2013/01/03

Kindle Paperwhiteを買って実感した電子書籍のメリット/デメリット、依存リスク

マーケティングでは「ドリルを買いにきた顧客のニーズは、本当はドリルが欲しいのではなく、壁に穴が開けること」という有名な例えがあります。

年末にAmazonの電子書籍端末Kindle Paperwhieを買ったのですが、この例えがそのまま当てはまると実感しています。電子書籍端末を買う顧客のニーズは、端末そのものが欲しいのではなく、「より良い読書体験」をすること。

読書体験が変わったのは単に電子書籍をキンドルで読むことだけではなく、①本を入手する、②読む、③保存する/再読する、という読書フロー全体で新しい体験になったことです。キンドル購入前の予想以上でした。

■本の入手で変わったのはスピード感

Kindle版の電子書籍をいくつか入手してみた感想として、購入⇒手元に届くまでのスピード感がこれまでの紙の本と全く違うことです。

紙の場合は当日配達だとしても半日程度のタイムラグがあります。キンドル版の場合は、電子書籍の購入ボタンを押すとキンドル端末やキンドルのアプリにすぐにダウンロードされます。この買ったらその場ですぐ読めるという感覚に慣れると、紙の本を買うスピードがとても遅く感じるようになるかもしれません。

■読みやすさは電子書籍よりも紙が優位

電子書籍をキンドル端末で読むことについて、iPhoneやiPadなどの液晶画面で読むことに比べるとKindle Paperwhiteは電子ペーパーを使っているので、かなり紙に近い印象です。さすがに紙と同等とまではいかないものの読みやすさの感覚としては、紙>電子ペーパー>>>液晶画面、という感じ。

ちなみに、ここで言う「読みやすさ」というのは、文字の読む早さ×理解度。キンドル購入前もiPhoneやiPadで電子書籍をいくつか持っていましたが、液晶画面で読むということにどうも慣れませんでした。色々と考えながら読む本であるほど、「紙のほうが良い」と感じたのです。

おそらく、理解度について「紙/電子ペーパーvs液晶画面」の違いは、以前に話題になった下記で指摘されていることではと思っています。プリントアウトした方が間違いに気づきやすいワケ|A Successful Failure

記事の趣旨は、紙/電子ペーパーを読む時と液晶画面で読む時とで脳のモードが異なり、
  • 紙/電子ペーパー:脳は分析・批評モードで働く。論文や技術書、教科書などを読むには適したデバイスであると言えるかもしれない。文章の校正を行う際にも有用だろう
  • 液晶画面:脳はパタン認識・くつろぎモードに。小説や詩などの感情に訴える作品を読む場合に適している可能性がある
ただ、キンドルも読むことへの課題はあると思っていて、ページをめくるスピードは紙のほうが断然早いです。キンドルは次のページへ進む時は電子ペーパー上で文字の書き換えが発生し、この切り替えスピードがまだまだ遅いです。自分の本の読み方は、まず全体をざっと眺める感じでページをめくっていくのですが、それが電子書籍だとやりにくいんですよね。ページをめくる操作性においては紙が優位です。このへんは技術的な問題なので今後は改善していくと思いますが。

■本の保存性はデジタルに軍配

本の保存性については、電子書籍の得意領域です。保存は、本に書かれている内容で気になった部分のメモ(ハイライト)だったり、メモ部分を後からすぐに確認できる検索性、デジタルなので物理的な保管スペースが不要である、など。

音楽鑑賞の世界では、ソニーのウォークマンが「音楽を外に持ち歩いて聴ける」という価値を提供し、アップルのiPodが「ポケットに1,000曲を入れられる」という価値をもたらしました。キンドルなどの電子書籍端末もそれと同じインパクトをユーザーが実感するようになるはず。入手した電子書籍コンテンツの数が増えるほど、メリットを感じるようになるのではないでしょうか。

■コンテンツがつながる心地よさ

①本を入手する、②読む、③保存する/再読する、の読書フロー全体で共通するキンドルの良さは、電子書籍の同期性にあります。Kindle版の電子書籍コンテンツは、キンドルというアマゾンの専用デバイスだけではなく、iPhoneなどのiOS向けやAndroid用のキンドルアプリでも読むことができます。同期性というのは、Kindle版電子書籍をダウンロードするとデバイス/アプリのどの環境でも読めて、読んだ途中の箇所もデバイス-アプリ間で同期されることです。

特に読んだ場所が同期するのが便利で、例えば出かける前は家でKindleで98ページまで読み、電車の中ではiPhoneで続きの98ページから180ページまで読む、帰宅後に残りを読み終える、みたいなイメージです。読むデバイスが変わる度に「さっきはどこまで読んだっけ?」と思い出して該当ページを探す必要がなく、異なるデバイスであたかも一冊の本のようにつながっている環境です。

■Amazonのビジネスモデル

以下の図は書籍「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件」に出てくるアマゾンのビジネスモデルです。この図はアマゾンのジェフ・ベゾスCEOがアマゾンを始める当初から思い描いていたものだそうです。

注目したいのは、トラフィックの増大や低コスト構造などのアクションが全て「顧客の経験」に結びついていることです。つまり、アマゾンのベースなっている考え方はユーザー体験を重視するもの。

電子書籍で言うユーザー体験とは、快適な読書環境の提案/提供でしょう。アマゾンが電子書籍ビジネスでやったことは、キンドルの端末価格を安くし、今後はKindle版の書籍を増やし、キンドルからも本を買えるという使い勝手の良さ、などなど。あくまで顧客の読書体験のためで、これらの施策は一貫しています。

■プラットフォームに依存する利便性とリスク

Kindleという電子書籍デバイスを買ったことで、気づけば読書の多くの部分をアマゾンに依存することになりました。これまでは本を買う/届くの部分だけで、届いた後はアマゾンでも書店も買ったものは全て同じ「紙の本」。

それが、Kindle版の電子書籍を買うと本というコンテンツ自体もアマゾンの領域に入り依存することになります。①本を入手する、②読む、③保存する/再読する、の読書フロー全体でアマゾンに一元化される。全てが一本につながる利便性がある一方で、リスクもあるように思います。

電子書籍を購入してダウンロードした実感として、本を買ったというよりも「読める権利」を取得した感覚があります。お金を払った対価としてアマゾンから閲覧権限をもらうイメージ。ということは、アマゾンからIDが消えてしまったり、万が一アマゾン自体がビジネスをやめるようなことがあると、入手したコンテンツはどうなるのか、と。アマゾンに依存するリスクです。

この問題はプラットフォームプレイヤーの力が大きくなるほど出てくるもので、アマゾンに限らずGoogleやFacebookも同様です。預けているユーザーデータや利用サービスが多いほど、何かあった時のリスクも大きくなることに。

結局、「利便性>リスク」と判断してアマゾンなりグーグルを使っていくことになりますが、いずれは問題として顕在化するような気もします。


※参考情報
プリントアウトした方が間違いに気づきやすいワケ|A Successful Failure
ドリルを売ろうとしたSonyと、穴を開けるサポートをしたAmazon|思考の整理日記



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