者は「扇」、牙を触った者は「槍」、足を触った者は「木」、体を触った者は「壁」、尻尾を触った者は「ロープ」。


各部分の特徴の例え自体は間違ってはいない(例。鼻⇒蛇)けど、全体を見た時には各自の齟齬が大きいですよね。物事を正確に、あるいは本質をつかむためには全体像を把握することが大事である、だから決して全体像を見ることなく一部分だけで終わってはいけない。「象の足を見るな」。副社長からはそんな話を聞きました。

■全体像を広げる:業務プロセスを超えた先まで考えてみること

例えば、A⇒B⇒C⇒D⇒E、という社内での仕事のプロセスがあって自分の役割はCを完了させることだとします。自分の仕事だけを考えるのであれば目の前のCだけを見て、次のDに渡すことだけを考えていればよい。これはある意味すごく楽なことです。前後のことは意識せずとも与えられたことだけをやっていれば特に問題はなかったりします。

でも、これだといけないと思うわけです。プロセスの前提が変わった場合、もしかしたらBよりCを先に済ませたほうがいいかもしれません。あるいはBとCを並行して行なうことでプロセス全体の時間短縮も可能かもしれない。これは、目の前のCしか見ていないと決して思いつかないもの。全体像ではなく、まさに「象の足しか見ていない」状態。

A⇒B⇒C⇒D⇒Eは社内でのプロセスと設定しましたが、最近思うのは全体像の位置づけをもっと広く持たないといけないということです。全体像を社内だけではなく、社外までも捉える。Aより前には売り手のお客がいて、Eより後にも買い手のお客があります。もっと言うと、買い手のお客の先には生活者がいます。だから、自分のやるタスクはCだけだとしてもAより前、そしてEより後の消費者や世の中全体にどう影響するかも考えないといけない、と。そうすることで自分がやっていることの意義だったり、自分は世の中の何を変えられるのか、世界にどういうインパクトを与えられるかまで考えることができると思っています。

■ちょっと蛇足かも:マーケティング4Pと4C

自分の役割がCで、その後のD⇒Eと続き、最終的には生活者まで考える。この時に意識するのは生活者としての自分です。自分自身も生活者や消費者、あるいはユーザーの1人とも言えるので、自分がユーザー・消費者の立場に立った時に今の仕事はどう映るのか。この視点は意識するかしないかで結構違うと思っています。

有名なマーケティング理論の1つに4Pというものがあります。Product(製品/サービス)、Price(価格)、Place(売り場・店)、Promotion(広告・宣伝)の4つのPです。マーケティングミックスとも呼ばれます。これはある意味、売り手の視点だと思っていて、買い手である消費者視点に切り替えると、4Cという発想ができます。

Product  → Cutomer value(価値)
Price    → Customer cost(支払うコスト)
Place    → Convenience(利便性:商品の手に入れやすさ)
Promotion → Communication(一方通行ではなく双方向のコミュニケーション)

この4Cの話はエントリー趣旨とはやや蛇足気味ですが、最近あらためて考えさせられ買い手視点の発想はともすれば抜けてしまうなと思ったので紹介させていただきました。


※参考情報
群盲象を評す|Wikipedia


2012/04/21

書籍「失敗の本質」に見るガラパゴス化とイノベーション

下記の表は名著「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」で指摘された太平洋戦争(大東亜戦争)時の日本軍と米軍の戦略と組織特性の比較です。


  引用:書籍「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」

日本軍と米軍のそれぞれの特性を並べてみると、一定の相互関係が見られます。

  • 日本軍は戦略には明確なグランドデザインがなく目的があいまいで、短期決戦を好む傾向にあったこと
  • 短期決戦志向のために戦略オプションでは代替案(戦況が変化した場合のプラン・対応計画)が乏しかった
  • 組織特性においても、人間関係を重視し成果よりも動機や敢闘精神を重視した集団主義

 一方の米軍の戦略・組織特性とは対照的です。

書籍「失敗の本質」がおもしろいのは、6つの戦い(ノモンハン事件、ミッドウェー海戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦)から上表のような日本軍と米軍の戦略・組織特性比較を明らかにするだけではありません。

そこからさらに突っ込んでなぜ日本軍は失敗したのか、そして現在にも活かせる失敗の教訓を残している点にあります。

■ 日本軍の失敗の本質

なぜ日本軍は失敗したのでしょうか。

ここで言う「失敗」とは太平洋戦争におけるターニングポイントとなった戦いでの諸作戦での失敗(敗戦)を指しています。

本書で指摘されている日本軍の失敗の本質は、「日本軍の最大の失敗の本質は、特定の戦略原型に徹底的に適応しすぎて学習棄却ができず自己革新能力を失ってしまった、ということであった」(p.395)でした。

これは、現在の日本にもそのまま当てはまります。後から述べているように、この指摘はとても示唆に富むものだと思います。この失敗の本質は2つの部分に分けられます。

  • 特定の戦略原型に徹底的に適応しすぎた
  • 学習棄却ができず自己革新能力を失ってしまった

■ 特定の戦略原型に徹底的に適応しすぎた日本軍

これは今で言う「ガラパゴス化」です。

当時の日本軍が特定の戦い方に徹底的に適応していった例の1つにレーダーがあります。

日本軍の特徴に、猛特訓を続け、兵士の射撃精度を極限まで追求した点が挙げられます。いわゆる月月火水木金金で、土曜と日曜が抜けているように猛特訓は1日も休むことなく行われました。

見張り員の視力も驚異的で、開戦当初は夜間の先制攻撃で実際に成果も挙げたようです。つまり、日本軍の戦い方は徹底的に兵士の技能を上げ、達人をつくりあげることだったのです。

米軍の方向性は全く逆でした。

兵士の視力を高めて遠くの敵軍を発見するのではなく、レーダーを早くに開発し導入したのです。

レーダーによりたとえ夜間だろうが、超人的な視力に頼らずとも敵を捉えられるように戦い方を変えました。すなわち、米軍はこれまでとは全く違う発想を持ち込み、一方の日本軍は既存の戦い方を徹底的に追求したのです。

話をビジネスで考えても、今の日本企業にも当てはまります。

もちろん日本企業だけではないですが、ハードの機能を次から次に開発し実装していった携帯電話ばかりだったのが、AppleはiPhoneでハードとソフトを一体としたスマートフォンを持ち込みました。

気づけば日本の携帯メーカーもどこもiPhoneのようなスマートフォンばかりになったのです。他にも当てはまる事例はいくつも出てきそうです。

特定の戦略に徹底的に適応しすぎた結果、ゲームチェンジを起こせず、相手にルールを大きく変えられると為す術もなく敗れていったのです。

■ 学習棄却ができず自己革新能力を失ってしまった日本軍

これは今で言うと、「イノベーションを起こせなかった」ということです。

自己革新能力は書籍「失敗の本質」の中では、環境変化に合わせて自らの戦略や組織を主体的に変える能力としています。日本軍は環境が構造的に変化したときに、主体的な変革のための自己否定的学習ができなかったのです。

環境変化とは例えば前述のレーダーの導入がそうです。

実は、当時の日本軍もレーダーの開発は実施しており、技術レベルも米軍とあまり遜色がなかったとのことです。

しかし、レーダーの有用性を軍部が理解できず採用されませんでした。敵軍を発見するのは人の高い視力という目視ではなく、レーダーがするという環境変化が起こっていることに理解できず、適応できなかったわけです。

自己革新能力とは、自己否定をすることとも言えます。時にはこれまでの成功体験を捨て去ることも必要になるでしょう。

冒頭の日本軍と米軍の戦略/特性の比較で、日本軍の学習スタイルはシングルループ、アメリカ軍はダブルループとあります。

ダブルループというのは、学習の目標や問題(イシュー)そのものを再定義し変革することもいとわない学習です。環境に適応するために変化する現実を直視しながら修正する主体的な学習スタイルです。

一方のシングルループは、目標や問題構造が変わらないとしたうえで進める学習プロセスです。この学習スタイルの違いが自己革新能力の差につながったと言えるのではないでしょうか。

自己革新がなぜ必要かと言えば、それは環境が変わるからです。

環境が変わらない、競争相手がいないのであれば、それまでの成功体験を捨てなくともよいわけです。

しかし、環境は常に変わっていくものです。それに合わせて自らも変わらなければなりません。「強い者ではなく、環境に適応した者が生き残る」というダーウィンの進化論にも通じる考え方だと思います。

■ 「失敗の本質」からの学び

「失敗の本質」という本は、太平洋戦争(本書ではあえて大東亜戦争としている)当時の日本軍と米軍の戦略や組織特性から、なぜ日本軍は敗けたのかという失敗を考察しているものです。

そこでは日本の組織の問題をクローズアップしていて、その構造はこれまで書いてきた通りと理解しています。

忘れてはいけないのは、組織というのは各個人の集合体だということです。

組織を率いるリーダーの影響は大きいですが、個人個人の働きも組織特性には影響すると思います。

日本軍の失敗の本質は「特定の戦略原型に徹底的に適応しすぎて学習棄却ができず自己革新能力を失ってしまった」ことでした。

これに当てはまる現代日本の企業組織も少なくないと思います。組織を構成する個人が自己革新をすること、時には自己否定もいとわないで変わっていくことが必要です。

組織論が書かれた「失敗の本質」からは、個人でみても考えさせられる内容でした。


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2012/04/14

リアルタイムウェブ中毒だった自分と今の自分

インターネット。もはやこれなしでは自分の生活が成り立たないと思えるほど、プライベートでも仕事でもいろんなシーンで使っています。何かわからないことや調べる時はネットで検索、ニュースもテレビや新聞からではなくツイッターやRSSなどの各種サービスから、友達とのコミュニケーションもネットが当たり前になっています。

ネットは便利です。間違いなく人々の生活を変えました。でも、2012年の今年になって私自身はネット利用時間を意図的に減らしています。

■リアルタイムウェブ中毒


以前はツイッターやGoogleリーダーなどのRSS、ziteなどのキュレーションサービス、メール、フェイスブックも含め頻繁に使っていました。電車の待ち時間などちょっとした隙間時間はほぼiPhoneでチェックしていたし、朝起きてまずやっていたのはiPhoneの起動でした。家に帰宅した後もそうですね。

今思えばほとんど中毒と言える状態で、何がそうさせていたかと考えると「リアルタイムに常に情報に接触していたい」という欲求があったからだと思っています。ツイッターがまさにそうだし、ツイッターほどのリアルタイム性ではないですがRSSも含め、アプリを起動すれば常に最新の情報があり、今何が起きているかのリアルタイム情報をまるでシャワーのように浴びていた感じ。朝起きてツイッターを見ると自分が寝ていた間の特に海外の新着情報がたくさんあったし、仕事が終わってからや帰宅後にチェックすればその日の出来事や今何が起こっているかがほぼリアルタイムで入ってきました。リアルタイムウェブ中毒状態です。

でも、ふと思ったんですよね。これって本当に自分がやるべきことなのか、本当に必要なことなのか、と。試しに一日あたりどれくらい時間を使っているのかをグーグルカレンダーに記録してみたら自分の思っていた以上でした。隙間時間でも積み上げると結構な時間。これが一日だけならまだしもほぼ毎日なので、1ヶ月や年間にすると相当な時間に当たります。自分の結論として、無理矢理にでもネット、特にリアルタイムウェブへの接触時間を減らし、代わりにその時間に例えば朝の出勤までは本を読んだり、仕事や勉強したり、夜に家に帰った後はあえてiPhoneは全く使わずリラックスできたりと、自分の生活が変わりました。(さらっと書いてますが、相当変わりました)

■「ネット・バカ」で書かれたネットが引き起こす注意力散漫への警鐘

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること「リアルタイムウェブ中毒」で考えさせられるのが「ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること」という本で書かれていたことです。この本の主題は、ネットを当たり前のように使うようなり人間の脳に変化が起こっている、具体的には脳が注意力散漫になることへの警鐘です。注意力散漫になるとは逆に言えば1つのことに長く集中できないという状態。頻繁にツイッターを見る、RSSをチェックする、メッセージ受信のアラートで作業を中断しメールを確認する。この回数/頻度が多いほどそれ以外のことを長くやり続けることが困難になります。

「ネット・バカ」という邦題にやや違和感はありますが、原題は「THE SHALLOWS What the Internet Is Doing to Our Brains」。Shallowは浅瀬という意味で、自分の解釈としては、深い集中ができないことを指していると思っています。本書の中で著者がこの本を執筆するにあたり、あえてネット環境が整っていないコロラド山中に引越し、携帯電話が通じず、ネット回線スピードが遅い状況に身を置いたことを書いています。ツイッターのアカウントをキャンセルし、フェイスブックを休止、RSSをシャットダウンしスカイプもほとんどやらずに、メールのチェック頻度も少なくしたそうです。当初は苦痛どころではないと相当苦労した様子が伺えますが、新しい環境に慣れるに従い1つのことへの集中力が増し、執筆活動が大いに進んだとのこと。

このエピソードはなかなか考えされるものです。自分の場合はさすがに山中に引越すことはしませんが、ネットに常時接続しているリアルタイムウェブ中毒状況から脱したほうがよいと思ったのは前述の通りです。今思えばリアルタイムウェブ中毒とは注意力散漫な状態そのものでした。結果、積み上げると結構な時間を費やしている。その時間全てを浪費したとは思っていませんが、使ってた時間は無視できない量でした。だから、リアルタイムウェブと距離を置いたことで時間が確保できたことが大きいと思っています。

■集中と注意力散漫の二兎を追う

とはいえ、じゃあネットを使わない生活に戻れるかというとそれはもはや不可能でしょう。ネットにはメリットとデメリットがあり、リアルタイムウェブ中毒はデメリットのほうに置きましたが、それでもメリットのほうが大きいからです。

自分の生活で変えたことはネットから意図的に離れる時間をつくることでした。そうすることで確かに注意力散漫だった状態が変わったと感じます。自分の脳のあるスイッチがオフになったような感じ。ここで言うオン/オフというのは、常時ネット接続のオンかオフかでもあり、注意力散漫か1つのことに集中できているかも指しています。

あらためて思うのが、注意力散漫な状態がいつもダメかというと、そうでもないことです。「ネット・バカ」での著者の指摘で興味深かったのが、「歴史のほとんどの期間で人間の脳は注意散漫な状態であった」というもの。他の動物同様に、不意に敵に襲われたり、近くにある食料を見落とさないようにするため、つまり生存のためです。もともと脳は1つのことに集中するよりも注意力散漫な状態のほうが自然なのです。それが人間社会が発達するにつれて基本的な身の安全は保証されるようになり、本などから文字情報を獲得するなど1つのことへの集中力が必要になっていたと理解しています。

注意力散漫な状態をダメなわけではないとさっき書いたのは、ボジティブに捉えれば思いもよらない斬新な新しいアイデアが生まれることにつながるかもしれません。新しい考えやアイデアはそれを考えている時よりも、別のことを考えていたり行なっていた時に、ふと思いついたりするものです。

ネットとのつきあい方の現時点での自分の考えは、ツイッターなどのリアルタイムウェブのメリット/デメリット、注意力散漫になることへのプラスとマイナスを意識し、なるべくメリットを大きくすること。そのためにやっているのが意図的にネットから離れる時間をつくることです。集中と注意力散漫の二兎をあえて追ってみることにしています。


※参考情報
リアルタイムウェブとチェックインの可能性を考える|思考の整理日記


ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること
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2012/04/08

「勝ち続ける経営」を続けるマクドナルドのすごさ

ちょっと前のことですが、マクドナルドが昨年2011年期の既存店売上高は前年比プラス(1.0%増)であったと発表しています(12.1.5)。これで2004年から8年連続の対前年プラス。驚異的とも言える成長を続けているマクドナルドですが、実は2003年までは7年連続のマイナスでした。2004年を堺にV字回復をしているわけです。


引用:ダイヤモンド・オンライン

V字成長を牽引しているのがマクドナルド代表取締役会長兼社長兼CEOの原田泳幸氏。今回のエントリーではマクドナルドの経営について取り上げ、何がすごいのかを思ったところを書いてみます。(参考書籍:勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論マクドナルドの経済学

■基本に忠実に

当時7年連続のマイナス状況であったマクドナルドに来て原田氏がまず行ったことは、基本に立ち返ることでした。なぜなら就任当初は基本中の基本すらできていなかったからと言います。基本とはQSCという、Quality(品質)、Service(サービス)、Cleanliness(清潔さ)の3つ。すなわち、おいしくて・サービスが良く・清潔な店舗/食事空間の提供です。これに価値ある食事体験という価値(Value)を加えQSC&Vという基本を徹底させたのです。

具体例を1つ。言われてみると当たり前に聞こえますがレストランビジネスの基本はおいしいものを提供することです。ところが、原田氏が就任した当時はハンバーガーなどがつくり置きしていたため、それすらできていなかったと語ります。そこで導入されたのがメイド・フォー・ユーというキッチンシステム。注文を受けてからハンバーガーをわずか50秒でつくれるもので、すごいのがシステム導入への投資を決断するや半年間で一気に全店で導入していること。メイド・フォー・ユーの効果は、お客を待たせることなくできたてのハンバーガーを提供できることに加え、注文後につくるために廃棄ロスが減ったことでした。

■強みを活かす

基本に立ち返り、自分たちの強みを活かす。考え方はオーソドックスですが、8年連続プラスという成果を出した背景には、マクドナルドらしさは何かを考え自分たちの強みを伸ばしてきたという印象を受けました。

原田氏はマクドナルドはアメリカをアイデンティティとした企業であると言います。「らしさ」を象徴する商品には、メガマック、クウォーターパウンダー、それにビッグアメリカシリーズあたり。食べた人はわかると思いますが、メガマックやビッグアメリカはボリュームもありかつ値段もマックの中では結構高い設定がされています。マクドナルドのすごいところは、このへんの「らしい」商品を高単価で提供し、実際にヒットさせている点にあると思います。

もう1つのマクドナルドの強みは利便性にあります。マックには注文をしてから3分30秒以内に商品をお渡しするというルールがあるようですが、他にも利便性を強化している施策として、携帯クーポン、ドライブスルー、24時間営業、店内での電源/無線LAN、それに個人的に注目している試験的に導入中のデリバリーサービスなど。

■Value for Money:価値を提供して対価をもらう

原田氏の言葉であらためて印象的だったのが「商売の基本は価値をつくりお客様に提供し、価値の対価としてお金を支払ってもらう」。価格を上げる際にも、まず価値を上げてそれに見合う価格設定にするという考え方です。まずは価値。この考え方はほんと大切だと思っています。商品の価値自体は変わっていないのに円高還元セールでの値下げ、あるいはガソリン高による値上げなど、価値が変わっていないのにもかかわらず価格の変動ではいけないと言います。

自分の仕事でも、顧客に提供する価値を考えることなく、提供者視点でしかものを見ていない時がしばしばあります。自分たちは結局のところどんな価値を提供しているのか、その価値は競合と差別化/優位性があるものなのか、顧客にとって本当に価値のあることなのか、この視点を忘れないようにしたいもの。

継続的な成長とはつまりは価値を上げ続けること。「価値」の難しいところは、価値を感じるのはあくまで顧客だという点です。商品やサービスであれば支払った料金や使った時間(お店に行く時間・行列に並んだ時間など)に対して超えるモノ/体験を享受できて、はじめて価値を感じることができるのではないでしょうか。だから価値を上げ続けるのは、顧客の期待値を超えた価値を提供していくことだと思います。気になる新しい商品がでたから食べてみよう、この値段でこれはお得、気持ちのよい接客対応、きれいで居心地のいい店舗、また来たくなるおいしさ、など、こういう顧客体験を日々地道に積み重ねることでの価値の創出です。

■変化こそ成長の原動力

基本に立ち返り、強みを活かしながら、価値を提供する。言われてみればどれも当たり前のことかもしれません。しかし8年連続のプラスを達成した原田氏に言わせると、何回も言い続けて徹底させなければならないほど当初はできていなかった。当たり前のことを当たり前にやった、マクドナルドのすごさはこの一言に尽きるのかもしれません。

原田氏の言葉に「Back to the Basic with Innovative Manner」というものがあります。言わんとすることは基本に忠実であること、ただしそれを革新的なやり方で行なうこと。この一見相反する2つを追求し、かつ成果を上げ続けたことに原田氏の経営改革のすごさがあります。変化をし続けることこそが成長の原動力になっていると思いますが、やみくもに変えたり方向感のない変化ではなく、基本に忠実でマックらしさを忘れることなく、変化をする。

この考え方は経営だけではなく個人レベルにも当てはめられるものだと思いました。自分を成長させるためには変わっていく、あえて環境を変化させることが必要と思っています。ただ、自分の価値観だったり目指す方向性はブレないようにする。自分の強みを把握/意識し、何事も基本を大切にする。やると決めたら即実行するなどのスピード感も大切にしたいところ。個人レベルの仕事でもスポーツでもこのへんの考え方は同じではないでしょうか。マクドナルドの経営哲学からはそんなことをあらためて教えられたように思います。


※参考情報
メイド・フォー・ユー|マクドナルド
マクドナルドの経営戦略がおもしろい|思考の整理日記


勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論
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2012/04/01

Google Consumer Surveysの価値:グーグルの新しいビジネスモデルはネットリサーチの破壊的イノベーションとなるのか

Googleが米国時間3月29日に、新しいビジネスモデルを発表しました。

Google consumer surveysというマーケティング調査アンケートによるマネタイズを狙うもので、さすがグーグルと思ってしまう仕組みです。

今回のエントリー内容は3つ:Google Consumer Surveyの仕組み/価値、So what?、課題を書いています。


■Google Consumer Surveysのビジネスモデル

消費者アンケート調査をグーグルで簡単に低コストでできてしまうサービスです。

流れとしては、例えばマーケティング用にデータが欲しい時、Google Consumer Surveys(以下、GCS)でアンケートを作成します。アンケート調査はGoogleが契約しているウェブサイトで表示され、そのウェブサイト訪問者が回答する。アンケート結果はグーグルにより集計され、自分のGCSで確認します。

図にするとこんな感じです。


アンケートが表示されるウェブサイトは有料コンテンツサイトを想定しています。サイト訪問者はGCSのアンケートに回答すると有料会員ではなくてもコンテンツが見られる仕組み。

具体的なイメージは、日経新聞電子版の有料記事は毎月料金を支払っているユーザーしか閲覧できませんが、もし日経にGCSアンケートが表示されるとすると、無料会員ユーザーでもアンケートに答えれば有料記事も見られるのです。これがGCS回答者メリット。

ビジネスモデル/価値を簡単に書くと次のようになります。
  • アンケート依頼者:GCSでアンケートが簡単に/低コストで実施できる。回答結果は早ければその日のうちに返ってくるので、「ちょっとしたリサーチデータ」を入手できて便利
  • グーグル:アンケート実施による課金から売上/利益を得る。Google AdSense広告のマーケティングリサーチ版とも言える新しいビジネスモデル
  • 有料ウェブサイト運営者:アンケートの回答数に応じてグーグルから金額が支払われる。有料会員以外からも売上を得ることができる
  • サイト訪問者(アンケート回答者):アンケートに答えることで有料コンテンツを無料で見られる

■Google Consumer Surveysの詳細

実際にGCSでアンケートを途中まで作ってみた感想や以下のGCS情報から、もう少しGCSについて書いておきます。

マーケティングリサーチとかに関心のある方には読んでいただきたいですが、専門的な内容もあるのでこのパートは読み飛ばしてもらってもいいかもです。WhitepaperにはGCS詳細以外にもデータ検証結果が記載されてます(通常ネット調査や電話調査と比較検証など)。
How it works|Google consumer surveys
Whitepaper: Comparing the Accuracy of Google Consumer Surveys to Existing Probability and Non-Probability Based Internet and Telephone Surveys. (PDF, 631 KB)
  • 質問数は1問のみ。対象者を絞りたい場合は別途スクリーニング用に2問まで追加可能。つまり最大でも3問(スクリーニング2問+アンケート1問)
  • アンケート作成はGCS上で自分で作る。いくつかテンプレートも用意されている。実際にいろいろ作ってみた印象として簡単にアンケートが作成できる。バイアス除去のために回答選択肢をランダム表示させる機能も
  • 料金は1サンプルあたり10セント(1ドル=85円とすると0.85円。1000sで8500円)。回答者を絞る場合は50セント。絞り込み方法は2つ:デフォルトで用意されている属性情報(性別・年代・地域(US Westくらいの粗いレベル))を使う場合と、自分でスクリーニング設問を作成する場合(例.あなたは犬を飼っていますか?)。回答者数を1000sまでとか上限指定できる
  • 属性情報はグーグルのクッキーやIPアドレスから。クッキーはGoogle Display NetworkでのDoubleClick用に使われているもの。つまり性別や年代などの属性データはアクセス履歴の行動データから判定される
  • アンケートが配信されるサイトには、最低回答率を毎月達成しなければ翌月からはアンケートが表示できなくなるなどの条件があり、一定品質を確保するように配慮されている
  • アンケート結果はグーグルで処理されGCSから確認。回答データのグラフや数表。一部コメント付き。GCSページ上で属性絞込みなどもできる。結果イメージはこちら
  • 回答結果データはローデータとウェイトバック集計の両方。ウェイトはネット母集団調査(Current Population Survey。おそらく外部データ)と、年代×性別×エリアのセルから作成
  • アンケートデータはグーグルによれば「すべての回答は匿名で、ユーザーの個人情報とひも付けられることはなく、また、後でターゲット広告に利用されることもない」とのこと
  • 現在のGCSサービス範囲はアメリカのみ。調査対象地域もアメリカに限定

GCS紹介動画がいくつかあるので、こちらを見るとアンケート作成や回答データ結果確認方法のイメージがわかるかと思います。


Google Consumer Surveys: How to create surveys|YouTube


Google Consumer Surveys: How to view your results|YouTube

■So What?

ここまで、GCSのビジネスモデルや何ができるかを書いてみました。

もう少し深掘りしてみます。グーグルがGCSでやろうとしていることは、広告モデルとは異なるビジネスモデルの構築です。簡易アンケートを使ったコンテンツサイトの収益化の提案と言ってもいいでしょう。GCSには4つのプレイヤーがいて、それぞれのWinが成立しうる仕組みです。4者それぞれに価値があるのがGoogle Consumer Survey。

ネット広告の世界で検索連動型のAdWords、コンテンツ連動型のAdSenceという2つのイノベーションを起こしたのがグーグルでした。単に新しい方法をつくっただけではなく、自分たちの大部分の利益を稼ぐビジネスモデルです。

これがあったからこそ、これまでのグーグルは一見すると収益に結びつかないような様々なサービスを作り続け、その中からはGmailなどのグーグルの代表的なサービスとして今も多くのユーザーに使われています(ここ最近は急激なソーシャルシフトとGoogle+を中心とした統合を進めていますが)。

AdWords/AdSenceの特徴は低コストとロングテールにあり、広告とは基本的には人が多く集まるメディアに出稿するものを、たとえ1日に1ビューしかないページでもグーグルは広告メディアに変えたのです。GCSは広告でやったことをネットリサーチでもやろうというもの。

では既存のネットリサーチやリサーチ会社にとってGCSは脅威なのか、それとも機会なのでしょうか。

企業のマーケターやブランド担当者などにとっては、GCSはリサーチデータ入手の新しい選択肢になるでしょう。これまでネットリサーチ会社に依頼していた調査を、GCSで自分でアンケートをつくってスピーディかつ低コストでデータが得られる。

リサーチ会社にとって一定の顧客流出は起こるかもしれません。ただ、個人的に思うのはGCSではアンケートは1問だけであまり深いことまでは調査できなく、だとすると、これまではリサーチ会社に頼むほどでもなかった調査をGCSでやってしまう、すなわち、新しいネットリサーチニーズが生まれるのではということ。既存リサーチ会社とグーグルでパイの取り合いではなく、新しいマーケットができるのではないかと思っています。

ただしこれはあくまでGCSリリース直後現在の機能範囲においての話で、今後もしグーグルがGCSでできること(価値)を増やすことも十分に考えられます。

GCSプレミアム版みたいな感じで、質問数がもっと増えたり、アンケート内容も動画を見せたりとか、アンケートへのニーズにもっと応えるようになると、それこそネットリサーチ会社が提供するようなサービスと同等レベルも可能になってくるかもしれません。GCSではリサーチ会社でやる場合の人件費等のコストを極力省いている仕組みなので、リサーチ会社よりも低コストで実現されるはず。

GCSアンケート回答者にとっては回答負荷が増えますがその分のメリットを返せばアンケートに答えてくれるユーザーもでてくるはず。こうなると既存ネットリサーチ会社にとっては脅威でしょう。

■Google Consumer Surveysの課題

実際にGCSでアンケートをつくってみたり、できることを見た範囲での課題もいくつかあると思います。

1つはアンケート設問数で現在は1問のみなので、本当にちょっとしたデータを簡易的に得るためのツールという印象です。

2つ目はアンケート回答者の属性情報(年代や性別など)。あくまでクッキーベースのウェブ上での行動データからなので、その精度がどこまで正しいかも気になるところ。これはどんなサイトを見ているかのログデータの積み上げから、「このユーザーは25-34才の男性だろう」という推測にすぎないからです。もっとも大量データを集めればかなりの精度で出せるのかもですが。

3つ目は回答者バイアス。GCSのアンケート回答者は有料コンテンツに訪問した有料会員ではない人たちです。つまり、ネット利用者の全員ではない。コンテンツの内容によっては、訪問する人たちが特殊な人たちという可能性もあるわけでその人たちから得られたアンケート結果に代表性があるのか、という話です(ただこのあたりはグーグルももちろん認識していて、GCSvsネット調査vs電話調査からなどのバイアス検証をしているようです)。アンケート結果はグーグルから返ってきますが、そのアンケートはどのサイトで表示され回答されたのかがわからないのも気になります。

これら3つ以外に挙げたい課題として、GCSのアンケートが有料コンテンツサイトに表示される点です。有料サイトにとって、本来なら有料課金登録者にしか見せていなかった内容をGCSユーザーが見られる権利を(一時的にせよ)与えるのは、本当にそのサイトにとって望ましいことなのかはサイト運営者により分かれるのではないでしょうか。

また、個人的な感覚として有料サイト自体の数が無料サイトに比べて少ないと思うのでアンケート配信先が偏る気がします。アンケート回答者の多様性(代表性)を考えると、それこそAdSenceのように「普通の」無料サイトで幅広くアンケートが表示されるほうが望ましいと思います。無料サイトにとっても、収益源としてAdSence以外の選択肢となり得ます。GCSはAdSence同様にロングテール発想のほうがいいように思います。

ただし、無料サイト訪問者にサイト閲覧前にアンケートを答えさせることになるので、回答者メリットがなくなります。有料サイトではアンケート回答の対価として有料コンテンツの無料閲覧がありましたが、無料サイトではそもそも閲覧はタダなので、単にアンケート回答負荷だけが残ります。これだとアンケート回答率が低くなり、そもそものネットリサーチとして成立しなくなるわけで。

GCSは今のところは米国のみのサービスで、アンケート回答対象者も米国のみです。ただ、ビジネスとして成立することが確認できれば、間違いなくヨーロッパや日本にも近いうちに展開してくるはず。日本でも使えるようになったら実際にアンケート配信とかもしてみたいですね。Google Consumer Surveysはネットリサーチの破壊的イノベーションとなるのか、これからも要注目です。


※参考情報

Google consumer surveys
How it works|Google consumer surveys
Whitepaper: Comparing the Accuracy of Google Consumer Surveys to Existing Probability and Non-Probability Based Internet and Telephone Surveys. (PDF, 631 KB)
米Google、ウェブサイト収益化の新方法「Consumer Survey」を発表|INTERNET Watch
Google、調査アンケートと有料コンテンツを組み合わせた「Consumer Survey」を発表|RBBTODAY
A new way to access quality content online|Google News Blog
Google Consumer Surveys|YouTube
Google Consumer Surveys: How to create surveys|YouTube
Google Consumer Surveys: How to target custom audiences|YouTube
Google Consumer Surveys: How to view your results|YouTube


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