2016/06/18

Facebook が O2O (online to offline) の取り組み強化を発表 (2016年6月) 。売上への広告効果を可視化できるか




Facebook が、O2O (online to offline) の取り組みを強化しています。Facebook ユーザーのデータと、店舗への来店や店頭購入のデータをつなぎ、モバイル広告のオフライン効果を可視化できるようにすると発表しました (2016年6月14日) 。

In-Store, Meet Mobile: New Ways to Increase and Measure Store Visits and Sales | Facebook for Business

TechCrunch も報じています。

FacebookがPOSシステムと連携、ユーザーの来店と購入までトラックできるように | TechCrunch Japan

今回のエントリーは、Facebook 広告の広告効果測定の仕組みを考えます。

■ Facebook がユーザーと来店/店舗購入データを紐づける狙い

Facebook はパートナー企業に IBM や Square などと組み、店頭での売上情報になる POS データを取得します。POS と Facebook ユーザー ID を具体的にどうやって紐づけるかは興味深いです。

購入しなくても、ユーザーの来店情報は、位置情報 (携帯キャリアの基地局情報や GPS、店内のビーコンなどから) を使って収集します。Facebook の発表によれば、位置データは Store Visits (店舗来客) 指標に使われ、数ヶ月間内に利用できるようになるようです。

広告主の立場からすると、広告に対して明らかにしたいことはいつの時代も同じです。

  • 広告予算を各媒体メディアにどれくらい使えばよいか (メディア配分の最適化)
  • 投資した広告予算は、何にどのくらい効果があったのか (広告の投資対効果を可視化)

今回の Facebook の取り組みは、2つ目である「広告による来店と購入効果」を明らかにすることが狙いです。Facebook がやりたいことは、Facebook の広告を見て、何人が来店し、そのうち何人がその店で広告に関連する商品やサービスを購入したかの、オフラインでの広告効果を可視化することです。

Facebook 広告の効果がわかるようになり、かつ投資に対して効果があると証明できれば、広告主はより多くの予算を Facebook に使うでしょう。1つ目の最適なメディア配分にも貢献できると言いつつ、広告予算をより自分たちの Facebook に投下することを狙います。一般的には最も予算の大きい TV 広告から Facebook へ、あるいは動画広告を YouTube ではなく Facebook へ、などです。

■ どうやって「広告が実際の売上に貢献したか」に答えを出すのか

Facebook 広告に限らず、ウェブやアプリなどのオンライン広告は、オンラインで起こる効果 (例: クリックやオンラインでのコンバージョン) の検証はできていました。また、ブランディング効果として商品/サービスの認知や買いたくなったかどうかの購入意向は、アンケートから取るのが一般的です。

来店や店舗購入は、広告出稿前後で単純に来店者数や販売データを見れば、広告タイミング前後で増えたかどうかがわかります。

しかし、仮に広告をして店舗売上が増えたとしても、それは本当に広告の効果によるものかどうかは厳密にはわかりません。

なぜなら、広告をしてもしなくても売れる時期だったと言えるからです。可能性として、(広告がなくても) 季節性で売れたり、広告以外の要因で売れたタイミングで広告を流したにすぎず、広告との因果関係ではなく、単に相関関係が出ただけということもあります。

相関関係ではなく、因果関係が示されなければ広告効果があったとは言えません。

Facebook データと、来店や店舗購入データとの連携は、この問題を解決することが期待できます。広告が店舗購入に効果があったどうかは、以下の調査設計で、広告と来店や購買の因果関係を証明できます。

  • ある商品やサービスのターゲット顧客を Facebook ユーザーデータから設定し、広告を出すユーザーと、(本来なら広告が出たが) あえて広告を出さないユーザーに、ランダムにグループを分ける
  • 広告接触者グループと非接触者グループの、広告配信後の来店や店舗購入データを収集する
  • 2つのグループで来店や購入を比較し、広告接触者グループに統計的に有意な差が確認できれば、広告による効果を因果関係として証明できる

3つ目の、なぜ因果関係の証明ができるかへの補足です。

同じターゲット条件のユーザーをランダムに分けた2つのグループは、集団としては同じとみなします (同質性があると表現します) 。そして、同質性を担保した2つのグループの一方にのみ、広告を見せます。

広告接触グループを非接触グループと比較し、広告接触後の購入に統計的な有意差があれば、広告を見たことによる因果関係があると言えます。もともと同質なグループだったはずなのに差が出たのは、2つのグループの唯一の違いである広告接触によることが原因と考えられるからです (補足はここまで) 。

従来は、実店舗への来店や購入が紐付かなかったので、来店や購入に結びつくであろう認知、来店意向、購入意向を KPI にし、広告効果があるかどうかを測っていました。

確かに買いたいと思うという意向が上がれば、売上につながると予想できます。しかし、広告主が最終的に知りたいのは、広告で実際の売上があったかどうかです。購入意向はあくまで買いたくなったという態度変容で、実際の売上ではありません。

■ Facebook の広告配信ターゲット情報に、店舗購入データも使えるようにするのか

広告主からすると、Facebook ユーザーと店頭情報の紐づけは、広告効果検証のためだけではなく、Facebook での広告配信ターゲット条件にも使いたくなるでしょう。

例えば、① 広告を見て来店した人、② 来店したが購入しなかった人、③ 来店して購入した人などがターゲットに設定できれば、よりきめ細かなマーケティングコミュニケーションができます。例えば、③ の購入しなかった人には、今度はリピートのためのコミュニケーションをするような使い方です。

ただ、冒頭でリンクを付けた TechCrunch には次のように書かれていました。

このデータは、プライバシーの安全のため、匿名化して統計的に処理しているため、広告主は誰が広告を見て、来店して購入したかを特定することはできない。広告キャンペーンでターゲットした中の誰かが来店や購入したということだけだ。

2つの見方ができ、「広告主は誰が広告を見て、来店して購入したかを特定することはできない」から、ターゲット設定の情報に使わないとする考え方。もう1つは、特定したユーザー情報を広告主には開示することなく (Facebook の外には出さずに) 、ターゲット情報には店頭情報を使えるとする考え方です。

Facebook のビジネスの観点では、後者のターゲット情報に使いたいはずです。ポリシーやユーザー規約をうまく設定し、可能にするのではと推測します。

★  ★  ★

Facebook が広告の投資対効果を可視化するために、来店や店舗購入までわかるようになることは興味深いです。

今後は、この仕組みを使った Facebook と広告主の取り組みで、Facebook 広告が店頭売上に効果があったというベストプラクティスが発表されるでしょう。

日本では、この取り組みが実現するのかも興味があります。ポイントは、Facebook が店頭情報を取得するために誰と組むかです。


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