2015/03/21

書評「都市は人類最高の発明である」(エドワード・グレイザー)

「都市は人類最高の発明である」という本がおもしろかったのでご紹介します。

このタイトルは邦題で、原題は「Triumph of the City: How Our Greatest Invention Makes Us Richer, Smarter, Greener, Healthier, and Happier」。直訳すると「都市の勝利」です。

内容紹介から引用すると、
無秩序に広がる都市こそが、人類にとって最も必要なものなのだ!
都市が人類の進歩に果たしてきた役割を分析し、その重要性を明快に指摘する新しい都市論。
著者は、「健康面でも文化面でもインフラの効率面でも環境面でもきわめて優れていて、都市こそは人類最高の発明である」、「都市を高層化・高密化させて発展させることが人類の進歩につながるのであり、その足を引っ張るような現在の各種政策はやめるべきである」と主張する。




■都市は人類の強みを最大限に活かせる

なぜ都市は「人類最高の発明」なのか。

本書の主題を一言で言うと「都市は人類の強みを最大限に活かせる場所」だからです。

都市の特徴は、人や企業の間に物理的な距離が小さいことだと著者は言います。都市の緊密性や密度である、と。

都市では人と人との距離が近いことで、人同士のつながりが生み出されます。

これにより、人々は協力し、お互いから学び合います。著者は、お互いから学び合うことこそが、人類の本質的な特徴だと言います。人類の協力があるからこそ、都市は文明の成功に寄与し、人々が協力しあう状況が、都市が存在する最大の理由であると。

■都市での密集性と多様性

都市では、人々が密集していることで相互作用の機会が生まれます。つまり、各自のアイデアやお互いの技術が組み合わされやすい状況です。そこから、新しいアイデアやイノベーションが生じるのです。

アイデアは何もないゼロからではなく、多くは既存のアイデアや技術などの組み合わせで生まれます。この考え方は、例えば名著「アイデアのつくり方」などで述べられています。

ここでポイントになるのが「多様性」です。

アイデアが組み合わさるとき、似たようなアイデア同士では新しいアイデアが生まれにくいでしょう。だからこそ、重要になるのが多様なアイデアがあること。本書の文脈で言えば、多様な産業や文化が都市にあることが大切なのです。

都市にはお互いが接触し、混ざる機会が数多くあること。そのための条件が「密集性」と「多様性」の2つであり、都市が発展していくために必要な2つの要素だと著者は言います。

■多様性を失った都市が衰退した事例 (デトロイト市)

本書では、古今東西の様々な都市が各テーマの事例として紹介されています。

その中に、都市の多様性という視点で興味深い事例が書かれていました。アメリカのデトロイト市です。

20世紀、デトロイトは世界有数の自動車産業が中心の工業都市でした。自動車という単一の産業に強く依存し、労働者の多くも自動車産業で働く人々でした。一方で、自動車以外の産業が育成されませんでした。

多様性を失ったデトロイトは、自動車産業が傾くと、それとともに衰退していきます。

かつてデトロイトが発展できたのは、フォードが開発した自動車大量生産方式があったからでした。興味深い指摘だったのが、大量生産方式が開発できたのは、その当時のデトロイトには自動車以外の多様性のある都市だったから。

多様性があったから生み出された自動車大量生産方式。その方式により、自動車産業という単一産業都市となってしまい、多様性が失われ、デトロイト市は衰退していったのです。

★  ★  ★

本書はタイトルで「都市は人類最高の発明」と言っています。

なぜ都市が最高なのかを通して示唆するのは、人間は、共に考え、共に働き、そして共に生きる存在であること。これこそが、都市は最高の発明であるためのベースとなっている要素です。




Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...