2015/09/19

書評「決定版 日本史」(渡部昇一)




日本の歴史を俯瞰するのに、とても興味深く読めた本が「決定版 日本史」でした。

本書が他にはない価値を持っていると思うのは、国体という日本の国の原理/原則がどのように変化をしたか、これを「皇室のあり方の変化」から日本史を解釈しようとしている点です。

世界的に見て日本の歴史が持つ特徴は、日本が建国され現代に至るまで、たったの一度も王朝が断絶していないことです。

皇歴代天皇は、初代の神武天皇から平成時代の今上天皇まで、125代続いています。過去には一度退位した天皇が再びその位に就くこともあったので、総数は123人と言われています。

王朝に断絶がないというのは、123人は1つの家系として血がつながっていることを意味します。

初代天皇から「男系」であるというのも特筆すべきことです。男系というのは、天皇の父親の父親の … 、と父親だけをたどっていくと、初代の神武天皇まで遡れます。そして、神話まで含めて見れば、天照大神と素盞鳴尊(すさのおのみこと)にまで1本でつながります。

日本の歴史を古代から現在に至るまで、根幹とも言えるこの1本の軸から、日本という国の国体が理解できるのが本書なのです。

国体が変わっても断絶しなかった点が、日本の歴史の類まれなる特徴であると本書では指摘されています。

著者の渡部昇一氏は、これまでの日本において国体の変化は5回あったと言います。
  • 6世紀後半の第31代 用明天皇の時に仏教改宗し、皇室に仏教が入った。これ以降、日本では神道に加え、仏教が影響していく。今でも日本人は神社を尊び、お寺を敬っている
  • 源頼朝が鎌倉幕府を開き、天下を武力で支配する体制に。守護と地頭を全国に配置することで政治の原理が根本的に変化した
  • 13世紀の承久の乱が起こり、これ以降は天皇の皇位継承を幕府が管理することになった
  • 明治憲法の発布
  • 第二次世界大戦に敗戦し、占領下において日本国憲法が制定された

    2015年の現在は、5回目の国体変化後の時代で、6回目が起こるのを待っている状態です。この意味において、憲法改正の議論は日本通史における、第6回目の国体変化を起こそうとしていると見ることができます。

    もう1つ、本書から勉強になったことがありました。

    日本の歴史を天皇という視点から見た時に、本書を読んでいて興味深かったのは、朝廷や皇室の後ろ盾となれるかどうかが明暗を分けたことでした。

    武士の影響が大きくなって以降、自分たちが戦を起こしたり、天下を統一するための大義名分として、官軍であるかどうか、つまり皇室のお墨付きがあるかどうかです。

    ★  ★  ★

    本書は日本の通史を1冊の文庫でコンパクトにまとまっています。それでいて、内容に薄さは感じられず、日本の国体のありようを「変化はするが断絶せず」という視点で書かれています。軸が明確なので、ブレることがないのも読みやすかったです。

    本書から、各時代で興味深い出来事や、当時の考え方など、自分なりにさらに日本史を深掘りしたいと思わせてくれる本です。




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