投稿日 2017/02/04

書評: 炭水化物が人類を滅ぼす - 糖質制限からみた生命の科学 (夏井睦)


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炭水化物が人類を滅ぼす - 糖質制限からみた生命の科学 という本をご紹介します。



糖質制限で脳のエネルギー不足は起こらないのか


糖質制限についての疑問で本書を読む視点で持っていたのは、「糖質を減らす、あるいは食事から取らなくても問題ないのか」 でした。

人間の脳はブドウ糖をエネルギーに使っており、ブドウ糖を得るためには炭水化物が必要という理解でした。糖質制限をするということは、脳のエネルギー摂取の制限することになります。

本書の見解は、炭水化物を取らなくても問題ないということです。食事から直接にブドウ糖を摂取しなくても、脳はエネルギー源として以下の2つを利用できるからです。

  • 体内のタンパク質を分解して作られるブドウ糖
  • 肝臓で脂肪を分解して作られるケトン体

前者の、タンパク質が分解されブドウ糖が作られる現象を 「糖新生」 と言います。 「糖新生」 は本書のキーワードです。


糖質制限をするとなぜ痩せるのか


糖新生から、糖質制限をするとダイエットできる理由も説明できます。ポイントは2つです。

  • 血糖値を維持するために、体内に蓄積していたタンパク質からブドウ糖を作る
  • その時に必要なエネルギーは脂肪が分解されて作られる

糖質を食事から取っていれば、備蓄タンパク質からではなく、食べた糖質からブドウ糖が作られます。

糖質制限をすれば、食事からの直接のブドウ糖の流入がないため、体内のブドウ糖不足が解消されるまでは、脂肪とタンパク質が分解されます。つまり、痩せることができます。


糖質制限で 「食べてよいもの」 「食べてはいけないもの」


本書で紹介されていた、糖質制限をするために 「食べてよいもの」 と 「食べてはいけないも/避けるもの」 は次の通りです。

食べてよいもの

  • 肉、魚類、魚
  • 大豆製品 (豆腐、納豆、枝豆など)
  • 野菜 ※ ただし根菜類 (芋類、ニンジン、レンコンなど) は糖質が多く食べないほうがよい
  • キノコ類
  • 海藻類
  • 乳製品
  • ナッツ類 ※ ただしコーンやジャイアントコーンは避ける
  • 油類 (マヨネーズやバターも大丈夫)
  • 揚げ物 (から揚げやフライは大量に摂取しなければ食べてよい。ただし天ぷらは食べすぎない)
  • 蒸留酒 (焼酎、ウイスキー、ウォッカ、テキーラなど) 、甘くない赤ワイン、糖質オフのビールや缶酎ハイ

食べてはいけないもの

  • 米、小麦 (パン、パスタ、うどんなど) 、蕎麦
  • 砂糖が含まれているもの、砂糖が味付けに使われているもの
  • 果物 (果糖の多い果物は肥満の原因になるので摂取を避ける。アボガドは食べてもよい)
  • お菓子類、スナック類
  • 醸造酒 (ビール、日本酒、マッコリ)


最後に


本書が興味深く読めたのは、糖質制限について表面的な内容で終わっていないからです。

栄養素としての糖質の性質や、人類の糖質摂取の歴史、人間だけではなく動物との比較、糖質からみた農耕の起源、さらにはブドウ糖からみえてくる生命の諸相や進化まで、広範囲にわたって著者独自の見方が展開されています。

どうやって糖質制限をすればダイエットができるか、という視点で読むには情報量が多すぎるでしょう。しかし、次々に展開される話がおもしろく読め、学びがあった本でした。



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。