2013/02/24

若々しい脳を取り戻す「プロジェクトマネジメント思考」のススメ

「脳が冴える15の習慣」という本の帯には次のように書かれています。

「ぼんやり頭をスッキリ晴らす!仕事ができる脳、若々しい脳を取り戻す生活改善マニュアル」

この本は集中力・思考力・記憶力を高めるために、日常生活でちょっとした意識を変えることを提案してくれる内容です。

15の習慣とあり、どれも肩に力の入っていないのが特徴です。例えば、まずは生活のリズムを整える、朝はいつも一定の時間に起きる、などの生活の原点をつくる生活改善です。

■ プロジェクトマネジメントで大切にしていること

本書のあとがきに、印象的だった言葉があります。

2013/02/23

良い文章を書くために心がけたい「自分視点」と「相手視点」の両立

ここ最近続けて読んだ本が「エッセイ脳―800字から始まる文章読本」「レポートの組み立て方」でした。

それぞれ、エッセイとレポートをどう書けばよいかについて書かれた本です。文章そのものをどう書けばよいかのヒントがたくさんあり、エッセーやレポート以外にも応用ができる示唆に富む2冊でした。

「レポートの組み立て方」は書かれたのが1990年です。20年以上経った今でも通用する内容で、考え方や文章の工夫の仕方など、得るものも多かったです。

■「エッセイ脳」の主題

「エッセイ脳」で最も印象に残った内容が、著者の考えるエッセイの基本要件でした。

  • 「自分の書きたいこと」を、
  • 「他者が読みたくなるように」書く

当たり前のような内容ですが、あらためて考えさせられる内容でした。実際に2つを成立させるのは簡単ではありません。特に後者、読み手が読みたくなる内容を書くことです。

著者によれば、他者が読みたくなるような文章は分解ができると書かれています。

  • 読みやすい文章
  • 興味持てる内容(題材)

■「レポートの組み立て方」の主題

もう1冊の「レポートの組み立て方」。著者が示す良いレポート(文章)とは、

  • 事実と意見が区別されている。事実が客観的に書かれ、意見は根拠(事実)に基づいている
  • 主題という最も言いたいことが明確である
  • 読み手にとってわかりやすく書かれている

1つ目の事実と意見の区別は、本書では何回も出てきます。

レポートにおいては、事実部分が主体であり事実だけで完結してもいい場合もあると著者は言います。事実という土台があり、その上に事実に基づく意見が乗っていること、事実と意見は区別されていること、これらがレポートに求められる基本要件です。

■ 読み手の立場で書くコツ

エッセイ脳とレポートの組み立て方の2冊で共通しているのは、「読み手の立場で書くこと」です。

文章は読まれることが前提で(自分だけの日記など書いて終わりのものは除く)、読む人は自分ではない他者です。読み手にとってわかりやすい文章・相手が読みたくなる文章が書けるかが、良い文章に必要不可欠な要素です。

読み手の立場で文章を書くのは、メールとか企画書などあらゆる文章に当てはまります。

では、どうすれば読み手の視点で書けるのでしょうか。「レポートの組み立て方」にはヒントが書かれていました。

  • 読み手は誰かを考える
  • 読み手の予備知識はどれくらいか
  • 読み手の読む目的・何を期待して読むのか。最も知りたいことが書かれているか

1つ1つを明らかにしていき、読み手が読みたくなる文章に近づきます。

もちろん自分と読み手は別人であり、あくまで読み手視点に立とうとしたものなので、抜け/漏れなど見落とした視点はあるでしょう。それでも相手視点で考えて書かれた文章とそうでないものは、内容の質に違いがあります。

この3点は文章以外にもプレゼンとか、上司への相談・報告にも当てはまります。

読み手を聴き手(オーディエンス)とすればプレゼンだし、上司と置き換えればホウレンソウにも使えます。もっと言うとコミュニケーション全般に適応できる普遍的なポイントです。本書ではレポートの書き方としての指南ですが、応用範囲は広いです。

■ 良い文章構造を「木」で考えてみる

今回の2冊を読みながら思ったのは、文章構造は木に例えることができるということでした。

文章の要素として必要なのは、主題、事実、論点、意見の4つです。それぞれ木に当てはめると、

  • 幹:主題(キーメッセージ)。自分が一番伝えたい&読み手が最も知りたいこと
  • 根:事実・意見の根拠
  • 枝:論点(問い)
  • 葉:意見・自分の考え

幹という主題が中心に太くあり、事実が根っこで支え土台になっています。

主題から各論点が構成され、問いに対する自分の意見・考えの葉っぱがたくさん生えています。新しい意見やアイデアは若葉としてどんどん生まれてきます。4つの構成要素がうまくからみ合って木は成長していくイメージです。

★  ★  ★

「エッセイ脳」で書かれていたエッセイの基本要件は「自分の書きたいこと」を「他者が読みたくなるように」書くことでした。自分視点と相手視点の両立です。

自分の書きたいことは、木で例えた4つの構成要素(主題・事実・論点・意見)で整理してみましょう。他者が読みたくなるように相手視点で文章を考えるために、読み手の立場になるポイントは3つです。

  • 読み手は誰か
  • 読み手の予備知識は
  • 読み手の読む目的・期待は。最も知りたいことが書かれているか

仕事での日々のメール、報告書や企画書、プロジェクトメンバーやクライアントとのホウレンソウ、そしてこうして書いているブログも、いろんなところで応用できることが「エッセイ脳―800字から始まる文章読本」「レポートの組み立て方」には書かれていました。


エッセイ脳―800字から始まる文章読本
岸本 葉子
中央公論新社
売り上げランキング: 140,396


レポートの組み立て方 (ちくま学芸文庫)
木下 是雄
筑摩書房
売り上げランキング: 4,113


2013/02/22

「経験値を積む」と「レベルアップ」は別もので考える

子どもの頃にハマったのがロールプレイングゲーム(RPG)でした。

ドラクエやファイナルファンタジーの定番シリーズくらいですが、考えながらストーリーを進めていくのが好きでした。アクションとか格闘ゲームとはまた違ったおもしろさがRPGにはあったんですよね。

RPGで欠かせないのがレベル上げでした。ゲームも終盤になると、ストーリーを進めるよりもレベルアップにかける時間のほうが長くなっていたように思います。いわゆる敵を倒しての経験値稼ぎです。同じような敵に似たような戦闘シーン。

今思うと完全な単純作業でよく飽きもせずにやってたなと。当時よく思っていたのが、お金払うからレベルアップさせてほしい、ということでした。もしくはロボットが代わりにレベル上げをしてくれるとか。単純な経験値稼ぎだけの時間がもったいないなと思っていました。

ゲームの世界のレベル上げは、敵を倒す⇒経験値を獲得⇒経験値が蓄積するとレベルアップ、という仕組みです。これを繰り返すことでキャラクターは能力が上がっていきます。

現実の世界でもこの流れは基本的には同じだと思っています。新しいことを経験する⇒成長する(レベルアップ)。ただし、重要なのは「⇒」の部分。何かを経験したからといって単純に成長できるかというと、実はそこには結構大事なことがあるよね、というのが今回のエントリー内容です。

■経験を積むこととレベルアップは別もの

仕事を通じてまわり(特に自分より下のメンバー)を見ていると、同じくらいの経験をしてもその後の成長に違いがあることに気づきます。何が異なるかと言うと、経験を次に活かしているかどうか。もう少し掘り下げると、経験を応用し横展開しているかどうかにあります。

経験値を積むというのは、自分の行動・情報・得られた結果・失敗等々から学ぶということです。意識的に経験することもあれば、無意識で蓄積されていくこともあるでしょう。これらの経験したことはどれも具体的な事例です。経験値を積むとは体験という具体例を自分の中に蓄積していくこと。

ゲームの世界では、経験値を獲得⇒レベルアップのように表面上は見えますが、実際の私たちの世界では少し違うと思います。レベルアップをするためには具体例の蓄積だけでは不十分なのです。

レベルアップとは、蓄積した具体例を抽象化すること、経験したことを一般化することだと思っています。表面的ではなく本質理解ができるか。

経験を積むこととレベルアップは単純に延長線上でつながっているのではなく、間に壁があって、抽象化することで初めて乗り越えられるイメージです。具体⇒抽象化して初めて次に活かすことができるのです。

レベルアップも2つ段階があると思っていて、
  1. 経験した具体的なことを抽象化できた時
  2. 抽象化したことを他のケースで活かせた時(応用/横展開)
「経験値を積むこと」と「レベルアップ」は別ものとして捉え、経験したことを意識的にレベルアップにつなげるようにしたいと思っています。

■レベルアップの仕方

例えば、失敗について考えてみます。失敗は誰にでもいつでも起こりえるものです。もちろん、失敗のないような工夫・対策は必要ですが、それでも失敗はゼロにはできません。もっと言うと、失敗がないのはチャレンジをしていない状態です。

失敗をすると、それだけでも色々と学べます。失敗のリカバリー中はそれどころではないのですが、経験値としては貯まる。失敗をして分かれ道になるのが、失敗からの教訓を得られているかどうか(原因究明・今後の対策)、そして、失敗から学んだことを次や他の事例で活かせるかどうか。

ここに失敗からのレベルアップがあると思っていて、失敗という1つの具体的な経験から、教訓として抽象化できるか(レベルアップ①)、教訓を他に応用できるか(レベルアップ②)。

では、どうすれば経験した具体を抽象化できるか。失敗を例に考えると、まずは事実・原因究明です。何が起こったのかとそこからWhy?を繰り返していく。Whyを考え続けることで事象の本質を突き詰めていきます。

次にやることは教訓は何かを考えることです。So what?と問い、起こった事象と原因について要するにどういうことかを考える。So whatを繰り返すことで1つずつ抽象化していくイメージです。

同時にやりたいのが、横展開の意識を持ち他に応用できないかを考えること。何が汎用性があり、何が特殊なのかの見極め。上記のレベルアップ①をやりつつ②の用意も準備しておくのです。

■成長が早い人

先ほど、同じくらいの経験をしてもその後の成長に違いがあると書きました。レベルアップのスピードの違いは、具体⇒抽象化⇒応用(横展開)の早さにあるように思います。

成長が早い人は少ない具体的経験からの学びや示唆を抽象化できている。そして一般化できた教訓をすぐに他の状況で応用できているんですよね。サイクルをまわすのが早い。本人は意識的にそうしているのか、無意識にできているのかはわかりませんが、意識的にやっている人が努力家タイプで、無意識でやれてしまう人が天才タイプ。

まれにいるのが、別々の経験から得られた学び(抽象)を組み合わせて、横展開できる人です。見ていてすごいなと思うし、とても刺激になります。半分くらいは自分もうかうかしていられないという危機感にもつながるんですよね。

★  ★  ★

最後に今回のエントリーで言いたかったことを整理しておきます。
  • 「経験値を積むこと」と「レベルアップ」は別もので考える。レベルアップは2段階あり、①経験からの具体を抽象化する、②抽象化したことを応用・横展開する
  • レベルアップの方法は、具体的な経験からWhy?とSo what?を繰り返し抽象化する。何が普遍的か特殊は何かを見極め、他にも応用できないかの横展開を意識しておくと良い
  • 成長が早い人は「具体⇒抽象化⇒応用」サイクルの早い。本当にすごい人は異なる具体からの抽象を組み合わせて応用できている


2013/02/17

習慣にするための仕組み化の3つのコツ。あらためて考える習慣と人生

昨日のエントリーではイチローが語った努力について書きました。

イチローが目指すのは、習慣化され本人にとっては努力している認識はないが、まわり(第三者)から見るとそれは努力に見える状態です。努力を続けることで習慣になるかどうか、習慣化できるくらいになって初めて「努力」と言えるという考え方です。

イチローが目指す努力から考える「努力と習慣化」|思考の整理日記

今回のエントリーでは、あらためて習慣について考えてみます。

■ 仕組みから習慣化の例

何かを始める → 続ける → 習慣になる、このプロセスは案外と難しいものです。始めるという行動を起こすのもそうですが、何よりも一定期間続けるのってそんなに簡単ではありません。

何かを始めて習慣にできるのに大事なのが「仕組み化」です。

仕組みをつくって、続けるための環境をいかに手に入れるか。前述のフローで言うと、何かを始める → 仕組み化 → 続けられる → 習慣に、と2番目に「仕組み化」が入ります。

自分のことで考えてみると、うまく仕組み化できて習慣になったものがあるので具体例として2つご紹介します。

1つ目が朝起きてすぐの英語です。勉強と言えるほどではないと思っていますが、朝起きてまずやっているのが英語のリーディングとリスニングです。リーディングはKindleの英語の本を毎朝5-10分くらい読んでいます。これが朝一の最初のタスクです。

Podcast でも英語を聞いています。ここ最近使っているのは、Wall Street Journal Tech News Briefing という3-5分くらいのコンテンツです。Apple、Facebook、Google などの IT 系を中心に扱うニュース番組で、ガジェット系に興味のある方にはおすすめのボッドキャストです。

アメリカ時間の日曜以外は毎日2回配信されるので量としてもちょうどいいです。これを2倍速で聞いています。2倍での再生を聴き取り理解するためには集中力がいるし(脳の活性化にもなります)、時間にして半分の2分前後で済むというのもメリットです。

朝一番で英語をやることが習慣化すると、起きること自体も自然とできるようになりました。朝は平日も休日も4時くらいに起きますが、3時台に起きて4:00になる前に英語を始められるかというゲーム感覚で取り組んでいます。英語の後は読書だったり時には仕事もしたりと、出社前の時間を有効に使えています。

2つ目の習慣化が帰宅後すぐに筋トレとストレッチをやることです。

基本的な流れとしては、帰宅 → 筋トレとストレッチ → 晩御飯、で家に帰って着替えたらその場ですぐに筋トレに入ることです。

休日で外出しない時でも夕ごはんの前に筋トレをするようにしています。外食や飲んだ日でも帰ったらまず筋トレをし、仕事でどれだけ疲れていても終電で帰っても帰宅 → 筋トレ & ストレッチをやると決めています。

■ 仕組み → 習慣化のポイント

英語と筋トレ/ストレッチの2つから、仕組み化 → 習慣にするポイントを考えてみます。仕組み化にするためのコツは3つです。

  • 続けることを優先する:やる内容をちょっと物足りないくらいのレベルにして、あえてハードルを低く設定します。例えば英語の例だと、キンドルで読むのは10分以内(時には5分以内の時もある)と決めています。読み始めるともっと読めるのですが、最初から毎日15分英語を読むと設定するとハードルとしては高くなってしまいます。「やろう」という意思の力を借りなくても、パッとできる分量にあえてしておくと良いです。意志の力に頼ってしまう仕組みは、継続を考えると難易度が上がってしまいます。
  • 枠を決めてしまう:この時間にやる、これをやる前にする、と枠をあらかじめ決めてしまい、いつも同じタイミングで行なうのも仕組み化として有効です。生活の中でルーチン化をしてしまう。英語は朝起きてまずやる ToDo に、筋トレ・ストレッチは帰宅後(or食事前)と、一連の流れで固定する。別の言い方をするとあえてボトルネックにするのです。英語をやらないと次のやりたいこと(読書とか)に進めない、筋トレとストレッチをしないと晩御飯が食べられないといった感じで。家に帰ってすぐに筋トレができるのも、「筋トレが終わればご飯が食べられる」という自分へのご褒美の役割も果たしています。
  • 仕組みのメンテナンス:仕組み化ができても定期的に内容は見直したほうがいいです。常にもっと良い方法はないかを考えておく。私の英語の例で言うと、キンドルを買う以前は英文は RSS とか Twitter 経由でニュースとかブログの英語記事を読んでいました。キンドルで英語の本を読むことに変えたのは、RSS とかだと読む記事を選ぶ必要があったから。読む記事を選ぶ時間とそこに選択という判断が入り、仕組みとして不完全だったんですよね。続けるためにもっとよい仕組みにできないかを考えるのも大切だと思います。

■ 習慣とは文化であり人生

仕組み化をし継続できるようになると、やがて日常生活の一部になっていきます。仕組み化 → 習慣になる。やることを思い出したり、やらなければという意思も必要なくなります。むしろやらないと気持ち悪いくらいに思えます。

今回のエントリーを書いていてあらためて思ったのは、習慣って「その人の文化」だということ。

文化とは、長い時間をかけて積み重なってできるものです。日本の文化を考えてみても、そこには昔から日本社会で行われていること、日本人が続けてきた行為・考え方が1つの形になった。継続されたからこそ文化という形に昇華しました。

もう1つ文化について思うのは、文化は相対化・客観化されて初めて文化だと気づくという点です。

よくあるのが、外国人に日本のことを説明したり、海外旅行へ行って初めて日本の良さを知る、日本と外国の違いに気づくことで、自分には当たり前のことが文化として認識できます。

習慣もこれと同じで、習慣化されていることは本人にとっては当たり前の行動です。日常の1つで生活の中で自然とやっていることです。今回のエントリーでも普段の自分がやっている英語と筋トレをあえて見つめ直すことで、これは習慣だと思いました。

習慣についてもう1つ思うのは、習慣はその人の人生につながっているということでし。

習慣が人生の全てとまではいきませんが、間違いなくその人の人生に影響を与えています。私の価値観として「人生はこれまでの『今』の積み重ね」と捉えていて、習慣も行動や考え方の日々の積み重ねでできていると思います。だから良い習慣というのは、良い人生を送るために大切なことです。

最後に、好きな言葉を載せておきます。

夢があれば、意識が変わる。
意識が変われば、気持ちが変わる。
気持ちが変われば、行動が変わる。
行動が変われば、習慣が変わる。
習慣が変われば、未来が変わる。
未来が変われば、運命が変わる。



※参考情報

イチローが目指す努力から考える「努力と習慣化」|思考の整理日記
Wall Street Journal Tech News Briefing|iTunesプレビュー


2013/02/16

イチローが目指す努力から考える「努力と習慣化」

努力は大事。これは誰もがそう思う、共通の認識だと思います。一方でどういう努力がよいのか?についての努力の中身や仕方の捉え方は、人によって考え方が違うのかもしれません。

あらためてそう思ったのは、イチローがインタビュー記事で以下のように語っていたからです。

努力をすれば報われると本人が思っているとしたら残念だ。それは自分以外の第三者が思うこと。もっと言うなら本人が努力だと認識しているような努力ではなく、第三者が見ていると努力に見えるが本人にとっては全くそうでない、という状態になくてはならないのではないか。(引用:イチロー、40歳にして惑わず ヤンキースでの決意|日本経済新聞(13/2/13)

2013/02/11

TEDでのジェームス・キャメロンから学んだ3つのこと

映画タイタニックやアバターの映画監督を務めたのはジェームス・キャメロンでした。

彼の TED でのプレゼンが色々と考えさせられるものでしたのでご紹介します。TEDの動画はこちらです。


ジェームス・キャメロン: 「アバター」を生み出した好奇心|TED


■ ジェームズ・キャメロンが語る TED でのプレゼンストーリー

TED の内容は、ジェームス・キャメロンが子供の頃に感じた SF やダイビングの魅力が、いかに彼を映画「エイリアン」「ターミネーター」「タイタニック」「アバター」の成功に導いたかでした。

ジェームス・キャメロンは子供の頃から好奇心が人一倍強かったそうです。プレゼンでは自分は SF で育った話から語り始めます。SF の本に没頭する毎日でした。

SF 以外にも、学校が休みの時は森へハイキングに行き、様々な昆虫の標本集める日々だったようです。これらは全て世界を理解したい、可能性の限界を知りたいがためだったとのことです。

15歳の時にダイバーになりたいと思ったそうです。大人になってから選んだ職業は映画監督でした。物語を伝えたいという衝動と映像を生み出したいという欲求をうまく調和できると思ったからです。

ダイバーとしての活動も続けています。40年間でおよそ3,000時間を水中で過ごし、そのうち500時間は潜水艇だと言います。

映画監督としてのジェームス・キャメロンにとって、映画「アビス」はその後の転機になる監督作品でした。コンピュータによる CG を使った映画業界初の挑戦でした。世界中の観客が魅了されこのチャレンジは成功したと言います。

その後、90年代半ば頃だそうですが、CG を使った作品「アバター」を構想しています。しかし、この作品はまだしばらくは無理だとスタッフに受け入れられずお蔵入りになりました。

その次に取り組んだ作品がタイタニックでした。



おもしろかったのは、タイタニックをつくるモチベーションが海底に沈む実際のタイタニック号を潜ってこの目で見るためだったことでした。

会社にはこんな説得をしたそうです。「本物のタイタニックを撮影しましょう」「それを映画のオープニングで使うんです」「もの凄い宣伝効果がありますよ」。実際に映画タイタニックの冒頭は、沈んでいるタイタニックの映像から始まっています。

海に潜り沈んでいる実際のタイタニックを見たこと、海底での体験をまるで SF 映画の中にいるみたいだったと言います。その後、ジェームス・キャメロンが深海探査の虜になりました。

その奇妙さと科学的な側面に魅了されたと説明します。全てが揃っていて、冒険であり好奇心を満たしてくれ、想像力を掻き立てられる。それはハリウッドでも得られない体験だったと。

以降、映画監督を一時休業し、ジェームス・キャメロンは本格的に海底探査に取り組みました。深海世界や取り組みからは多くを得られたと言います。潜水ロボットを通じて見た神秘的な世界は、自分がアバターに乗り深海の臨場感を体験したように映ったこと、数々の不思議な生き物たちとの出会いでした。

深海探索チームでの取り組みから学んだことがリーダーシップだったと言います。

それまでの映画監督はリーダーという立場だったにもかかわらず、リーダーシップを理解していなかったとのことです。チームで取り組む探索活動において最も重要だったのがお互いに対する敬意、尊敬の絆でした。

その後にジェームス・キャメロンは映画監督の世界に戻り、以前に構想していた「アバター」に取り組みます。深海探索から得られたリーダーシップは大いに役立ったと述べています。

TED のプレゼンの最後で、ジェームス・キャメロンは3つのメッセージを伝えます。

  • 好奇心の持つ力。想像力には現実をつくりだす力がある
  • チームでのお互いの尊敬は世界中のどんな栄誉よりも重要である
  • 自分で自分の限界をつくるな。それは周りがやる事だ。自分で勝手にできないと思うな。そして、進んでリスクを取れ

■ ジェームス・キャメロンからの学び

TED を見て3つのことを思いました。

1. リーダーシップ

お互いに尊敬の気持ちを持っているかです。この言葉がジェームス・キャメロンから発せられた時に、以前の上司にこんなことを言われたことを思い出しました。

「どんなに激しい議論になって、時に相手の意見や考え方に反対でも、相手のことをリスペクトする気持ちは決して忘れてはいけない」。

相手のことを認める大切さを教えられました。考え方や価値観が自分と違って受け入れられなくとも、相手の存在自体は否定せず敬意を示すことです。この捉え方はリーダーシップにも活かせるというジェームス・キャメロンのメッセージに共感しました。

2. 点と線のつながり

ジェームス・キャメロンは子ども時代に SF 世界に夢中でした。強い好奇心で起こした行動と得られた経験の多くが映画監督に役立っています。当時は一見すると関係のないことのないような1つ1つの「点」も、後から振り返ってみると不思議と「線」となってつながっているのです。

私自身のこれまででも、過去の経験で無関係なことはなく、どこかでその時の経験が生きていたりします。人生において無駄なことは1つもなく、どれも自分の中で蓄積されてどこかで活きています。

3. 挑戦と失敗

TED での講演の最後にジェームス・キャメロンは次のように言っています。

And no important endeavor that required innovation was done without risk. You have to be willing to take those risks. So, that's the thought I would leave you with, is that in whatever you're doing, failure is an option, but fear is not.

革新的な試みは全てリスクを承知で実行されてきたのです。このリスクは自ら引き受けるべきです。最後に申し上げたいのは、何をするにしても失敗は選択肢であり、選択肢にないのは「恐れ」なんです。

故・岡本太郎は著書 自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか で次のように書いています。

挑戦した上での不成功者と、挑戦を避けたままの不成功者とではまったく天地のへだたりがある。挑戦した不成功者には、再挑戦者としての新しい輝きが約束されるだろうが、挑戦を避けたままでオリてしまったやつには新しい人生などはない。

挑戦には失敗はつきものであり、失敗を恐れてはいけません。リスクを取ることの大切さです。

様々なしがらみを全部取って、本当の自分の気持ちと向き合った後、それでも自分自身を裏切り「やらなかった後悔」はその後もずっと残るものです。




2013/02/10

書籍「究極の身体」がおもしろい

学生の時にハマっていたのがカポエイラでした。ブラジルで生まれた、格闘技とダンスの両方の要素を持ってるカポエィラ。こんな感じという動画があるので、興味のある方はぜひ。


Best Capoeira Brazil (Extended Version)|YouTube

カポエイラがきっかけで考えるようになったのが、身体の構造だったり動かし方。始めはどうすればうまくなるのかを考えていたのが、次第に身体構造そのものに関心が移っていきました。で、当時の結論として身体をいかにうまく動かすか/コントロールするかのポイントは、①肩甲骨と股関節を柔らかくし可動域を高めること、②自分の身体の「重心」と「軸」を意識すること。これは今も変わらずの考え方で、あらゆるスポーツや身体運動に共通するものと思っています。

学生時代は今よりも時間もあったこともあり、身体動作系の本はそれなりに読んだりもしていました。得た知識は大学の研究になんら関係はありませんでしたが、純粋に趣味というか好奇心が満たされる感じで楽しかった思い出です。

■人間の身体が持つ「魚類構造」と「四足動物構造」

最近、ふとまた身体系の本が読みたくなり手に取ったのが「究極の身体」。なかなかおもしろかったです。身体構造や運動のメカニズムについて独自理論が展開され、わかりやすく書かれていました。新しい発見もいくつかあり好奇心が刺激される内容だったんですよね。

まずは本のタイトルでもある「究極の身体」の定義について。本書では、「人体の中で眠っている四足動物、あるいは魚類の構造までをも見事に利用しきることで生まれる身体」としています。

2013/02/09

「自分のやりたいこと」を考えるための2つの逆転の発想

前回のエントリーで「翼を持たずに生まれてきたのなら、翼を生やすためにどんな障害も乗り越えなさい」という言葉(もとはココ・シャネルの言葉)をご紹介しました。

この言葉の意味は、たとえ今は持っていなくても、それを望む強い気持ちがあればどんなハードルも越えていくことができる、というものです。

TEDxTokyo yz 3.0 ~de-mosaic-ing~:自分にとって忘れられない翼の話

大事なのは翼を生やして何をしたいのかです。翼はあくまで大空を羽ばたくための手段です。翼を手に入れ、どこへ飛ぶのか、どんなふうに飛びたいのか、自分は何をしたいのかが大切です。

■「やりたいことは変わるもの」という発想

最近の自分の考え方の変化として、自分のやりたいことは変わってもいいのでは、があります。むしろ、やりたいことは必ず変わるものです。

今まで持っていた考え方は、やりたいこととは何か一生をかけて実現したいというものでした。自分の進む道としてこれがベストだというやりたいことが見つかり、その道を生涯歩いていくちう考え方です。

しかし、何才になっても模索し続けるものでは考え方が変わりました。常にベストの選択をしようとするが、様々な経験をすると他の道も考えるようになります。

もちろん、やりたいことが変わると言っても、1つのことにすぐに飽きてしまって次々に変えるのではありません。1つのことをやり遂げて、次の新しい世界が開けるというのが望ましいでしょう。

試行錯誤を続けて歩いているとようやくゴールが見えだしてきたと思ったら、目の前には違う別の扉が現れるようにです。扉を開けて新しい世界に入りしばらく進むとまた次の扉が現れます。

人は変わり続けるものです。これは生きている限りは常に起こることです。肉体的な変化もあり、価値観や考え方も変わります。

■「より困難な道をあえて選ぶ」という考え方

目の前の2つ選択肢があるとして、2つから1つを決断することは、自分のこれまでを考えると悩ましいことも少なからずありました。

3つ以上の選択肢があると最も違うものを消去法的に外していけますが、最後の2つが残った時にどっちを選ぶかです。

選ぶ基準の1つに、どちらがより困難かで考えます。自分にとってより厳しい道を選ぶというものです。

この考え方は確か高校生の時に、ある雑誌で偶然知りました。記憶では読者が投稿して北方謙三氏に人生相談をするというコーナーがあって、進路に悩んでいるという読者の質問に対して北方氏はこう答えていました。「より難しい道を選択してみろよ」と書かれていました。

それを読んだ時はとても興味深く思ったことを覚えています。なぜわざわざ苦労するほうを選ぶのかと思いました。

その後の大学の進路、就職、その他いろいろな場面で判断が迫られた時に、不思議とその考え方が自分自身の決断に入っていました。困難なほうを選んだことは、決して間違っていませんでした。

その時悩んだことは何年後かに思い返してみると、実はそんなに大したことはなかったということです。ポジティブに捉えればそれだけ自分が成長したことなのかもしれません。

より困難な道をあえて選んでみる。逆境とか試練の中で人は磨かれ、高いハードルを選んでも苦労しつつも進んではいけるものだと思っています。ケセラセラ、人生なんとかなるのです。

Que sera sera は英語では Whatever Will Be, Will Be. と表現します。



※参考情報
TEDxTokyo yz 3.0 ~de-mosaic-ing~:自分にとって忘れられない翼の話|思考の整理日記


2013/02/03

TEDxTokyo yz 3.0 ~de-mosaic-ing~:自分にとって忘れられない翼の話

昨日は、TEDxTokyo yz 3.0 ~de-mosaic-ing~ に参加してきました(@表参道の青山学院スタジオ)。

TED のコンセプトを受け継いだ団体である TEDxTokyo が、「TEDxTokyo yz」として開催したのが今回のコミュニティイベント。yz というのは Y 世代・Z 世代のことで、10代-30代に焦点を当てているものます(TEDxTokyo yz についての詳細はこちら)。

友人が今回の TEDxTokyo yz 3.0 の運営リーダーをやっていたこともあり、招待してもらい参加することができました。あらためて感謝です。

TEDxTokyo yz に参加し、刺激をもらったり色々と考えさせられたりしました。Ideas worth spreading というコンセプトで開催される TED の動画プレゼンはよく見ていたりしますが、参加してライブを体験すると、全く違います。

書きたいことはいくつかあるのですが、今回のエントリーではそのうち最も考えさせられたことを取り上げようと思います。

■ 若き実業家・大関綾さんのプレゼン

今回のスピーカーは総勢10名で、第一セッションの最後に登壇されたのが、大関綾さん(株式会社ノーブル・エイペックス代表取締役社長)でした。以下は TEDxTokyo yz で紹介されている大関さんのプロフィールの引用です。

14歳でビジネスコンクールに出場して最年少記録樹立、二冠を達成。

クールビズ運動が始まった頃、ノーネクタイ・ワイシャツ姿のビジネスマンに対し「だらしない、かっこ悪い」と感じたのがきっかけとなり、クールビズ対応・新感覚ネックウェア”ノーブルタイ”の研究開発を始め、2010年高校在学中(当時17歳)に起業。ブランドコンセプトは「卓越したデザイン、優れた機能性、他に類を見ない新規性を持つ商品の提案」。

そのデザイン性・機能性・新規性が認められ、国内メディアをはじめ海外メディアからも注目を集め、2012年春に自社ブランド ”Aya Ohzeki” を立ち上げる。全国百貨店・小売店・ECサイトでの販売の他、新たに香港でも販売を開始。

2013年よりアメリカ進出が決定。「平成のココ・シャネル」になることを目標に、Aya Ohzeki ブランドを世界に広げるため活動中。

大関さんのプレゼンは彼女の座右の銘から始まりました。尊敬する Chanel 創業者であるココ・シャネル(1883-1971)の言葉だそうです。()内はフランス語でプレゼン内には出てきませんでしたがせっかくなので付けています。

翼を持たずに生まれてきたのなら、翼を生やすためにどんな障害も乗り越えなさい。(Si vous êtes née sans ailes, ne faites rien pour les empêcher de pousser.)

この言葉を知った時、大関さんは考えたそうです。自分にとっての翼とは何か?そして行き着いたのが「発想力」でした。なぜなら、中学生くらいの時からなりたいと思っていた実業家にとって大切な要素だからです。

大関さんが次に考えたことは、起業するためには社会のことを知る必要がある、ということでした。

あらためて身の回りをその視点で見てみると、大きな資本力・組織力を持つ大企業が社会を支配している現実に気づいたそうです。また、グローバル化により安いものがたくさん入ってくる。彼女の結論は、大企業やデフレに影響されないビジネスにしたいというものでした。

そのために何をすればいいのか。その後に大関さんは知的財産という存在を知ります。色々と知的財産について調べていくうちに、知的財産は新しい発想から生まれていることに気づく。だから発想力を磨きたい。

では、発想力をつけるためにはどうすればよいのか。彼女の答えは「とにかく24時間考え続けること。常に考えること」でした。

例えば、買いものとかで外を歩く時は発想力を鍛える絶好の機会だそうです。不便なものはないか、改善してより良くできるものはないかを常に考えることです。

こうした積み重ねで発想力が磨かれていきます。1つ1つのアイデアは小さなことでも、発想力トレーニングは商品開発や改良に役立つとのことでした。

アイデアについての大関さんの考えは、「アイデアは天から降ってくるわけではない、アイデアは考え抜いた末に生まれる」。

発想力はアイデアを生むツールであり、彼女にとっては夢を実現する「翼」。大関さんはプレゼンの最後をこう締めくくりました。

どんなことでもする覚悟を持ち、それを実行すれば、翼は手に入れることができる。

■ 自分にとっての翼は何か?

大関さんのプレゼンで「私にとっての翼は何か?」という言葉が発せされた時、自分にも問いかけられているように思いました。「自分にとっての翼は何か?」には根源的な問いであるように感じました。

ココ・シャネルの言葉の翼とは、今は持っていない能力/スキルのことだと理解しています。たとえ今は持っていなくても、それを望む強い気持ちがあればどんなハードルも越えていくことができる、と。

では自分にとっての翼は何か?私の場合は「考え続ける力」です。少なくとも日中の活動している間は、何かを考え続けていたいと思っています。

仕事のこと、読んでいる本のこと、ネットの情報を見ている時、ニュースについて、他には家族だったり将来のこと、それこそあらゆるものについてです。ちょっと考えて終わりではなく、ずっと考える・思考体力をもっと鍛えたいと思っています。こうしてブログを書いているのも、目的の1つはそのためです。

■ 翼を生やすことよりも重要なこと

「翼を持たずに生まれてきたのなら、翼を生やすためにどんな障害も乗り越えなさい。」

この言葉で忘れてはいけないと思うのは、翼を生やすことがゴールではないということ。翼はあくまで大空を羽ばたくためのツールです。何のために翼を生やしたいのかが重要です。

大関さんの場合は明確です。実業家になりたい、そのために必要なのは発想力です。これが翼です。自分の夢の実現というゴールから逆算して翼が位置づけられています。

では自分にとって、何のために翼を生やしたいのか。これが大関さんのプレゼンから問われた宿題でした。

考えてみると、私の場合は明確な目的がまだ定められていないことに気づきました。

正しい順序は、思い描くゴールがあって、そのために必要な能力を磨くことです。シャネルは「翼を生やすためにどんな障害も乗り越えなさい」と言っていますが、逆に言うと、どんな逆境でも手に入れたいという覚悟がないと、それは翼ではないと思います。

翼を手に入れ、どこへ飛ぶのか、どんなふうに飛びたいのか。2013年の新しい年も1ヵ月が終わりました。今年のまだ早い時期に、考えさせられる自分への問いに出会えてよかったです。

★  ★  ★

TEDx のようなイベントに参加したのは今回が初めてでした。イベントの最後の最後まで運営スタッフさんが真剣で、何より自分たちが楽しむスタンスがこちらにも伝わってきたのが印象的でした。あらためて、ありがとうございました。


※参考情報

TEDxTokyo yz
About|TEDxTokyo yz
Aya Ohzeki Official Site


2013/02/02

ローマ法王に米を食べさせたスーパー公務員の「心揺さぶる3つの言葉」

読んでいるうちに元気がもらえる本でした。「ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?」です。

過疎高齢化により18年間で人口が半分に落ちこんだ限界集落が石川県羽咋市・神子原(みこはら)地区でした。

年間予算60万円、わずか4年間で立ち直らせた羽咋市役所職員の高野誠鮮(じょうせん)氏が書いた本です。

タイトルにあるように、地元で取れるお米「神子原米」のブランド化のためローマ教皇に食べてもらうなど、様々な村おこしプロジェクトが紹介されています。スーパー公務員といった活躍ぶりが書かれています。

■ ローマ教皇に米を献上した男の行動力

平成17年4月当時、神子原地区の高齢化率は 54% でした。農家の年間の平均所得が87万円、月収に換算すると7万円超です。

高野さんは、羽咋市長から2つの宿題を課されます。

  • 過疎高齢化集落となった神子原地区の活性化
  • 1年以内にブランド農作物をつくる

後者の1つとして取り組んだのが、神子原地区で取れるコシヒカリのブランド化です

実は神子原地区のコシヒカリは知る人ぞ知る「おいしいお米」でした。料理関係者からは「炊き上がりはもち米のように弾力があり」「米粒はつやつやと輝いていておいしい」「冷めてもおいしい」と言われ、農家も「うちのコメはおいしい」とプライドを持っていました。

しかし、高い評価を得ているのに役所やJAが動きませんでした。広告・宣伝がなく、いくらいいものを作っても高く売るチャンス、日本中に広めようとする機会を見過ごしていた状況だったそうです。

高野さんが考えたのが、おいしい神子原米のブランド化です。

実行したのが「ロンギング作戦」でした。ロンギングとは憧れとか切望という意味で、有名人や著名人が持っている・食べたものには、人は自分も欲しくなるものです。その人が社会的な影響が大きいほどブランド力が高くなります。

神子原米も誰か影響力の強い人が食べればいいのではないか。「いつも神子原米の米をおいしく食べています」と言ってくれたらブランドになるのではないか。ここから高野さんの行動力が発揮されます。

まず最初に頼んだのは宮内庁。天皇陛下に食べていただく、というものでした。

神子は皇子に通じるし天皇皇后両陛下に食べてもらえないかと考えました。そうすれば天皇皇后両陛下御用達米になる。

しかし、実現はしませんでした。天皇が食べるのは献穀田のお米と決まっていて、神子原米はそこに入る余地はない、と言われたそうです。

次に思いついたのがローマ教皇でした。神子原の文字には「神の子」とあります。神の子といえばイエス・キリスト、キリスト教で最大の影響力があるのはローマ教皇のはずで、善は急げということで、すぐに手紙を出しました。

その後、ローマ法王庁から返事の手紙が届き、神子原米を献上することができたのです。

これでローマ教皇御用達米と言えるようになりました。しかも神子原米がローマ教皇に献上されたはじめてのお米だったようで、そのことを言ってもよいと法王庁からのお墨付きももらえたとのこと。

このニュースが起爆剤となり、神子原米がブランドになっていきました。

他にもエルメスの書道家である吉川壽一氏に米袋のデザインをしてもらうなども実現しています。

ローマ教皇に食べてもらう前にも、アメリカ大統領に食べてもらえないかということでアクションをとっていました。発想は、お米 → アメリカは米国と書く → お米の国の大統領に食べてもらおう、という考え方でした。

以下、高野さんの言葉で心に残っているものを3つ。どれもあらためて考えさせられました。

1. 可能性の無視は最大の悪策である

本書を読んで驚かされるのは、高野氏の行動力です。神子原米のエピソード以外にも、村おこしのための活性化プロジェクトでも共通しています。

高野さんの言葉で最も印象的だったのが、モットーとしている「可能性の無視は最大の悪策である」。以下は本書からの引用です。

いまだに、モットーとして考えていることは、可能性の無視は最大の悪策である、です。何もしないで「出来ない」と言う人が多いのですが、結局は人の努力によって解決出来ることがほとんどです。たとえ少しずつでも出来ることを積み上げていけば、大きなことになる。1%でも可能性があれば、とにかくやってみようということだけを考えて、今日も働いています。

1% でも可能性があるなら徹底的にやってみる、とにかく突き進んでその1%にかけてみようという考え方です。最大の悪策はやりもしないうちからできないと思い込むことです。

やる前から失敗すると決めつけていないか、できない理由ばかりに目を向けていないか。そんなことをあらためて問われた言葉でした。

2. まず自分がやってみせて、今度は相手にやってもらって、納得してもらう

人を動かすためにはどうすればよいかがこの言葉した。「やってみせて、やってもらって、納得させる」。

最初からやってくれ、では人は動きません。

実際に当時の神子原地区の農家の人たちは、高野さんの地域活性化策や農作物のブランド化・自分たちで販売することには大半が反対でした。しかし、高野さんには役所や JA に頼らない自立した農家の姿を強く描いていました。

そのためにはどうやって農家の人たちを巻き込んでいくかです。

  • まずは自分がやってみて成功例を見せる
  • 同じことを相手にやってもらう
  • 成功体験から自分にもできると農家の人たちに納得してもらう

まずは自らが率先して行動をすることです。前述の「可能性の無視は最大の悪策」にも通じることで、人を巻き込んでいくには大切なことです。

人は自分が納得しないと動きません。上や他人から強制されるのではなく、自分の中に動機やモチベーションがあってはじめて自分事化します。オーナーシップが生まれ、ようやく行動に入るのです。

これは自分の仕事でのプロジェクト経験とかでも実感することです。まずは自分が動く、そして相手にと広げていく。最終的に相手には自立した行動を起こしてもらえるようにです。

3. 役人には3種類いる:いてもいなくてもいい職員、いては困る職員、いなくてはならない職員

この言葉も印象的でした。

高野さんの問題意識は、本当に「役に立つ人」が「役人」であるというものです。

しかし、役人はどれだけ課題を解決してきたのか。終始議論だけで文書をつくって終わりではなく、本当に課題を解決するために変えるための行動を起こしているか、実行しているか。自分たちは「いなくてはならない職員」なのか。地域の人たちにそう思われるような存在なのか。

この言葉は役人だけの話ではありません。自分は「いてもいなくてもいい人」になっていないか、「いなくてはならない人」として行動できているかが、この言葉から考えされられました。



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2013/02/01

朝日新聞はなぜ「録画再生率が視聴率上回る例」を一面で報じたのか?




朝日新聞が、テレビの録画再生を含めた視聴率の実態を報じました(2013年1月31日付)。昨日の新聞の1面と、3面の解説記事で取り扱われています。

「ドラマは録画」くっきり 再生率が視聴率上回る例も|朝日新聞

記事の出だしから引用です。

テレビの録画再生を含めた視聴率の実態が、朝日新聞が入手した調査結果で初めて分かった。視聴率は放送時間中に見られた数値しか公表されていないが、視聴実態をより反映した録画を含めた数値をみると、人気ドラマの中には録画再生が放送中を上回る例もあった。

テレビ放送が始まって2月1日で60年、視聴率調査が始まってから半世紀以上がたつが、公表数値が視聴実態と離れつつあることが浮き彫りになった。

いくつかの録画再生率は下図の通りです。

確かにドラマ「ラッキーセブンスペシャル」の1/3放送分については、放送中に見たリアルタイムでの視聴率:12.6%、録画再生率:13.5%と、録画での視聴率が放送中のそれを上回ったようです。なお、今回の録画視聴率の定義は「録画した番組を放送の7日後までに再生した人の割合」とのことです。


出所:Yahoo!ニュース

■ 驚いたのは朝日新聞の1面に掲載されたこと

この記事を見た時にまず驚いたのは、視聴率のデータ自体よりも、今回のニュースがそもそも報じられたことでした。なぜ朝日はこのニュースを配信したのでしょうか?その意図や裏が非常に気になりました。

その前に少し前置きを書いておきます。

「録画での視聴率を含めない放送中のリアルタイム視聴率だけでは不十分」というのは、業界では昔からある不満です。自分の TV の視聴を考えてみても、録画して後から見るというタイムシフト視聴は当たり前のようにやっています。これが正確に反映されていない今の視聴率では実態が捉えられていないわけです。

背景には、ビデオリサーチが公表している600世帯での視聴率が絶対的な意味を持っていることがあります。

600世帯での視聴率はTV番組の人気のバロメーターに使われ、TVCM の広告費を出すためにも使用されています。テレビ視聴の指標として唯一無二の存在です。「通貨」とも呼ばれるほどです。

しかし、通貨である視聴率には録画再生率が含まれないために、録画視聴率はわかりません。つまり通貨として広く使われているが、価値が正しく付いていない(実態を捉えきれていない)のです。

なお、朝日記事の視聴率は通常の視聴率とは異なるものを使っています。「通常の」というのはビデオリサーチの関東600世帯からなるピープルメーター(PM)という機械を使った調査結果から出る数字です。

朝日の記事で「公表数値が視聴実態と離れつつあることが浮き彫りに」とある公表数値というのが通貨として使われているこの視聴率のことです。一方、同記事にある録画再生率はそれとは全く別の200世帯での調査結果です。両者は単純には比較できないです。

ここまでが前置きです。

今回の朝日の記事について、なぜ驚いたかの理由は、

  • 朝日新聞は朝刊の1面と3面に掲載した。国会も始まり、国内外でのニュースも色々ある中、かなりの力の入れようである
  • これまで表に出てこなかった「録画再生率」を公然と出してきた
  • その録画再生率は「通貨である視聴率」にはなかった指標。記事では単純に比べられないとしているが、通貨視聴率の絶対性を崩しかねない。視聴率が複数あるダブルスタンダードは、業界的にかなりタブーのはず(通貨は1つ)
  • データソースはビデオリサーチと書かれているが、そもそもビデオリサーチやバックにいる電通はこのニュース内容を事前認知はしていたのか。記事掲載は許容されていたのか

ビデオリサーチや電通はこのニュース配信にGOを出したとは思えません。朝日のニュース配信には何か強い意図を感じます。

■ なぜ朝日は録画再生率ニュースを流したのか?

なぜ朝日はこのニュースを配信したのでしょうか?その裏にはどんな意図があるのかをいくつか考えられることを書いておきます。

1.TV 番組の人気度を正しく認知してもらうため:人気度とは正確には視聴世帯率の高さ。通常の視聴率では放送中に視聴するリアルタイム視聴だけだが、録画をして後からの視聴も含めるとこんなに高い、というメッセージ。

2.TV 全体で言われる視聴率低下の原因を伝えるため:リアルタイム視聴だけ見ると低下傾向にあるが、録画も含めるとそんなことはない、という反論。

3.現在の「通貨である視聴率」への不満を表している:上記のように、通貨とも呼ばれるにもかかわらず正しく視聴実態を捉えているとは言えない視聴率。別データを具体的に提示することで、事実を反映していない不満を伝えたかった

4.視聴率を新しくするべきとの主張:3の不満への先として、より正しい視聴率を出してほしい意思表示。記事の最後のほうに書かれているのが「米国ではすでに録画も含む視聴率が公表されている。(中略) 実態を正確に測ろうとの試みもあるほどだ」。さらにリサーチ評論家の藤平芳紀氏のコメントが続く。以下は記事から引用。

技術の発展で視聴形態は劇的に変化し、自宅以外のあらゆる場所でテレビは見られている。メディアのあり方に大きな影響を与える基礎データなのだから、録画も含めて実態を正しく反映させた調査結果が世に出されるべきだ

■「通貨」視聴率のそもそもの問題点

民放では、番組の途中や番組と番組の間に CM が放送されます。現状では、A という番組の視聴率をもってして、番組 A の中で流れたCMの視聴率を出しています。

しかし、本来は番組視聴率と CM 視聴率は分けるべきなのです。もっと言うと、CM は数本が連続して流れるのでそれぞれの CM に対して視聴率を出すのが望ましいです。

ここで問題になるのが、番組の視聴率 = CMの視聴率なのか?という点です。多くの人は CM に入れば他のチャンネルに切り替えたり、席を外したりします(中座)。この状況では番組ほど CM は見られません。

録画での再生になると、CM スキップはもっと起こるはずです。リモコン1つで CM を飛ばせ、早送りをすれば CM は見られません。リアルタイム視聴での視聴率以上に録画視聴率においては CM の視聴率を正しく測れていないことになります。

以上から、個人的に思う視聴率の問題は以下です。

  • 「TV 番組視聴率 = CM 視聴率」が成り立たないのが実情。よって、TV 番組視聴率と CM 視聴率は本来は分けるべきだが、現状は1つの視聴率が使われている。これでは CM 視聴率が正しく測られていない
  • 民放のビジネスは CM から得られる広告費で成り立っている。にもかかわらず、その広告費を出すための CM 視聴率が正しくないという構造。広告費算出に使われている GRP には CM 視聴率を用いるべき
  • 視聴率に録画再生率を含めたとしても、依然として CM 視聴率が実態を正しく捉えていない現状は変わらない


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