2015/06/27

同僚がマクドナルドに行かなくなった理由

少し前にランチを一緒に食べていた会社の同僚が、マクドナルドについてこんなことを言っていました。

「マックは前は時々行っていたけど、最近は行かなくなった」

その理由を聞いてみると、店内のレイアウトが変わったからとのことでした。

以前の行っていた頃はソファタイプの椅子があり、よく使っていたそうです。ところが、ソファがなくなり、代わりに設置されたのはサイズが小さくなった固めの椅子とテーブルだったそうです。それまでの居心地の良さがなくなってしまい、いつの間にか行かなくなったと。

この話題、興味深い内容だったので、今回のエントリーで取り上げてみます。




■競合を提供する「価値」をベースに考える

マクドナルドが売っているのは、ハンバーガーやポテト、ドリンク、サラダなどのファストフードです。お客にとってのマクドナルドの「価値」は、おいしいファストフードが気軽に、安く食べられることです。

同僚との会話の中であらためて考えさせられたのは、マクドナルドが提供する価値はハンバーガーなどのフード以外にもあるということでした。

同僚にとって、ソファでゆっくりとリラックスできることがマクドナルドに行く理由だったわけです。これがマクドナルドが同僚という1人の顧客に提供していた価値です。

「店内でゆっくりとリラックスできる」という価値提供を視点に考えると、マクドナルドの競合は、他のハンバーガーファストフード店(ロッテリアなど)というよりは、スタバなどのカフェやレストランになります。

顧客にとって、求める価値(ベネフィット)があり、その時に頭の中で浮かぶ選択肢が競合です。同じ価値を提供するもの同士が競合関係になるわけです。

マクドナルドの同僚の例で言うと、「会社の外に出て、ゆっくりとリラックスしながら食事をしたい」と思い、そのニーズを満たすことができそうな、頭の中に浮かぶ候補がマクドナルドの競合になるのです。

いくつかの候補先の中から、他の店ではなくマクドナルドが選ばれれば、その選択理由こそがマクドナルドの「強み」です。競合に比べ、差別化できていているからです。

同僚の場合は、マックが選ばれていた理由は、ソファでゆっくりとリラックスでき、かつハンバーガーやサラダなどの食事も価格に対してそこそこおいしいこと。

他の候補であるスタバでは「コーヒー等のドリンクは良いし店内でゆっくりできるが、フードはマックのほうがいい」、他のレストランは「料理は充実しているけど、食後はすぐに出て行かないといけないと感じてしまう(ゆっくりできない)」、のだそうです。

■「提供する価値」の視点でターゲット顧客を絞る

同僚がよく行っていた会社近くのマックは、店内のレイアウト変更で、彼女が気に入っていたソファタイプの椅子がなくなってしまいました。代わりに、コンパクトな椅子とテーブルが増えました。

マックとしては回転率を上げる狙いがあったのでしょう。「店内でゆっくりする客」をターゲット顧客から外し、「ハンバーガーをさっと食べていく客」に絞る。客数を増やすことで売上を増やす狙いです。

ターゲット顧客ではなくなった同僚は、その結果としてマックに足を運ばなくなりました。マックの変更によって、同僚が求める価値は満たされなくなったからです。別の表現をすれば、マックはその価値を提供しない方針に変えたからです。

マックは、ターゲット顧客を絞ったことで、1人の客を失いました。その分、店内でさっと食べたい客は、ソファをなくしコンパクトな椅子とテーブルを設置したことで増えたはずです。

ターゲット顧客を絞ることは悪いことではありません。顧客を、自分たちが提供する価値を求める人たちに絞ること自体は、良いことです。

絞らないと、例えば、店内でゆっくりしたいニーズと、店内でおしゃべりしたいニーズの両方を満たしていくことになります。しかし、現実的には難しいでしょう。

静かな環境でゆっくりとコーヒーを飲みながら過ごしたい客がいる隣で、4人グループの女子高生が盛り上がっていれば、ゆっくりとリラックスしたいニーズは満たせれません。そのお店はゆっくりできる価値を、それを求める顧客に提供できていないことになります。

ポイントは、ターゲット顧客を絞るという戦略に対して、店内のレイアウトや BGM などの店内環境、店員の対応、などの各種戦術に一貫性を持たせることです。

時間がない時にさっと食べられる価値を提供するのであれば、店内のテーブルの配置は客が通りやすいように配置され、流れる音楽もアップテンポのものになります。店員の服装も動きやすさが重視され、きびきびとした態度で対応する。スタバのような馴染みの客への親密なコミュニケーションは必ずしも必要ありません。

細部にわたって、戦略と矛盾がない。それができて、顧客にとって一貫性のある価値がもたらされます。

マクドナルドは、顧客の回転率を上げることを方針としました。ただし、この方針自体は、お客にとってはまだ価値にはなっていません。あくまでマクドナルドの都合です。

回転数を上げるために、一貫性のある各種施策(例: ハンバーガーがすぐに出てくる)ができているか。そうしてはじめて「食事に時間をかけていられない時にさっと食べられる環境」が提供でき、それを求める顧客にとって価値があるのです。


2015/06/24

書評「生命科学研究に成功するための統計法ノート」(その2)



今回のエントリーでは、「生命科学研究に成功するための統計法ノート」という本をご紹介します。

本書のタイトルには「生命科学研究を成功するための」とあり、事例として扱っている範囲は生命科学です。しかし、読むにあたって生命科学の専門知識がなくても、全く問題ありません。

本書の大きな特徴は、統計法の、特に仮説検定についてわかりやすく説明がされていることです。

仕事や学業で仮説検定を使う人で、検定の基本的なところがなんとなくわかったつもりになっているものの、まだ腑に落ちきっていないというような方におすすめです。
以下は「はじめに」からの引用です。
統計法を使うには、わかりやすい教科書が必要です。ですが、みなさんは、これまでの統計法の本に違和感を抱いていませんか。「生命科学の理論はシンプルだが、統計法の論理は複雑で異質だ。何冊も統計法の本を読むが、結局、わからない」と。

統計法の本でよく見るアプローチは、統計法の考え方にそれぞれの分野やテーマを合わせる考え方です。統計法が主語なのです。

一方、本書では逆のアプローチを取ります。生命科学研究を「主」にし、統計法を「従」と捉えます。

「はじめに」からの引用の続きです。
私たちは生命科学の立場から統計法の仮説検定を批判的に検討しました。その結果、生命科学の仮説検定と統計法の仮説検定に、くいちがいがあることに気付きました。このくいちがいのため、統計法に対する違和感が生まれていたのです。「統計法がわからない理由は、これまでの統計法の仮説検定の説明にある」と筆者らは考えるようになりました。

生命科学の仮説検定は、仮説の真意を二者択一で判定するシンプルなものです。その際の重要な数字(マジックナンバー)は2です。そこで、シンプルな生命科学に統計法を合わせればシンプルな統計法ができるはずです。本書はこの線上に生まれました。

統計学での仮説検定では、通常、二重否定の考え方をします。1つの問題に対して、帰無仮説と対立仮説という2つの仮説を立てます。

例えば「A という施策には、ターゲット顧客の店頭訪問の回数を増やす効果があるのではないか」という問題があったとします。これに対して統計学で立てる帰無仮説と対立仮説は、
  • 帰無仮説:施策 A には効果がない
  • 対立仮説:施策 A には効果がないとは言えない

そして、実験や調査により帰無仮説(A には効果がない)を棄却し否定することで、対立仮説を採択するアプローチを取ります。対立仮説は「効果がないとは言えない」なので、つまり「効果がある」とするわけです。二重否定法は、否定を否定することで肯定するロジックです。

一方、統計法を抜きに普通に考えれば、仮説設定は「施策 A には効果がある」とするでしょう。そこで、本書のスタンスはこの「直接法」をとります。

同じ例を直接法に当てはめると、「施策 A には効果がある」という仮説に対し、効果があるかないかを仮説検定をします。検定の結果、統計的有意差が認められれば「効果がある」仮説を採用します。二重否定に比べシンプルかつ、違和感のないやり方です。

本書では仮説検定の考え方、実際に Excel でどう検定ができるかが事例とともにわかりやすく説明されています。

仮説検定はなぜ必要なのか。統計的に有意差があるとはどういう状態を言うのか。P値の考え方と計算方法。見開きで左ページに文字による説明、右ページにグラフなどの図による説明が丁寧に書かれています。

本書は統計法の本としてユニークな存在です。あくまで統計はサブで、生命科学研究をメインにしています。

統計学を専門に勉強するというよりも、統計を仕事や学業の「道具」として使う方には、読んで損はない一冊です。

本書の書評は、過去エントリーでも一度取り上げていますので、もしよければ。
書評「生命科学研究に成功するための統計法ノート」




2015/06/20

顧客視点の経営戦略:顧客を絞れば全てが決まる

これまに読んだマーケティングの本で、最もおすすめな1冊が「経営戦略立案シナリオ」です。

本書のサブタイトルには「顧客視点で事業の競争力を強化する!」とあります。一貫して顧客を基点に考えていくことの重要性が説明されています。

印象的だったのは、顧客を絞れば(明確にすれば)、そこから連動して戦略と戦術が決まっていくことでした。
経営の根幹が顧客だから、経営戦略も顧客視点であるべきだ。

顧客を絞れば、競合が決まる。競合が決まれば、差別化ポイントが決まる。差別化ポイントが決まれば、独自資源も決まる。

あなたの経営を顧客のアタマの中に合わせていこうというのが、本書でいう「顧客視点の経営戦略」なのである。




■顧客を決める

顧客を決めるときの視点には、「あなたから買いたい人」と「あなたが売りたい人」の2つがあります。

「あなたから買いたい人」とは、彼ら/彼女らの求めるニーズを自分たちが提供する価値で満たせている人たちです。自分たちの強みを評価してくれ、価値として認めてくれています。

「あなたが売りたい人」とは、例えば、購買力の高い層を狙う、あるいは長期にわたって顧客関係を続けていきたい人たち、などです。

最終的には、あなたから買いたい人 = あなたが売りたい人、となるのが望ましいです。

売りたい人と買いたい人を別にして考えないようにする。あなたが売りたい人に対して、自分たちが提供する価値が、求めるニーズに合っているかどうか(買いたいと思ってもらえるか)。すなわち、自分たちが提供できる価値 = 顧客が求めている価値、と価値が一致することがポイントです。

■顧客を絞れば競合が決まる

本書の(戦略としての)ユニークな考え方の1つに、競合が決まるのは顧客の頭の中で、というものがあります。

顧客が何かを欲しいと思う瞬間、買いたいと思うときに、頭の中ではいくつかの選択肢があるとします。自社以外の選択肢が競合であり、それら全ての選択肢を合わせたものが自分たちが戦う「市場」になります。

市場を決めるのは自分たちがではなく、あくまで顧客の頭の中で生まれるわけです。だから、顧客を決めれば、自ずと競合が決まるのです。

■顧客と競合が決まれば、差別化ポイントが決まる

差別化ポイントとは、競合に対して優位に提供できる価値です。かつ、顧客にとってそれが価値になっているものです。

顧客の頭の中に浮かんだ選択肢に対して、競合よりも自分たちが選ばれるためには、自分たちが提供する価値(= 顧客が求めているニーズ)が競合よりも差別化されていなければなりません。

差別化のポイントは、利便性や価格優位性かもしれないし、技術的に/品質で優れているケースもあります。あるいは、顧客が利用しやすいようなオーダーメイドでカスタマイズできるのが魅力という場合もあるでしょう。

本書では、これら3つの差別化ポイントの方向性を、「手軽軸」「商品軸」「密着軸」と定義しています。

自分たちはどの軸を追求するかは経営者の役割です。3つ全てを満たすのは不可能に近く、例えば、どれか1つでナンバー1を目指し、他の2つは少なくとも競合と同程度であれば、競合に対して優位な立場を築けると言います。

■顧客を絞ればメッセージが決まり、販売チャネルや広告媒体も決まる

差別化ポイントが決まれば、それをどうやって顧客に伝えるかのメッセージも決められます。

いかに魅力的な差別化ポイントを持っていても、顧客に届き伝わらなければ、差別化ポイントは机上のものでしかありません。顧客は価値として認識しないのです。

差別化ポイントとしてメッセージをどこでどうやって伝えるか。理想的には、自分たちの決めた顧客が接触する媒体にメッセージ(例: 広告)を出すことが望ましいです。

そこに顧客がいるから、彼らにとって魅力的な(価値として感じてもらえる)内容を、メッセージにして伝える。そして、顧客が買う場所が販売チャネルになります。

一方、その媒体には自分たちが決めた顧客はどの程度いるのか。そもそも、顧客はどこの媒体に、どの程度いるのか。こうした顧客をより理解することは欠かせない深掘りです。

顧客を絞る段階で、その顧客に到達できる販売チャネルや広告媒体はどこか。逆に、自分たちが使えるチャネルや媒体に接触する人たちは顧客になり得るか、という戦術面からの視点で、基点となる顧客セグメンテーションを進める必要も場合によってはあるでしょう。

■戦略と戦術を俯瞰する

このように、戦略と戦術の一貫性も忘れてはならない大切な視点です。

以下、本書からの引用です。
戦略を考えるとは、「戦略→戦術」という一方向の単純なものではなく、すべてを俯瞰しながら一貫性をとっていく、行ったり来たりのプロセスなのだ。「戦略→戦術」と一方向で考えると、戦略と戦術の境目に溝ができてしまう。

だから、戦略を考える際には戦術をおぼろげながらアタマに置き、実行できるかどうかを確認しながら行うことになる。実行できない戦略には意味がないからだ。

戦略を考えるにあたって、戦略のプロであることは必要条件だが、十分条件ではない。現場での戦術の知識・体験が豊富な人でないと、実行できない机上の戦略を作ってしまう。戦略を作る際には戦略のプロと戦術のプロの両方を巻き込むことが重要だ。




2015/06/17

保育園1才児クラスに通う娘への、今年1年の「保護者の目標」

1才9ヶ月の娘がいます(2015年6月現在)。4月から保育園に通い始め、1才児クラスに入っています。

保育園では、1年ごとに「個人目標」を設定します。「保護者の目標」と「保育園での支援」の大きく2つです。

保護者の目標は、こんな子どもになってほしい、というだけではなく、親としてどういう方針で、どのような行動を取るかです。

保護者の目標に対し、保育園ではどのように支援するのかも設定します。そして、1歳児クラスが終わる時に、目標と支援に対する振り返りを行なうというもの。

1才児クラスの長女への今年の「保護者の目標」は、2つ挙げました。




1. 子どもが本来持っている好奇心を、親が邪魔しないようにする

1才の自分の子どもを見ていると、親である自分には些細なことでも好奇心を持っています。しかし、親がそれに気づかず、親の都合でその好奇心を邪魔してしまうことがあります。

好奇心が続いているのに、つい先を急がせてしまったり、他のことをすすめてしまいます。子どもが持っているせっかくの好奇心を、結果として邪魔しているわけです。

子どもが本来持っている好奇心を、親が邪魔しないために親としてできることは「何もしないこと」。

親がするべきことは最低限の範囲に留めたいと思っています。子どもがやることに対して、もしそれが危険であったり、他の子に迷惑がかかるようなことは、親がコントロールする。それ以外は、子どもが持つ好奇心を最大限に尊重する。

親である自分の都合で、子どもの好奇心を邪魔しないこと。1才の娘に対する1つ目の親の目標です。

関連エントリー:子どもの「芽」を摘まないために親ができること


2. 親の都合で怒らず、子どものために叱る

娘がやったことに、親として「いけない」と思った時に、親として怒る、もしくは叱るケースがあります。

「怒る」と「叱る」をあえて分けて書いたのは、理由があります。2つを区別し、後者である「叱る」ことを適切にやりたいと思っているからです。

怒ると叱るの違いは、
  • 怒る:感情的。自分の都合から。気持ち/ストレスが発散される
  • 叱る:理性的。相手のため。子どもにとって悪いことを正すため。やってはいけない行動に対して取る行動

よくやってしまいがちなのは、娘の行為が親である自分にとって好ましくないだけで、娘を怒ってしまうことです。娘は悪いことをしているわけではないにもかかわらず。

娘が自分の言うことを聞かない、思い通りにやってくれずについ感情的になってしまうことがあります。これは自分の都合だけで「怒る」状況です。

感情的に怒っているため、怒られる/怒られない、または怒るトーンも、同じことをやってもその時その時で違っているはずです。娘にとって、自分がなぜ怒られているのかがわからず、以前と怒られ方が違うと感じてしまっているかもしれません。

親の都合で怒らず、あくまで子どものためを思って「叱る」。

悪い行ない、やってはいけない行動に対して、娘のために正すべき時に叱るようにすることが、2つ目の保護者としての目標です。

関連エントリー:0歳の赤ちゃんを怒るとき。叱るとき。


2015/06/13

書評「経営戦略立案シナリオ」(佐藤義典)

ビジネスとは「顧客に価値を提供し、顧客からその対価をもらうこと」です。これが自分の中での最もシンプルな表現です。

従って経営戦略として考えるべきことは「どのような顧客に、どんな価値を提供し、どうやってお金をいただくか」となります。

経営戦略を実行する1つの要素としてのマーケティングにおいても、これは当てはまります。

今回のエントリーでは、マーケティングの本で過去に読んだ中から、最もおすすめなものをご紹介します。「経営戦略立案シナリオ」という本です。
経営者の仕事は未来を、戦略を考えることだ。しかし「高級路線で差別化」などお題目のような戦略を唱えている会社は多い。これでは現場がどう動けばいいかわからない。

本書は経営戦略立案の実践で使える戦略ツールを、社長、事業部長、そして将来、経営を担っていくべき人のために体系的にまとめたものである。今まで、なんだか経営戦略のことがわからなかったという人にもしっかり「腹に落ちる」一冊。

タイトルには経営戦略とありますが、マーケティングの本としても得られることが多くありました。

本書の特徴として、本書で詳細に解説されているのが経営戦略のフレームです。BASiCS (ベーシックスと読みます) がそれで、経営戦略の5つの要素の頭文字からのネーミングです。
  • Battlefield (戦場)
  • Asset (独自資源)
  • Strength (強み / 差別化)
  • Customer (顧客)
  • Selling Message (売り文句)

全体を通して強調されているのが5つの要素の一貫性です。

BASiCS において、整合性が取れれば、①戦いやすい市場で、②独自資源を活かし(ノウハウや資産など)、③差別化された商品/サービスを、④ターゲット顧客に対して、⑤わかりやすく価値を伝える、ことができます。

こう書くと非常にシンプルです。見方によっては簡単に見えるかもしれません。

しかし、シンプル = 簡単ではないのです。シンプルであり、本質だからこそ、それを自分たちの状況に当てはめ、かつ組織で実行し、結果を出し続けることは決して簡単なことではないでしょう。

だからこそ、本書には価値があると思います。B to C のみならず、B to B であっても普遍的に当てはまる内容になっています。(BASiCS に興味のある方は、経営戦略フレームワーク: 戦略BASiCS もどうぞ)




この本のサブタイトルは「顧客視点で事業の競争力を強化する!」です。

本書がおすすめできる理由の1つに、一貫して顧客の立場に立った経営戦略が書かれていることにあります。

例えば BASiCS の1つ目の要素である Battle field (市場)。自分たちはどんなマーケットで価値を提供するのかです。

本書では、競合を決めるのは、自分たち(企業などの商品/サービス提供者)ではなく、顧客であると言います。
競合とは、顧客が、「ある価値が欲しい」「欲求を充足したい」というときに、あなたの商品・サービスと一緒に浮かぶすべての選択肢なのだ。本当に競争が起きている場所は、顧客のココロ中だ。それは、あなたが競合であると思っているかどうかは、本質的には関係がない。

顧客が求める価値がまずあり、それが中心になり生活者の中で競合が決まる。生活者の頭の中に浮かぶ選択肢の束がマーケットになる、という考え方です。

この主張はあまり聞いたことがなく、異端に見えるかもしれません。しかし、自分が1人の消費者としての立場で考えたとき、日々の生活の中で起こっていることそのものです。

企業側がいくら競合を設定し、競合に対して自分たちの優位性を示してきたとしても、生活者にとってはそんなことは関係ありません。あくまで、自分が求めるお金を払ってでも欲しい価値があり、その時に浮かぶいくつかの選択肢を合わせたものが、その価値に対してできる市場なわけです。

BASiCS の B について、顧客視点での例を挙げました。他の要素についても、本書では一貫して顧客の立場から書かれています。

本書のタイトルには「経営戦略」とあり、実際に書かれていることは、読み手として経営者を想定されています。

ですが、個人的には、マーケティングに関わる人におすすめです。特にマーケティングの理論は一通り理解してはいるものの、自分の現業に活かしきれていない人(理論と実践がリンクされていない環境にある方)にぜひ読んでいただければ。




2015/06/10

Google Photos はグーグルの悲願であるサインインユーザー増の起爆剤になるか

Google はミッション(使命)として、次のようなことを掲げています。

世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること
Google’s mission is to organize the world’s information and make it universally accessible and useful.

このミッションをまさに体現したものが、写真サービス Google Photos (Google フォト)です。2015年5月末の Google I/O で発表されました。


Introducing the new Google Photos - YouTube


最大1600万画素までの写真が、容量無制限で、かつ無料で保存ができます(2015年6月現在)。

個人的に注目しているのは、Google の技術(人工知能: AI)によって、写真が自動的に整理されること。スマホから写真を撮ることが多くなった一方で、撮った写真は溜まるだけだった状況が、Google フォトによって大きく変わるのではないでしょうか。



ところで、Google フォトのインパクトを、Gmail になぞらえて評価されているようです。

当時のGmailを彷彿とさせるサービス、世界を変えるGoogle Photos|ギズモード・ジャパン
“写真版Gメール”と早くも評判 「Google フォト」の破壊力|ビジネスモデルの破壊者たち (ダイヤモンド・オンライン)

Google フォトと Gmail を結びつけるこれらの記事を読んでいて思ったのは、Google フォトが Google アカウントからのサインイン(ログイン)ユーザーを増やす起爆剤になるのでは、ということです。

Google にとって望ましいのは、自分たちが提供する各種サービスをより便利に使ってもらうために、サインインをしてもらうことです。

比較として Facebook を考えてみます。

Facebook では、ユーザーがログインをして使うことが前提となっています。もちろんログインをしていない状態でも Facebook 内の一部の公開情報は見られます。友人の写真やコメント等を見たり、自分のタイムラインに書き込むためにはログインが必須です。

一方の Google のサービスは、必ずしもサインインをしなくても、ユーザーにとっては不自由なく使えてしまうものがあります。利用ユーザー数が多いもので当てはまるのは、検索がそうであり、Google マップ、YouTube、Chrome が代表例です。これらはサインイン状態ではなくとも、十分に利用価値があります。

それに対して、サインインをしないと価値がない Google サービスもあります。ユーザ―数の多い代表例は、Gmail、カレンダーでしょう。

Google は、検索やマップでも、そして YouTube でもサインインをした状態で使ってほしいと考えているはずです。Google にとって、ユーザーのデータを手に入れることができ、利益の源泉である広告ビジネスも含めて考えると、検索や YouTube でサインインユーザーが増えるほうがなおさらよいのです。

だからこそ、Google はあの手この手でサインインユーザーを増やそうとしてきました。しかし、現状を見る限りは個人的にはあまり成功しているようには見えません。ソーシャルネットワークである Google+ (グーグルプラス) で、サインインユーザーをサービス横断的に増やそうとチャレンジしたのがその一例です。

サインインユーザーをさらに増やすために、例えば Gmail ユーザーを増やす方法もあり得ます。しかし、Line などのメッセージを使う人が多い状況では、メールサービスである Gmail ユーザーを一気に増加させることは難しいのではないでしょうか。

Google フォトはサインインをして使うことが前提のサービスです。

新しい Google フォトの登場によって、初めて Google サービスをサインインしてアクティブに使う人が増えることを期待できそうです。例えば、これまで Google サービスを使っていたのは、(サインインしていない状態での)検索・マップ・YouTube といったユーザーです。特に iPhone ユーザーは Android ユーザーに比べ、その傾向がありそうです。

Google にとって理想的なのは、Google フォトだけではなくあらゆる Google サービスを、Google アカウントからサインインをして使ってもらうことです。

Google フォトがユーザーの写真体験だけではなく、Google 全体にどんなインパクトを与えるのか。注目しています。


2015/06/06

森信三の「しつけ三原則」:日々の小事にこそ躾の本質がある




哲学者で教育者でもあった 故 森信三 は「しつけの三原則」として、次の3つを挙げています。

  1. 朝、必ず親に挨拶をする子にすること
  2. 親に呼ばれたら必ず、「ハイ」とハッキリ返事のできる子にすること
  3. ハキモノを脱いだら、必ずそろえ、席を立ったら必ずイスを入れる子にすること
(森信三師「しつけの三原則」|人間力.com より引用)

3つとも、日常生活のことです。子どもにとって、やろうと思えば誰でもできる、もしくはすでにできているかもしれません。

ただ、よくよく考えてみると、毎日、あるいは毎回、子どもがやっているかというと、そうではないケースが多いのではないでしょうか。

もう1つ、この三原則で思うのは、子どもにとって最も身近な存在である親が、普段からこの3つをやっているかどうかです。

朝、自分(親)は家族に「おはよう」と挨拶をしない時もある。にもかかわらず、子どもにはしつけとして挨拶をしなさいと言い聞かせる。子どもにとっては説得力がないように見えます。2つ目と3つ目も同様です。

自分自身のことを振り返ると、3の靴を脱いだらそろえることは、特に自宅に帰った際はできていませんでした。離席する時に椅子を元に戻すこともやっていなかったです。

しつけ三原則に対するポイントは、一見すると小事に見える日常のことにこそ、毎回毎回できるようにすることです。脱いだ靴をそろえるのは、玄関を共有する他人への気配りです。椅子を入れることも、次に使う他人への配慮です。

一方で、やらなかったからといって、特段に誰かに迷惑をかけるというほどのことでもありません。なので、どうしてもおろそかになりがちです。

だからこそ、それができるかどうか、毎回ちゃんとできるかどうかが、しつけの大事な要素になるのではないでしょうか。そして、子どもをしつけるためには、親である自分ができているかどうかがあらためて問われます。

日々の小事にこそ、躾の本質があるのではないでしょうか。


2015/06/03

仕事を任せてもすぐには楽にならない。仕事を任せることの3つの勘違い

「自分でやった方が早い病」という本では、30代くらいのビジネスパーソンであれば、多くの人が当てはまる内容が指摘されています。以下は、本書の内容紹介からの引用です。
「まわりの人への任せ方がわからない」「いい仕事があがってこないから任せたくない」「教える時間がないから自分でやる」――。

これが「自分でやった方が早い」という病です。病が悪化すると、待っているのは“孤独な成功者”の姿です。「お金はあるが、つねに忙しくて、まわりに人がいない」「仕事の成功を一緒に喜ぶ仲間がいない」。それは本当に「幸せ」なのでしょうか?

本書ではリーダーシップ研修のプロが、自らの失敗体験を交えながら「本当の任せ方」「人の育て方」を披露します。仕事がデキるつもりでいても、成長がストップし、いつの間にか孤立してしまう恐ろしい病。特に30代以降のビジネスパーソン、必読です。




本書での指摘で印象的だったのは、仕事を任せることの3つの勘違いでした。本書からそれぞれについて引用すると、

①「任せる」は失敗が前提

まわりの人や部下に仕事を任せても、一回や二回でできることはありません。百回でも二百回でも失敗するのが当たり前です。そのことを前提にしておかないと、すぐに「こいつは使えない」という烙印を押す結果となってしまいます。

②「任せる」は「丸投げ」ではない

「任せる」は、まわりの人や部下に仕事を丸投げすることではありません。「お前に任せたから、あとは自由にやっといて。結果だけ報告してくれたいいよ」というのは、立派にまわりの人や部下が独り立ちできるようになってからです。(中略)

任せるけれど、すべて見ているし、細かくチェックもする。一挙手一投足を眺めて、脇からハラハラしながら見守る必要があります。いざとなればすぐに助けを出せる態勢を整えておくわけです。

③他人に任せても楽にはならない

まわりの人や部下に仕事を任せると楽になる。そう勘違いしている人も多いのですが、それはまわりの人が一人前だったり、部下が立派に成長してからの話です。最初は、必ず仕事量が増えるので、任せた本人の負担も大きくなります。

「任せたら自分は一切何もしなくていい」というのは「任せる」のゴールです。最初から理想像であるゴールを思い描いているために、「任せる」ことができないのです。

仕事を「任せる」と、より大変になるのは当たり前。それを勘違いしていると、より大変になったときに、「自分は被害者だ」と思ってしまいます。

ポイントは、まわりに任せたとしても短期的には自分の仕事は減らないこと。むしろ、任せたはずなのに負担は増え、「自分でやったほうが早い」状態になってしまいます。

しかし、「自分でやったほうが早い」と思い込み、実際に任せずに自分で抱えている限りは、いずれは限界が来てしまいます。だからこそ、短期的には任せることで自分の負担が増えたとしても、任せていかないといけないと本書では指摘します。

任せ方を色々試し時には失敗しながらも、そのプロセスを通じて、任された側だけではなく、任せる側も成長が促されます。

「自分がやったほうが早い病」を治すためには、単に仕事を振るテクニックを知ればいいわけではありません。この病気を治すとは、プレイヤーとしてのビジネスパーソンから、マネージャーの視点を持ち、実際にそれができる存在になることです。

任せることの3つの勘違いを頭に入れておけば、何度か任せたものの任せる前よりも負担が増え、「やっぱり自分でやるしかない」と思ってしまいそうになっても、もう少し長い目で見られるようになるのではないでしょうか。




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