スイッチ・メディア・ラボが、テレビ視聴分析サービス ｢SMART (スマート) ｣ の正式サービスを開始しました (2014年10月6日) 。
テレビ視聴率の調査およびデータ提供です。
テレビ視聴分析サービス SMART とは
調査の特徴や提供サービス内容を見ると、すでに同じ視聴率サービスを展開しているビデオリサーチのできないこと (と言うよりやっていないこと) を突いているという印象です。
具体的には、以下の3つです。
1. リアルタイムでテレビ視聴率を提供
正確には時間帯別視聴データは15分後、番組視聴データは放送終了後の2−3時間後です。ビデオリサーチと比べると視聴率データが早く手に入ります。
このスピードへのニーズは広告主や広告会社側よりも、テレビ局をはじめとするテレビ番組制作側にあるように思います。
2. CM 視聴率
15秒単位の CM 視聴状況から集計できるようです。ビデオリサーチとの違いは、最小秒単位の粒度です。ビデオリサーチは1分単位なのに対して、スイッチ・メディア・ラボは15秒です。
テレビ CM の1本あたりの秒数は15秒が最も多いので、それに合った15秒単位集計から細かく CM 視聴率が追えます。
ビデオリサーチの視聴率データを使ったテレビ CM 広告枠の売買では、GRP という番組平均視聴率がベースです。CM 中のチャンネル切り替え (ザッピング) やトイレに行くなどの中座により番組と CM 時の視聴率に乖離があると考えれます。SMART からは、より正確な数値を見ることができるでしょう。
3. 性別年代などのデモグラデータが細かい
SMART はサンプルサイズについて、2014年内に関東地区2000世帯で5000人を目指すとのことです。ビデオリサーチは同じ関東地区で600世帯です。SMART のサンプルサイズのほうが大きいので、性別年代などの割付が細かくできます。性別年代以外にも、職業や年収等の属性情報もあるようです。
もっと知りたいこと
SMART のニュースリリースを見て気になったのは2つです。
1. 調査パネルの設計
リリースによればこのパネルは世帯ベースでは国勢調査に基いて設計されているようです。
｢性別、年齢別、未既婚別、居住地別分布に近似する様に対象世帯を決定｣ と書かれています。これだけを読むと、あくまで世帯単位で母集団がつくられているので、個人単位でどこまで設計しているのかが気になります。
リリース内容を見ると、世帯ベースのテレビ視聴率とともに、個人ベースでもデータが見られることを強調しているように見えます。であるならば調査パネル設計も個人ベースで管理されるべきです。
2. 録画 (タイムシフト) 視聴への対応
録画視聴率は今後対応されるのかです。
データ収集方法は機械式テレビ視聴継続調査で、｢ 家庭用テレビリモコンと独自開発のテレビ視聴データ収集機器｣ と書かれています。
予想するに専用のリモコンの情報をテレビ付近に設置したセットトップスボックスが受信し、リモコン情報から ｢誰が・何を (どのチャンネルを)・いつ｣ 見たかを判別していると考えられます。
世帯内の全員 (4才以上) が調査対象者なので、リモコンにはテレビを見ている人を選ぶボタンがあるのでしょう。お父さんが見る時はボタン 1 、お母さんはボタン 2 、息子はボタン 3 があり、父母のみがテレビを見ているときは 1 と 2 を押す、というやり方です。
この専用リモコンに録画再生用のボタンがあり、セットトップスで受信した再生開始情報などをハードディスクレコーダーに転送できるかなどの課題があります。
根本的な問題は、リモコン操作情報では ｢録画した番組の内容｣ までわからず、単に再生 / 停止・早送りなどの操作しか把握できないのではということです。調査対象世帯ごとの個別のハードディスクレコーダーと連携し、録画視聴の番組情報を見ないと、タイムシフトの視聴率には対応できません。
最後に
2000年にテレビ視聴率調査からニールセンが撤退し、その後はビデオリサーチ1社のみです。NHK が独自に調査をしていたりなど他社もやっていなくはないですが、現実はビデオリサーチの視聴率データが通貨となっています。
この状況にスイッチ・メディア・ラボが挑んだ形です。テレビ局や製作サイド・広告主と広告会社にどの程度受け入れられるのかです。