2016/09/24

Facebook が動画視聴時間の過大算出を報告 (2016年9月) 。3つの論点から本質を考える


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Facebook の動画視聴時間の算出方法が過去2年に渡って誤っていたことを、ウォールストリートジャーナル (WSJ) が報じました (2016年9月) 。

フェイスブック、動画広告の視聴時間を過大に測定 - WSJ

日本語訳のこの記事は原文から抜粋されたもので、元の英語記事で詳しく報じられています。

Facebook Overestimated Key Video Metric for Two Years - WSJ

今回のエントリーでは、このニュースの解説と、本質的には何を意味するのかを考えます。

■ どのように Facebook 動画の視聴時間が過大算出されていたのか

過大算出されていたのは、動画の平均再生時間 (ユーザー1人あたり) です。算出の式は、全再生時間 ÷ 延べ再生者数になりますが、分母の再生者数が「3秒以上動画を視聴したユーザーのみ」に限定されていました。本来は3秒未満の再生ユーザーも含まれるのが正しいです。

分母が小さかったので、算出された動画の1人あたり平均再生時間は実際よりも過大になっていました。WSJ によれば、過去2年に渡り、60% - 80% 過大に算出されていたとのことです。

Facebook の広告主向けヘルプコミュニティで、以下のように説明されています。

NOTE: We recently discovered a discrepancy between the definition of Average Duration of Video Viewed and its calculation.

We had previously *defined* the Average Duration of Video Viewed as "total time spent watching a video divided by the total number of people who have played the video." But we erroneously had *calculated* the Average Duration of Video Viewed as "the total time spent watching a video divided by *only* the number of people who have viewed a video for three or more seconds."

ちなみに、なぜ3秒以上かというのは、推測するに Facebook の動画の視聴定義 (Viewed されたとカウントされるもの) が、3秒以上の再生とされていることに関連しているのではないでしょうか。ただし、もしそうだとしても、指標の説明を「Facebook が定義する視聴された場合のみの動画平均再生時間」とし、かつ、分母だけではなく分子も3秒以上再生された動画の総視聴時間と揃えなければいけません。

誤った算出方法は、動画広告の平均視聴時間にも適用されていました。広告主からすると「間違った数字で Facebook 動画広告の有効性がアピールされており、自分たちは騙された」と不満の声が上がっているとのことです。

■ 論点1: 過大算出は意図的だったのか?

このニュースからの論点はいくつかあります。

1点目は、Facebook の動画平均視聴時間の過大算出は意図的だったかどうかです。分母のみ3秒以上視聴ユーザーにして計算されていたことは、知ってのことだったのかです。そうだとすると、意図的に Facebook の動画プラットフォームとしての価値を、過大な動画再生時間を使ってアピールしていたことになります。

予想するに、今回の原因は算出のシステム設定が間違っていた単純なエラーだったのではないでしょうか。しかし、分母が間違っていたというアドテクの専門家でなくても理解できること (高度なモデル内の複雑な間違いではなく) 、エラーの影響が自分たちの価値を過大評価していたことが、意図的だったのではとどうしても疑われる状況をつくってしまっています。

■ 論点2: 第三者による中立な測定の機運が高まるか?

2点目は、これを機に第三者による動画測定が行われるようになり、動画メディアとしての透明性が担保できるようになるかです。メディア自身による公称ではなく、中立性が担保された専門機関によって、他のメディアと同じ測定方法で Facebook の動画再生時間も算出されるかです。

WSJ の元記事には次のような書き方がされています。

The miscounting could also fuel concerns among advertisers and media companies about the so-called “walled gardens” that companies including Facebook and Google are often described as operating. Both companies keep a tight grip on data, and only allow limited third-party tracking firms to plug into their systems.

Keith Weed, chief marketing officer of Unilever, said in an interview last year, tech companies that don’t let third parties measure their platforms is equivalent to “letting them mark their own homework.”

1つ目のパラグラフでは、Facebook や Google などは、一部の第三者のみに限定して測定ができるようにしており、今回の過大算出をきっかけに広告主やメディア会社からあらためて懸念が出るのではないかと説明しています。

2つ目のバラグラフでは、ユニリーバの CMO が昨年のインタビューで、第三者の測定を受け入れていない会社は「自分がやった宿題を自分で採点しているようなもの」 と語ったことを紹介しています。

今回の過大算出の本質は、メディアの transparency (透明性) があらためて問われていることにあります。Facebook に限らずですが、広告メディアの価値をそのメディア自身がやっていて、第三者による中立的な評価がされていない状況で起こったことが注目されるべきです。

1つ目の論点として過大算出が意図的だったかと書きました。メディア自身が出した数字が間違ってたので、自分たちの都合の良いように算出されていたようにも見えてしまいます。もし、第三者の測定機関が同じ間違いをしていれば、ここまで議論を生むことはなかったでしょう。

■ 論点3: 動画広告の価値に懐疑的な目が向けられ、動画広告市場のターニングポイントになってしまうのか?

Facebook の過大算出が意図的でなかったとしても、広告主からすると自分たちが伝えられていた状況より現実は違っていたということです。動画広告はこれだけの時間でユーザーに見られています、と言われていたその平均視聴時間が、実際はもっと短かったのです。

例えば、動画広告の平均視聴時間が15秒と Facebook から説明がされていたとします (仮の値です) 。広告主はそれを聞き、15秒で自分たちが言いたいことを伝えるにはどうすればよいかと考え、動画広告をつくっていたでしょう。しかし、15秒は間違いで実際は10秒だったとすると、本来は10秒にメッセージを込める必要があったわけです。15秒では動画広告で伝えたかったことがユーザーには伝わっていなかった可能性も出てきます。

2点目の論点とも関連することで、動画広告の価値がそのメディアからしか説明ができない状態、つまり第三者による公平な測定と算出がされていない状況では、広告主からは Facebook のみならずデジタルの動画広告全体に疑問符がつけられかねません。動画広告への出稿を見合わせる、減らす流れが、一時的だとしても起こるかもしれません。


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