2015/04/29

価値のあるデータ分析とは「意思決定につながる」こと

仕事でのデータ分析で、いつも意識したいと思っているのは、今やっているデータ分析が「意思決定につながるかどうか」です。

やみくもにデータ集計や分析プロセスに入るのではなく、自分はこれからどういう課題に対して、何の目的で分析を始めるのかをまず明らかにすること。得られるであろう結果/解釈が、意思決定にどう役立つかをまず最初に考えること。

データ分析をするにあたって大切にしたいと思っているスタンスです。




「統計学が最強の学問である[実践編]」という本には、次のような記述がされています。

データ分析を因果関係の洞察、すなわち、最終的にコントロールした結果とそれに影響を与える原因の候補、という観点で捉えるのである。

なお私はこの「最終的にコントロールしたい結果」のことをアウトカム(成果指標)と呼んでいる。そしてそのアウトカムの違いに影響するかもしれない、あるいはその違いを説明できるかもしれないという要因のことを説明変数と呼ぶ。

なお、説明変数はともかくアウトカムという表現は一般的な統計学の教科書ではあまり登場しない。かわりに「結果変数」とか「目的変数」とか「従属変数」とか、機械学習の分野では「外的基準」と呼ばれるものがこのアウトカムにあたるが、私がこの表現を使うのはとても大事な意図がある。

(中略)

ビジネスにおいても同様に、データ分析を価値に繋げようとすればまず、自分のデータから表現できるもののうち「最大化したり最小化したりすべきゴールとなる項目」が何なのかを考えなければいけない。これがアウトカムである。

マーケティングなら売上や顧客数を、営業戦略なら成約件数やその合計金額を、調達に関わっていれば在庫破棄率や仕入れ価格、あるいは欠品による機会損失額などがアウトカムにあたるだろう。

ただ、集計するアウトカムの選択が適切であったとしても、たとえば単に売上の平均値や総額を眺めていただけでは、「どうすれば儲かるのか」はわからない。何の根拠もなく前年比5%増を目指して頑張りましょうと号令をかけるのがせいぜいである。

そこで、そのアウトカムを左右する「原因の候補」である説明変数が重要になる。

たとえば性別で売上を比較したところ、女性の平均売上が明らかに高かった、という結果が得られたとする。この場合、女性が来店しやすい店舗設計を心がけたり、女性のよく見るメディアに広告を出稿することで、そうした施策のコストを大きく上回る売上増が見込めるかもしれない。

あるいは、顧客が自社に対して「親しみやすい」というブランドイメージを持っているかどうかで大きく平均売上が変わるのであれば、広告や製品のデザインをより親しみのあるものに変えただけで売上を上げられるかもしれない。

こうした原因の候補という観点を意識せずに、何となく「これまでよくやられてきたから」というだけで、性別と年代という説明変数だけを考えていたのだとすればたいへんもったいないことである。

自分がやるデータ分析について、アウトカム(目的)と説明変数(原因)を明らかにすることの大切さが強調されています。

これはまさに、分析/考察結果が受け手の意思決定に役に立つかを考えることに他なりません。説明変数→アウトカムの「因果関係」を明らかにすることで、受け手はこれから自分たちがやろうとしていることの判断材料になるのです。

データ分析に入る前に、今の分析の背景や課題は何か、分析結果は誰のどういった意思決定に寄与できるか。こうしたデータ分析作業の前後を常に考えておくことで、価値のある分析ができるようになると思っています。




2015/04/25

書評「統計学が最強の学問である[実践編]」(西内啓)




「統計学が最強の学問である[実践編]」という本をご紹介します。

タイトルに実践編とあるように、前作「統計学が最強の学問である」に比べると、統計学をどう使うか、特にビジネスにどう活用するかに軸足が移った内容になっています。

実践編のほうの本書で、著者は、統計学は使う目的は大きく3つに分けられると言います。①現状の把握のため、②将来予測のため、③人間を洞察するため因果関係を知ることです。

これら3つの違いを理解するために、健康診断や医者からの診断に例えるとわかりやすいです。

現状把握というのは、健康診断によって、自分の今の健康状態を知ることです。体重や体脂肪率、血圧、心拍、視力や聴力、血液状態、肝臓の状態などの各検査結果から、どこに健康上の問題がありそうなのかを知ることができます。

将来予測とは、健康診断や人間ドックの結果から、例えば、今の生活を続けると、将来に糖尿病の可能性がxx%上がる。極端な例で言うと、あなたの余名はあとxx年(残り何年生きられる)というものです。

因果関係を知るとは、医者からの診断によって、普段の生活の何を改善すればより健康になれるのか、余名を伸ばせるのか、を把握することです。心身ともに健康的な生活を送ることを目的とし、そのためにどんな取り組みをすれば目的に寄与するかという因果関係を知ることです。

この例で言うと、自分であれば最も知りたいことは、自分自身の何を変えればより健康になれるかです。自分の健康状態について、現状把握や将来予測は重要ではないとは言いませんが、健康になるための因果関係を知ることが欲しい情報です。

話を本書に戻すと、統計学を使う3つの目的のうち、「統計学が最強の学問である[実践編]」で扱われているのは、3つ目の「人間の行動を洞察するための統計学」です。別の表現をすれば「人間の行動の『因果関係』を洞察するための統計学」です。

以下は本書からの引用です。
調達や仕入れを担当する部門の人であれば、仕入れ価格や出荷数の変動を予測して対処するということが一番の関心かもしれないが、マーケティング部門などではしばしば予測よりも洞察のほうが重要になる。

たとえば、いざ完成した商品に対して、「この商品がいくつ売れるか」という正確な予測よりも、「どのようなプロモーションをすれば商品が売れるか」「どのような商品を作ればヒットするか」という洞察のほうが利益の源泉となるのだ。

すなわち、購買という求める結果の背後にどのような原因が存在するか、という因果関係を探り当てることが重要なのである。

本書が最も刺さる読者は、データ分析者というよりも、分析されたレポートを読み、報告や提案内容をどう次に活かすかの判断する人だと思いました。

統計学の視点を持つことで、データや集計情報、考察された結果/示唆をどう読むかのリテラシーを高めてくれる本です。




2015/04/22

Facebook 動画広告効果調査が色々と考えさせてくれた

Facebook と 調査会社 Nielsen が共同で、Facebook 動画広告の効果測定調査を実施しました。結果は以下で発表されています(2015年3月)。

The Value of Video for Brands | Facebook for Business




■調査手法

調査の方法は、
  • 調査対象の広告は 173 本
  • 対象の広告を見せるグループと(Exposed group)、対照群のグループ(Control group)を比較
  • 広告に効果があったかどうかの評価項目は3つ。広告想起(Ad recall)、ブランド認知(Brand awareness)、購入意向(Purchase intent)
  • さらに、動画広告の視聴時間長さによって、広告効果の違いを計測
  • 2014年12月 - 2015年2月に実施 (参考:この調査についてのインタビュー記事)

調査対象の広告について、1点補足です。

発表ページ(こちら)には書かれていなかったのですが、この調査について前述インタビュー記事(こちら)には、次のような言及がされていました。
Since we wanted to understand successful campaigns, we then filtered the selected studies for those campaigns that had lift across Ad Recall, Brand Awareness and Purchase Consideration; for example, we used only studies with statistically significant lift in Brand Awareness for the Brand Awareness portion of our analysis.
ここで言われているのは、3つの指標(Ad recall, Brand awareness, Purchase intent)を見たのは、3つともで有意な増加があった動画広告に絞った、とのこと。

つまり、結果として発表されたのは、対象とした 173 本の全てにおける結果ではなく、173 本の中から結果が良かったもの(significant lift)のみなのです。この点に、注意が必要です。

ここは非常に重要で、発表のページにはその点が全く触れられていません。少なくとも結果が 173 本の全てではなく、広告効果があったものに絞ったことは書くべきです。そして、173 本のうち、対象とした有意に増加した広告が何本あったかの言及も必要でしょう。

これは読み手にミスリードを起こしうるし、誠実な調査発表結果とは言えません。

■購入意向まで効果があった調査結果。でもこれは当たり前の話だった

調査結果について、いくつか印象を書いておきます。なお、上記でも触れた通り、結果は有意に良かったものだけに絞った広告のみである前提で見る必要があります。

例えば、発表された結果だけを最初見たときは、広告想起 / ブランド認知 / 購入意向の 3 つ全ての指標において、広告効果が見られたことは注目に値すると思いました。特に、個人的に興味深かったのは、購入意向まで効果が見られた点です。

というのも、一般的には「広告想起 → ブランド認知 → 購入意向」とファネルが深くなる分、広告を見たことにより、その商品/サービスを買いたいと思う態度変容が起こるのは簡単ではないからです。

私自身も、業務で Facebook のこの調査と同じような広告効果測定調査の経験があります。広告想起やブランド認知まではアップリフトがあっても、態度変容の一番深いところにある購入意向までは広告が寄与しないケースが多くありました。だからこそ、Facebook の動画広告効果測定調査で、購入意向まで効果が見られたことは驚きでした。

しかし、購入意向が上がった結果であったのは、そもそもとして 173 本のキャンペーン広告から、増加したものだけに絞られていました。3つの指標で有意にアップリフトがあったことは当たり前、という話でした。

なので、知りたいのは、173 本のうち、購入意向まで効果があったのは何本あったのか。購入意向と効果あり/なしにはどういった違いが傾向として見られるか。

あるいは、同じ動画素材でも、広告を出す場所(メディア)の違いで広告効果に差が出るのかも興味深い分析視点です。

例えば、同じ動画広告でも、① Facebook のフィード内自動再生広告(Auto play)、② YouTube 上のプレロール動画広告、③ Web 上のバナー面やコンテンツ内に表示される自動再生動画広告、は広告効果(ブランドインパクト)に違いがあるかというリサーチができれば、とても興味があります。

購入意向などの広告効果(ブランドインパクト)に寄与する要因として、クリエイティブとメディアの各要因でどうなるのか。このあたりを深掘りした結果が知りたいところです。

■広告を見た時間長さ(秒数)による広告効果の違い

次に興味深い点は、広告を見た時間(秒数)によって、広告効果に違いがあったかどうかを見た結果でした。

ここでも、調査手法として補足があります。

この調査では、広告を接触させるグループ(Exposed group)と、比較対照としてのグループ(Control group)を構築する設計となっています。広告視聴時間まで分解して見る場合、Exposed group も Control group も同じ視聴時間の人どうしで比べる必要があります。

ここで問題になるのは、Control group の人の視聴時間をどう割り出すかです。というのも、Control group は広告に接触しない人たちなので、そもそもとして対象広告を何秒見るかがわかりません。

そこで Facebook と Nielsen が工夫したのは、Control group の人たちが「仮に調査対象広告を見たとすれば、何秒見たであろうか」をモデルにより予測したことです。例えば、A さんは 5 秒見るであろう人、B さんは 25 秒見るであろうと予測し、A さんは、Exposed group の 5 秒広告視聴者との比較対照として「5 秒 control group」と扱ったのです。

なお予測モデルには、各ユーザーの Facebook 上のデータを使ったとのこと(参考:上記インタビュー記事)。

個人的に、このモデルがどこまで精緻なのかは気になりますが、これ以上は判断のしようがないのも事実です。なので、ここからは、広告視聴秒数ごとの Exposed group と Control group が、比較するために正しく作られている(Apple to Apple)という前提で見ていきます。

広告を見た時間長さ(秒数)による広告効果の違いの結果は、以下のグラフです。



このグラフで、いくつかおもしろい結果が出ています。例えば、
  • Ad recall は動画広告を長く見るほど、アップリフトが高くなる (緑のグラフが増加傾向)
  • Brand awareness (ブランド認知)は、15 秒くらいまでは増加しているが、15 秒以上は長く見てもアップリフトはほぼ同水準
  • Purchase intent (購入意向)は、他の 2 つに比べ視聴時間長さによるアップリフトの違いは少ない
  • 広告想起(Ad recall)では、1 秒の動画広告接触でも 15% 程度のアップリフトが見られる

■動画広告を終わりまで見られなくても広告効果がある。では何秒ならよいか?への示唆

次も、広告の視聴時間長さごとで見た結果です。

以下のグラフは、広告効果が見られた人を各指標ごとに 100 とし、視聴時間の長さの構成比を積上で表したものです。



グラフの見方は、一番左の Ad recall なら、広告効果があった人のうち、広告を 3 秒以内までしか見なかったのは 47% (半分弱)、10 秒以内しか見なかったのが 74% (4 人のうち 3 人)。

おもしろいのは、横軸 x (視聴時間) が増えるごとに y はまず急激に大きくなり、視聴秒数が大きくなるほどグラフはなだらかな増加を示しています。グラフの形状が y = x^1/2 のような増え方です。

個人的な感覚としては、y = x^2 、もしくは、ある点がティッピングポイントになって急激に増加し、その後にまた増加が鈍化する S 字カーブを描くのではと思っていました。

広告視聴が 3 秒以内でも、Brand awareness 効果があった人の 1/3、Ad recall 効果があった人の 1/2 の人で態度変容があったことは興味深いです。

確かに自分の感覚を当てはめてみると、例えば YouTube の動画広告で 5 秒経過すると広告をスキップできる TrueView があります。

スキップするかどうかとは、その動画広告が自分にとって興味があるかどうかです。自分の場合は、ほぼどの広告も 5 秒たった時点ではスキップするかどうかを判断できています。さらに言えば、5 秒のスキップができるまで「早くスキップしたい」と待っていることもあります。

これはつまり、5 秒よりもっと短い時間で、その広告を判断していることを意味します。自分のこの感覚と、Facebook 調査結果を合わせて考えてみると、動画広告の冒頭 3 秒くらいで、人は興味ある/ないの評価ができてしまうのかもしれません。

そう考えると、TVCM を使った 15 秒や 30 秒の動画広告でも、最初の 3 秒から 5 秒でいかに視聴者の関心を惹きつけられるか(アテンション)が大事であると、Facebook の調査結果は示唆しています。


2015/04/18

Google のエイプリルフールに見る郵便受けの不便さ




2015年4月1日 (エイプリルフールです)、Google は Smartbox by Inbox という、全く新しいメールサービスを発表しました。

Smartbox by Inbox: the mailbox of tomorrow, today | Official Google Blog

Smartbox by Inbox は電子メールではなく、通常の郵便受けです。様々な機能がついていて、
  • 専用アプリを使うことでスマホと連携。郵便受けに手紙が入ると通知があり、実際に郵便受けを見なくても確認できる
  • 手紙の自動振り分け機能がある。迷惑メール機能があり、チラシなどの不要なものを受け入れない (不要チラシを入れようとすると静電気が発生(?)し、郵便受けに触れさせない)
  • 郵便受けの側面にあるディスプレイでタッチパネル操作が可能
  • 郵便受けを持ち運ぶこともできる

実際のイメージは、以下の Google からの紹介映像をご覧ください。

2015/04/15

セオドア・レビット「真のマーケティングに必要なのは『知識』よりも『思考』である」

元ハーバード・ビジネススクール名誉教授である故セオドア・レビット (Theodore Levitt: 1925-2006)。1960年代に近視眼的マーケティングを提唱したことでも有名です。

セオドア・レビットへのインタビュー記事が、「Harvard Business Review (2008年11月号)」に掲載されていました(記事は再掲として)。なお、この2008年11月号は「マーケティング論の原点」がテーマです。

■真のマーケティングのためには、「知識」ではなく「思考」が必要である

記事では、聞き手からの「いかに真のマーケティングを実践するか」という問いに対して、次のように語っていました。

「思考」と「イノベーション」がキーワードではないでしょうか。

残念ながら、思考という行為は、多くのマネージャーに歓迎されたり、いちばんに優先されたりすることはありません。

マネジャーやリーダーを選ぶ際、いちばんに重視されるのは経験であり、それも「成功の経験」です。その証左が、あらゆる公式の場で珍重されるのが「経験で語る人物」であり、「理屈はそのとおりですが、しかし――」という、一種傲慢であり、侮辱的な響きが感じられる発言です。蛇足になりますが、理論も思考と同様、あまり尊重されませんね。

ここで申し上げている思考という概念には、過去の経験や事実だけに頼らないという意味も含んでいます。

トップ・マネジメントのみならず、ライン・マネジャーですら、過去に拠りどころを求めるマネジメントに傾きがちです。はたして、これでよいのでしょうか。

マネジャーが組織に持ち込む最大の危険物は、「過去の経験」と「それに基づく知恵」です。これらのおかげで――概して人間の記憶は持続性に乏しいものにもかかわらず――彼ら彼女らは迅速かつ自信満々に行動できる。しかし予期せぬ変化や不意打ちには、まるで役に立ちません。マネジメントは明日のためのものであって、昨日のものではないのです。

「うまくいっているかい」と声をかけるよりも、「何か新しいことはあるかね」と尋ねるほうが重要です。前者は過去に関する質問ですが、後者は将来に関する質問だからです。

思考は明日のため、イノベーションのために必要な行為です。

セオドア・レビットが強調しているのは、知識よりも思考です。

語っている文脈で理解すると、ここで言う思考とは、過去の経験がベースになっている知識ではなく、むしろ経験に縛られずに明日や未来を考え、自らやまわりに問いかける行為。そして、マーケティングには思考が必要である、と。




■ Data, Information, Intelligence の3つは、全く違うと認識すべき

知識よりも思考が重要であると語った後に、続くインタビューでセオドア・レビットは興味深い指摘をしています。

過度なデータ主義も奨励されるものではありません。人間から識別力や判断力を奪うには、膨大なデータや情報を注入することです。データは情報ではないし、また情報は意味ではありません。データを情報に、情報を価値に変えるには何らかの加工が必要です。それが思考です。

引用部分の中で、印象に残ったことは2つありました。

1つは「データは情報ではないし、また情報は意味ではない」。解釈をするに、データは情報ではないというのは、Data は Information ではない、と言っているのではと思います。

データとは、単に集められただけの状態です。ちなみに Data の語源はラテン語の Dare (与える)で、データは「与えられたもの」です。

それに対して Information は、データが整理され使える状態になっているものです。検索可能な状態とも言えます。イメージとしては、データが集計され数表やグラフになっている状態がインフォメーションです。

ビッグデータという言葉はあっても、ビッグインフォメーションという表現はありません。データという状態とインフォメーションという状態では、違うものです。

セオドア・レビットはさらに「情報は意味ではない」と言います。

ここの解釈は、インフォメーションというデータを整理しただけでは不十分で、インフォメーションを加工し、分析/評価をしてはじめて、そこに意味がある、すなわち価値があると言っているのだと思いました。

Data を加工し Information にし、それを分析し評価することで得られるのが Intelligence です。先ほど、Information は数表やグラフと書きました。Intelligence とは、数表やグラフから比較や分析がされ、目的に応じた見解や示唆が示されているものです。

日本語では、Data も Information も Intelligence も、いずれも「情報」と表現できてしまいます。逆に言うと、これら3つの状態を区別せずに、ひとくくりに同じものと見なせてしまいます。

個人情報についても、「個人 data」「個人 information」「個人 intelligence」と分けて考えることで、個人情報の問題設定や問題解決に向けての議論も深まるような気がします。

■データを価値に変えるには「思考」が必要

印象に残った2つ目は、「データを情報に、情報を価値に変えるには何らかの加工が必要。それが思考である」。これは、Data / Information / Intelligence の今の話にもつながります。

セオドア・レビットが、真のマーケティングには過去の経験にもとづく知識よりも、未来を見る思考が重要になると言っていたことを併せて考えると、示唆に富む指摘です。

Data → Information → Intelligence とより高度なものに変えていくために必要なのは「思考」であり、過去の経験ではないのです (個人的には、情報を価値に変えるためには、経験にもとづく知識が全く不要とは思えず、知識と思考の両方が必要で、より重要なのが思考だと解釈しています)。

データというものは、ファクトであるがゆえに、常にそれは過去に起こったことです。いくら大量のデータであっても、ビッグデータとは過去のことです。

そのデータをインフォメーションに整理した段階でも、あくまでそれは過去を整理した状態にすぎません。

データを加工し、目的に応じて分析する行為は、単に過去を把握するだけではなく、現在や未来を予測し理解することです。Data と Information の段階では、過去情報でしかありませんが、Intelligence には未来の要素が入るのです。

そう考えると、セオドア・レビットが言う「データを情報に、情報を価値に変える」ために、知識ではなく思考が必要という意味が見えてきます。




2015/04/11

Moment of Truth:古くて新しいマーケティング理論

元ハーバード・ビジネススクール名誉教授であるセオドア・レビット (Theodore Levitt) へのインタビュー記事が、「Harvard Business Review (2008年11月号)」に掲載されています。この2008年11月号は「マーケティング論の原点」がテーマでした。

■顧客は商品やサービスではなく「期待価値」を買う

記事タイトルは「ビジネス・リーダーの近視眼を正す マーケティングの針路」。

インタビューで、「マーケティングの本質とは、顧客への『誓約』である」と語っています。この部分はインタビューの中で特に興味深いものでした。
顧客は商品やサービスではなく「期待価値」を買う
顧客はーーどのような製品やサービスであろうとーー自分が望むところを必ずや満たしてくれるという「事実」について、事前に100%知ることはできません。したがって、企業は「我々はあなたを満足させます」という「誓約」を売り、顧客はそれを購入することになります。

一部の後払いサービスを除けば、商品やサービスを買った後に、私たちは利用します。順番としてはお金を支払うことが先なので、購入時点では買った商品からこんな満足できるだろうという、あくまで期待でしかないのです。

この状況をセオドア・レビットは「期待価値を買う」と表現しています。

■Moment of Truth というマーケティング概念

商品やサービスを提供する企業側と、それらを買う消費者との間には、商品/サービスについての情報量に非対称性が存在します。

上記のセオドア・レビットの表現に当てはめると、企業側が消費者に示す「誓約」(この商品はこういう満足ができます)についての情報や知識は、企業のほうが消費者よりも多いわけです。

企業からの商品への「誓約」に対して、消費者は本当にそれが自分の満足につながるかどうか、つまり自分が期待する価値を持っているかどうかを、商品購入前にできるだけ知ろうとします。例えば、店頭で商品を手に取り、表のパッケージ情報だけではなく、裏面の商品紹介を見て価値があるかどうかを判断する、といった消費者行動です。

マーケティングにおいて、この考え方を積極的に取り入れたのが、P&G でした。

2005年に提唱した FMOT (First Moment of Truth) というインストア マーケティング概念です (FMOT は「エフモット」と読みます)。

FMOTとは「消費者は、店頭で商品を見て3〜7秒で魅力的かどうかを判断する」というもの。P&G では、この3〜7秒に「真実の瞬間 (Moment of Truth)」があると考えたのです。

Moment of Truth は、店頭での真実の瞬間を First Moment of Truth、つまり第一段階と言っています。Moment of Truth には、4つの段階があるとされています。どのタイミングに「真実の瞬間」があるかをと言うと、
  • Zero Moment of Truth (ZMOT): 商品を検索したり、口コミ情報を見たとき
  • First Moment of Truth (FMOT): 店頭で商品を見たり手に取ったとき
  • Second Moment of Truth (SMOT): その商品を買って実際に利用したとき
  • Third Moment of Truth (TMOT): その商品をリピート購入するなど好きになったとき

冒頭で引用したのインタビュー記事では、セオドア・レビットは次のように語っていました。企業は商品/サービスについての「誓約」を示し、顧客が買うのは誓約から思い描く「期待価値」である、と。

商品/サービスを買う消費者の心理からすると、なるべく期待と現実のギャップを小さくしたいと思います。企業側からの「誓約」を鵜呑みにしてよいのか。買って使ってみたけれど、言われていたほど/期待したほどの満足が得られなかった、期待価値ほど実際の価値はなかったという残念な経験はしたくない。

セオドア・レビットの言葉に戻ると、消費者は「期待価値」を買うということは、消費者は先物買いをし、企業は先物売りをやっていることになります。

こうした消費者心理を鑑みると、「FMOT (店頭)」だけではなく「ZMOT (事前情報収集)」も考慮し、いかに誓約をつくり、それを消費者に伝えるか。

商品/サービスを買い、使ってから評価し、満足するのが以前の時代だとすると、今は買う前にすでに評価/判断され、そこでどんな期待価値をつくってもらうかも問われます。



P&G が FMOT という考え方をつくったのは2005年。FMOT だけではなくその前後に存在するいくつかの「真実の瞬間」そのものは、人々が何かを買っていたどの時代でもあったものです。お金と商品/サービスをやりとりする以前の、物々交換の時代でも真実の瞬間はあったはずです。

Moment of Truth という考え方は、古くもあり新しくもあるマーケティング理論です。

企業から消費者へ価値を伝えるための「誓約」(例: ブランド)、顧客が買っているのは商品やサービスではなく「期待価値」である、消費者が価値を体験するいくつかの「真実の瞬間 (Moment of Truth)」。

そんなことをあらためて考えさせられたハーバードビジネスレビューのインタビュー記事でした。




2015/04/08

イチロー「特別なことをするために、特別なことはしない。普段通りの当たり前のことをする」




2015年、イチロー選手はメジャー15年目のシーズンを迎えます。

PRESIDENT Online にイチローの記事が掲載されていました。「鉄人」イチロー・世界記録への挑戦|PRESIDENT Online

41歳ながら、怪我もなく、動きに衰えは見えない。まさに鉄人、まさに「無事是名馬也」である。

「からだの準備がすごいですよね」。先日、懇親会の際、ラグビー界の“レジェンド”、43歳の元日本代表、まだ現役の伊藤剛臣(釜石シーウェイブス)はそう漏らした。「ぼくがストレッチを必死でやりはじめたのは40を越えてから。でも彼は、それをずっとやっているわけですから」

2015/04/04

Googleの特許から考える「自分自身をロボットにダウンロードするとどうなる?」

Google が取得した特許が話題になっています。出願は2012年4月で、2015年3月31日に登録されたとのことです。

有名人や故人の人格をロボットにダウンロードする時代が来る?Googleが特許取得|ITmedia ニュース
人格データをクラウドからダウンロードしてロボットに吹き込む──米Googleがこんなシステムの米国特許を取得したことが分かった。有名人や故人の人格をロボットに演じさせるといった使い方も想定しているようだ。
特許は2012年4月に出願され、今年3月31日に登録された。人のさまざまな特徴に基づく人格データを蓄積するデータベースやデータを配信するクラウドベースのシステムで、ネットを介してロボットやモバイルデバイスが人格データを受信し、人格を再現する。

■人格をどうやってデータ化するのか

このニュースで最初に思ったことは、人格はどうやってデータ化されるのかでした。予想するに、例えば、明るさ / 協調性 / 責任感、といった性格診断に使われるような各種項目を点数化した情報なのかもしれません。

性格に加え、思考力や記憶力などの能力についてもデータ化され、人格を構成する1つの要素となり得ます。

自分自身のこともわかっているようで、実はわかっていないものだと思うので、人格をどうやってデータ化するのか。それが実際にどの程度その人を反映しているのかは興味深いテーマです。

■自分自身の性格や能力をロボットにダウンロードするとどうなるか

上記のニュース記事では、この特許の利用想定として、有名人や故人の人格をロボットにダウンロードすることが言及されています。

これをもし、自分自身の人格をロボットに入れればどうなるのでしょうか?



仮に、自分の性格や思考能力がほぼ完璧にデータ化でき、さらには運動能力もデータ化できダウンロードする。ロボットの見た目や声色も人間を自在に再現できるとします。これらが実現できれば、そこにはもう1人の自分が存在することを意味します。

中身が自分の人格そのものだとしても、それはあくまで自分ではない他人なのか(この世に自分とは1人しか存在しない)、物理的にはロボットなのでそもそも人間ではなくロボットである、といった哲学的な議論も呼びそうですが。

話を戻して、自分の人格をロボットに入れれば、分身として自分をつくることができます。使い方の想定としては、離れた家族のもとに分身ロボットを置いておくようなイメージでしょうか。

さらに仮定として、自分の性格や思考能力が再現されたロボットに、高度な機械学習の機能を追加できるとします。ここで言う「高度」とは、一般的な人間の学習能力程度、あるいはそれ以上をイメージしています。

この場合、自分の人格を入れたロボットに、日常生活を送らせたり仕事をさせるなどの経験を積ませればどうなるのでしょうか?

機械学習の能力があるので、自分を再現させた時点よりも経験を積むことで、賢くなっていくはずです。機械学習の能力が人間以上(自分よりも学習能力が高い)であるとすれば、自分よりもロボットのほうが優れていく。つまり、自分と自分を再現したロボットとの能力格差は開いていくことになります。

経験を積むことで、当初ロボットにダウンロードした人格にも影響し変わっていくと考えられます。そうなると、中身はもはや自分と同じではない存在になっていきそうです。

ロボットに自分をダウンロードした時点では自分のコピーにしかすぎなかった存在が、お互いが同じではない経験を積むことで別々の道を歩み、違った存在になっていくのでしょう。

ロボットは人間と違い半永久的に存在できるので、究極的には、寿命のある人間のほうが死んだ後は、自分を再現したロボットを「自分として」この世に存在させ続けることも、(技術的には)可能になっていくのかもしれません。


2015/04/01

Yahoo! JAPANのアンケートと検索ログデータを比較した調査

Yahoo! Japan が検索データを使ったおもしろい研究をしています。検索データとアンケート回答で、商品購入検討開始のタイミングに違いがあるかの調査です(2014年10月実施)。

Yahoo! JAPANの検索ログデータで見る「購買プロセスにおける購入検討開始のタイミング」|Yahoo! JAPAN マーケティングソリューション

検索データという「行動データ」と、アンケートからの「意識データ」の両方を使って調査し、検証している興味深い取り組みです。




■どんな調査をしたのか

検索データにおいて、商品購入検討開始の定義を Yahoo! では以下のように定義したようです。
「購入の検討を始める」という行為を「商品に関する情報収集を始める」と再定義し、「商品の関連キーワードの検索を始めた時期」と明確に位置づけました。
こうすることにより、実際に「検索」という行動に表れる商品購入の検討開始時期を知ることができると考えたからです。

より厳密な表現をすれば、ここでいう検索データの位置づけは「商品の関連キーワードの検索を始めた時期」です。

「商品関連キーワード検索の開始時期(赤色グラフ)」とアンケートからの「購入検討の開始時期(黒色グラフ)」の違いを、自動車で見た結果は以下の通りです。x 軸は何ヶ月前に開始されたか、y 軸は回答者数です。


引用:Yahoo! JAPANの検索ログデータで見る「購買プロセスにおける購入検討開始のタイミング」|Yahoo! JAPAN マーケティングソリューション
  • アンケートデータでは、約7割の人が購入前の直前 ~ 4カ月以内に購入を検討開始すると回答
  • 検索ログデータでは、購入前の4カ月よりも前の時期から検索を開始している人が多くいる
Yahoo! のこの調査のポイントは、同じ調査対象者について、アンケートと検索の両方をデータとして入手し、検証していることです。同じ人のアンケート回答と検索データを見られるのは、検索ローデータを持っている Yahoo! だからこそできる調査なのです。

■意識データと行動データの「購入検討開始タイミング」定義は同じか?

この調査結果を見た時にまず思ったのは、アンケート回答による購入検討開始タイミングと検索データから定義した購入検討開始タイミングを、同列に比較してよいかどうかでした。

すなわち、2つは同じ定義として扱ってよいかという問題です。

検索データからの定義について、ヤフーでは「購入の検討を始める = 商品に関する情報収集を始める」と再定義したと説明しています。

個人的には、関連商品の検索時点で、まだ購入するかどうかを考えていないケースもあり得ると思います。

ある商品やサービスについて検索をする場合、例えば「XX とは」と検索すれば、これは検索対象のことを知りたいという行動で、本人としてはまだ買うかどうかまで至っていないことも考えられます。

「商品関連キーワードを初めて検索したタイミング = 購入検討を開始」とは全てで当てはまらないと思います。検索データの定義については、表現はあくまで「商品関連キーワード検索の開始時期」とすべきではないでしょうか。

もちろん、定義なのでどちらが間違いという問題ではなく、ある意味で決めの問題です。

一方で、アンケート回答からの「購入検討開始のタイミング」をどう定義したかは、ヤフーのリリースでは詳しくは書かれていませんでした。

アンケート上でどういう質問のしかた(表現)をしたのかがわからないので、意識データのほうは厳密な定義自体がここでは不明です。

なので、今回の検証結果を見る際に、そもそもとして行動データと意識データの定義は本当に同じであるかが知りたいところです。

■意識データと行動データをどう活用するか

意識と行動の乖離を、データから検証するという取り組みは興味深いものです。

意識についての調査は、アンケートから知る方法が一般的です。ただし、今回のヤフーが実施したような最大で12ヶ月前までを対象期間にするようなアンケートでは、回答者の記憶もあいまいになっていたり、記憶違い(誤認)の可能性もあるでしょう。

アンケート自体を否定するわけではありませんが、アンケート結果を見る際にはそうした前提情報を持った上で集計/分析する必要があります。

検索ログデータなどの行動データについては、集計結果からどう解釈し、何を読み取るか。集計結果というファクトから、どんなインサイトを得られるか。ここが分析者にとって腕の見せどころになります。

アンケート結果は正しいという前提に立った場合、今回の調査が教えてくれたのは、意識上の購入検討開始のタイミングよりも、初めて関連ワードを検索するのはもっと前であったという事実です。

つまり、重要なのは、「アンケートと検索データで購入検討開始が一致しない」というよりも、「関連検索を初めてするのは、本人が購入を検討し始めたと意識しているよりも前のタイミングですでに起こっている」ということです。

例えば、このずれ(検索行動は意識よりも事前に発生)を活かしたマーケティングが望ましいでしょう。こうした生活者の真実を知るために、アンケートという意識データと、検索データなどの行動データをどううまく活用するか。

そして、より生活者を知った上で、どういうアクションを取るかがポイントです。


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