2014/06/07

書評: 「10年先の自分」をつくる (工藤公康)

工藤公康。プロ野球の投手として224勝を上げました。それ以上に特筆すべきなのが、現役生活が29年。平均期間が10年弱と言われ、多くの選手が6-7年でユニフォームを脱ぐ厳しい世界にもかかわらずです。

そんな工藤氏の著書が『「10年先の自分」をつくる』です。

■10年先のための「いま」

本を読む前、タイトルから想像したのは、10年先の自分をイメージしそこから逆算して何をするかを明確にすべき、みたいなことが書かれているのではということでした。それをプロ野球の世界でどう実現したか、みたいな話だと思っていました。ただ、読み始めてみると、良い意味でその期待は裏切られました。

10年先の未来から逆算して、というよりも、今何をすべきかを積み重ねることで、結果として「10年先の自分」ができていると読み取れました。

今の自分に何が足りないのかを必死で考え、それを得るために何をすべきかを自分で考える。そして自ら行動。その繰り返し。



工藤投手のような球界を代表するエースでも、成功した年の翌年は怖かったと言います。前年に通用した自分のボールが、翌年は打たれるのではないか、そんな恐怖が常にあったそうです。ここでも、生き残るためには何が必要なのかを考え、対応するために新しい挑戦をすることの重要性が書かれていました。

長く結果を出し続けている人は、よくなるために「新しいことを知ろう、理解しよう」ということを怠りなくやっています。20勝した人間が、永遠に20勝できるはずがないーーそれがプロの世界です。

相手が研究してくるなかで、同じレベルで戦ったら、今度は打たれます。だから、新しい球種を覚えたり、コントロールに磨きをかけたり、それまでとは違う配給をしたりして、少しでも上のレベルにいけるよう「新しいこと」への探究心を持ち、変化するために実行できる。

■プロフェッショナルとして

この本を読んでよかったと思っているのが、あらためて自分とプロフェッショナルについて振り返ることができた点です。

現役時代だけではなく、引退後も含めて工藤氏のプロ意識を、文章を通してその一端を垣間見ることができます。自然と、それと比べて今の自分はどうかとセルフチェックをするように読んでいました。

自分の役割は何か、役割に対して貢献ができているか/果たせているか。目に見える成果を出せているか。自分がやっていることはプロと言えるか、少なくとも自分の中ではそういう自負が持てているか。普段はなかなか意識して考えることなく過ぎていくので、いい機会でした。

例えば、自分の強みは何かを考えた時に、あらためて思うのは環境が変わると、自分の立ち位置もそれに応じてずいぶんと変化することです。

私自身の場合は、前職と今の環境を比べた時に、前職ではわりと普遍的な知識/スキルだったものが、転職後では一転してレアな/経験だったことに気付きました。正確には、前職の経験や知識をそのまま使うのではなく、今の職場には何か他のことと組み合わせるのですが、そうすると、自分のこれまでの経験も役に立つものなのです。

おもしろいのは、その経験は当時は、強みとしてや将来役に立つとはあまり思えなかったものだったこと。実はそういうものほど後になって使えることを実感すると、あの時やっておいてよかったなと。

そう考えると、今やっていることも、将来思わぬところで役に立つのかもしれません。自ら体験した経験って、ほんと貴重だと思います。Connect the dots…




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