2012/08/25

Leap:優れたユーザーインターフェイスの1つの未来

「このテクノロジーはいいね」と思ったものがあったのでご紹介。百聞は一見にしかずということで、まずは動画をご覧ください。


Introducing the Leap|YouTube

米Leap Motionが開発した小型のモーションコントローラー:Leap(リープ)。特徴はキーボードやマウスを一切使わずに、指先や手の動きでコンピュータを操作することができること。空間上での操作がそのままディスプレイに反映される感じで、地図の拡大/縮小、画像の回転、指先やペンを使って細かい入力もできる。Leap Motionによると、精度は既存のものより200倍、100分の1ミリの動きをも認識するそう。(参考:LEAP (About)

技術的にもすごいと思うわけですが、秀逸なのはLeapの価格。Leapのサイトでは70ドルとあります。今のドル円換算で5,500円くらい。こういう新しい技術が使われた端末やデバイスは価格が高く、特に量産効果が期待できないリリース直後はなおさらだったりします。でも5,500円という価格設定は、イノベーターやアーリーアダプター層以外でもちょっと試してみたいと思わせる印象です。それくらい価格のハードルが低い。


■資料作成と操作性

冒頭で「このテクノロジーいい」と書きましたが、Leapの紹介動画を見ているだけでも可能性は色々と広がると思います。何かを操作する時に、どれだけ使いやすいかのユーザーインターフェイスって重要なんですよね。

例えば、プレゼン資料を作成する場合、最終的にはパワーポイントとかキーノートを使います。よくよく考えるとパワーポイントの操作性って全然非効率。特に図解などのチャートを入れる時をパワーポイント上で描くのと、紙やホワイトボードで描くのとでは作りやすさが違います。同じマトリクス図でもノートなら10秒でできるものも、PC上でそれをつくろうとすると1分とか、ついつい細かい図の調整までやってしまうと5分、10分とか平気でかかります。

普段は当たり前のようにパワーポイントでつくっていますが、このような無駄な時間は積みあがると結構な時間だと思っています。なぜこのようなことが起こるかと言うと、ユーザーインターフェイスが悪いから。パワーポイントの操作性やマウスとキーボードを使うという今のPCの主流である操作設計がそもそもよくない(もちろん、考えていることが頭の中で整理しきれていなく、図にしようとするとうまく描けないという問題もありますが)。ここが資料作成のボトルネックとなってしまっているんですよね。

ちなみに、パワーポイントで企画書とか報告書・プレゼン資料を作る時は、なるべく全体の構成を一度紙に書いて全体像のイメージを把握してからパワーポイントを使うようにしています。いきなりPCに向かってパワーポイントから入ってしまうと細かいことが気になり操作してしまい、全体ストーリー構成よりも枝葉ばかりの作り込みになってしまいます。もし、ノートに書くくらいの手軽さで、かつ手書きよりも洗練された図がPC上に作れる/調整してくれるような新しいインターフェイスがあればどうでしょうか。資料作成に使っていた「作業」時間が減り、その分を構成やストーリー・結論や提案を考えたりと「思考」時間にできるのです。

■二次元操作のタッチパネルと三次元操作のLeap

モバイルの世界ではボタンがたくさんあった従来型の携帯電話(フィーチャーフォン)から、タッチパネル操作を前提とするスマートフォンが少しずつ主流になっています。(とはいえ日本の普及率はまだ5割いってないと思いますが)

タッチパネルは直観的操作の代表的な例ですが、それでもまだ本当の直感的なレベルには達していないと思います。タッチパネルという名前の通り、画面に触れることで操作ができる仕組みですが、これは画面は二次元なので操作も二次元の範囲を基本超えることはありません。一部にシェイクしたり傾けたりとありますが、タッチパネル操作は二次元の範囲。それに比べて普段の私たちの動作は三次元の世界なので、二次元と三次元の差の分だけタッチパネルの操作性は「直感的ではない」んですよね。

今回紹介しているLeapは、画面にタッチは必要なく空間上の動作をデバイスが高精度で認識するものです。つまり三次元の操作が反映される。動画を見ただけで実際にLeapを使ったことはありませんが、それでもより直感的な操作ができる印象です。

タッチパネルと違って画面に触れる必要がないメリットはたくさんあります。画面を触れるということはその分画面上は不衛生になりがちですが、空間上の動作だけでよいので例えば医療現場なんかでは重宝されるのではないでしょうか。

■優れたユーザーインターフェイスには「おもてなしの心」がある

ユーザーインターフェイス(UI)というのは、人とデバイスをつなぐものです。ここが使いやすいデザインになっているかどうかが、そのままボトルネックになると思います。何かを操作する時に、直感的な操作=なるべくユーザーに使い方を考えさせないこと、だと思っていて、UIの作り手側からすると結局のところはユーザーへの「おもてなしの心」をいかに考え、提供できるかではないでしょうか。

Leapは手や指の動作からの入力、これ以外にも音声認識があり、今後は表情認識からの入力もできるようになるかもしれません。いかに人間の自然な動作がユーザーインターフェイスになるか、昨日もPCでの資料作成に思った以上に時間をかけてしまったこともあり、今後のテクノロジー発展に期待しています。


※参考情報

Leap Motion
LEAP (About)
小型モーションコントローラー「リープ」、米ベンチャーが発表|日本経済新聞(2012.5.22)
Introducing the Leap|YouTube
Controlling Computers With Hand Motion|WSJ Live

2012/08/18

新入社員に伝えたい自分の頭で考えるための3つのこと

最近、自分の所属するチームに新入社員が入ってきました。うちの会社にはメンター制度というものがあり、新人に対して先輩社員が1人つき一緒に仕事を進めながら仕事に必要な考え方だったりスキルを学ぶというOJT(On the Job Training)の1つです。

今回、新人のメンターを務めることになったのですが、メンターをやることになったことは、あらためて新人にはどんなふうに育ってほしいかを考えるきっかけになりました。まずはビジネスパーソンになってもらうことですが、その次は会社内だけではなくて外の世界でも市場価値のあるプロフェッショナルになってほしいと思っています。(プロフェッショナルと言ってもその定義は人それぞれの捉え方があり、かちっと定義する必要もないと思っていますが)

ビジネスパーソンなりプロフェッショナルにしても、そうなるためには「自分の頭で考える」ことが大事です。今回のエントリーでは自分の頭で考えるために、新入社員に伝えたい3つのことを書いています。

1.「問い」と「仮説」をしつこいくらい考える

自分の頭で考えるための第一歩として、疑問を持つことです。そして、疑問を「問い」にすること。質問の形にすると言ってもいいですが、いかに具体的かつ本質的な質問を自分の中でつくれるか。これが大事。

問いを考えるためには物事に対して、Why?とSo what?という2つを持っておくといいと思います。よくWhyを5回繰り返すことが言われますが、「なぜ?」と問うことで思考を深掘りできます。ブレイクダウンを繰り返すことで、より本質に迫れるようになってほしい。

So what?というのは「要するにどういうことか?」「一言で表現するとどうなるか?」を考えるための問いですが、これも使える質問です。Whyが深掘りなら、So whatのほうは思考を1つ上の次元に上げるイメージです。要するにどういうことか、を考えることで思考レイヤーを1つ抽象化する。こちらもWhy同様に本質を捉えるために大切な問い。

問いを考えることと同時にやってほしいのが、問いに対する自分の答えも併せて持っておくこと。「問い」と「仮説」をセットにして考えるクセをつけてほしい。さっきのWhyを5回繰り返すことは実は、Why?⇒仮説⇒Why?⇒・・と問いと仮説を考えているわけですが、このようにしつこいくらい問いと仮説を行き来してほしいなと。

仮説時点ではあくまで仮の答えなので、それが正しいかどうかはまだわかりません。なので、仮説を考えつつ、それを証明するためには何がわかればよいかも意識してほしいところ。仮説検証のためには、今どんな情報が足りていなくて、その情報はどうやったら手に入るかや、そもそも手に入るかを考えておく。

問いと仮説を意識することは、ぜひ仕事だけではなく普段から自然とできるようになるのが理想です。

2.全体像から考える

以前のエントリーで自分が新人の時に全体像を考える大切さを教わったことを書きました。参考:「象の足を見るな」:新入社員の時に教えられ、今もなお考えさせられる話|思考の整理日記

これは「群盲像を評す」という寓話から来るもので、6人の盲人が象に触れた時の各自の答えが全く違ったという話です。象の鼻を触った者は「蛇」、耳を触った者は「扇」、牙を触った者は「槍」、足を触った者は「木」、体を触った者は「壁」、尻尾を触った者は「ロープ」。


各部分の特徴の例え自体は間違ってはいない(例.鼻⇒蛇)けど、全体を見た時には各自の齟齬が大きい。物事を正確に、あるいは本質をつかむためには全体像を把握することが大事である、だから決して全体像を見ることなく一部分だけで終わってはいけない。「象の足を見るな」。そんな教えでした。

これは今でもついやってしまうのですが、どうしても自分が見えている/捉えやすい部分だけを考えてしまいがちです。結果、部分最適しかできておらず、時として部分最適≠全体最適となってしまう。

全体像を捉えるためには、複数の視点でものごとを考える必要があると思っています。自分だけの見方/切り口だとどうしても限界があり、複眼で考えるために有効なのが常に相手視点を意識すること。

相手とは、上司や別の部署/チームの人、あるいは社外のクライアント視点もそうだし、ユーザーや消費者、生活者視点で見ることでもあります。つまり、相手視点とは自分ではないあらゆる人からの視点。人は立場が違えば、ものの見方/考え方も異なります。会社にいる時の自社の視点と、1人の消費者としての自分の視点は異なるもの。どちらか一方ではなく、両方の視点で考えることが重要です。意識しないとどうしても自分の視点と1つ見方だけに偏ってしまいがちなので、相手視点で見ることを意識してほしいです。

3.主体的に考える

新しくチームに入ってきた新人が自分の好きな言葉を教えてくれました。
You can't control the wind but you can adjust your sails.
(風向きは変えられないが、帆の向きは変えられる)
良い言葉だと思いました。この言葉の意味することは、自分がコントロールできないことと(風の向き)できること(帆の向き)を区別すること、そして自分のコントロールできることに集中することだと思います。

この考え方は、故スティーブン・コビーの著書「7つの習慣」の中の第一の習慣である主体性を発揮することと同じです。

7つの習慣で印象的だったのは、刺激に対して自分の反応は選択できる、と書かれていたことでした。何かが自分に起こった時に、それに対する自分の感情反応は1つではないこと、つまり選べるという考え方です。例えば、発車間際の電車に乗ろうとして目の前でドアが閉まり乗り損ねたとします。この出来事に対してどう思うか、1つの感情は「今日はついてないな」とマイナスの反応で考えてしまうこと。でも、「次の電車はすぐ来るし、発車間際の電車より空いているかもしれない。待ち時間も有効に使おう。乗り遅れても数分の差で大したことない」と考えてみるとどうでしょうか。起こってしまったことに対してポジティブな反応になっています。刺激に対して自分の反応は選択できること、選ぶならプラスの反応をしてみる。これって1つ1つは小さなことでも、積み重なると大きいと思っています。

仕事でも同じで、新人の頃の仕事って地味だったり、雑用だったりとおもしろみに欠けるかもしれない。仕事は選べなくても、自分の反応は選択できるのです。嫌々受け身でやるか、能動的にやるか。主体的にできるか。この点については、風と帆の座右の銘を持っている新人なので、やってくれると期待しています。

今回のエントリーは新人に伝えたい3つのこと:問いと仮説を考える、全体像を考える、主体的に考える、を書いてみました。実はこれは自分に向けても書いていて、教える立場としても成長したいなと思っています。


※参考情報

「象の足を見るな」:新入社員の時に教えられ、今もなお考えさせられる話|思考の整理日記
群盲象を評す|Wikipedia


7つの習慣―成功には原則があった!
スティーブン・R. コヴィー
キングベアー出版
売り上げランキング: 34

2012/08/14

スマートテレビは普及するのか?ビジネスモデルで考える理想の姿と現実




スマート TV はそもそも何かを考えると、スマートと言えるための必要な要件は以下です。

  • ネットワーク接続され双方向性がある。TV と PC・スマホ・タブレット等の各種デバイスと連動する
  • テレビ上で各種アプリが使える。ソーシャルメディアと連携する
  • OS などのソフトウェアのアップデートでテレビが新しくなる(テレビを新しくする ≠ ハードの買い替え)
  • ユーザーインターフェイスが直感的な操作で使いやすい
  • 課金の仕組みができている
  • あらゆるコンテンツがいつでもどこでも自分の見たいタイミングで見られる

■ 視聴者視点のあるべき理想のスマート TV

視聴者の視点で、あるべき理想のスマート TV を考えてみます。

一言で表現すると、見たいコンテンツ(番組/CM)が自分の見たい時に見られるテレビです。

今のテレビ視聴の主流はリアルタイムで番組放送を見るためにはテレビ局の流す時間にテレビをつける必要がありますが(だから見逃しそうな場合は録画する必要がある)、そうではなく現在・過去の視聴番組/CM をシームレスに自分の好きなタイミングで見られることです。見るのはテレビでも、スマホやタブレットでもあらゆるデバイスがつながっていることです。

コンテンツを見る・探す・共有するアプリがサポート役としてあり、アプリやテレビ自体も新しくするのはソフトウェアのアップデートです。今のようにテレビ買い替え = ハード機器の買い替えではなく、OS を中心にしたソフトのバージョンアップデートです。

ユーザーと TV を結ぶインターフェイスが使いやすいことです。決して今のようなボタンがたくさんあって複雑なリモコンではなく、直感的でパッと見ただけで誰でも使えるものです。

具体的なイメージは、例えば、オリンピックの競技を見ていて「48年ぶりの金メダル」とあれば、当時の金メダル獲得シーンがすぐに見られる、関連するオリンピック映像だったり、48年前は東京オリンピックだから、東京五輪の名シーンを次に見るというユーザー体験です。

自分が生まれる前のことだとすると、新しい色々と発見があるかもしれません。そこから1964年当時の社会情勢や流行した歌・ファッションが紹介されてもよいでしょう。

こうした積極的なテレビ視聴もできる一方で、受け身での視聴でもテレビが関連するおすすめ番組を並べてくれる、もしくは自動でつなげてくれるようなテレビの視聴環境です。

■ビジネスモデルから考えるスマート TV

ここまでは番組の受け手である視聴者の視点で考えました。このようなテレビ環境が成立するためには、提供側の各プレイヤーも含めたスマート TV でのビジネスモデルが成立する必要があります。

一般的に、ビジネスモデルが成り立つ条件は以下です。

  • エンドユーザーや顧客にとって、既存のモデルよりもより高い価値/低いコストが提供される
  • ビジネスモデルの関係プレイヤー(ステークホルダー)全員に Win が成立する
  • カネ、情報、モノ/サービスの流れが合理的である

1つ目の条件は、前述の視聴者視点でのあるべきスマートTVがそれで、テレビがスマート化することで少なくとも視聴体験は今よりも魅力的でないといけません(より高い価値が提供される)。

低いコストというのは、テレビが安くなることでも良いですが、テレビ番組/CM を見るための面倒の解消を期待したいです。具体的にはリモコンがもっと使いやすくなってほしいですし、見たい番組をいちいち事前に録画する手間もなくなってほしいです。これらが解消されるだけでも十分テレビを見るコストが下がります。

2つ目の条件についてです。スマート TV でもビジネスモデルは広告モデルかユーザー課金の両方が併存するでしょう。スマート TV の関係プレイヤーは、放送局、広告主、広告会社(代理店)、通信会社、家電メーカー、視聴者が中心になります。

広告/ユーザー課金モデルどちらでもこれらのプレイヤーに Win がないといけません。1つでも Win-Win が発生しないとビジネスモデルがまわらなくなります。その場合は、Win が成立しないプレイヤーを除外するか(例.中間業者の中抜き)、Win が成立するようビジネスモデルを修正しないといけません。

テレビは依然として産業規模が大きく、関係プレイヤーも多岐に渡ります。もしスマート TV では全てユーザー課金で成り立つのであれば、ステークホルダーから広告主と代理店が抜けてもよくなりますが、これまでの両者のテレビ業界での影響力を考えるとそれは現実的ではないでしょう。

3つ目の条件についてです。お金は広告かユーザー課金モデルによりまわることになりますが、広告自体も変わっていくでしょう。

インターネットの世界では一般的になっている、ユーザーの属性やネット閲覧履歴にもとづく広告と同じことがテレビでも起こるはずです。課金モデルも携帯電話のように課金システムがうまく整備され、お金の流れがより合理的になるとビジネスモデルとして洗練されます。

■ 現実はスマート TV は今後5年は普及しない。テレビの周辺機器からスマート TV 環境がつくられる

スマート TV には期待していますが、一方で現実的には日本ではスマート TV は、少なくともこの先5年は普及しないでしょう。

ここで言うスマート TV はテレビ機器を指していますが、なぜ普及しないと考えるかというと、地デジ化に伴いテレビの買い替え需要が一巡してしまったからです。

「地デジを見るためには新しいテレビの買い替えを」という雰囲気の中、多くの家ではテレビを新しく買いました。しかし変わったのは、単にテレビ画面が大きく鮮明できれいになった程度の変化でした。

官民総動員の買い替え需要を起こし、50年に1回のようなインパクトがありましたが、日本のテレビ環境はほとんど変わらなかったわけです。テレビの耐用年数を考えると、次にテレビを買い換えるのは少なくとも数年はかかるでしょう。

とはいえ、放送局、通信業者、広告主、広告代理店、メーカー、等々はそれでもスマート TV に期待しているはずです。ただ、テレビ機器自体は先数年は変わらないので、テレビそのものは今のままで、周辺機器が先にネットワーク接続していくでしょう。

例えば、次のようなものです。


■ スマート TV へのそもそものボトルネックは、TV + ネット接続のメリットがイメージできないこと

このように世の中の流れはスマート TV に少しずつ進んでいます。ただし、単にテレビをネットワーク化するだけでは利用者メリットは大きくないでしょう。

いかに魅力的なコンテンツがそこにあるか、かつ、利用者がそれを発見できるかです。見たい番組がすぐに見つかる、話題になった番組もそこにあり、思いもよらない面白いコンテンツに出会える、全てフラットに並んでいる環境です。

いくらメーカーや放送局等がスマート TV 化を推進しても、最終的なステークホルダーである視聴者がメリットを感じなければ実現されないでしょう。

各家庭にある多くのテレビは、有線 LAN を接続すればテレビでネットにつながるようにできています。しかし、実際にオンライン接続されているテレビは少ないのではないでしょうか。

データとしては古いですが、MMD 研究所が2011年に実施した調査結果ではテレビでのネット接続利用は 20% 超とありました(n=2,060。ネット調査)。

イノベーター + アーリーアダプター層で合わせて 16% と言われますが、今も変わらないとすると主要なレイヤーであるマジョリティにまでは普及していないでしょう。



インターネットの普及率からすると、もっとテレビがネットにつながってもいいように思います。おそらく大部分の家でそうなっていないであろう理由は、テレビにネットをつなげるメリットがイメージできないからでしょう。

テレビ + ネットでこのようなメリットがあるというわかりやすいイメージがあれば、スマート TV 環境は間違いなく進みます。

ロンドンオリンピックが閉幕しましたが、過去最多の日本のメダル獲得数もあり、オリンピックネタは盛り上がっていました。その中心にテレビがあり、なんだかんだ言ってもテレビはよく見られていると感じます。

冒頭で挙げたスマートテレビが実現するにはいくつものハードルがあるのが現実です。そもそもビジネスモデルとして成り立つのか。各ステークホルダーへの提供価値は何か。価値によって、スマート TV のビジネス規模がどれくらいのマーケットかが決まります。そして、何よりも視聴者はどんな新しいテレビ体験ができるのかです。早急には変わらないと思いますが、期待したいちょっと先の将来構想です。


※ 参考情報

お手持ちの液晶テレビが "スマート TV" に早変わり テレビでインターネットが楽しめる「インターネット・スティック」を発売|オンキョーデジタルソリューションズ株式会社
TV でネット動画再生 Android 端末「NT-A1」|読売オンライン
Apple TV|Apple
家庭でのインターネット環境とテレビのインターネット接続についての調査|MMD 研究所
今一番欲しい SPIDER から考える「TV の次の50年」|思考の整理日記
ケータイ⇒スマホの進化から「あるべきスマート TV」が見えてくる|思考の整理日記
高機能一辺倒へのテレビにはあまりワクワクしなくなったので、そろそろ次のテレビに期待したい|思考の整理日記


2012/08/11

便利すぎるルンバ780を買って実感した「ルンバの提供価値と新しい競争軸」

先日、引越しをしたのですが、引越しを機にずっと気になっていたルンバを買いました。
「家庭用お掃除ロボットと言えばルンバ」という印象がありますが、先日の日経新聞記事にはルンバは国内で70%近いシェア、とあります(金額か個数かの何ベースかやデータソースは書いてませんでしたが)。日経記事:ロボット掃除機―アイロボット、シャープ(新製品バトル)|日本経済新聞2012.8.9朝刊

どうせ買うならと思い、買ったのはシリーズの最新かつ最高モデルのルンバ780(上記画像)。公式サイトでは79,800円(税込)ですが、ネットでちょっと調べてみたら45,000円くらいで売ってたので迷わず買い。翌日送られてきて早速使ってみました。まだ数回しかルンバで掃除していませんが、すでに買ってよかったと実感できるほど、ルンバいい感じです。

■ルンバの魅力と提供価値

モノの提供価値は2つに分けられると思っています:機能的価値と感情的価値。機能的価値とは、目に見えるもので例えば車の燃費の良さやスマホ画面のきれいさとか。感情的価値とは、ユーザーに提供する持っていて誇らしくさせてくれたりなどの気分的なもので、典型がブランドの価値。機能的にはほぼ差がなくても自分の好きなブランドロゴがあるかないかで感情的価値は大きく異なります。

ルンバの機能的価値:なんと言っても自動で掃除をしてくれる利便性です。外出中でも予約しておけば勝手にやってくれる(ただしルンバのシリーズによっては予約はできないものもあります)。ユーザーがやることは日時指定とスイッチを押しておくだけ。

何回か使った感想として、ルンバは自分が掃除をするよりもきれいしてくれること。実際に動いているところを見るとほんと念入りにやってくれます。ルンバ780は40以上のセンサーがあり、どこが汚れている場所なのかを感知しそこを特に念入りに掃除してくれます。このセンサーで、部屋の広さや形状、家具の配置を検知し、部屋の状況に応じて最適な動きを素早く判断する人工知能「iAdapt(アイアダプト)」を搭載している。なので、家具が置いてあるような場所でもきちんと掃除できる。40の行動パターンを持っていて、最適動作を選んで掃除するとのこと。

自動掃除について細かい点を補足しておくと、全ての部屋を自動で掃除させるには、ルンバに各部屋を認識させる必要があります。例えば、リビング、和室、寝室、子ども部屋があるとして、上位モデルの780では、「お部屋ナビ」という付属機器を部屋の入口ごとに置くことで、どこまでが1つの部屋(空間)かをルンバに把握させる。そうすると、1つの部屋が終われば次の部屋、というパターン認識ができ、結果、各部屋を順番に自動掃除ができるという仕組み。逆に、この部屋は掃除してほしくない場合は「バーチャルフォール」を設置し、赤外線が出ていてそれ以上はルンバが進めない(入れない)ようにできます。このへんの仕組みもおもしろいです。

ルンバの感情的価値:ルンバが到着して箱から取り出した時の感想は、デザインもかっこいいことでした。シンプルで無駄のないデザイン、それでいて高級感もある。ルンバ780にはタッチパネルもついていますが、ボタンの光り方とかも気に入っています。

掃除をしている時の動きも愛着があります。例えばうちのリビングにはテーブルや椅子の下など、入りにくい箇所がいくつかあるのですが、ルンバは何度か角度を変えて入り込もうとトライする。なんとなく見ていて微笑ましくなります。健気にかんばってくれているというか。

ルンバの機能的価値と感情的価値の2つを書きましたが、なんといっても機能面に満足しています。自分がやるよりも念入りに、かつ自動で掃除をしてくれる。ここの利便性はほんと魅力。

■ルンバはどのように開発されたのか

こんな便利なルンバはどのように開発されたのか。開発経緯が書かれていた記事が、やや昔のですが日経ビジネスにありました(製品開発の研究 米アイロボット 地雷もゴミもお掃除|日経ビジネス2010.10.25)。ルンバを開発したアメリカのiRobot(アイロボット)への取材記事で、ルンバの成功の裏には地道に開発ノウハウを吸収し続けたことがあったとのこと。

他社との提携商品や異なる分野の知見を自動掃除用ロボットのルンバに活かしたそうで、具体的には清掃用品メーカー、玩具メーカーとの共同開発から、そして軍事用ロボットから。

清掃用品メーカーとは大型の掃除用ロボットを共同開発し、提携先が持つ掃除に関する知見が吸収できた。玩具メーカーと一緒に開発した赤ちゃんロボットからは、価格競争の激しい玩具業界での経験から複雑な仕組みのロボットをいかに低コストで作るかを学んだ。

アイロボット社は米軍から研究開発資金を得て、小型無人偵察車両などの軍事ロボットの開発を手がける軍需企業でもあります。

右の画像は、小型無人偵察車両「SUGV」。出所:製品開発の研究 米アイロボット 地雷もゴミもお掃除|日経ビジネス2010.10.25

ここで人工知能(AI)のノウハウを磨いた。地雷探査ロボットの走行を制御するAIがルンバに応用されているそうで、地雷探査ロボットは地雷をくまなく調べることが求められますが、この技術を部屋の隅々まで障害物を避けながら自動で掃除できるルンバに活用されている。

このように、様々なアイデア/知見を掃除用ロボットに組み合わせている。ルンバの強みの裏にはこういった長年のノウハウがあるのです。

■iRobot社が考える「これからのロボット」

ルンバを開発するアイロボット社の開発方針は3つのDを掲げているそうです。「人間に代わって、Dull(退屈)でDirty(不衛生)・Dangerous(危険)な作業を行なうロボットを作ること」。

ルンバは家のフロアを自動掃除するロボットですが、アイロボット社のコリン・アングルCEOによれば、今後は床や壁の拭き掃除をするロボットや、風呂掃除をするロボット、洗濯物をたたんでくれるロボット、芝刈りロボットなど、さまざまな領域で可能性があると言います。

こうした分野において、ロボットを進化させていきたい、と。そして長期的な目標としては、家が家自身をメンテナンスするような仕組みをロボットによって構築すること。そうすれば、人は家事から解放される。それが家庭用ロボットの未来像である、と。参考:未来の「ルンバ」は風呂掃除も? 米アイロボットCEOに聞く|日経トレンディネット

この記事でアングルCEOが強調していたのは、ビジネスとしてロボットを「売る」ということ。たとえ高い技術によるロボットで二足歩行や走ったりできてもデモやショーでしか使われるのではなく、あくまでロボットを売るため。決して学術目的や非実用的なアカデミックなポジショニングではない、と言っていたのが印象的でした。

ルンバ以外にちょっと迷ったのはダイソンの掃除機でした。ダイソンの「世界で唯一吸引力が落ちない掃除機」というキャッチフレーズにも惹かれましたが、でもこれも結局はこれまでの掃除機の延長線上の話なんですよね。一方でルンバは自動掃除という新しい価値を提供してくれる。ダイソンの比較優位は既存の掃除機よりも吸引力が落ちないことですが、ルンバは競争軸を全く別に変えています。さて、この軸でルンバに対抗する魅力的なロボットは出てくるのでしょうか。そのロボットはルンバに対しての比較優位は?


※参考情報

ルンバ製品ラインナップ|iRobot
製品開発の研究 米アイロボット 地雷もゴミもお掃除|日経ビジネス2010.10.25
ロボット掃除機―アイロボット、シャープ(新製品バトル)|日本経済新聞2012.08.09朝刊
未来の「ルンバ」は風呂掃除も? 米アイロボットCEOに聞く|日経トレンディネット
日本の家電メーカー、ロボット掃除機で攻勢-「ルンバ」に対抗、新機種続々|朝日新聞デジタル

2012/08/04

みんな大好き!コメダ珈琲店のビジネスモデル




先日放送されたカンブレア宮殿はコメダについてでした(2012年7月26日)。放送内容はコメダのビジネスモデルが紹介されていました。

コメダのコンセプト


まず印象的だったのはコメダのコンセプトである「地域の人たちがゆったりできる場所を提供する」ことでした。もともとはコメダ創業者である加藤太郎氏が「お客がさっさと帰るような店は田舎では成り立たない」と思い、事業を始めたのが原点だそうです。

コメダが一般の喫茶店とは差別化されていることがわかります。というのも喫茶店や飲食店では重要視している「回転率」をコメダでは追及していないのです。むしろお客さんには長居歓迎というスタンスです。

飲食店は、売上 = 客単価 x 顧客数 であり、回転率は顧客数の1つの分解要素です。顧客数はさらに次のように分解できます。顧客数 = 席数 x 平均座席占有率 (= 営業時間 ÷ 回転率) 。

例えば回転率が30分で新しい客に入れ替わるのと、2時間で入れ替わるのとでは1日の売上に影響します(8時間営業とすると、回転率30分では16組、回転率2時間では4組)。

コメダでは回転率を重視していないことに驚きました。むしろ長居してもらう、つまり回転率を下げることを大切にしているからです。

コメダの考え方はシンプルです。長居してもらえるようなゆったりとした場所を提供すれば、お客は常連になってくれることです。それでいて儲かればお客もコメダも Win-Win になれる、というものです。

カンブリア宮殿ではコメダのお客の平均滞在時間は1時間以上というデータが紹介されていました。あるお客さんへのインタビューで「6時間以上いたこともある」と言っていました。

コメダはなぜ利益が出せるのか


次におもしろかったのは、回転率を追及しないのになぜコメダは利益が出せるかという視点でした。放送で紹介されていたコメダの営業利益率は 17% でした。これは一般の飲食店が 9% であることを考えると高い利益率です(数字は2007年経産省からとのテロップ)。

17% という利益率の裏には低コスト努力がありました。放送で紹介されていたのは、仕入れコストと人件費の無駄をなくすことでした。

仕入れコストについて、コメダでは使用している食材のアイテム数が約20個で、普通の店よりも少ないそうです。ポイントは、食材数は少ないものの、メニュー数は減らしていないことです。

1つの食材を複数のメニューに使用しています。放送ではミックスサンド、フィッシュフライバーガー、スクランブルエッグトーストには、全て同じ卵ペーストを共通で使っているとありました。食材を減らし、使い切り、在庫や廃棄ロスを極力なくしているのです。

コメダの人気メニューの1つである「モーニングセット」は、コーヒーを頼むと無料でトーストとゆでたまごが付いてきます(開店~朝11時まで)。これも全国450店舗のコメダの仕入れ購買力もあり「赤字ではない」(コメダ安田社長)とのことでした。

また、メニューの仕込みは開店前に従業員全員で行ない、開店後は料理を組み合わせる程度だそうです。だから調理スタッフは最低限でよく、人件費を抑えています。

人件費の無駄をなくすことについて、来店客数のピークをつくらないようにし、人件費を抑えるという考え方でした。

放送ではあるコメダの店では一日中お客が途切れず、午前は近所の高齢者、昼時は子連れの主婦、午後はサラリーマン(打合せ)、夕方は学生(勉強)でした。

もしある時間帯だけお客さんが来る場合、その時間はアルバイト等の人を投入しないといけませんが、「ピークの時間帯前後の暇な時も人を張り付かせることになり、人件費が高くなってしまう」とコメダの安田社長は言っていました。

まとめるとコメダの高い利益率の背景には、仕入れ位や人件費を抑えるという低コスト運営にありました。

コメダの提供価値


名古屋では喫茶店ではなく「コメダへ行く」というブランドが成り立っているほどです。朝の開店直後から行列ができていることも珍しくありません。

名古屋ではコメダ以外の喫茶店でもモーニングセットを頼めば、トーストやゆで玉子、さらには茶碗蒸しまで無料で付くサービスがあります。休日の朝ごはんは家族でモーニングセットを喫茶店で食べるという人も少なくありません。このように名古屋には独自の喫茶店文化が根付いています。

あらためてコメダの魅力を考えると、居心地の良さです。コンセプトそのままに長居していてもよいという雰囲気があります。

内装もいかにお客にくつろいでもらえるかで作られています。座席は4人席が多く設けられていたり、座り心地のよいペロア調のソファ、隣の席と目線が合わない仕切りなど、全体として隣同士が接近しすぎていなく、周囲が気にならずに居心地がよい設計です。

放送を見て思い出したのは、ベロア調のソファは弾力や背もたれの角度が良く、長時間座っていても疲れにくいことでした。また、店員の服装は、黒エプロン + 白ポロシャツ + 三角巾 というスタイルです。シンプルにし、お客がラフな格好でも気兼ねなく来店してもらえるようにとのことでした。

コメダが結局のところ何を売っているかというと、居心地の良さなのです。「地域の人たちがゆったりできる場所を提供する」という創業当時のコンセプトがそのまま実現されているのです。

居心地の良さは座席などのハード面だけではなく、接客のソフト面でも特徴がありました。

カンブリア宮殿の放送で紹介されていたある店では、店長が100人以上のお客さんのいつもの注文内容を細かく覚えていて、「いつものあれ」でオーダーが通っていました。

中にはかなり細かい要望があり、歯が弱いからサラダからきゅうりだけ除いてほしいとか、コーヒーはミルク無しのぬるめ、パンは耳なしで、等々のカスタマイズ注文を、「いつものあれ」で通っていました。また高齢者用にサンドイッチを細かく切り分けるなど、手間を惜しまないそうで、これは各店舗の裁量とのことでした。

喫茶店によらず、一般的にチェーン店であればどの店も、同じ商品であれば大きさや味は同じです。しかしコメダは、チェーン店にもかかわらず店ごとにお客にカスタマイズしています。客にとって好みを聞いてもらえるという、他チェーンに比べての差別化要素があります。

ちなみに、スターバックスのコンセプトは「第三の場所を提供する」ことです。自分の家が第一、職場/学校が第二、そしてスタバが第三という意味です。

コメダの考え方もこれと同じです。自宅でも職場でもないくつろげる場所を提供します。スタバの場合は第三の場所としてはやや格式高い雰囲気ですが、コメダはもっとプライベートで、スタバとはポジショニングが違います。

コメダのビジネスモデルは、地域のお客さんにゆったりして長居できる場所を提供すると同時に、自分たちも利益を出しています。


※参考情報
珈琲所 コメダ珈琲店
2012年7月26日放送 株式会社コメダ|カンブリア宮殿
カンブリア宮殿 コメダ珈琲店 7月26日 バラエティ動画


Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...