2016/11/12

書評: どう伝わったら、買いたくなるか (藤田康人)


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どう伝わったら、買いたくなるか という本をご紹介します。



本書の内容


内容紹介からの引用です。

我々を取り巻く情報の量は、10年前に比べ500倍以上。情報の大半は 「スルー」 されかねない。この状況で、どのようなコミュニケーションが成立し得るのか?どう伝わったら、消費者は “情報バリアー” を解き、受け入れてくれるのか?成功の事例を交えて解説。

美魔女、つけパン、ひたパン、ワコール 「下着によるエイジングケア」 … 次々とヒット商品 & トレンドを手がける独自の発想と 「次世代 IMC」 の手法を全公開。


伝わるメッセージをつくるための4つの視点


本書で書かれていることの出発点は、企業から情報発信を様々なメディアを通して行っても、消費者をそう簡単には動かすこと (例: 買ってもらう) ができなくなった状況です。

伝える ≠ 届く/伝わる ≠ 動かす

「伝える」 と 「伝わる」 ことが必ずしも同じではないのに、企業側がマーケティングや広告で言いたいことを言い、それが生活者に伝わっていると思い込んでいないか、という問題意識で書かれています。

本書では 「伝わる」 「買ってもらう」 ための情報メッセージを、4つの視点で構築するのがよいと書かれています。

  • 消費者 (ターゲット):ターゲットとなる消費者が何を望んでいるのか、本音を知る
  • メディア:消費者に発信する情報として興味を持ってもらえる内容になっているのか、メディアがどんな情報を求めているかを把握する
  • ソーシャル (専門家やオピニオンリーダー):世の中の動向、各界の専門家や有識者たちの意向と見解なども同時に伝えていく
  • 流通:いくらユニーク商品を開発したとしても、それを消費者に届ける売り場がなければモノは売れない。この売り場の人が売りたくなるような価値をつける

著者が手がけた事例がいくつか紹介されており、4つの視点で具体的に何を行ったかが書かれています。実際の取り組みで、興味深く読めました。


徹底した消費者理解から


この4つの視点でつくられるメッセージのベースになるのが、消費者インサイトです。

消費者インサイトを得るのは手法は地道な調査です。グループインタビューやデプスインタビュー (1対1でのインタビュー調査) 、専門家へのオピニオンヒアリングで検証を重ねます。調査からのファクトに基づき、信頼性と公益/中立性の高い情報にすると言います。

本書を読んで印象的だったのは、消費者理解を起点にしたマーケティングです。

ポイントは、人々の心の琴線に触れ、もっと知りたいと興味を持ってもらえる 「スイッチ」 がどこにあるかを徹底的に調べ、彼ら/彼女らを深く知ることです。

そのための調査設計において、発想の転換が必要であるという指摘です。以下は引用です。

消費者のインサイトを正確に把握していくことがとても重要になります。これまでの、「言いたいこと」 をどう伝えたら響くのかという消費者調査の設計を、「聞きたいことの発掘」 というまったく異なるコンセプトに変えていくなど、マーケティングのプロセス自体を、根本から見直さなければならないこともあり得ます。

マーケティングのプランニングにおいても同様です。「自分たち企業の言いたいこと」 ではなく、「相手である消費者の聞きたいこと」 を中心に設計することが重要です。


伝わるメッセージは自分ごと化される


消費者が聞きたいと思うこと、情報をスルーされないためには 「自分ごと化」 が必要であると書かれています。情報の受け手が自分に関係のあるものと思ってもらうことです。

自分ごと化されるかは、その情報が自分にとってベネフィットがあるかどうかです。その情報には何か得をすることがあるか、もしくは、その情報を知らないと損をすると思えるかです。


心の琴線に触れるメッセージを


本書の 「はじめに」 に次のようなことが書かれています。

いつの時代でも誰かを本当に動かすことができるのは、人の心の琴線に触れるストーリーとそこに込められたメッセージです。

その消費者を動かすストーリーの題材と切り口がどこにあるのかを探すことこそが、真のマーケティングなのです。

情報環境の大きな変化を得て、きっとそれが以前とは大きく変わったはずです。

マーケティングに絶対の方程式などありません。いちばんの近道は、顧客であるユーザーをできるだけ深くよくしることです。彼らが実際に今どんな情報に心を動かされているのか?そしてその情報にどこでどのように接触しているのか?



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多田 翼 (書いた人)