2013/07/07

2013年上期に読んでおもしろかった本(後編)

前回の続きです。

2013年上期に読んだ本の中で、おもしろかったものをご紹介。このエントリーは後編で、3冊を取り上げています。

前編はこちら

■勝負哲学

岡田武史×羽生善治の対談。この組み合わせを見ただけで思わず手にとった本が「勝負哲学」でした。

サッカーと将棋。それぞれの戦いで培った、勝負勘の研ぎ澄ませ方、勝負どころでの集中力の高め方、そしてメンタルの鍛え方、などなど。厳しい勝負の世界に生きる2人が自分の哲学をおもいっきりぶつけ合った対談。久々に読んでいて考えさせられることが多い対談本でした。

いくつかのテーマの中で最も印象に残っているのは、羽生さんのリスクテイクの考え方でした。簡単に言うと、
  • リスクとの上手なつきあい方は勝負にとって非常に大切な要素。だから「いかに適切なリスクを取るか」を考えるようにしている
  • 将棋で少しずつ力が後退していくことがあり、後退要因として最も大きいのが「リスクをとらない」こと。リスクテイクをためらったり怖がると、ちょっとずつだが確実に弱くなっていってしまう
  • 勝つためにリスクを取らず安全地帯にとどまっていると、周囲の変化に取り残される、進歩についていけなくなる。結果、自分の力が弱くなっていく。それを避けるために積極的なリスクテイクが必要。だから必要なリスクは果敢に取りにいくことを心がけている
羽生さんが、「いかに適切なリスクをとるか」「リスクとの上手なつきあい方は勝負にとってきわめて大切なファクター」「リスクテイクを避けると周囲の変化に取り残され自分が弱くなっていく」と言っているはあらためて考えさせられます。得られた示唆は2つだと思っていて、
  • 「リスクとはやみくもに避けるべき対象ではない。正しく付き合うことが大事」という認識に変える
  • いかに「適切なリスク」を取っていくか

この本では、良い対談の特徴である、お互いの発言を受けて会話がどんどん発展・深まっていきます。岡田さんのサッカーの説明を将棋の世界に当てはめる羽生さん、それを受けて話を進化させる岡田さん、といった感じ。

将棋とサッカーの世界は異なりますが、棋士である羽生さんは将棋盤上の駒を、サッカー監督である岡田さんはフィールド上で選手のパフォーマンスを、いかに最大化するかの勝負という共通点もあるので、対談にはちょうど良い2人のバランス感でした。

書評エントリーはこちら:羽生善治の勝負哲学から考える「自分を強くするリスクの取り方」|思考の整理日記




■2100年の科学ライフ

「2100年の科学ライフ」。今のところ自分の中で、2013年ベスト1です。

コンピュータ、人工知能、医療、ナノテクノロジー、エネルギー、宇宙旅行、それぞれについての未来予測。未来という時間軸を、近未来(現在〜2030年)、世紀の半ば(2030年〜2070年)、遠い未来 (2070年〜2100年)の3つ段階に分け、現在からどのように発展し、人々の日常生活をどう変えるのかが描かれています。

2100年の世界では、コンピュータ、人工知能、医療、ナノテクノロジー、エネルギー、宇宙旅行がどのようになっているのか。簡単にご紹介しておくと、
  • コンピュータ:自分の思考だけで物を動かせるようになり、思うだけで直接コンピューターを制御できるようになっている
  • 人工知能:意識や感情までもを持つようになる
  • 医療:臓器や細胞の修復、遺伝子治療により老化を遅らせることで、寿命が延ばせる。若さを保てるようになるだけではなく、老化を逆戻りさせることができるようになる
  • ナノテクノロジー:どんなものでもつくれるレプリケーター(複製装置)ができる。自己を複製し、自らのコピーをつくることができる。究極的にはいらなくなったモノをほしいモノに変えられる
  • エネルギー:電気ではなく磁気の時代になっている(例:リニアモーターカーのような磁気自動車。人間までも磁力で地面から少し浮き移動できるようになる)。エネルギー源で有力なのは宇宙のエネルギーを使うこと(宇宙太陽光発電)
  • 宇宙旅行:宇宙エレベーターが実現する。ナノテクノロジーの進化に伴い、宇宙ステーションや月にはロケットではなく地球から直接つながるエレベーターで行く

未来予測だったりSF系の本は数多くありますが、本書の特徴は予測の裏付け/根拠が科学的である点です。①新発見の最前線にいるトップクラスの科学者300人以上へのインタビューにもとづいている、②科学的発展の内容はどれもこれまで知られている物理法則と矛盾しない、③本書で触れたすべてのテクノロジーのプロトタイプはすでに存在する。

2100年までの予測が単に未来の空想ではなく、根拠があることで「仮説」として考えられているんですよね。読んでいて未来について想像できるだけでなく、現在の科学の最先端のことにも触れられる。このあたりが本書の特徴でもあり、一気に読めました。

書評エントリーはこちら:書評「2100年の科学ライフ」|思考の整理日記




■シニアシフトの衝撃

「シニアシフトの衝撃」。この本がおもしろかったのは、シニアビジネスの現状や今後を紹介するだけではなく、具体的にどういう市場に目を向ければよいかの着眼点と、どんなビジネスモデルに可能性があるかまで、結構踏み込んで書かれている点でした。

本書で印象深かった言葉が「飽和しているのは市場ではなく、私たちの頭の中である」。提供者側に固定観念があって市場が飽和していると決めつけてしまい、新たなニーズに対応できていない状況です。

シニアビジネスの観点で言うと、30・40代から見ると何でもないことも、高齢者にとっては不安・不満・不便を感じているケースがいくつか書かれています。例えば、
  • 老眼の進行:店頭での値札・商品説明・POP等の文字が小さく、老眼になった高齢者には読みづらい
  • 脚力の衰え:年齢とともに筋力が落ちるので、フロアのちょっとした段差に足をつまずきやすい。エスカレーターのスピードが年配者には早すぎる
  • 聴力低下:年齢を重ねると聴力が低下する。売り場での商品説明が聞き取りにくい
  • 頻尿:高齢者には頻尿症状が多い。買いものの途中でトイレに行きたくなっても、近くにない。またはトイレへの案内がわかりにくい
  • 認知機能の低下:年を取ると一般には記憶力や認知力が低下する。商品の説明において色々と効果を羅列すると印象が残らない

日本はすでに少子高齢化が現実となり、総人口が減っていく時代になっています。少子高齢化は今後、世界でも起こっていくことがわかっています。見方を変えれば、日本は今後の世界共通課題にいち早く取り組んでいるという状況です。日本は課題先進国であり、望ましいのは課題を持っているだけではなく、積極的に取り組み解決もしているという課題解決先行国。

シニアビジネスについてよくまとまっている本です。単にシニア向け市場が有望という表面的な話ではなく、シニアシフトの現状がどういう構造になっているか、具体的なシニア層の不(不安・不満・不便)、有望な市場、ビジネスモデルや商品/サービスの事例、今後のシニアビジネスの可能性まで。

書評エントリーはこちら:シニアシフトの衝撃:有望な市場とビジネスモデルを考える着眼点|思考の整理日記




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