2014/09/28

書評「火車」(宮部みゆき)

ここ最近、小説を続けて読んでいます。その中で宮部みゆきの「火車」がおもしろかったのでご紹介します。




あらすじを文庫本の裏表紙から引っ張ってくると、
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――

なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?いったい彼女は何者なのか?謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。

推理小説+社会小説という感じの内容でした。

始めは、手がかりと呼べるようなものがほとんどない状況から、少しずつベールが剥がれていきます。それとともに、あらすじの最後にある「カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生」も見えてきます。別の言い方をすると借金の魅力と怖さが、登場人物の人生とともに明らかになっていきました。

ストーリー自体にはここではあまり深く触れませんが、この小説が読み応えがあったのはストーリー設定以外にもおもしろさがあったからです。

1つは文章構成と表現。ストーリーの起承転結において、文量がほどよいバランスだと感じました。小説によっては、起と承が長く時にはダラダラと続く作品もあったりします。その後、ストーリーが急展開し(転)、結末が自分の中では盛り上がらないケースです。

文章表現も、情景や登場人物の動作・心情・それまでの生き方や人生など、凝り過ぎることなくうまい表現だと感じました。

もう1つ、おもしろかったのは小説を読み進めることで、色々な学びがあったことです。学びというのは単にノウハウのようなものではなく、ストーリーに沿って疑似体験ができることです。

「火車」で言うと、クレジットカードの利便性と表裏一体である、気軽にお金を借りることのリスクです。クレジットカードを使うことも「借金」と表現すれば、自分自身も日常で使っています。

一方で、ローンを組んだり、消費者金融には経験がなく、使ってみてしまう動機は何なのか、利子が利子を生み、借金地獄から逃れられない状況、その果てに何が起こるのか。ストーリー自体はフィクションですが、あながち現実から離れているとは思えませんでした。

疑似体験で言うと、各登場人物を通して、(少し大げさですが)自分とは全く異なる人生を体験できることも、おもしろいと感じる小説の理由です。特に、悩みや葛藤や苦しみから、人は何を感じ、どういう行動を取るのか。つい自分はどう考えるかと思いながら読み、そのほとんどが自分とは違う発見があります。

★  ★  ★

「火車」の時代設定が1990年前後です。2014年現在とは変わらないものと変わったものがあり、その比較も個人的にはおもしろかったです。

1990年というと平成2年で、今とは全く違うものに、インターネットと携帯電話があります。推理小説なので主人公は様々な方法で情報収集を行ないます。例えば、関連する事件については図書館で当時の新聞記事に当たる、同僚の刑事に電話をかける、など。同じことを現代でやると、必ずと言っていいほどネットやモバイル端末を使うでしょう。



2014/09/27

AccessMill(マクロミルのオンライン広告効果測定サービス)の広告接触者と非接触者の同質性

マーケティングリサーチを展開するマクロミルが、AccessMill(アクセスミル)を正式リリースしました(14年9月24日)。AccessMill[アクセスミル]|マクロミル

■AccessMillとは

AccessMillとは、ネット広告によるデジタルマーケティング施策の効果を調査するツールです。

特徴は2つで、
  • Cookie情報をもとに、マクロミルの調査パネル対象者から実際にある広告に接触したかどうかを判別し
  • 広告接触者に対してアンケートをかけたり、広告接触者や広告のランディングページ訪問者の特徴を知ることができることです。
広告接触者やページ訪問者にアンケートをかけることで、広告効果が測定できます。具体的には、広告された商品/サービスについて、①認知(知っている人を増やせたか)、②興味(興味喚起が起こせたか)、③購入意向(買いたいと思ってもらえたか)などです。




マクロミルの自社パネルなので、ログから非接触者もわかります。非接触者にも同じアンケートをすることで、上記広告効果測定指標について、広告接触者 vs 非接触者で比較分析をします。


AccessMill[アクセスミル]|マクロミル


■比較の前提となる「比較対象の同質性の担保」

広告接触者と非接触者で気になったのは、この2つのグループがどこまで同質性を担保できているかという点です。

ちょっと専門的な話になりますが、この比較において重要な前提があります。広告接触者グループと非接触者グループの同質性です。

ここで言う同質性とは、少なくとも広告効果に影響を及ぼす可能性がありそうな特徴において、2つのグループが同じ条件という意味です。例えば、性別や年齢の構成比、その広告商品に対するもともとの認知や過去の購入経験など。

これらにおいて同じ条件である2つのグループで比較しないと、その比較はあまり意味を持ちません。

極端なケースとしては、広告接触者グループに若年層が多く、非接触者グループに中高年層が多ければ、広告接触 vs 非接触を比べているのではなく、単に若年 vs 中高年の比較にすぎないからです。この場合、同質性を担保することで、例えば若年層の広告接触者と非接触者の比較をすることが望ましいです。


■AccessMillにおける広告接触者と非接触者の同質性

AccessMillの仕組みを見て思ったのが、非接触者というのは単純に結果としてその広告に接触しなかった 人たちになってしまうのでは、ということでした。

うがった見方をすると、広告接触者は普段からネットをよく使っている人、非接触者はあまりネットを使わない人になってしまう可能性もあるのではと。この場合、比較しているのはネットヘビーユーザー vs ライトユーザーです。ヘビーユーザーバイアスがある状況下での比較になってしまいます。

非接触者グループの作り方としてより厳密に同質性を担保するためには、「本来は広告接触のターゲティング対象であったが、あえて広告を接触させない」やり方が正しいです。

分析対象とする広告素材(Test ad)ではなく、全く別の広告素材(Control ad)を当てる。例としては、分析広告が「海外旅行」だった場合、全く別の「自動車」の広告を配信することで、海外旅行の非接触者グループをつくるのです。

理想的には、2つの比較グループの違いは、対象広告を接触するか否かの違いのみで、それ以外を同質にすることです。(これを実現する具体的な運用方法はやや複雑なので割愛します)

★  ★  ★

アクセスミルについてもう1つ気になったのは、Mobile広告でどこまで広告効果分析ができるのかです。

サービス紹介ページを見ると、イメージ図にはスマホも入ってはいます。ただ、アプローチがCookieを使うので、SafariやChromeなどのブラウザアプリからのWebページ上広告以外のアプリ内広告にどこまで対応できているのか。このへんが気になるところです。


2014/09/23

はじめての転職活動中の方へ、いくつかのアドバイス

ここ最近、転職の話や相談を受けることがいくつかありました。

その時に伝えたことを2つピックアップして書いておきます。転職活動をやり始めたくらいの方が対象なので、参考になれば幸いです。



■聞かれたことに正しく答える

文字にすると、「なんだそんなことか」と思いますが、意外にできていないものです。意図的にはぐらかす場合は除き、本人としては質問にちゃんと答えているつもりでも、(質問をした)相手からすると、聞きたいことが返ってこないケース。

転職活動や就職活動には面接があります。以前に、自社の転職者の採用のため、自分が面接官として面接をしたことがあります。これまでのキャリアから優秀な方という印象でしたが、そんな方でも、時々、こちらからの質問に対して的を得ない回答があったのです。

その時に印象として残ったのは、聞かれたことに答えるのではなく「自分が話したいこと」を伝えようとしていたこと。

聞かれたこと = 話したいこと、であればよいですが、これがズレてしまわないよう、聞かれたことに答えることが大切だと、その面接で学びました。

面接という限られた時間の中で、面接官としてはその人のことを少しでも理解し、一緒に働きたい人かどうかを判断する。面接を受ける側にとってもその会社のことを知り、自分が働きたい場所や人がいるのかを判断する場です。だからこそ、面接では聞かれたことに正しく答えることが大切です。

面接に限らず、転職活動では、リクルーターや人事の人、エージェンシーの人とも連絡を取り合います。メールが多いですが、メールでも質問には正しく答えることは重要です。

■自分の気持ちに正直になる

転職は少なからず自分の人生の分かれ道になり得るものです。少なくとも自分が転職したことを振り返ると、岐路になりました。

今では転職してよかったと心から思っています。ただ、それでも転職を決める当時は、(前の)会社に残る or (今の)会社に転職する or 別の会社に転職するを色々と考えました。

転職する or しないが、50 vs 50 だったのが、ふと「新しい会社で挑戦したい」という気持ちが生まれました。不思議なことに、その気持ちが少しずつしっかりしたものになるにつれて、51 vs 49 になったものが、最終的にはほぼ 100 vs 0 になっていました。

今思えば、拮抗して動かなかった天秤を傾かせたのは自分の正直な気持ちでした。それに自分が気づけたことが結果的によい決断になったと思っています。

★  ★  ★

最後に、転職に関連した過去のエントリーです。ご参考になれば。

転職活動で学んだ採用面接でよく聞かれる5つの質問
転職を決める背中を押してくれた本5選


2014/09/14

Googleアンケートモニターが普及するための2つのポイント

Googleのアンケートサービスである「Google Opinion Rewards」が日本でもローンチされました(14年9月11日)。
Google Opinion Rewards Now Available in Italy and Japan! | Google Consumer Surveys (Google+)

日本サービス名は「Google アンケート モニター」と呼ぶようです。



すでにローンチされているのは、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアの英語圏の国。非英語圏ではドイツとオランダに続き、イタリアと同じタイミングでのリリースです。


■Google Opinion Rewards (Google アンケートモニター) とは

Google Opinion Rewardsとは、Androidのアプリで、アプリ上でアンケートが配信されます。

アプリをインストールしたユーザーは、随時配信されるアンケートに回答します。アンケート報酬として、Google Playで使えるクレジットを獲得。Google Playにある有料アプリや音楽や映画などの有料コンテンツを買うことができます。

プロモーションビデオはこちらからどうぞ。


Google Opinion Rewards - YouTube


アンケートの質問数は最大10問(14年9月現在)。スマホからサクッと答えられる程度の分量が想定されているようです。

アンケートは、Googleアカウントがあればすぐに作れます。こちらのぺージの「Create a Survey」ボタンを押せばアンケート作成画面にいきます。作成イメージは以下の映像で紹介されています。


Google Consumer Surveys: How to create a survey - YouTube


アンケート作成者にとって注意が必要なのは、Google Opinion Rewardsの回答者母集団はAndroidユーザー(厳密に言えばこのアプリをインストールしている人たち)、という理解です。

Androidユーザーとそうでないユーザーで、傾向に違い(バイアス)がありそうなことについてアンケートを作る場合には注意が必要です。例えば、先週発表されたiPhone 6へのニーズを知りたいケース。iPhoneをすでに保有している人の出現はGoogle Opinion Rewardsは少ないと思われるので、あくまで現Androidユーザーのニーズを確認するという前提になります。


■Google Opinion Rewardsが普及するための2つのハードル

日本語サービス名は「Google アンケート モニター」。その名の通り、マーケティングリサーチ用のモバイルパネルをGoogleが保有することになります。

パネルでのアンケート回答者は、Android保有者でGoogle Opinion Rewardsアプリをインストールしている人たちです。

14年現在では、スマホ普及率を5割、スマホ内のAndroidシェアを6割と超ざっくりに見れば、日本人の3割くらいがマックス規模に対して、このアプリがどこまでインストールされるかです。

ここからは、Google Opinion Rewardsが普及するためのポイントを考えてみます。

そもそもとして、Google Opinion Rewardsアプリのユーザー(アンケートモニター)にとっての魅力は、アンケートに回答するとGoogle Playクレジットがもらえることです。Play上でしか使えないとはいえ、お金に該当する対価がアンケートに答えることでもらえるのです。

ユーザーにとってGoogle Opnion Rewardsが実際に魅力となり、日本でもGoogle Opinion Rewardsが浸透するかどうかのカギは、2つのコンテンツがどれだけ充実するかです。

1つ目は、十分なアンケートがユーザーに配信されること。せっかくアプリがインストールされたとしても、アンケートが来なければアプリの中身はカラッポです。これでは使ってもらえません。

ユーザーにとって、常にいろんなアンケートが答えられる状態になること。これが1つ目のハードルです。

2つ目は、ユーザーにとってGoogle Playに魅力があることです。つまり、アンケートに答えて獲得できるGoogle Playクレジットが、ユーザーにとってちゃんとインセンティブになること。

Google Playに魅力があるとは、ユーザーが使いたくなるような有料アプリや、音楽・映画などのコンテンツが充実していること。これが2つ目のハードルです。

ユーザーにとって、Google Playに欲しいコンテンツがそろっていないと、せっかくアンケートに答えて獲得したポイントも、使わないまま、ただただ貯まっていくだけです。

(1)Google Opinion Rewards上のアンケート、(2)Google Play上の有料コンテンツ。これら2つのコンテンツがどれだけ充実するか。

アンケート作成者の立場で考えれば、Google Opinion Rewardsは候補の1つとしておもしろい存在なので、日本でどれだけ普及するかに期待です。


Google Opinion Rewardsアプリはこちらからインストールできます。
Google アンケート モニター - Google Play


2014/09/07

Apple to Apple なリサーチのために

何か分析するとは、最もシンプルに言えば比較をすることです。

AさんとBさんを比べる、去年のAさんと今年のAさんを比較する、この時に大事だと思うのは、比べたいこと以外は比較対象において極力同じ条件にすることです。例えば、やや極端な例ですが、100mの記録を比較するのであれば、同じ男子100m走という競技をそろえて、同じ競技内で比較します。これがもし、100mの競歩も入れたり、水泳100mも含めて、なんて比較はしないでしょう。

100m短距離走という条件を同じにし、その中で誰が早いかを比較するわけです。こういうのをApple to Appleと表現することがあります。



リサーチの世界において、何かを比較する場合にどうやって比較対象を設計するかが、ここ最近は奥が深いなとあらためて思っています。ある睡眠薬の効果を検証するケースで書いてみます。

その睡眠薬の効果は、寝付きがよくなることだとします。効果検証の実験として、テストする睡眠薬を被験者に投与し、よく眠れたかどうかを検証します。簡単のため、検証方法はアンケート形式で被験者に答えてもらいます。

1. 同一対象者へのPre / Post

最もシンプルな方法は、睡眠薬を飲んでもらう前に通常の睡眠状態を答えてもらい、睡眠薬を飲んだ後に同じ睡眠に対する項目を答えてもらうやり方です。(同一対象者へのPre / Post形式)

睡眠薬投与の前と後に同じことを聞いているので、前後においてどのように睡眠状態が変わったかを比較します。

ただし、このやり方だと、睡眠薬を飲む前のアンケートに答えてもらうことで、自分の睡眠をあらためて振り返ってみるなどの「睡眠意識」が高まってしまい、睡眠薬投与にそれが影響を与えてしまう懸念があります。専門用語でアンケートバイアスと言います。

2. 別対象者へのPre / Post 

アンケートバイアスを除去するために考えられることとして、睡眠薬投与前後のアンケート回答者を別にするやり方があります。

テスト対象者の条件をなるべく等しくし、対象者たちを2つのグループにランダムに分けます。グループAには睡眠アンケートだけを実施(Preグループ)、グループBには睡眠薬を投与し、その後にアンケートを実施します(Postグループ)。

PreとPostグループで人を分けたことで、上記1にあったようなアンケートバイアスをなくすことができます。

3. 別対象者へのControl / Test グループ分け

さらに厳密にApple to Appleにするやり方があります。対象者たちをランダムに2グループに分け、グループAには偽薬(Controlグループ)、グループBには睡眠薬を投与します(Testグループ)。

グループAもBも、与えられる薬が何のためかを伏せて行ないます。これをやる意図は、薬のプラセボ効果を除去できることです。プラセボ効果とは、それを薬だと信じ込むことによって何らかの改善がみられる現象です。

上記2の方法との違いで、上記2では睡眠薬投与グループに効果があっても、それが実際の効果なのかプラセボ効果なのかを分解することが難しいですが、この方法であれば実際の効果かどうかを比較することができます。

もっと厳密にやるとすれば、被験者に薬を渡す担当者にすら、それが偽薬なのかホンモノの睡眠薬なのかどうかを伏せておけば、より安心です。担当者の渡し方で被験者に偽薬 or 睡眠薬なのかがバレないようにするためです。


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