2015/09/29

「我が身を正すこと」はリーダーシップの出発点




「荀子(じゅんし)」という古典には、次のような言葉があります。

原(みなもと)清ければ則ち流れ清く、原(みなもと)濁れば則ち流れ濁る

源が清ければ下流は清く澄んでいるし、源が濁れば下流も濁る。意味は、根本を正すことが肝要であり、上が正しくなれば、下は自ずと正しくなるということです。

■リーダーこそ「我が身を正せ」

荀子のこの言葉は、リーダーシップの教えであると解釈できます。「上に立つ者はまず我が身を正せ」ということです。

リーダーの姿勢が手本として部下に示され、全体に影響するのです。リーダーという組織の源が清ければ、チーム全体も清くなるだろうと言えます。その逆もまた然りです。

もちろん、我が身を正すことだけで、リーダーとして役割を果たせるとは言えません。リーダーとなるには他に必要な要件があるでしょう。

我が身を正すことは、リーダーシップの必要条件ではあっても、十分条件ではありません。荀子のこの教えは、リーダーのための出発点ではないでしょうか。

■「慎独」から我が身を正しくする

では、どうすれば我が身を正すことができるのでしょうか?

私はそのヒントは「慎独(しんどく)」にあると思っています。

慎独とは、古典である「大学」に書かれている「君子必慎其独也 (君子は必ず其の独りを慎むなり)」から来た言葉です。意味は、自分一人のときでも、行ないを慎み、道をはずれないようにすることです。

何か後ろめたいことであっても、人が見ていないところではついやってしまう。これは人間誰しも起こり得ることです。慎独は、その状況でこそ自分を律することができるかを問うのです。

人が見ていなくても、見られている時と同じような行動が取れるか。他人が見ていないということは、その状況を誰かに言わなければ自分だけしか知らないことです。ちょっとくらいならいいやではなく、自分の行ないを慎み、人としての道を外れないようにできるかです。

もっと言えば、自分の行ないや自分自身を律することができるかの判断基準は、誰か他の人が見ているかどうかで決めべきではないと思います。

あくまで自分自身の中の問題として捉えるべきです。人の目があるかどうかは関係なく、自分が持つ倫理観に背く行ないであればやらない。

この積み重ねが「我が身を正す」ことにつながります。


2015/09/25

雨の日の通勤に、防水スニーカーが期待以上の働き




平日の朝、雨が降っていると少し気持ちが下がることがあります。

雨そのものが憂鬱にさせると言うよりも、雨の中を通勤するときに靴が濡れてしまい、中の靴下まで塗れてしまうであろうことが、そうした気持ちになる原因です。

靴下が濡れた状態でその日の午前中を過ごす時の不快感は、少なくない人が経験したことはあるのではないでしょうか。

雨の時の外出で、対策として使えるものは、傘、レインコート、防水長靴、(足元やバッグのカバーなどの)防水グッズ、防水スプレーあたりです。

どれも一長一短があります。足元の防水用としては長靴が有効でしょう。しかし、女性に比べて男性用の長靴は、個人的にはあれを履いて会社に行きたいとは思えません。防水性は高いと思いますが、そのメリットよりも、デザインと防水以外の機能性の低さが勝ってしまうのです。

これまでは雨の日の通勤には、基本的には傘だけを使っていました。

最近はゲリラ豪雨と呼ばれる突発的な大雨も起こります。その時に屋外にいる可能性もゼロではありません。傘では頭部や上半身が濡れることは防げても、大雨の中を歩くと足元の靴は確実に塗れてしまいます。

そんな状況をなんとか防げないかと思っていました。ちょっと前に、初めて防水スニーカーを買いました。




見た目は普通のスニーカーです。言われないと防水スニーカーとはわからないところが購入理由の1つ目です。

もう1つの買った理由は、防水機能でした。靴底から 4 cm の高さで水に靴が浸かっても、およそ 4 時間は防水状態が保てるとの説明を見て、購入を決めました。

現実的に、東京での日々の生活において、4時間も水の中に浸かることはありません。ただ、それくらいの防水機能があれば、自分の求める「通勤で雨の中を歩く時に、靴の中に雨が染み込まないこと」というニーズは満たせると思ったわけです。

2015年の9月は、前半は全国的に雨量の多い月でした。そんな状況で、防水スニーカーを使って通勤や外出をしました。

買った防水スニーカーは期待通りの働きをしてくれました。表面は雨をかぶりますが、中まで水が染みこむことはありませんでした。強い雨の日の午前中に起こっていた、靴下が濡れた不快感は一度もなかったです。

防水スニーカーでの歩きやすさは悪くはないです。ウォーキングやランニング用スニーカーほどの歩きやすさはありませんが、普通のスニーカー程度で、歩きにくさなどの違和感はないです。

靴と靴下の雨対策は、防水スニーカーで実現できました。残る課題としては、パンツ(ズボン)の裾から膝下にかけての部分が雨で濡れることをどう防ぐかです。これには、トレッキング用のレッグカバーを使っています。




防水スニーカーほど雨を完全に防ぐことはできません。しかし、レインコートを使うのは面倒だと感じるし、長靴よりも簡易的に使えます。総合的に考えてレッグカバーが良いと思っています。

雨の日で、特に雨量の多い時の通勤には、傘をさし、足元は「防水スニーカー + レッグカバー」の組み合わせ。今のところ自分の中ではベストな方法です。


2015/09/22

Google X 統括のアストロ・テラー氏が説く「早めに失敗すること」の大切さ




2015年9月に、都内で「2030年の都市の未来像を語る」シンポジウムが開催されました。

注目されたのはアストロ・テラー氏の基調講演でした。同氏は、グーグルで自動運転車などの新規事業を開発中の研究機関「Google X (Google X Lab)」を統括しています(2015年9月現在)。

「Google X」統括のアストロ・テラー氏、都市の未来像について講演 -INTERNET Watch

この記事で、テラー氏のプロフィールは次のように紹介されています。

Google Xの統括者であり、同組織において“ムーンショット (アポロ計画の月面着陸に匹敵するほどの壮大な挑戦や課題) 号艦長”という肩書も持つテラー氏。

機械学習を用いた投資マネジメントや、ウェアラブルデバイスを利用した身体モニタリングを行なうビジネスなどを起業するなど、科学者や発明家、起業家などの側面に加えて、小説や脚本の執筆を行なうなど、多彩な活動を展開している。

シンポジウムの中でテラー氏は「早めに失敗する」ことの大切さを強調しました。興味深かったので、以下に同じく INTERNET Watch の記事から引用します。

もう1つ重要なこととして、「できるだけ現実の世界に出て行って試すこと」を挙げた。

「学習して早く改善するには、実際に経験することです。オフィスの中で頭をかきながら『世の中はこうだろう』と想像するだけでは無理があります。Google Xが行っている活動で言えば、5~6年前は、自動運転車や空飛ぶ風力発電機、スマートコンタクトレンズのベータテストなどは無理だと思われていました。ところが我々は、すでにこれらを世の中に出して試しています。そして大いに失敗することによって、そこから学べるわけです。学びを活かして、さらに改善する、これを繰り返していくことが大事です。」

テラー氏は、都市についても「テストをして失敗し、そこからフィードバックを得る」というサイクルを行なうべきだと語った。

「都市の将来を完全に予測できる人はいません。専門家がある程度の予測を行なうことはできますが、絶対とは言えない。それを考える唯一の方法は、試してみることです。失敗はできるだけ早期に起こったほうがコストがかからないので、『失敗してもいいのだ』という環境を作ることが大事です。また、テストを行ったときに、問題を早く見つけた人に報酬を与えることも必要です。」

テラー氏は「実際に試して失敗すること」の大切さについて言及した。

「失敗には、良い失敗と悪い失敗の2種類があります。かなりの金額を使ってから起こる失敗が悪い失敗です。創造性を持ち、予防策としてたくさんの“良い”失敗をできるだけ早く経験することが大事。」

テラー氏の失敗を重視するコメントを読んで思ったのは、ポイントは2つあるということでした。

1つ目は、失敗は全て悪いことではなく、「良い失敗」と「悪い失敗」があると認識することです。

記事内のテラー氏の指摘から「良い失敗」の特徴は、
  • できるだけ早い段階で起こる失敗。小さな失敗
  • 失敗から学びがある。学びを次に活かせる

悪い失敗とはこの2つの裏返しです。かなりの金額を使って後から起こる失敗。失敗から何も得るものがなく次につながらないものです。

テラー氏が述べているように「失敗してもいい」という環境を用意することも重要です。何かを始める前に失敗してもいいと思えることで、失敗を恐れずチャレンジすることができるからです。

そのような環境にするためには、評価基準を変えていく必要があります。安全運転をするだけの人ではなく、リスクに挑戦する人や失敗にくじけず次の成功に向けてチャレンジし続ける人が高い評価を受けるべきです。

失敗が許容されている環境では、早期の段階での失敗が発見されやすいと言えるでしょう。また、難しいことや新しいことに挑戦する土壌もつくられます。失敗しないということは、チャレンジしていないことと同じです。

ポイントの2つ目は、失敗から何を学ぶかです。

失敗を単に失敗で終わらせるのか、それとも、失敗から何を学べるかが、失敗の次への分岐点になります。

失敗が結末になってそこから何も生まないのが前者であり、後者は失敗をあくまで成功への1つのプロセスと考えます。

後者について別の見方をすれば、失敗が起こった時点ではまだその失敗は、悪い失敗にもなり得るし、良い失敗にもすることもできます。

つまり、良い失敗にできるかどうかは、失敗後の本人や当事者たち次第なのです。

失敗の受け取り方や、そこから何を学んだか。それらを経験として蓄積し、(失敗という)具体例を抽象化し応用が効く知識として保存する。

自分たちのスタンス、失敗の評価、学んだことを次にどう活かしたか。失敗後の行動次第で、その失敗は良いものにも悪いものにもなる可能性を秘めているのです。

★  ★  ★

失敗やミスをすると、その瞬間は自分に対して嫌悪感であったり、すぐには肯定的になれないものです。誰もがそうした経験をしています。

そこで失敗に目をつむったままで終わるのか、その失敗を自分の「資産」にできるか。テラー氏の講演内容で語られたことを見ると、この差は一見すると紙一重なのかもしれません。ただ、その積み重ねはやがて大きな違いになるように思います。


2015/09/21

書評「入門 考える技術・書く技術」(山崎康司)




あることがらをロジカルに考えられているかどうかを自分で確かめるには、文章で書いてみる方法が有効です。

すでに頭の中で論理展開の流れができていれば、書いていても途中で詰まることはありません。一方、自分の中で整理されていると思っていたことも、書いてみると途中で止まってしまうことがあります。ロジックがまだ不十分であると気づくわけです。

文章を書くことにおいて、特にビジネスで求められるロジカルな文章については、書く前にどれだけ考えられているかが重要です。

書いては書きなおしてという作業が減るばかりではありません。何よりも、読んでもらう相手にとってわかりやすい文章になるからです。その結果、読んでもらえる確率も上がり、相手の貴重な時間を無駄に費やすことも減るでしょう。

ロジカルな文章をどうやって書けばよいかを、わかりやすく説明してくれるのが「入門 考える技術・書く技術」という本です。

この本では、ロジカルで、読み手にとってわかりやすい文章にするにはどうすればよいかが、具体的に書かれています。特徴的なのは、平易な内容にもかかわらず、メールや報告書などビジネスでの応用範囲が広いと読んでいて感じることです。

本書で強調されるのが、考えるプロセスと書くプロセスを分けることです。

もしあなたの報告書がわかりにくければ、その原因のほとんどは書く前の段階、すなわち、伝えるべき考えを明快に表現するという「考えるプロセス」にあるのです。

具体的にどのようなメッセージを伝えようとしているのか。なぜそう言えるのか。そのような考えが明快に表現され構成されていて初めて、わかりやすい説得力のある文章となります。

では、読み手にとってわかりやすい文章にするための「考えるプロセス」とは何か。どうすればできるようになるのでしょうか。

それが本書が提唱するフレームワークです。読み手の疑問を明らかにするための「OPQ分析」です。文章構成を考えるにあたって、以下の設定をします。

  • Objective: 読み手が目指している望ましい状況
  • Problem: 現状と Objective とのギャップ
  • Question: 読み手の疑問

3つ目の読み手の疑問に答えることが、あなたが書く文章の主メッセージとなります。

具体的な例で考えてみます。自分が営業職で、上司である部長に営業提案企画の文章を書くケースでは、

  • Objective: 営業部長にとって「四半期目標として設定された売上目標を達成する」
  • Problem: 期初は順調だったが売上にブレーキがかかり、目標達成が難しい状況に
  • Question: 売上目標を達成するためにはどうすればよいか?

この OPQ 分析から、あなたの企画書の主メッセージは「売上目標を達成するためには、◯◯ をすべきである」となります。読み手である部長の Question に対する答えと、その根拠や具体的な実行イメージを書くことになるでしょう。

ポイントは2つです。

  • 読み手にとっての Objective, Problem, Question と、書き手の Answer (主メッセージ) が、トピックとして一貫性があるかどうか
  • 読み手のことが理解され、トピックが的を外したものではないこと。

本書で徹底されているスタンスは、読み手の関心や疑問に向かって書くことです。自分本位に書くことではありません。

そのために提唱されているのが、OPQ 分析なのです。

★  ★  ★

読み手にとってわかりやすい文章を書くためには、本書で書かれていることを理解しただけでは不十分です。自分で読み手の OPQ 分析をし、考えるプロセスと書くプロセスを分けることを実際にやり、この方法を自分でやってみることが大切です。

本書が提案するのは、1日に1回でもよいので、メールを書いて送る前に OPQ 分析と、本書で紹介されている文章を書く時の注意事項を実践してみることです。

なるべく時間をかけずに1本のメールだけでもよいので、これを4ヶ月続けてみましょうと。

本書で書かれている内容は、メールを書く場合などすぐに取り入れて実践できることにとどまりません。レポートや企画書などについても広く応用ができることが、わかりやすく書かれています。




2015/09/19

書評「決定版 日本史」(渡部昇一)




日本の歴史を俯瞰するのに、とても興味深く読めた本が「決定版 日本史」でした。

本書が他にはない価値を持っていると思うのは、国体という日本の国の原理/原則がどのように変化をしたか、これを「皇室のあり方の変化」から日本史を解釈しようとしている点です。

世界的に見て日本の歴史が持つ特徴は、日本が建国され現代に至るまで、たったの一度も王朝が断絶していないことです。

皇歴代天皇は、初代の神武天皇から平成時代の今上天皇まで、125代続いています。過去には一度退位した天皇が再びその位に就くこともあったので、総数は123人と言われています。

王朝に断絶がないというのは、123人は1つの家系として血がつながっていることを意味します。

初代天皇から「男系」であるというのも特筆すべきことです。男系というのは、天皇の父親の父親の … 、と父親だけをたどっていくと、初代の神武天皇まで遡れます。そして、神話まで含めて見れば、天照大神と素盞鳴尊(すさのおのみこと)にまで1本でつながります。

日本の歴史を古代から現在に至るまで、根幹とも言えるこの1本の軸から、日本という国の国体が理解できるのが本書なのです。

国体が変わっても断絶しなかった点が、日本の歴史の類まれなる特徴であると本書では指摘されています。

著者の渡部昇一氏は、これまでの日本において国体の変化は5回あったと言います。
  • 6世紀後半の第31代 用明天皇の時に仏教改宗し、皇室に仏教が入った。これ以降、日本では神道に加え、仏教が影響していく。今でも日本人は神社を尊び、お寺を敬っている
  • 源頼朝が鎌倉幕府を開き、天下を武力で支配する体制に。守護と地頭を全国に配置することで政治の原理が根本的に変化した
  • 13世紀の承久の乱が起こり、これ以降は天皇の皇位継承を幕府が管理することになった
  • 明治憲法の発布
  • 第二次世界大戦に敗戦し、占領下において日本国憲法が制定された

    2015年の現在は、5回目の国体変化後の時代で、6回目が起こるのを待っている状態です。この意味において、憲法改正の議論は日本通史における、第6回目の国体変化を起こそうとしていると見ることができます。

    もう1つ、本書から勉強になったことがありました。

    日本の歴史を天皇という視点から見た時に、本書を読んでいて興味深かったのは、朝廷や皇室の後ろ盾となれるかどうかが明暗を分けたことでした。

    武士の影響が大きくなって以降、自分たちが戦を起こしたり、天下を統一するための大義名分として、官軍であるかどうか、つまり皇室のお墨付きがあるかどうかです。

    ★  ★  ★

    本書は日本の通史を1冊の文庫でコンパクトにまとまっています。それでいて、内容に薄さは感じられず、日本の国体のありようを「変化はするが断絶せず」という視点で書かれています。軸が明確なので、ブレることがないのも読みやすかったです。

    本書から、各時代で興味深い出来事や、当時の考え方など、自分なりにさらに日本史を深掘りしたいと思わせてくれる本です。




    2015/09/13

    経済新聞紙 Economist の電子版と紙でのプライシング調査がおもしろい




    経済新聞紙 Economist で、電子版と紙での価格についてのおもしろい調査がありました。

    MIT’s Sloan School of Management の生徒100人に「電子版:59ドル」「紙+電子版:125ドル」(価格は1ヶ月の購読料)のどちらを選ぶかを調査したところ、以下のような結果になりました。
    • 電子版 59ドル         :68人
    • 紙+電子版 125ドル :32人
    ソース:A user test on decoy pricing: steer decisions and increase conversion - Usabilla Blog

    この結果は妥当なところです。紙と電子版の両方で、電子版だけの2倍以上の価格になります。7割弱の生徒が59ドルの電子版のみを選びました。

    ここで購読プランをもう1つ増やし調査をしています。紙だけで 125ドル、つまり紙+電子版と同じ価格設定です。先ほどとは別の100人の生徒に、プラン3つを提示し選んでもらった結果は次のとおりです。
    • 電子版 59ドル         :16人
    • 紙 125ドル               :0人
    • 紙+電子版 125ドル :84人
    ソース:A user test on decoy pricing: steer decisions and increase conversion - Usabilla Blog

    紙だけで125ドルを選んだ生徒は1人もいませんでした。

    興味深いのは、電子版のみ59ドルを選んだ生徒は16人のみで、8割以上の生徒が「紙+電子版 125ドル」を選択したことです。「電子版」「紙+電子版」の2つのプランの場合は、電子版のみが7割で多数だったので、結果が逆転しました。

    多くの生徒が「紙+電子版 125ドル」を選んだ背景としては、紙だけで125ドルであり、同じ購読料で電子版も追加される紙+電子版で125ドルがお得に見えたのでしょう。

    プランが2つしか提示されなかった1つ目の調査では、「電子版 59ドル vs 紙+電子版 125ドル」と紙を追加したプランが電子版の2倍以上であることが、判断基準でした。

    一方、プランが3つになり、「紙 125ドル vs 紙+電子版 125ドル」を見て、紙+電子版が魅力に映りました。

    Economist のもともとの3つのプラン、電子版: 59ドル、紙: 125ドル、紙+電子版: 125ドルは、3つ目の「紙+電子版」を選んでもらいたい意図が見えます。

    仮定の話ですが、もし紙だけの購読料が電子版よりもやや高い69ドルあたりであれば、どういう調査結果になったでしょうか。
    • 電子版       :59ドル
    • 紙               :69ドル
    • 紙+電子版 :125ドル
    回答者数はバラけるのではと思います。

    Economist でのプランごとの新聞購読料の調査結果は示唆に富みます。お客さんに選んでもらいたい価格プランを選ばれやすくするため、そのプランを魅力的に見せる比較対象のプランをいかに設定するか、ということです。

    Economist の今回の例であれば、紙だけで125ドルのプランを見せることで、同じ価格なのに電子版もついてくる「紙+電子版 125ドル」が魅力的に見えました。

    もし、紙だけのプランを訴求していくのであれば、紙+電子版の価格をあえて高くし(例: 150ドル)、紙だけのプランを半分未満にすれば、紙だけは魅力のある価格設定です。

    適用できる例としては、レストランで A コース: 3000円、B コース: 5000円だとします。2つだと、A コースを選ぶ人が多いでしょう。

    コースをもう1つ追加し、A コース: 3000円、B コース: 5000円、C コース: 7000円とすれば、A と B だけの時よりも、(C よりも安い)B コースを注文する人が増えるのではないでしょうか。


    2015/09/12

    書評「レポートの組み立て方」(木下是雄)




    「レポートの組み立て方」は、1994年に発売された本です。

    内容紹介を引用します。

    レポートの役割は、事実や情報を取捨選択して整理し、それについての作成者の意見を加えて、読み手にわかりやすく伝えることである。

    そのためには、事実と意見を区別することを学ぶとともに、伝達手段としての言語技術の訓練が欠かせない。『理科系の作文技術』で話題をよんだ著者が、豊富な具体例をもとに、そのノウハウをわかりやすく説く。

    本書で示されている良いレポートは、次の3つを満たしていることです。

    • 事実と意見が区別されている。事実が客観的に書かれ、意見は根拠 (事実) に基づいている
    • 主題という最も言いたいことが明確である
    • 読み手にとってわかりやすく書かれている

    2015/09/10

    Google で活躍する「ラーニングアニマル」とは?




    「How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント」という本の内容を簡単に表現すると、次のようになります。

    グーグルが求める人材である「スマート・クリエイティブ」を同社がいかに大切にしているか、彼ら/彼女らが持つ能力を最大限に発揮するためにどういう環境や仕組みをつくり上げてきたのか。

    グーグルの企業文化、採用を非常に重視していること、人事や組織のあり方。スマートクリエティブに自由と権限を与え絶え間ないイノベーションをいかに実現するか。

    とても興味深く読むことができた本でした。

    本書の一番のキーワードは「スマート・クリエイティブ」です。本書から引用すると以下の特徴を持っています。
    伝統的な知識労働者と、ここ十数年私たちが一緒に働いてきたグーグルのエンジニアをはじめとする優秀な人材を比べてみると、後者がまったく違うタイプの労働者であることがわかる。

    グーグルの社員は特定の任務にしばられていない。会社の情報やコンピューティング能力に自由にアクセスできる。リスクテイクをいとわず、またそうしたリスクをともなう取り組みが失敗したとしても処罰や不利益を受けることはない。職務や組織構造に束縛されることはなく、むしろ自分のアイデアを実行に移すように奨励されている。

    納得できないことがあれば、黙ってはいない。退屈しやすく、しょっちゅう職務を変える。多才で、専門性とビジネススキルと創造力を併せ持っている。

    要するに、少なくとも従来の意味での知識労働者ではないのだ。私たちが「スマート・クリエイティブ」と呼ぶ新種で、インターネットの世紀での成功のカギを握る存在だ。

    スマート・クリエイティブになるためにはどんな姿勢が必要になるのでしょうか。そのヒントとして興味深かったのは、「ラーニング・アニマル」であれ、ということでした。
    とびきり優秀な人でも、変化のジェットコースターを目の当たりにすると、もっと安全なメリーゴーランドを選ぼうとするケースはやまほどある。心臓が飛び出しそうな体験、つまり過酷な現実に直面するのを避けようとするのだ。

    ヘンリー・フォードは「人は学習を辞めたとき老いる。20歳の老人もいれば、80歳の若者もいる。学びつづける者は若さを失わない。人生で何よりすばらしいのは、自分の心の若さを保つことだ」と言った。

    グーグルが採用したいのは、ジェットコースターを選ぶタイプ、つまり学習を続ける人々だ。彼ら”ラーニング・アニマル”は大きな変化に立ち向かい、それを楽しむ力を持っている。

    自分のまわりを見て、あらためてラーニングアニマルだと感じる人がいます。

    常に新しいことを学ぶ貪欲な姿勢があります。ただし、単に学ぶだけというわけではありません。学習を続けるだけではなく、学んだことを「次」に活かしているのです。

    得られた情報や知識を、何が問題かの課題設定に使い、問題解決プロセスにも活用する。変化は当たり前と認識し、そのような環境でやっていくためには、自分の経験から持っている知識すらも、時には塗り替えることをいとわない人たちです。

    「学ぶ → 学習内容を活かして成果を出す → 学ぶ → … 」、という良いサイクルを、彼ら/彼女らは回し続けているように見えます。それも、小さいサイクルを早く回しています。

    もう1つ特徴を上げると、身近なラーニングアニマルの人たちは、何を学ぶべきかの取捨選択の基準が自分の中でクリアになっているように見えます。

    自分の中でいくつもの課題意識があり、そのアンテナに引っかかったものを深掘りしていく。

    一方で、途中でこれは違うと感じたり、深掘りする必要はこれ以上はなさそうだと思えば、その時点で止める。結果、広げすぎず、その時々で必要なことに絞って、学びを続けているのではないでしょうか。

    ★  ★  ★

    最後に、フォードの言葉を再度引用しておきます。

    「人は学習を辞めたとき老いる。20歳の老人もいれば、80歳の若者もいる。学びつづける者は若さを失わない。人生で何よりすばらしいのは、自分の心の若さを保つことだ」




    2015/09/05

    データ分析者として大切にしたい「データ分析をする時の4つの問い」




    「会社を変える分析の力」は何度か読み返している本です。

    というのは、自分がこれまで、そしてこれからもデータ分析をする時に、大切にしたい指針が書かれているからです。

    その方針とは、「データ分析をする時の4つの問い」です。

    1. その数字にどこまで責任を取れるか?
    2. その数字から何がわかったか?
    3. 意思決定にどのように使えるのか?
    4. ビジネスにどれぐらい役に立ったか?

    自分の仕事とデータ分析は、切っても切り離せないものです。今自分がやっている分析案件は、4つを全て満たしているのか。意識して問うことを心がけるようにしています。

    1. その数字にどこまで責任を取れるか?

    データ分析者の最低限の役割は、数字という集計結果を出すことです。だからこそまず問われるのは、出した数字が正しいかどうかです。

    データから集計して結果を得られると、達成感は高まります。一方で、その数字が本当に正しいのか、単純な表記間違いや計算ミス、分析ミスをしていないか、という冷静さが必要です。自分自身がその数字に違和感がなく納得のいくものかどうか。

    データ分析者にとっての1つ目の問いは、自分が集計し分析した数字に責任が取れると言えるかどうかです。

    なお、「数字が正しいか?」と「分析から予測できることが正しいか?」は別の話です。データ分析結果というのは、あくまでデータという過去の事実から導かれる答えであり、これから起こる未来がその通りになるとは限りません。

    データ分析者として責任を持たなければいけないのは、あくまで分析結果の数字が正しいかどうか (集計ミスなど間違っていないこと) です。

    2. その数字から何がわかったか?

    データ分析をした結果、例えば B に比べて A の効果は有意に 15% 高かった、という事実があったとします。

    ここで注意しないといけないのは、15% 高いというのは集計結果に過ぎないことです。データ分析者に求められるのは、この 15% という数字から分析者は何を考え、何を意味するかという「解釈」や「知識」を提供することです。

    数字の解釈をするためには、そもそもの分析目的、課題 (分析視点)、仮説、あるいはデータ収集における制約条件などに立ち返って考える必要があります。

    先ほどの「B に比べて A の効果は有意に 15% 高かった」については、解釈としては 15% 高かったので A を本格的に実施すると提言できるのか、それとも、ある条件では A を推奨するが違う条件下ではこういう理由で B が望ましい、と、データ分析者の視点により変わり得るものです。

    15% 高いという結果は、プロセスを正しく踏めば他の人でも出せます。しかし、この結果をどう解釈し結論付けるか、どんな示唆を提示するかこそ、データ分析者の腕の見せどころです。分析者として、価値が出せるかどうかが問われるのです。

    そのためには、集計結果の数字を出した後に、(そこで終わりではなく) どれだけ考察ができるかです。

    3. 意思決定にどのように使えるのか?

    データ分析の価値は、意思決定のためにどう使えるかにあります。もっと言えば、そもそものデータ分析に取り掛かる始めの時点で、こういう意思決定のためにデータ分析をする、という明確な設定がないといけません。

    例えば、マーケティングの C と D の2つの案があるとします。どちらが適切なのかが決めかねている状況で、分析結果から C or D のどちらがよいかの示唆を与える。あるいは、この条件では C、条件がこう変われば D、という使い分けのための判断材料を提供する。

    大切にしたいのは、いきなり集計や分析プロセスに入るのではなく、自分はこれからどういう問題に対して、何のために分析を始めるのか。得られるであろう集計結果とその解釈が、意思決定にどう役立つかをまず最初に考えることです。

    集計結果の読み込み、考察、レポート作成時においても、常に意思決定に貢献するためにはどういう見せ方がよいかを心がけたいと思っています。

    4. ビジネスにどれぐらい役に立ったか?

    ビジネスで分析をする以上は、データ分析からわかったことが実際のビジネスに貢献できたかどうかが問われます。ビジネスへの貢献度を具体的な数字 (売上や受注件数など) で答えられることです。

    自分が実施したデータ分析が、売上や利益などのビジネスにおいて有益であったとなるのは1つの理想です。

    データ分析結果が正しく (ミスがないと責任を持てる)、集計結果だけではなく考察や示唆まで提示する、意思決定の判断材料になる、という段階までと、ビジネスとして役立つレベルでは、ハードルとして違いがあります。

    売上などへの影響は様々な内部と外部要因があり、データ分析から提示できる情報はその1つにすぎません。だからこそ、データ分析者として、ビジネスに貢献できるかどうかまで目指したい。

    ビジネスに役立つところまで持っていくには、分析をして終わりではなく、その結果を役に立てたい、もっと貢献したいという強い気持ちが求められます。意思決定者の立場になり、当事者意識を持つ。意思決定にどう使い、それが実際のビジネスにどう活かされるのか。より具体的にイメージしてみることです。

    ★  ★  ★

    今回のエントリーでは、大切にしたい「データ分析をする時の4つの問い」を取り上げました。

    1. その数字にどこまで責任を取れるか?
    2. その数字から何がわかったか?
    3. 意思決定にどのように使えるのか?
    4. ビジネスにどれぐらい役に立ったか?

    4つの問いを常に意識しながらデータ分析を進めるのか、それとも単に「数字あそび」をやっているだけなのか。

    また機を見て、本書を読み返したいと思っています。




    2015/09/02

    Google のプロジェクト管理ルール「70 : 20 : 10」がシンプルで使いやすい


    ※2015年9月1日に発表された新しい Google ロゴ

    書籍「How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント」に、グーグル内で使われているプロジェクト管理ルールが書かれています。
    2002年の時点で、グーグルはまだプロジェクトを重要な順に並べた「トップ100リスト」をもとに、リソースの配分やプロジェクトのポートフォリオを決めていた。

    だが成長にともなって、このシンプルな仕組みではスケールすることが難しいという懸念が強まった。忌まわしき「ノー」の文化がじわじわと広がるのではないかという不安もあった。

    そこである日の午後、セルゲイはトップ100リストを見直し、プロジェクトを三つのグループに振り分けた。

    プロジェクトのほぼ70%はコアビジネスである検索と検索連動型広告に関するもので、約20%が成功の兆しが見えはじめた成長プロジェクト、残りの約10%が失敗のリスクは高いが、成功すれば大きなリターンが見込めるまったく新しい取り組みだった。

    それを叩き台に長い議論を重ねた結果、「70対20対10」をリソース配分のルールにするという結論に達した。リソースの70%をコアビジネスに、20%を成長プロダクトに、10%を新規プロジェクトに充てるのである。

    各プロジェクトを3つのフェーズに分け、リソース配分を 7 : 2 : 1 に振り分けるとのこと。

    2015年現在、グーグルが公表している中で、主なものを70対20対10を分けてみると、以下のようになりそうです。
    • 70% コアビジネス:検索やマップなどのコンシューマーサービス、広告、Android、YouTube
    • 20% 成長プロジェクト:機械学習 (Machine learning)、自動運転車 (Self driving car)
    • 10% 新規プロジェクト:プロジェクトルーン(気球によるプロードバンドインフラ構築)、涙から血糖値を測定するコンタクトレンズ、老化や病気に長期的な視点で取り組む Calico (カリコ)

    興味深いのは、このルールが経験則から導かれたプロジェクト管理ルールということです。

    もう1つ、「70対20対10」をリソース配分のルールについて、本書で書かれていたことで印象的だったのは、新規プロジェクトの割合が 10% なのは、意図的に制約をつけていることでした。

    ふんだんに予算を投入するのではなく、あえて枠を設けることでイノベーションが起こることを狙っているからです。

    Google の「70対20対10」ルールで思ったのは、この考え方は会社全体のリソース分配で使えるだけではなく、所属部署やチーム内でのプロジェクト管理ルールとしても有用であろうということでした。

    想定しているプロジェクトを、自分たちの根幹である「コアビジネス」、成功する兆しが見えてきた「成長プロジェクト」、全く新しい「新規プロジェクト」のどれに該当するかを考えることから始めてみる。

    コアビジネスはもちろん重要ですが、それだけではなく、チームとして達成が困難なプロジェクトにどれだけチャレンジできるか。一方で、挑戦しがいのあるプロジェクトばかりではチームとしてのリスクも大きいでしょう。

    この時に参考になるのが、70 : 20 : 10 というグーグルのリソース配分ルールです。コアビジネスは 70% を確保する。新規ビジネスは 10% に留めておく、もしくは、なるべく 10% 程度は新しいことにチャレンジする。

    この考え方は、個人レベルでも使えます。例えば、自分の仕事のうち、コアビジネスは何で、自分にとっての新しい仕事は何か(新しくチャレンジする領域)を考えてみるのです。

    毎四半期ごと、あるいは毎年、自分の棚卸しをすることで見えてくる発見もあります。前回は新規プロジェクトとして取り組み始めたものが、今は成功が見えてきた成長プロジェクトにフェーズなっている、さらに進み、いつの間にか自分のコアビジネスになった、などです。

    新規ビジネス → 成長プロジェクト → コアビジネス、に昇格していく。あるプロジェクトが次のフェーズに進み、新規ビジネスが減った分だけ、新しくやることをつくり出す。

    新規ビジネスというリスクを取ってチャレンジしているものは、常に自分の中では 10% を保っている状態でありたいと思っています。




    follow us in feedly このエントリーをはてなブックマークに追加

    Facebook Page

    バックナンバー

    Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...