2014/10/11

テレビ視聴分析サービスSMARTの所感と課題

スイッチ・メディア・ラボが、テレビ視聴分析サービス「SMART(スマート)」の正式サービスを開始しました(14年10月6日)。
SMARTプレスリリース文書(PDF)
視聴率を10分後に提供、ネット活用 スイッチ・メディア・ラボ:日本経済新聞(有料会員限定記事)



テレビ視聴率の調査およびデータ提供で、調査の特徴や提供サービス内容を見ると、すでに同じ視聴率サービスを展開しているビデオリサーチのできないこと(と言うよりやっていないこと)を突いているなという印象です。

いくつか挙げると、
  • リアルタイムでTV視聴率が提供:正確には時間帯別視聴データは15分後、番組試聴データは放送終了後の2−3時間ほど後にはなりますが、ビデオリサーチ(VR)と比べるとこの差は大きいです。個人的な所感ですが、このスピードへのニーズは広告主/広告会社側よりも、TV局をはじめとするTV番組制作側にあるように思います
  • CM視聴率:15秒単位のCM視聴状況から集計できるようです。VRとの違いは、厳密に言うとCM集計ができる/できないと言うより、最小秒単位の粒度です。VRは1分単位なのに対して、スイッチ・メディア・ラボは15秒です。テレビCMの1本あたりの秒数は15秒が最も多いので、それに合った15秒単位集計により、より細かくCM放映時の視聴率が追えます。VRデータを使ったTVCM広告枠の売買では、GRPという番組平均視聴率がベースになっていて番組とCM時の視聴率に乖離があるとすれば(ザッピングや中座で)、より正確な数値を見ることができるでしょう
  • 性別年代などのデモグラデータが細かい:これはサンプルサイズが2014年内で関東地区2000世帯の5000人を目指すことで、VRの同地区600世帯よりも大きいので、その分、デモグラの割付が細かくできます。性別年代以外にも、職業や年収等のデータで切れるようです

ニュースリリースを見た限りでの気になる点はいくつかあります。

1つ目は調査パネルの設計で、リリースによればこのパネルは世帯ベースでは国勢調査に基いて設計されているようです。「性別、年齢別、未既婚別、居住地別分布に近似する様に対象世帯を決定」と書かれています。これだけを読むと、あくまで世帯単位で母集団がつくられているので、個人単位でどこまで設計しているのかが気になります。

リリース内容を見ると、世帯ベースのTV視聴率とともに、個人ベースでもデータが見られることを強調しているように見えますが、であるならば調査パネル設計も個人ベースで管理されるべきです。

2つ目は録画(タイムシフト)視聴への対応は今後あるのか。データ収集方法は機械式テレビ視聴継続調査で、「家庭用テレビリモコンと独自開発のテレビ視聴データ収集機器」と書かれています。

予想するに専用のリモコンの情報をTV付近に設置したセットトップスボックスが受信し、リモコン情報から「誰が・何を(どのチャンネルを)・いつ」見たかを判別しているはずです。世帯内の全員(4才以上)が調査対象者なので、おそらくリモコンにはTVを見ている人を選ぶボタンがあるのでしょう。お父さんが見る時はボタン1、お母さんはボタン2、息子はボタン3があり、父母のみがTVを見ているときは1と2を押す、というイメージです。

この専用リモコンに録画再生用のボタンがあり、セットトップスで受信した再生開始情報などをハードディスクレコーダーに転送できるかなどの課題があります。ただそれ以上に、根本的な問題は、リモコン操作情報では「録画した番組の内容」までわからず、単に再生/停止・早送りなどの操作しか把握できない、という点です。つまり、調査対象世帯ごとの個別のハードディスクレコーダーと連携し、録画視聴の番組情報を見ないと、タイムシフトの視聴率には対応できません。

★  ★  ★

2000年にテレビ視聴率調査からニールセンが撤退し、その後はビデオリサーチ1社のみでした。NHKが独自に調査をしていたりなど、他社もやっていなくはないですが、現実はVRの視聴率データが通貨となっています。

この状況にスイッチ・メディア・ラボが挑んだ形になったわけで、TV局や製作サイド・広告主/広告会社にどの程度受け入れられるのか、気になるところです。


2014/10/05

Cookie問題を解決するFacebookのマルチデバイス広告計測

Facebookがおもしろい取り組みを進めています。Facebook、買収したAtlas広告プラットフォームを再ローンチ―マルチデバイス、オフラインのセールスもモニタ - TechCrunch




■Cookieの問題

オンラインでのユーザーを計測するためには、これまではCookieを使い手法が一般的でした。ユーザーに対してCookieをブラウザごとに配布することで、広告が配信された数、Aという広告に接触した人にBという広告を出す(リマーケティング)、などを計測できています。

ただし、Cookieには課題もあり、例えば、
  • Cookieが削除される
  • ユーザーのカウントがUU(ユニークユーザー)ではなく厳密にはユニークブラウザ
  • スマホなどのMobileではアプリごとに配布され、異なるアプリ間でCookie情報が共有されない
  • デバイス間のCookie情報が共有されない
という状況です。Cookieとは、スマホ以前のPC時代の設計思想で、これからのマルチデバイス環境には適さなくなっているように見えます。

■Facebookのアプローチ

こうした状況に対してフェイスブックのアプローチは、Cookieよりも優れているように見えます。フェイスブックがやろうとしているのは、Facebook IDを使ってユーザーをトラッキング/計測するというもの。

上記のTechCrunchの記事から引用すると、
Facebookは新しいアプローチを「人ベースのマーケティング」と呼んでいる。広告主は消費者の行動をそれぞれの個人として複数のプラットフォーム上で追跡できる。つまり、あるユーザーが、スマートフォンで広告を見てからノートパソコンからその商品を買ったなどという情報をAtlasは広告主に提供できるようだ。
広告主が自社広告をAtlas(広告ネットワーク)から出稿/配信すれば、マルチデバイスでの広告接触や、さらにはオフラインまでの購買行動までトラッキングができてしまうようです。詳細が書かれていなかったのですが、仕組みがどうなっているのかは興味深いところです。

Facebookというオンライン上でのプラットフォームがあり、プラットフォーム上でユーザーを識別するFacebook IDを使う。Cookie IDの問題は、削除・ブラウザ間/アプリ間で連携しない・デバイス間で連携しない、であり、Facebook IDはこれらを解決するポテンシャルがあります。

さらに、Facebookはオンライン上ではマルチデバイスで連携しているだけではなく、何かしらの方法でオフラインの購買行動もモニタできているようです。

オフラインでの購買行動の計測には、予想するにオフラインの行動はFacebookに登録している電話番号を、ネット上でのFacebook IDのように使っているのではと思います。Facebookには、ユーザー情報の宝庫です。自らが性別/年齢、居住エリアや興味関心を入力してくれます。

オンライン/オフラインでのユーザー行動が、Atlasを通して広告主にフィードバックされるメリットは大きいです。

■Cookie問題をFacebookは解決できるか

Facebookのマルチデバイス広告トラッキングでできるようになるのは、クロススクリーンでの広告計測です。

Cookieでの計測は、デバイスごと、もっと言えばブラウザやMobileアプリ内での閉じた計測でした。これがFacebook IDではユーザーベースになります。

例えば、ある広告キャンペーンをマルチデバイス向けに配信した時に、スマホだけで接触したリーチ、スマホ&PCの両方での接触リーチなどがわかり、それぞれの接触者が、その後にどういう購買行動を取ったかもわかります。

もう1つ、Atlasを使ってできるとおもしろいと思うのは、マルチデバイス広告接触による広告効果測定です。

Atlas上での広告配信がFacebook IDでできるとすると、効果測定をしたい広告接触グループAと比較対象用の全く関係ない広告接触グループBにランダムに分け、AとBに対して広告接触後に、広告やその商品/ブランドの認知・興味・商品イメージ等を聴取します。比較対象であるBに対して、Aのアップリフトを見ることで、広告接触による態度変容もリサーチできます。

Facebook IDを使うことで、プライバシー観点での制約が気になるところですが、Next Cookieのアプローチとして期待しています。


2014/10/04

iPadを親にプレゼントしてみると

ちょっと前のことですが、実家にいる親にiPadをプレゼントしました。Androidとも迷ったのですが、UIがシンプルなことと、端末の軽さから、iPad Airにしました。



iPad以前は、実家のネット環境が整っておらず、前々から実家に帰る度になんとかしたいと思っていました。そのネット環境とは、古いノートブック型パソコン(Windows 7)に光ケーブルから有線LANでつないでいました。

パソコンの起動時間が5分くらいかかり、毎回パソコンに有線ケーブルをつなぐという、ネットを使うだけに一手間も二手間もかかるような状況でした。

そんなわけで、実家にタブレットとWiMAXを導入しました。

母親のパソコンからのネット利用用途は、食品/飲料の注文・孫の写真/動画の閲覧だけと言ってもいいくらい。ニュースは新聞で、天気予報はテレビから、という感じでネットでの検索もほとんどしていなく、オフラインが中心という状況でした。

ちょっと脱線しますが、「孫の写真/動画の閲覧」というのは、私の娘(14年10月時点で1才)のことです。デジカメやスマホで撮った写真や動画を、Google Driveの家族共有フォルダに随時アップしています。フォルダ権限はお互いの家族だけです。

フォルダ内にアルバムのようにストックしておくというよりも、フローとして見てもらっています。このやり方を両方の親が気に入ってくれ、写真/映像の更新が滞ると、早くアップしてくれとリクエストが来るくらい。

娘の「これができるようになった映像」は特に好評で、寝返り・お座り・ハイハイ・立つ・歩けるようになった、などは、映像を見てすぐに電話がかかってきます。娘の親としても、おじいちゃん/おばあちゃんが孫にこうした形で関心を持ってくれるのはうれしく思っています。

話を戻すと、パソコン時代の母のネット利用はごく限られた範囲でした。

で、iPadを使うようになって、母親のネット利用はかなり変わったようです。

始めはPCでの利用をそのままiPadで代替していた程度だったのが、日常でわからないことをネット検索から調べる、天気予報、YouTubeで懐かしい音楽やクラシックを聴く、旅行の計画をネットを使う、などなど。孫の写真/映像の閲覧頻度も増えたようです。一方で、パソコンの利用はほぼなくなったとのこと。

パソコン+有線LAN vs タブレット+無線LANでは、特に上記のようなライトなネット利用においては、後者が便利なのは言わずもがなです。それにしても、変化は私の予想以上でした。

iPadを親にあげる前は「今のパソコンでも十分便利よ」みたいなことを言っていました。それが、実際にタブレットを使ってみると、単に、パソコンの利用をタブレットが代替しただけではなく、タブレット+無線LANという環境変化によって、ネット利用量そのものが増えたのです。

パソコン+有線LANの時にも、おそらく潜在的には今くらいのネット利用ニーズはあったはずです。しかし、UIが制約となり本人すら、今くらいのネット利用用途があることに気づかなかったのでしょう。

2014年現在、世界の人口は約70億人、うちネットを使える人たちは20億人と言われています。残りの50億人はこれから。文字通り、世界中の人びとがネット使い出し、つながった時、自分の母親に起こったようなこと、あるいはもっと劇的な変化が見られるのかもしれません。




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