2016/01/05

「クロネコメンバー割」から考えるロイヤリティの高い顧客へのマーケティング施策




2015年から2016年の年末年始の休みは、実家に帰省していました。

移動の手荷物を減らすため、前日に荷物を送りました。利用したのはクロネコヤマトです。

その時に知ったのが「クロネコ メンバー割」でした。クロネコメンバー割は、宅急便運賃の割引サービスです。

ヤマトには、クロネコメンバーズという会員サービスがあります。会員カードには電子マネー機能が付いています。

クロネコメンバー割とは、ヤマトを使う前に一定額をカードにチャージしておき、宅急便を送るのに電子マネーで支払えば、料金が割り引かれるサービスです。

クロネコメンバー割は2種類あります (2016年1月現在)。「クロネコメンバー割」では、5,000円以上のチャージがされた状態で電子マネーから支払えば宅急便運賃が 10% 割引、「クロネコメンバー割 BIG」では50,000円以上のチャージで 15% 割引です。(参考: クロネコメンバー割 | クロネコメンバーズ)

■ ロイヤリティの高い顧客への優遇策

クロネコメンバー割の仕組みを一般化すると、「顧客から (会員になるための) 個人情報を取得し、顧客からお金を先に預かり、その対価としてサービス料金を割り引くもの」です。

顧客メリットは、荷物を送る料金が安くなることです。

提供者側のメリットは、①メンバーカード会員が増える、②顧客の囲い込み (競合サービス利用の防止)、③チャージにより会計上の資産が増える (負債として計上)、にあります。

ヤマトにとってこれらのメリットと、10% または 15% の割引コスト (売上減と利益減) を天秤にかけ、メリットのほうが大きいと判断したのでしょう。

クロネコメンバー割は、「ロイヤリティの高い顧客への優遇策」です。

ヤマトを利用する顧客のうち、メンバーカードをつくる人は、利用頻度が高い顧客でしょう。その人たちのうち、電子マネーにあらかじめ5,000円以上をチャージした状態でカードを持っている人が、メンバー割の対象になります。割引率が 15% と大きい BIG のほうは、50,000円以上のチャージが必要です。

こうした、利用頻度の高い顧客で宅急便料金が割り引きされる仕組みなのです。

■ 「クロネコメンバー割」からロイヤリティ顧客へのマーケティング施策を考える

リピート顧客、その中でも利用頻度が高く、多くお金を支払ってくれる顧客への優遇策として考えたとき、他にどのようなものがあるでしょうか。

例えば、公共交通では通勤/通学の定期券がそれです。定期券の仕組みは、固定額を事前に支払うことで、最大6ヵ月は指定区間の乗車回数が無制限になるというサービスです。

通勤や通学で交通機関を使うということは、毎日利用するヘビーユーザーです。電車通勤などで定期を当たり前のように使っていますが、あらためて考えると定期券は利用頻度の高い顧客への優遇策と見ることができます。

定期にクロネコメンバー割の仕組みを取り入れるとすると、スイカなどの電子マネーに一定以上のチャージをしていれば、定期券区間以外の乗車賃が 10% 割引となります。

比較対照として、レストランなどのお店のカードに一定回数の利用ポイントがたまれば、次回来店時に割引やコーヒー無料券が付くなどの割引サービスがあります。

これは、利用した後でのリピート顧客への優遇策です。対して、クロネコメンバー割の考え方は、利用前のチャージという事前にやってもらうことでインセンティブを提供するものです。

クロネコメンバー割をヒントに考えると、例えば、その店で使える回数券などを用意し、あらかじめ5,000円分を買ってもらえれば、5,500円分の価値があるようなサービスです。 クロネコメンバー割の 10% 割引と同じような仕組みです。

■ 手持ちのカードが増えることの不便さ

リピート顧客の優遇策の定番としての会員カードですが、一方でカードが増えすぎることも個人的には避けたいです。

一人のユーザーからすると、ヤマトの独自電子マネーカードを持つということは、手持ちのカードが増えることを意味します。それだけ財布の中が煩雑になる不便性が生じます。

理想は、今後普及するであろうマイナンバーカードに電子マネー機能が付くことです。マイナンバーカード1枚で、身分証明証 + 電子マネー (キャッシュやクレジット機能も集約) が望ましいなと思っています。

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クロネコヤマトについては、過去のエントリーで取り上げています。
「絶対赤字」の非常識に挑んだクロネコヤマトの競争戦略

このエントリーはアクセス数が多く、人気のものです。12年, 13年, 14年, 15年のそれぞれの年間アクセス数ランキングで、毎年トップ10に入りました。

ヤマトが、個人向け宅配サービスという新しい市場をつくった際の競争戦略を書いたエントリーです。

「小倉昌男 経営学」も、読んでよかった本の一冊です。クロネコヤマトの宅急便という、今では当たり前のように皆が使うサービスの事業立ち上げの苦闘の記録です。




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