2012/09/29

Googleの自動走行車は普及するのか?

グーグルは先日25日、研究を進めている自動走行車について「5年以内に一般の人が利用できるようになる」との見通しを示しました。



以下は、日経産業新聞の記事引用です。(2012年9月27日)
グーグルは2010年に自動走行車の開発に着手。これまでに30万マイル(約48万キロメートル)の走行試験を実施した。この計画を担当するブリン氏は「視覚障害者など自動車の恩恵に浴していない人の生活を改善できる」と指摘。交通事故の減少や渋滞緩和にも効果があると説明した。実用化に関連しては「センサーの性能向上などが課題となる」という。自社製造ではなく、自動車メーカーへの技術供与を検討している。
5年以内というともうすぐという感じです。ちなみにブリン氏の「5年以内に一般の人が利用できるようになる」というコメントは、アメリカ・カリフォルニア州知事がグーグル本社を訪れて自動走行車の公道走行試験を後押しする法案に署名したのですが、その時の式典後に開いた記者会見でのもの。アメリカでは公道を自動走行車が走れるよう法案ができているのです(一部の州に限りますが)。

■自動走行車が普及するための条件・ハードル

ただ、テクノロジーで自動走行車が実現しても、実際に普及させるには様々なハードルがあります。いくつか思いついたものを書いておくと、

1.安全性:自動走行車は本当に人の運転に比べて安全なのか。「自動走行車は安全」という認識が人々の中に定着するのは普及への絶対条件だと思います。ただ、グーグルはすでに48万kmをテストしていること、他には飛行機なんかは自動運転とパイロットとの手動運転を組み合わせていることも考えると、自動走行は人の手で運転されるよりも安全性は高いのではと思います。あとは普通の人々が、人間が運転しない自動走行を心理的に受け入れるようになるかどうか。

2.利便性:車を運転できない人も自動車の恩恵を受けられるようになる、渋滞や交通事故が減少する、自動運転により省エネドライブができガソリン消費が抑えられる、予定時間通りに目的地に到着する、人のドライブよりも自動走行のほうが早く目的地に到着(?)、といった利便性が感じられること。

3.価格:グーグルの自動走行車のビジネスモデルは技術・ライセンス提供と読み取れますが、自動走行車の価格は現行の車と同程度か、高くなったとしても許容範囲内なのか。

4.法律:自動走行車が公道を走ることを可能とするように法律も見直すことになる。あとは自動走行車のナンバーも、それとわかるものになるのかも。

5.使用条件:自動走行車を使う時の使用条件も詰める必要がありそうです。誰も人が乗らない完全無人走行を許すのか、(運転はしなくても)同乗者は1人以上必要とするのか。同乗者は免許を持っている人とするのか。同乗者が居眠りしていると居眠り運転、同乗者がお酒を飲んでいると酒気帯び運転、とか。このへんは法律とも関連しそうです。ただ、同乗者=免許保有者という条件になると、今は車を運転しない/できない人への恩恵に制約がでそうです。

6.違反や事故の責任:自動走行車で万が一の事故が発生した場合、その責任は誰が取るのか。技術提供をしたグーグルなのか、自動走行車を販売した車メーカーなのか、自動走行車の保有者なのか、同乗者なのか。このあたりも明確化必要。

7.保険や車検:自動車保険の仕組みも新たに設計し直すことになりそう。それと車検も検査項目が増える。

8.国ごとで統一できるか:日本ではあまり考えなくてもよさそうですが、ヨーロッパとかは国境をまたいでの走行も普通にありそうなので、各国で法律や使用条件などを統一しておかないと不便そう。

以上がざっと考えられる普及条件です。

■自動走行車はどのセグメントで普及するのか

以上の普及へのハードルが解消されるとして、次に考えてみたいのがどこで普及するのか。自動走行車は自動車利用のどのカテゴリーと相性が良さそうか、ということ。

まずはカテゴリー分けですが、大きくは個人利用と業務利用に分けられます(他にはレースなどの特殊利用もありますが割愛)。個人利用を考えてみると、移動や運搬としての「手段」か、走ること自体が楽しいなどの「目的」か、どちらの要素がより強いかで利用シーン分けられます。ドライブ自体が目的であれば自動走行車へのニーズは小さいので、手段としての車利用に自動走行車は使えそうです。

ただ、個人的には自動走行車が普及するのは、まずは業務用のほうではないかと思っています。業務用のカテゴリーを考えた時に
  • 配達やコンビニ配送車・工場出荷物などのモノを運ぶ物流
  • バス・タクシーや救急車などの人を運ぶ
  • 警察車両・消防車や清掃車などの治安維持系
これらの業務用のうち、定型的な使われ方をするものが自動走行車とマッチしそうに思います。定型的というのは、毎日決まったコースでモノを届けるなどで、工場-販売先などの物流や定時で各駅を回るバス、清掃車なんかも掃除する道は決まっていそうなので、このあたりは自動走行車が使えそう。

シナリオとしては、業務用で自動走行車が普及していき、価格も下がっていく。そのうちに人々の中にも自動走行車への心理的な抵抗が薄れていって個人でも自動走行車を使う人が出てくる。有人走行車がゼロになることはないと思いますが、純粋に車の操縦を楽しみたいというドライブニーズ以外は自動走行車に取って代わる未来もあり得そうです。

■普及した時の自動走行車の恩恵

では、自動走行車が普通に走る未来は良いシナリオなのか。普及した時の私たちの恩恵としては、

1.運転からの解放:車の運転自体をあまり純粋に楽しめない人、つまり移動や運搬の「手段」と捉えている人にとっては、車を運転する時間を他に使えるメリットがあります。渋滞が緩和されるだけでも社会全体への恩恵は大きいように思います。

2.交通事故や環境負荷の減少:これも社会全体への影響は大きいです。自動走行になることで、自動車による死亡や怪我、物品破損等のマイナスが減ることは期待したいです。また、ガソリンや電気等の消費エネルギー量を抑えられればそれだけ環境への負荷は小さくなります。ただ、これまで電車を使っていた人が新たに自動走行車を使うようになると、環境への影響減少と単純には言えなそうですが。

3.移動手段の獲得:車の運転をしない/できない高齢者や体に不自由な方などへの恩恵。

これらが自動走行車に望むこと。実際に自動走行車が普及するには、テクノロジーの進化よりも社会や人々が受け入れるかが一番のハードルと思います。自動走行車によって、個人レベルのメリットからより良い社会が形成される。そんな未来を期待しています。


※参考情報
グーグルの自動運転車、5年以内に一般利用を可能に--ブリン氏発言|CNET Japan
米グーグルの自律走行車、カリフォルニアでも公道走行が可能に|AFPBB News

2012/09/22

アイデアは組み合わせ:モノから情報への価値転換時代だからこそ覚えておきたい原理



社会構造を大きな視点で見ると、いくつかの変換点を経て今に至っています。梅棹忠夫は著書「情報の文明学」において、人類の産業の展開史は三段階を経たとしています。①農業の時代、②工業の時代、③精神産業の時代(以下、情報産業とします)。

梅棹の説明でおもしろいのは、農業・工業・情報産業を、生物学の比喩(メタファー)を使っている点にあります。受精卵が生まれ人間の身体が形成されるまでの、内胚葉、中胚葉、外胚葉の3つの段階です。ちなみに、内胚葉からは胃・腸などの消化器官、中胚葉からは骨・筋肉・血管、外胚葉からは脳神経や感覚器官がつくられます。社会構造変化の過程を、農業=内胚葉、工業=中胚葉、情報産業=外肺葉、となぞらえている。ここが梅棹の説明のユニークな点であり、おもしろいと思わせるアイデアの組み合わせなのです。

■S字波モデルから考える社会構造の変化

では、農業⇒工業⇒情報産業の移り変わりはどのように進んできた/進んでいるのか。これを考えるのに参考になるのが、書籍「情報社会のいま ―あたらしい智民たちへ」に出てくるS字波モデル。本書では、近代化の過程を軍事社会⇒産業社会⇒情報社会の3つに分けていますが、興味深いのはそれぞれが重なり合いながら変化してきている点です。

引用:書籍「情報社会のいま ―あたらしい智民たちへ」(公文俊平 NTT出版)

この図で太字で示されている近代化過程を分解すると、小さなS字波である軍事化・産業化・情報化になるのですが、現在図の縦の点線が示す通り、軍事化の定着、産業化の成熟、情報化の出現という3つの局面が同時に起こっています。注目しておきたいのは、特に産業化(工業化)がある程度発展しきって成熟に向かっていることと、情報産業化社会が今後急激に発展していくこと。

■モノから情報へ

工業化⇒情報化はどのような社会変化をもたらすのか。この点を詳しく書いているのが最近読んだ「モノから情報へ (-価値大転換社会の到来)」という本でした。本書の主張は「情報の価値がこれまでのモノに取って代わって、大きな役割を果たし始めている」というもの。

情報の価値の特徴に、モノの価値と比べて相対性が強いことを挙げています。情報の価値は受け手や、受け手自身の環境など、同じ情報でもTPOによりその価値が大きく変わります。例えば、ニュース記事もその問題/領域に関心がある人とそうでない人とでは、重要度が異なります。あるいは、リリース直後に読むのと、後から時間が経ってから知るのとでは情報の鮮度が違います。つまり同じ情報でも価値が異なる。もちろん、モノの価値も使い手によって変わりますが、より価値の相対性が強いのは情報のほうでしょう。

もう1つ、本書の指摘でおもしろかったのは、「情報の価値は組み合わせによって生まれる、組み合わせは相手を選ばない」、というもの。モノとモノの組み合わせパターンに比べて、情報や知識の組み合わせは多く、組み合わせから生まれる価値をいかにうまく活用するかという指摘です。その意味では、よく言われるクリエイティブ力とは、「それぞれの情報要素の関係を見極め、その関係性から新たな価値を生み出す/組み合わせる力」と言えます。

■アイデアは組み合わせである

情報の価値は組み合わせから生まれるというのは、名著「アイデアのつくり方」に書かれていることと同じです。本書では、アイデアをつくるための原理を、①アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない、②既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きい、としています。要するに、アイデアは組み合わせであり、そのためには関連性を見分ける才能が重要ということ。

そして、アイデアを生み出し具体化する方法が以下のプロセス。
  1. 資料・データ集め
  2. 資料・データの咀嚼
  3. 問題を放棄し、心の外にほうり出してしまう
  4. アイデアの誕生
  5. アイデアを具体化し、展開させる
興味深いのは3⇒4の部分で、情報を頭で理解・咀嚼した後はいったん置いておくこと。その間にアイデアが組み合わさり、誕生するのを待つ。「アイデアのつくり方」の原著の初版は1940年に出ていて、今なお読み継がれることは考えさせられるものです。

アイデアは組み合わせであり、いかに組み合わせるかがアイデアの価値の肝になります。そこで自分自身が意識しているのが、異なるものの共通点や類似点を考えてみることだったりします。以前のエントリーでAmazonとサザエさんに出てくる三河屋のサブちゃんの共通点を書いたことがあります。(参考:「仕組みの問題」で考えるAmazonと三河屋のサブちゃんの共通点|思考の整理日記

アマゾンに限らずレコメンドはいかに各ユーザーのことを知ることが重要になります。まずは性別や年齢などの基本属性情報、何が好きかなどの趣味・嗜好の特徴、そしてどんな行動をする人なのかの行動履歴。これらの情報をいかに集め、そこから何をレコメンドするか。

この点をアナログでうまくやっているのがサブちゃん。サブちゃんの登場シーンで思い浮かぶのは、「そろそろお醤油が切れかける頃だと思って持ってきました」と台所の勝手口に現れる。サザエさんも「ちょうど良かった。お醤油が切れかけてたの。 お味噌もいつものを持ってきてくれるかしら」と、追加で味噌も注文する。これはサブちゃんがサザエさん一家を知り尽くしているからこそなのです。

何も言わなくとも一回に頼む醤油の量も、どんな醤油が好みなのか、そろそろ醤油が切れかけていることも把握している。だから、頼まれなくても勝手口に現れて、「そろそろお醤油が切れかける頃だと思って持ってきました」というタイミングの絶妙さです。購買情報やユーザーの嗜好を知り尽くすことでタイミングよくレコメンドし、+1の商品も買ってもらう。アマゾンと三河屋のサブちゃんの共通する仕組みです。

表面的な違いではなく、仕組みに着目してみる。構造が見えてきたら、他の分野で当てはまらないかを考えてみる。これこそが、アイデアの組み合わせ具体例の1つだと思っています。冒頭で書いた梅棹が、農業⇒工業⇒情報産業の構造と、内胚葉⇒中胚葉⇒外胚葉の受精卵の成長過程の仕組みを組み合わせたように。


※参考情報

複雑な社会変化をシンプルに見せるとっておきのS字波モデル|思考の整理日記
梅棹忠夫とドラッカーから考える情報革命のこれから|思考の整理日記
アイデアをつくるシンプルな原理と方法|思考の整理日記
「仕組みの問題」で考えるAmazonと三河屋のサブちゃんの共通点|思考の整理日記


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2012/09/15

「仕組み」から考える雑誌のビジネスモデルいろいろ




ニッセンという通販サービスがあります。定期的にカタログが送られてきます。送付頻度は季節ごとなので、約3ヵ月に1度のペースです。

カタログは男性用(メンズニッセン)、女性用は細かくカテゴリーが分かれており、衣服以外にも便利グッズのカタログもあり、充実した内容です。

カタログは基本的に無料です。カタログとともに例えば化粧品や健康食品の広告も入っています。一部には広告による収益も入っているかもしれませんが、ニッセン会員になれば「秋号」「冬号」とタダで送られてくる仕組みです。

2012/09/08

電子書籍図書館は成り立つのか?

区の公共図書館が家から歩いていけるくらいの場所にあるので、わりと頻度よく利用しています。最寄図書館はそれほど大きくないので自分が読みたい本はなかったりすることもありますが、区内の図書館で連携していて、他の図書館で欲しい本があれば最寄図書館に取り寄せてもらえる仕組みになっています。



図書館には予約システムがあり、ネットから本を検索しそのまま予約できる仕組みです。読みたい本のタイトルや著者名で検索し、図書館にあれば貸出状況などとともに結果が表示されます。本の検索対象は最寄図書館だけではなく区内にある図書館全体なので、読みたい本がマニアックなものでも結構ヒットするんですよね。予約すれば最寄図書館に送られ、貸出OKの連絡がメールで来る。あとは予約した本は最寄図書館に受け取りに行くだけなので、それなりに使いやすい仕組みがありがたいです。

■「図書館×電子書籍」というアイデア

ところで、この予約、読みたい本が貸し出し中の時やすでに他の人が予約している場合は順番待ちとなります。有名な本だと20人とかが既に予約していたりして、1人の人が借りて返すまでに1週間とすると、20週間待つことになります。次の借りる人のために他の図書館に移動する時間も考えると、なんだかんだで半年くらい先までは借りられない。なぜこのような順番待ちが発生するのかを考えると、本が「供給<需用」となっているから。人気の本や話題になっているものは不等号が大きくなり、半年待ちのような状況になります。

供給<需要について、もう少しWhyを続けてみます。

  • Why?⇒供給量が一定なのは図書館の保有冊数が限られているから
  • Why?⇒本の仕入れコスト/保有スペースが有限だから
  • Why?⇒本を買うのにはお金が必要/物理的管理スペースや管理コストが必要
  • Why?⇒本がお金かかり管理必要なのは「紙」だから

ここで思ったのが、もし紙ではなく電子書籍を扱う図書館ならどうなるか、という疑問です。仮に電子書籍はコピーして無制限に増やせる場合で考えると、電子書籍を増やすことはほぼコストなしで可能です。ファイルをコピー&ペーストするイメージ。保管スペースもサーバーになるので紙の本に比べて保管スペースは小さくなる。管理コストも紙の本のように人の手で元の本棚に返すようなコストは発生せず、運用コストも下がる。

紙ではなく電子書籍になった場合、上記の5回のWhyを後ろから逆に戻っていくと、本の供給≧需要が成立します。つまり、貸出中につき今は借りられないという状況は発生しない。

そもそもですが、電子書籍図書館では本を「貸す/返す」という概念自体がなくなるのではと思います。図書館が本を貸すのは、本の冊数が限られているので返してもらわないと次の人にまわらないから。だから無料で上げるのではなく無料で貸すという形をとっています。紙の本という限られた資源を利用者間でうまく回すために貸出と返却はセットになっていないといけないのです。

一方、電子書籍になると理論上はコピーしていくらでも増やせるので、返してもらう必要は必ずしもなくなります。借りるというよりも図書館から電子書籍を端末にダウンロードするという形式になるはず。もしくは中央のクラウドに電子書籍がありアクセス権が付与される構図。そうなると、今のように本を借りる/返すために図書館に行く必要もなくなり、ネット経由で端末にダウンロードする/アクセス権をもらうことが本を借りることになる。図書館からダウンロードできる本は、おそらく一定期間後(2週間後とか)には端末内から自動消去される、アクセス権付与の場合は閲覧権限がなくなる仕組みになるように思います。つまり、紙の本だと「貸す/返す」が、電子書籍だと「配布(ダウンロード/アクセス権)/削除」になる。

■現実的な電子書籍図書館モデル

ですが、果たしてこのようなモデルは本当に成り立つのでしょうか。利用者からすると、図書館からは電子書籍がタダでもらえる環境です。一定期間後に削除されてしまうとはいえ、やろうと思えば何冊でも読むことができる。読書が好きな人には夢のような状況ですが、本を提供する側である作家や出版社、あるいは町の本屋さんだったりアマゾンなどにとっては悪夢のような仕組みです。

有料で売れていた電子書籍というコンテンツが公共の図書館では全部無料。提供側の各ステークホルダーは絶対反対だろうし、もし実現したとしても長期で見れば作家さんがお金を稼げなくなるのではれば書籍文化が衰退してしまうので、利用者にとっても最終的にはマイナスです。よって、ここまで考えてきたような電子書籍図書館はモデルとして成立しないでしょう。現実的にはなんらかの制限が課されるはずです。例えば、

  • 電子書籍のコピーは図書館側ではできない(ファイル分の書籍購入が必要)
  • 図書館での保有分しかダウンロード/アクセス権付与(貸出)できない。例えば3ファイルなら貸し出しは3人までと、結局は「供給<需要」になり順番待ちが発生
  • 利用者のダウンロード/アクセス付与可能数は1日あたり○冊、月に○冊
  • ダウンロード後の一定期間後に端末内から自動削除、もしくは閲覧アクセス権がなくなる

要するに、電子書籍でも紙の本の貸出/返却と近い仕組みになるということ。

せっかくの電子書籍のメリットがあまり活かされない感じですが、それでも本を借りたり返すのに図書館へ行く必要がなくなる、借りた本をスマホやタブレット・電子書籍専用端末(キンドルとか)などのマルチ端末で読める、電子書籍が気軽に利用できるなど、魅力はあります。

■「電子書籍×パケ放題」というアイデア

電子書籍の図書館モデルを考えてみましたが、これを別の発想をすると、パケット定額サービスのような仕組みで成り立つのではないかと思いました。

スマホや携帯電話のパケ放題では毎月一定金額を支払うとネットやダウンロード・メールが使い放題になります。この仕組みを電子書籍に応用できないか、というアイデアです。例えばサービス形態として、

  • 無料登録で月に1冊まで読める
  • 毎月1000円で月に3冊まで
  • 毎月3000円で月に10冊まで
  • 毎月5000円で無制限で読める

読む本が少ない月は2000円で多い月は4000円、というようなダブル定額の仕組みも工夫できそうです。

月5000円会員以外は、上限超えれば1冊ごとに課金するモデル。場合によっては広告を表示させる広告モデルも併用。全会員に共通するのはダウンロードして一定期間後に自動削除される、削除が嫌な場合は追加料金を支払えば削除されずに端末内に残しておくことができるor紙の本が買える、など。

この価格設定でペイできるかは運用形態がどうなって、コストがどれくらいとか、もっと精緻に詰めないといけないと思いますが、事業者側にとって毎月継続してお金が入ってくるビジネスモデルは、利用者規模とコスト削減から損益分岐を超えれば魅力があるように思います。

ちなみに、冒頭で書いたように図書館を利用する前までは毎月の書籍代が数万円だったので、この電子書籍読み放題サービスは結構魅力です。スマホやタブレット、将来的にはもはや紙のように折り曲げたりできる薄い電子ペーパーも出てくるだろうし、これらの端末で連携された読書環境で、その他には(利用者にとって)変な制限などなければ、ぜひ使ってみたいですね。アマゾンあたり、ぜひやってくれないかな。


2012/09/02

reCAPTCHA:認証の裏にある秀逸なアイデア




reCAPTCHA(リキャプチャ)というユーザー認証サービスがあります。このサービスの裏にあるアイデアが素晴らしいのでご紹介します。

reCAPTCHA とは


ウェブサービスへの登録時やブログにコメントする時に以下のような認証画面が表示されます。これはスパムプログラムと人間ユーザーを見分けるためのものです。

実際の認証画面は以下のイメージです。一度は使ったことがある方も多いでしょう。



アルファベットが読みにくくされています。時には読めないくらい崩れていることもあります。

機械は正しく読めないものでも、人間の視覚能力は読みにくい文字でも脳で処理できるようになっています。スパムと人間をうまく切り分ける役割を果たしています。

実はこの reCAPTHA は、ユーザー認証とは別の目的で使われています。

上の認証画面の右下には stop spam. read books. とあります。興味深いのは read books です。reCAPTCHA は書籍のデジタル化に一役買っているのです。

reCAPTCHA のアイデア


書籍のデジタル化はページをスキャンし、OCR(光学式文字読取装置)という技術を使ってテキスト化しています。OCR は Optical Character Recognition の略です。OCR によって、スキャン画像としての文字情報はテキスト情報に変換されます。

ここで問題なのは、OCR によるテキスト化は 100% 正確ではないということです。例えば以下のように、電子化する書籍によってはスキャンの精度が悪くなり、OCR 後は間違った単語としてテキスト化されてしまいます(赤色の下線部)。



reCAPTHA のアイデアは、読み取り失敗文字の修正に reCAPTHA でのユーザーからの入力情報が使われていることです。

仕組みはこうです。

テキスト情報化に失敗した文字を、スキャン時の文字の画像画像を reCAPTHA でユーザーに表示させます。そして、ユーザーは画像の文字をテキスト入力します。

つまり、文字修正をユーザーに代行してもらう仕組みです。例えば This の OCR 変換が niis と失敗している場合、ユーザーに This と正しく入力してもらうのです。

もう少し詳しく書くと、reCAPTHA では2つの異なる単語を表示させます。

  • OCR で誤認識の単語
  • 正しく読み取っている単語

ユーザーは2つの単語を入力することになります。以下の ycasho と MODULE を例にご説明します。



既に正しいとわかっている単語(MODULE)をユーザーが正しく入力すれば、もう1つの修正した単語(ycasho)もユーザーの修正入力は正しいと判定するロジックです。1つ目の入力でこのユーザーは信頼できるとし、ycasho も正しいとみなします。

reCAPTCHA の説明ページ を見ると、reCAPTCHA の認証は1日あたり2億回も行われているようです(2012年9月時点)。

認証に使う時間が1回あたり10秒としても20億秒という膨大な時間です。もしこれが書籍デジタル化の担当者が1つ1つを修正していれば相当なコストになります。

これをネットのユーザーにやってもらっているのです。reCAPTCHA を使い誤認識文字修正作業のアウトソースができています。

ユーザーへのインセンティブ設計の工夫


誤認識文字を修正する方法は、校正担当者を設けてひたすらその人に修正作業をやってもらうことです。

あるいはネットユーザーにやってもらうとしても、文字の修正作業は単純作業であり、修正してもらうのに金銭的なインセンティブを設定することになるでしょう。1回の修正で1円分のポイントを付与するなどです。

修正1回につき1円のコストでも、膨大な量の書籍をデジタル化していて、修正箇所もその分多く、校正コストがかかります。

reCAPTCHA では、サイトに新規登録しようとしているユーザーや、ブログ記事にコメントをつけようとしているユーザーに修正作業を肩代わりしてもらっています。ユーザーには直接お金を渡すことなくです。

ユーザーに何かをしてもらう際にお金ではないインセンティブ(動機付け)をうまく設計し、精度の高い情報が得られます。

reCAPTHA のユーザーのインセンティブは、そのサイトに新規登録しウェブサービスを利用することや記事にコメントを残すことです。

そのプロセスの前にある読みにくい文字の入力というハードルがあってもインセンティブがあるのでやってくれます。入力を間違えたら次に進めないので(ユーザー登録やコメントできない)、見にくい文字であっても読み取ろうとし、入力してくれます。

reCAPTHA を利用する人の大部分は、自分が書籍の電子化を手伝っているという認識はないでしょう。

認証の裏では1日2億回の文字情報のテキスト化の修正が行われているです。よく考えられている仕組みです。


※参考情報

WHAT IS reCAPTCHA|reCAPTCHA
reCAPTCHA|Wikipedia


2012/09/01

書籍 「ワーク・シフト」 まとめ:孤独と貧困から自由になる主体的な生き方




WORK SHIFT (ワークシフト) - 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図 [2025] という本をご紹介します。



本書の内容


副題の邦訳は 「孤独と貧困から自由になる働き方の未来図 [2025] 」 です。この本が読者に投げかける問いは、2025年に私たちはどんなふうに働いているのか?というものです。

今は2012年なので、10年と少し先の近未来が想定されています。2050年や22世紀になると空想の世界の要素が強くなりますが、リアルに考えられる将来設定です。

本書が興味深く、色々と自分事して考えさせられたのは、読んでいて随所に 「自分の場合はどうなるのだろう?」 と問いかけができることでした。

日頃漠然と思っていたことがあらためて問われ、過去、現在、未来ついて立ち止まって考えるには良い本です。

本書の構成は大きく3つに分かれます。

最新エントリー

多田 翼 (書いた人)