2016/10/31

書評: 君たちはどう生きるか (吉野源三郎)


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君たちはどう生きるか という本をご紹介します。

人としてどう生きるかというテーマに真正面から、それでいて難解に書かれていなく、考えさせられる本です。



■ テーマは 「人として立派に生きること」

この本の主人公はコペル君です。本名は本田潤一、15歳の中学二年生です。

もう一人、この本での重要な人物が 「おじさん」 です。おじさんとはコペル君の叔父です (お母さんの弟) 。

ストーリー設定は、コペル君が友達とのやりとりや学校での出来事から気づいたこと、学んだことをおじさんが聞き、おじさんがそれに対して考え、コペル君へ伝えたいことをノートに書き記すというものです。

本書で考えさせられるのは、おじさんのノートです。

おじさんは、コペル君の家の近所に住む大学を卒業してまだ間もない法学士で、年齢は20代前半です。

おじさんがノートに書いたコペル君へのメッセージは、物理、化学、経済、歴史、哲学などの様々な教養からも引用しつつ、コペル君にもわかりやすい表現で綴られています。

時には諭すように、コペル君の行動や考えを誉めたたえ、あるいは叱咤します。コペル君の成長を心から願うおじさんの愛情が、言葉の節々から伝わってきます。

本書の主題は 「人として立派に生きること」 です。これはおじさんだけではなく、コペル君のお母さんや亡くなったお父さんの、コペル君に対する願いです。

この本を読んでいると、あらためて読者は考えさせられるでしょう。「君たちはどう生きるか」 と。本書には直接の答えは用意されていません。あるのは立派に生きるための示唆です。

■ 心から感じたことから出発し、その意味を考えること

この本で考えさせられたことの1つは 「油揚げ事件」 からでした。

中学生のコペル君のクラスメートに浦川君という少年がいます。彼の家は豆腐屋です。

浦川君は、クラスメートから油揚げの匂いがするなどとからかわれるようになります。そしてある時、次第にエスカレートしていく浦川君へのいじめをめぐって、コペル君の親友の北見君と、いじめの中心生徒とでけんかになります。

コペル君はこの事件をおじさんに話しました。おじさんは、コペル君に伝えたいことをいつものようにノートに書きます。

コペル君が北見君の肩を持ち、いじめられていた浦川君の味方をしたことにおじさんはうれしく思ったことを綴ります。おじさん、お母さん、お父さんのコペル君に人として立派に生きてほしいという願いがあらためて記されます。

おじさんは立派に生きることについて、学校で教えられたことを言われた通りにそのままやったり、世間では立派だと思われることを振る舞っても、単に 「立派そうに見える人」 になるだけだと書きます。

自分を立派に見せようとする人は、自分が他人にどう映るかを気にするようになり、結局は本当の自分やありのままの姿がどんなものかをつい忘れてしまうと言います。

おじさんは、世の中のことや人間が生きる意味については、コペル君に説明することはできないことを伝えようとします。なぜなら、コペル君が大人になってゆく中で、自分自身で見つけなければならないからです。

おじさんは、次のように願って書きます。自分が感じたことや心が動かされたことから起点に、誤魔化さずに正直に自分の頭でその意味を考えてほしい、その感動や経験の中からその時だけにとどまらない意味があることをわかってほしい。

経験からその時だけにとどまらない意味を見出すとは、ある事象から普遍的なことを捉えることです。自分が得た経験から 「本質」 を理解することです。

他人から教えられるのではなく、自らの体験から自分の頭で考えて得ようとする行為です。

★  ★  ★

この本では、コペル君のありふれた日常生活から気づいたこと、素朴な疑問が語られます。これだけでも、社会の見方についてあらためて考えさせられる視点が多くあります。

さらに、1つ1つに誠実に書かれたおじさんのノートです。「どう生きるか」 を考えさせてくれる本です。




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