2015/07/29

オハイオ州立大学の「性的/暴力表現の広告への影響調査」が興味深い




オハイオ州立大学が、広告における性的および暴力的表現が、広告を見た人にどう影響するかの調査結果を発表しています(2015年7月)

​Sex and violence may not really sell products | News Room - The Ohio State University

タイトルにあるように、過度な性的/暴力表現を伴う広告や、同表現を含むコンテンツ内の広告は、広告効果が(性/暴力的でないものに比べ)低くなると指摘されています。場合によっては、その商品/サービスへの信頼性(ブランド)や購買意欲を下げるなどの、マイナス効果も見られたとのことです。

今回のエントリーでは、調査発表内容から興味深かったものを取り上げています。

■調査方法:53の調査の Meta analysis

調査方法は、過去44年間における53の調査をまとめたものです(Meta analysis)。調査対象者はのべ約8,500人。以下は発表からの調査方法についての引用です。
Researchers analyzed the results of 53 different experiments (a so-called meta-analysis) involving nearly 8,500 people, done over 44 years. All of these experiments examined some facet of the question of whether sexual or violent media content could help sell advertised products.

調査の視点として大きくは2つで、①広告に性的/暴力表現が含まれる場合の影響と、②性的/暴力表現を伴うコンテンツ内に表示される広告の影響です。後者については、広告自体は必ずしも暴力的なものや性的な表現は含まれません。

また対象となったメディアは、紙媒体 / テレビ / 映画 / テレビゲームとのこと。(個人的にはネットも対象メディアに含まれていればよかったなと)
Their analysis included studies involving a variety of types of media, including print, TV, movies and even a few video games. They examined studies in which the ads themselves contained sex or violence and studies in which only the media surrounding the ads contained such content.

この調査では広告効果を見る指標として、広告対象のブランドが記憶されたか・そのブランドへの認識(brand attitudes)・購買意向で、性的/暴力表現による影響を見ています。

■調査結果:コンテンツまたは広告内の性的/暴力表現が注目され、広告メッセージへの関心が下がる

オハイオ州立大学の調査発表から、興味深いコメントを引用します。
“People are so focused on the sex and violence they see in the media that they pay less attention to the advertising messages that appear along with it,” Bushman said.
(引用者注: Brad Bushman is co-author of the study and professor of communication and psychology at The Ohio State University)
コンテンツ内の性的/暴力表現に注意が惹きつけられるために、広告メッセージ(本来伝えたいこと)への関心が相対的に低くなる。

Men’s brand memory was more impaired than women’s when watching media content or ads featuring sexual or violent imagery.

“This fits in with evolutionary theory that suggests males pay more attention to violence and sex than women do,” Lull said. “Because they’re paying more attention to this content, they are less likely to remember the ads.”
(引用者注: Robert Lull is Ph.D. in communication at Ohio State)
男女を比較すると、男性のほうが、性/暴力表現により注目する傾向があり、そのために広告ブランドへの記憶が弱くなる。

■調査結果:過度な性的/暴力表現を伴う広告はブランドや購入意向にネガティブに影響する

興味深い結果をもう1つ。性的/暴力表現のある広告が、購買意向にどう影響するかです。
Sexual ads didn’t hurt brand attitudes and buying intentions overall. But the higher the levels of sexual content in the ads, the more negative the attitude people had toward the brand and the less likely they were to say they would buy the product.

過度な性的/暴力表現がある広告は、その商品やサービスを買いたくなくなってしまう影響が見られたとのことです。性的あるいは暴力的表現により単にその広告が記憶に残らないだけではなく、購入意向が下がってしまうのです。

本来、広告を出す目的は、端的に言えば売上を伸ばすことです。広告を見せることで、買いたいと思わせる購入意向を喚起することを意図しています。

しかし、性/暴力表現が広告に含まれることで、目的とは逆の結果になってしまう。広告を流すことにお金をかけたにもかかわらず、自社ブランドに損害を与えてしまっているわけです。

思うに、次のような心理的/感情的なプロセスが発生しているのではないでしょうか。広告内に性的/暴力的な表現が含まれると、それを見た人が嫌悪感を抱く。その感情が広告されている商品自体にもネガティブな影響として伝染する。

自分の経験から言うと、広告内の商品と全く関係がなく、単に注意を惹くだけのために性的/暴力的な表現を使った広告は残念に思うことがあります。この事象が、今回の調査結果からも出ているように思えます。

ネガティブな影響が、年代と時代によってどう違うかも検証されています。特に、以下の2つ目の時代について、ネガティブな影響は昔よりも最近のほうが小さくなっているとの指摘が興味深いです。
Older people in the studies were less likely to say they would buy products featured in violent or sexual ads, compared to younger people.
Another interesting finding was that memory impairments and negative attitudes toward brands featured in violent or sexual ads have actually decreased over the past decades.


2015/07/25

「子どもの気持ちを受け止める」のと「子どもの言うとおりにする」ことは別で考えよう




「今日から怒らないママになれる本!―子育てがハッピーになる魔法のコーチング」という本には、自分の子どもの気持ちを受け止めること、承認してあげることの大切さが強調されています。

ただし、気持ちを汲んであげることと、(わがままなど)子どもの言う通りにすることは別であると指摘します。大事な視点だと思ったので、本書から引用します。
子育てコーチングの最初にして最大のツボ、それは、ひとことで言うと「子どもの気持ちを受け止める」ことに尽きると思います。(中略)

子どもが投げかけてくれるさまざまなメッセージ(言葉だったり、行動だったり、表情だったり)をキャッチすることです。(中略)

まず受け止める。よく見て、よく聞いて、気持ちをわかってあげて、それを「わかっているよ」と伝えること。

(中略)

間違ってはいけないのは、「気持ちを受け止める」のは「子どもの言うとおりにすること」では決してないということです。

「学校へ行きたくない」と言ったからといって、「そうか、わかった。じゃ、学校に行かなくてもいいわよ」とその内容に賛同するわけではないのです。必ずしも子どもの望みやリクエストに応えなくていいんです。

どんな事情があったのかはまだわからないけど、とりあえず「学校に行きたくない」という子どもの気持ちを、「あなたはいま、学校へ行きたくない気持ちなのね」「お母さんはそのことをわかっているわよ」と伝えてみましょう。

もっと身近な例にたとえみましょう。

スーパーで「お菓子買って〜!」と泣く子に対して、「わかった、わかった、じゃ、買ってあげる」というのは、単なる甘やかしでしょう。子どもの言うがままになっているだけです。

一方、反射的に「なに言っているの、ダメよ!」「そんなこと言わないのっ!」「えーっ、さっき食べたばっかりでしょ!」なんて言うのは、子どもの気持ちを頭ごなしに否定している、つまりシャットアウトしていることになります。

そうではなくて、「そっか、お菓子が欲しいんだね」と子どもの気持ちを汲んであげる。それが承認なのです。その後で、お菓子を買ってやるのか、あるいは買ってやらないのかは、別問題で考えていきましょう。

この内容を読んで、特に後半部分の「気持ちを受け止める」のと「子どもの言うとおりにすること」は別という話は、「甘えさせる」と「甘やかす」の線引をどこに引くかという問題だと理解しました。

「甘えさせる」というのは、子どもにとって必要なことです。お母さんやお父さんに自分の気持ちをわかってほしい、話を聞いてほしい、自分のことを受け止めて欲しいという、小さい子どもならではの望みです。

一方で、親が「甘やかす」のは、子どもはそう望んでいるかもしれませんが、長い目で見た時に本当に子どものためにはならないことを、親がやってしまうことです。もしくは、子どもはそう望んではいないのに、親が自分の都合でやってあげてしまうことです。

前者の例は、先ほどの引用にもあったような、スーパーで必ずしも必要のないお菓子を買ってあげること。後者の例は、子どもが何かに挑戦しようとしているのに、親が先回りして過剰な助けをしてしまうことです。

子どもの「気持ちを受け止める」ことはやってあげたい。一方で、だからと言って「子どもの言う通りにするかどうか」は、親である自分が判断をする。

この境界線はケースによっては簡単ではないかもしれません。だからこそ、この視点は持っておきたいと思っています。




2015/07/22

小さな子どもの「小さい望み」にこそ応えてあげよう




1才10ヶ月の長女がいます(2015年7月現在)。

「あふれるまで愛をそそぐ6歳までの子育て―子どもの心にひびく愛ひびかない愛」という本に、育児について考えさせる指摘がありました。

以下はその部分の引用です。
”小さな望み”に応えてあげる

生まれてから大人になるまで、子どもはいろんなことを親に要求しながら大きくなっていきます。その時々に子どもが望むことに、できるだけ応えてあげるのが親の仕事です。子どもが望むことに親がきちんと応えてあげれば、子どもは決して「困った子」にはなりません。

子どもが小さい頃に望むことは、「抱っこ」とか、「お外へいきたい」とか、「絵本読んで」とか、「みて、みて」というような、とても子どもらしい、”小さな望み”です。小さい子どもは、親ができないようなことは絶対に要求してきません。親が今、その手ですぐにできることばかりです。(中略)

小さい子どもの”小さな望み”には、すぐ応えてあげられますし、それにきちんと応えてあげれば、子どもは心が満たされて、その子本来の「よさ」を十分に発揮できるようになります。決して難しいことではありません。でも、なぜかその簡単なことをしてあげないで、子どもを「困った子」にしてしまうことが多いのです。

ここ最近の、親としての自分の状況が書かれていました。

娘の場合、朝起きてくると、抱っこと言ってくることがよくあります。また、自分のやりたいことがうまくやれなかったなど機嫌が悪くなると、抱っこで外に行きたいと玄関を指さします。

以前であれば、こうした娘の要求はあまり大切にしていませんでした。その時の自分の都合(例: していた仕事)を優先し、正面から向き合わず、応えないケースもありました。

抱っこや外の散歩をやらないと、結局は余計に娘の機嫌は悪くなっていました。親の目から映る娘は「困った子」になってしまっていたわけです。

この本を読んで以降、考え方を変えました。

上記に引用したように、娘の要求の全ては「小さい望み」です。自分がその場ですぐにできることばかり。親として物理的に不可能なことはなく、応えてあげるかどうかは気持ちの問題です。

以前は正直に言うと、面倒だと思うことすらありました。しかし、本書を読んだ今は、娘の要求への考え方が変わったので、自然と応えられるようになっています。

そうすると、娘の態度も変わってきました。抱っこや外への散歩に応えることで、落ち着いてきたように思います。

最後に、本書からもう1つ印象的だったことを引用しておきます。
親の都合で一方的にいろいろなことをしてあげても、それが子どもの望んだものでない場合には、親の思いは子どもに伝わりません。子どもが望んでいることを、子どもの心が満たされるまでしてあげたとき、その愛が子どもに伝わるのです。




2015/07/18

良い調査の判断基準:その調査は Why - How - What の一貫性があるか




現在の仕事での役割は「マーケティングリサーチマネージャー」です。

業務として様々な調査に関わります。自分の経験から、良い調査企画や調査結果なのかどうかを見極めるポイントとして、Why, How, What の3つの要素に分けると判断がしやすいと思っています。
  • Why: 調査背景と目的、調査結果がどのように役立つのか
  • How: 調査設計や調査手法 (分析/結論のためにどうやってデータを取得するのか)
  • What: 分析結果を示すグラフや数表、考察や結論

■How は学びの宝庫

企画書や結果レポートを手にすると、自分が一番関心が高いのは、調査設計/手法(How)になってしまいがちです。単純な好奇心と、その調査手法が自分の仕事にもアイデアとしてヒントになるかどうかに興味があるからです。

例えば、最近目にしたものに「喫煙者と非喫煙者にアロマはどんな影響があるか」を調査したレポートがあります(レポートのPDF)。

調査設計は、喫煙者と非喫煙者をそれぞれ2つのグループに分け(合計4グループ)、片方のグループにアロマを、もう一方のグループにはアロマがない環境がつくられます。

4つのグループにおいて、喫煙者の喫煙後の気分や不安などの心理面や注意集中力が、アロマの有無によってどのように変化するのかを観察する調査でした。

調査対象者は、20歳以上の病気加療中や薬服用中を含まない健常な男子大学生です。喫煙者14名、非喫煙者14名の合計28名。

状態不安などの心理、集中力を確認するポイントは、合計3回に設定されています。喫煙者がたばこを吸う前の Pre-test、喫煙1時間後に同じテスト(Post-test 1)、さらに2時間後にテスト実施(Post-test 2)。非喫煙群も、喫煙者群と同じタイミングで3回の各種測定が行われました。

分析のための比較軸として、
  • 4つのグループ:喫煙アロマあり、喫煙アロマなし、非喫煙アロマあり、非喫煙アロマなし
  • 3回の測定:Pre、Post 1、Post 2

分析は、有意水準 5% 未満で t-test から対象グループに統計的に有意な違いがあるかどうかを検証しています。

リサーチデザインで興味深かった点は2つありました。1つ目は、喫煙者と非喫煙者それぞれでアロマありとなしの2つのグループをつくっていること。2つ目は、集中力などのテスト測定を喫煙後に2回実施している点です。

特に2点目については、Pre / Post test 結果から喫煙前後で比較できるとともに、Post が2回あるので、アロマの効果があったかどうかを一時的なものなのか、持続されるのかどうかも検証できます。

この設計アイデアは自分のやっていることに応用ができそうです。

■その調査には Why があるか

調査設計/手法(How)、調査結果(What)には自然と興味が湧きます。一方で、意識して関心を持つようにしているのは、Why の部分です。

その調査背景と目的は何か。調査実施するにあたってのモチベーションとも言えます。

また、調査結果がどのように役立つのかの視点も忘れてはならない重要なポイントです。

調査企画書には目的として「◯◯を明らかにする」とは書かれています。ただ、調査目的としては、できるならもう一歩先のことまで明記されているものが望ましいと考えます。

◯◯を明らかにすることで、それはどういう役に立つのか。何の意思決定に寄与できることなのか、自分たちの何に貢献するのか、調査結果レポートの読み手にとってどんな Next Step につなげられるのかです。

その調査には Why があるか。明確な Why があるかとは、調査に存在意義があるかどうかが問われているのです。

Why がクリアになっていて、その先の How (調査設計)が適切なのかどうか。調査から得られたデータでつくられる What (グラフなどのアウトプットや結論)も、Why とつながっているかどうか。

Why - How - What に一貫性があるかどうか。これが自分の中で大切にしている、良い調査かどうかの判断基準です。

★  ★  ★

今回のエントリーに関連して、Simon Sinekの「優れたリーダーはどうやって行動を促すか (How great leaders inspire action)」(リンク先は日本語字幕付きTED動画)をご紹介します。

紹介されているアイデアを一言で表現すると、「人は『何を (What)』ではなく『なぜ (Why)』に動かされる」というもの。「なぜ」という自分の動機やビジョン/理念がまずあり、自分が信じていることを語ることで、共感が生まれ人々を惹きつけるという考え方です。

プレゼンでは例として、Apple が取り上げられています。
  • 我々のすることはすべて 世界を変えるという信念で行っています。違う考え方(Think Different)に価値があると信じています
  • 私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ簡単に使え、親しみやすい製品です
  • こうして素晴らしいコンピュータができあがりました
はじめにアップルの Why であるビジョンを伝える。人々はこれに共感するからこそ、アップルの商品を手に取る。これが Whyからはじまるストーリーです。

Start with why -- how great leaders inspire action | Simon Sinek | TEDxPugetSound - YouTube



動画よりもテキスト(日本語)で読みたい、という方はこちらをどうぞ。
サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか|読むTED


2015/07/15

書評『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(矢部宏治)




『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』という本が興味深かったのは、非常に大きな全体像の中で、戦後から現在における日本の国体としての実態が浮き彫りにされる点にあります。

■アングロアメリカンの戦後秩序構想から描かれた壮大なグランドデザイン

本書は、第二次世界大戦の最中および直後において「大西洋憲章 → 連合国憲章(国連憲章)」という流れがあり、戦勝国である連合国中心の世界の動きの中で戦後の日本ができあがったことが、詳細に書かれています。

驚かされたのは、ポツダム宣言、日本国憲法、日米安保条約と日米地位協定も、1941年8月14日(日本がポツダム宣言を受諾するちょうど4年前)に、イギリス - アメリカ間で調印された大西洋憲章の内容を引き継いだものになっていることでした。日本国憲法以下が、アングロアメリカンの戦後秩序構想から描かれた壮大なグランドデザインの一部にすぎなかったという指摘です。

つまり、大きな全体像として、以下のような流れなのです。

大西洋憲章 → 連合国憲章(国連憲章) → ポツダム宣言 → 日本国憲法 →日米安保条約 → 日米地位協定

■今なお続く、日本は潜在的敵国とみなす「敵国条項」

国連憲章に関連したことで言えば、日本は、当時の連合国(アメリカ/イギリスなどの現在の常任理事国や世界の多数の国々)からは、今なお敵国と見なされている「敵国条項」が除外されていないという指摘には衝撃を受けました。

アメリカが日本をどう見ているかというと、「同盟国&属国」というよりも、より本質的には「同盟国&潜在的敵国」と著者は言います。

在日米軍が持つ二面的な役割として、①(憲法9条を持つがゆえに)軍事的空白地帯の日本の防衛とともに、②日本の過去の侵略政策の再現を防ぐため、との指摘でした。

■日本の国家レベルの安全保障問題は「最高裁は憲法判断しない」

本書のタイトルは『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』です。

この問いに対して本書で提示されたのは、日米地位協定や日米原子力協定などの日本の国家レベルの安全保障問題は最高裁は憲法判断しない。すなわち、法的コントロールが及ばず、実行者を罰することができない点です(憲法判断をしないと言う最高裁に持ち込まれると決して勝てない)。

1959年の砂川裁判で事実上、本来は国の最高判断基準となる日本国憲法よりも上位に、安保を中心としたアメリカとの条約群が位置づけられたからです。ここに、在日米軍問題(沖縄や本土の基地)だけではなく、原発も含まれてしまったのです。

従って、日本国憲法で謳われている基本的な人権を侵害していようが、憲法よりも上位法に基づくもの(米軍基地や原発など)は、差し止められない。この状況が戦後まもなくの占領期から、今なお続いているのです。

■「天皇+米軍」という戦後日本の支配体制

もう1つ、興味深い内容だったのは、戦後の日本の対米従属路線をつくったのは、昭和天皇とその側近グループであったとの記述です。

天皇制と米軍が結びつき、戦後日本の国家権力構造がつくられたという指摘でした。戦後日本は、昭和天皇を平和と民主主義のシンボルとする「日米合作」の新国家として再起を図ったとのこと。

歴史的経緯のなかで、米軍駐留を希望したのは日本人自身であり、そこには昭和天皇とその側近の意向が大きく影響していた。今も続く異常な米軍法的権力は、米軍駐留を日本側から、しかも昭和天皇が日本の支配層の総意として要請したことが本質的な原因と述べられています。

■「在日米軍基地」「憲法9条第2項」「国連憲章の敵国条項」の3つを同時に解決すべきという主張

著者の主張は、「在日米軍基地」「憲法9条(特に第二項)」「国連憲章の敵国条項」の3つが密接にリンクしているため、同時に解決する必要があるということです。

また、憲法をどう変えても、その上位法として存在する日米安保法系との関係を修正しないかぎり、憲法は事実上機能しません。違憲と訴えても最高裁は「憲法判断をしない」、すなわち罰することができない構図だからです。

★  ★  ★

本書は読んでいると、強い虚無感に覆われます。日本の根本にある問題はあまりにも深いからです。読み進めるのが嫌になったのは一度や二度ではありませんでした。

それでいて、次々にくる驚きから最後まで読まずにはいられない。そんな矛盾する読書体験でした。一人でも多くの日本人に読んでほしいと強く願う本です。




2015/07/11

マーケティングの本質は日常にある:きな粉の袋の裏面情報が提供した価値

普段から、ヨーグルトをよく食べています。自宅でヨーグルトを食べる時は、ほぼ毎回のように蜂蜜ときな粉を混ぜています。

ヨーグルトはごく普通の砂糖なしのプレーンです。これだけでも素朴でおいしいのですが、蜂蜜&きな粉はいつの間にか欠かせないトッピングになりました。最近は、きな粉だけと、黒胡麻きな粉との2つを使い分けています。




ある時に、何気にきな粉の袋の裏面を見ると、きな粉のトッピング使用例が載っていました。その中の1つに、牛乳にきな粉を入れるというものがありました。

その場ですぐにできたこともあり試してみると、ヨーグルト+きな粉とはまた違った、きな粉のおいしさを味わうことができました。

きな粉をめぐる、何気ない日常の一コマです。この体験であらためて思ったのは、商品の売り手と買い手の「時点の違い」でした。

売り手の目的は、売ることです。売上によってそこから利益を得ます。目的として売ることに焦点があたりすぎると、「売ったら終わり」と考えてしまうこともあるのではないでしょうか。

一方で、買い手にとって「買う(= 売られる)」のは、始まりなのです。

買い手である顧客は何を求めて商品を買うかというと、買って使った時に価値があるだろうという「期待」です。

期待に対して、対価としてお金を払っても良いと思うものを買います。正確に言えば、期待と対価がイコールではなく、少しでも「期待 > 対価」と頭の中でなった時に、財布の紐が解かれるわけです。

買った後に使う時が、買い手が「価値」を感じる瞬間です。冒頭の例で言えば、ヨーグルトに入れて食べておいしいと感じる瞬間、あるいは、袋の裏面を見て試してみた、きな粉牛乳を飲んだ瞬間です。

買い手が価値を感じる瞬間とは、買い手の利用シーンにあるのです。

今回、牛乳にきな粉を入れてみたことで、(私という)一人の買い手におけるきな粉の利用シーンが増えました。実際に私がおいしいと感じたことで、買い手にとって「価値と感じる瞬間」が増えたわけです。

きな粉の袋の裏面の情報が価値を増やし、(やや大げさですが)結果としてマーケットが広がったのです。

袋の裏面等に「こんなトッピングもどうぞ」という情報は、きな粉だけではもちろんありません。よくよく意識してみると、同じトッピングとして使っている蜂蜜の容器にも載っています。

今まではあまり気に留めていませんでしたが、あらためて考えると、興味深いです。

「売って終わり」ではなく「買ったところが始まり」と買い手目線で捉える。買い手の利用場面を増やす。そして、利用シーンでいかに商品を通じて「価値」を提供するか。普段の日常にこそ、マーケティングの本質があります。


2015/07/08

戦略を「数字」に落とし込み、実行結果を数字で「評価」しよう

戦略は、実行を伴ってこそ意味のあるものです。

逆に言えば、いくら戦略に魅力があっても実行が伴わなければ、その戦略は絵に描いた餅です。

戦略 → 実行における「実行」の前後に、忘れがちな、かつ重要な要素があると思っています。それは「数字」と「評価」です。

戦略 → 数字 → 実行 → 評価

戦略が数字という指標に落とし込まれることで、ブレることなく戦略と一貫性のある実行ができます。数字に落としたことで、実行されたことが測定でき、そして評価することができます。




例えば、戦略が「既存店の(競合店に対する)競争力を上げる」であるケースを考えてみます。

このまま実行しようとすると、各お店ごとに「競争力」の解釈が異なる可能性があり、実行策に違いが生じてしまうことが考えられます。戦略を実行するにあたって、各店で、さらには同じ店のメンバー間の認識と行動にブレがでてしまうのです。

そこで、戦略を数字に変え、戦略指標に落とし込みます。例えば、既存店の競争力強化を「1店あたりの売上高を増やす」と設定します。

売上高は、売上 = 客単価 x 客数 と分解できます。さらに、
  • 客単価 = 1個あたり商品単価 × 購入個数 × 来店頻度
  • 客数 = 既存顧客 + 新規顧客
と分解することができるので、

売上 = (1個あたり商品単価 × 購入個数 × 来店頻度) × (既存顧客 + 新規顧客)

売上を上げるために、①商品単価、②購入個数、③来店頻度、④既存顧客数、⑤新規顧客数、の5つのうち、どれを重点的に上げるかを考えます。

例えば、リピート顧客を増やすことで売上を伸ばすのであれば、③来店頻度と④既存顧客数を増やすことが重要課題になります。さらに、1つでも多く買っていただくという②購入個数を増やすことができればベターです。

一方、そのお店が出店して間もないのであれば、⑤新規顧客開拓によって「1店あたりの売上高を増やす」ことを考えることになります。

施策案としてチラシを配布する場合、リピート顧客増であれば店内でお客さんに配る、新規顧客を増やすのであれば、お店付近や駅前で見込み客を狙うことになります。

チラシに割引券を付ける場合は、リピート顧客であれば5回来店で次回注文時に使えるデザート無料券、新規顧客には目玉商品の10%オフ、などが考えられます。

このように戦略が実行されるにあたって、何の指標(数字)を追っていくのか。組織全体で戦略と一貫性のある施策の実行をするために、戦略指標を関係者で共有されることが大事です。

もう1つポイントを上げるとすると、「売上」よりも「客単価 x 客数」、さらには客数を「既存顧客」「新規顧客」に分けるなど、分解することです。より具体的な実行アイデアが出やすく、その分、きめ細やかな施策が打ち出せます。

実行策が数字をもとに立てられているので、実行した施策に効果があったかの評価ができます。

上記の例で言うと、「競争力がついたかどうか」という問いには、人によって Yes とも No ともどちらの解釈もあり得るでしょう。

しかし「1店あたりの売上高が伸びたかどうか」と指標として数値化されていれば、前月との比較、もしくは前年同月と比べることで、明確な結果がわかります。

さらに、売上を5つの要素に分けて見ていれば、売上が伸びたのは客数が増えたのか、あるいは客単価増加が寄与したのか。客単価は、商品単価 or 購入個数 or 来店頻度の、どの要因が効いたかまでブレイクダウンできます。

リピート顧客を増やす施策を実行していれば、狙い通りに来店頻度と既存顧客数が伸びているかの数字を追い、結果を評価します。その結果を次のサイクルに活かすことで、「戦略 → 数字 → 実行 → 評価」をまわし続けるのです。

やっていることは、
  • 戦略というすべきことを考える
  • 定量的な数字(戦略指標)を継続的に追う
  • 問題が発生したら原因を明らかにする
  • 解決策を考え、打ち手を実行する
という、文字にすると当たり前のようなサイクルです。

戦略 → 数字 → 実行 → 評価

実行の前後に「数字」と「評価」を入れる。実際に自分が関わっていることでできているかも意識したいと思っています。


2015/07/04

あなたの「強み」は、他人にはマネされにくい「独自資産」に支えられているか



何か新しい仕事が始まるときのパターンは、自分から仕事をつくるか、上司や同僚などから依頼される、の大きく2つがあります。

今回のエントリーでは、後者の仕事を自分に依頼されることについて、自分の「強み」という視点から考えてみます。

上司から仕事を依頼される、もしくは他の組織/チームの同僚から一緒に仕事が始まるというのは、自分がその仕事やプロジェクトに必要だと認められたと言えます。

その仕事で自分が期待される役割があります。もし同じことができる人が他にも複数いる場合、その人が選ばれずに自分が声をかけられたということは、何かしらの優位性が自分にはあるはずです。

例えば、あるプロジェクトに自分はデータ分析担当者として、プロジェクト責任者から参加要請があったとします。

この時にプロジェクト責任者の頭には、データ分析者候補として、自分以外に社内の A さん、B さんもいたとします。この状況は、自分にとってデータ分析という領域では、A さん / B さんと競合しているわけです。

この競争環境の中、自分が選ばれた理由は何なのか?

これこそが、Aさん / Bさんに対して、自分が相対的に持っている「強み」になります。例えば、データ分析において、集計が早い、複雑な集計処理ができる、などがそれです。

データ集計能力では Aさん / Bさんと大きな差がない場合は、分析にあたって何が問題でどう解決するかの課題設定や、集計された結果をどう読み取り、得られた示唆を意思決定やアクションにつながる提言/レポートが適切にできる能力が買われたのかもしれません。

あるいは、データ分析全般のスキルに大差はないが、レスポンスに漏れがなく返答が早いことや、細かい点にも気づくことが「強み」だったケースもあるでしょう。

ポイントは、自分が選ばれた理由である「強み」は、3人のデータ分析候補者の中における相対的なものだということです。

もし候補者に社外の人も含まれていて、その人が自分よりも分析能力に優れている、もしくはその会社の集計インフラが自分の会社よりも充実しているのであれば、自分は、Aさん / Bさんよりも優位であっても、選ばれるのは社外のその人になるでしょう。

自分の「強み」は、誰と比較してのことなのか。これは忘れてはいけない視点です。

「強み」についてもう1つ重要な点は、自分の強みは自分独自の何かがベースになっているかどうか、です。別の表現をすれば、すぐに他人にマネされてしまう強みなのか、簡単にはマネができないものなのかどうかです。

例えば、自分の強みがデータ分析にあたってのデータ処理/集計の早さだとします。

これを実現するために、日頃から社外の勉強会に参加したり(人脈という資産)、常に最新情報/技術に明るければ(向上心/探究心という資産)、これらの資産は容易に他の人はマネができないはずです。

一方で、集計の早さは単に慣れのもので、誰でも一定の経験を積めば到達できてしまうレベルであれば、独自資産に支えられた強みとは言えません。その経験が独自資産とも言えますが、特別な経験でない限りは強固な資産とはならないでしょう。

「強み」とそれを支えている「自分独自の何か」に一貫性があるか。後者の独自資産は人が真似しにくいものなのかどうか。

自分の強みとは、すなわち仕事において提供できる「価値」でもあります。理想的には、自分の「強み = 提供価値」を評価してくれる人と仕事ができればと思っています。提供価値と求められる価値が一致している関係です。


2015/07/01

専門家に相談する時は、基本的な知識や情報を持ってから



「40代からのお金の教科書」という本から、印象に残ったのが「専門家に相談する時の注意点」でした。

資産運用や(投資信託などの)金融商品をファイナンシャルプランナー(FP)等に相談する際に、気をつけたいことです。以下、本書からの引用です。
専門家の立場の理解と外部の知見の活用

何らかの課題について専門家に相談する際、必ず確認したいのは「その人が何によって生計を立てているか」という点です。商品を販売することによる手数料が収益源である場合、「他の選択肢を提示されないまま、自社の取扱商品だけを勧めてくる」ことになりかねません。

これについては「自分自身が基礎知識をもつこと」で回避できる可能性が高まります。「自分が必要としているものの理解」と「他の人にも意見を聞いてみる」という態度であれば、相手側も相応の対応をしてくれるでしょう。

とにかく大切なのは「基本的な知識や情報を持ってから相談する」ことと、「ひとつの意見だけにとらわれない」ことです。

なぜこの部分が印象的だったかと言うと、この指摘は、お金のことを専門家である FP 等の方に相談するケース以外にも当てはまると思ったからです。

例えば、仕事において、自分の専門領域ではないことを詳しい人に聞く場合です。

技術的な話など、自分はまだ明るくない範囲においては、それを専門にしている人に聞くことがよくあります。

自分の仕事まわりにおいて、人に相談をすることが少なくない環境です。実感するのは、(自分の専門ではないとしても)事前に自分なりに調べて臨む場合とそうではない場合で、得られる情報や知識に差が出るということです。

自分にあまり知識がない状況で「◯◯について教えてほしい」と聞けば、教えてもらった内容には、後から振り返ると、自分で調べればすぐにわかる情報も含まれていることがあります。

一方で、事前に社内情報から検索で調べ、関連文書を読み込んでおくと違ってきます。事前におおよその全体感がつかめたり、専門家に相談する際もより具体的な質問ができます。それによって、相手が返してくれる情報も一歩踏み込んだ内容になるのです。

「40代からのお金の教科書」の著者である栗本大介氏が大切であると強調する「基本的な知識や情報を持ってから相談する」ことで、より深い情報が得られるわけです。

もちろん、専門外のことを自分で調べることに限界はあります。それに時間をかけすぎるより、結局は専門家に聞いたほうが早い場合もあるでしょう。

それでも、自分の経験から言うと、専門領域ではないことであっても知識ゼロで相談をするより、可能な限りで事前に勉強しておいたほうがいいです。基本的な情報を事前に得てから相談するほうが、より実りのあるフィードバックがもらえます。




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