2017/03/13

書評: 届く CM 、届かない CM - 視聴率 = GRP に頼るな、注目量 = GAP をねらえ (横山隆治 / 大橋聡史 / 川越智勇)


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届く CM 、届かない CM - 視聴率 = GRP に頼るな、注目量 = GAP をねらえ という本をご紹介します。



以下は、本書の内容紹介からの引用です。

これまで、テレビ CM は視聴率を到達 (リーチ) の拠りどころにしてきた。しかし、CM 中はテレビから目を離すことも多いため、「視聴率 = 閲覧量」 にはならず、本当の効果測定は難しかった。ついに登場した、視聴者のリアルをとらえる技術によって 「届く CM 」 と 「届かない CM 」 の真実が明らかになる。

本書では、視聴者の視線や脳波を測定することでわかった事実をもとに、何が効くのか (効かないのか) を明確に提示する。広告として CM はどうあるべきか。実際のクリエイティブで何をすればよいか。デジタルとどう組み合わせていくべきか。変わりゆくマス + デジタルマーケティングを現実的に考え、 「これから」 を提案する。

本書を興味深く読めたのは、以下の3つでした。

  • これまでにないテレビ視聴データが使われている
  • 実際に自分たちがデータを分析したテレビ CM の効果検証結果および考察に基いて書かれている (説得力がある)
  • 効果的なテレビ CM どうつくればよいか、テレビとオンライン広告のキャンペーンの運用など、デジタルとマーケティングコミュニケーションがどうあるべきかを俯瞰的に提言している

■ これまでにないテレビ視聴データを積極的に使用

本書では、テレビ視聴データとして、以下の2つのデータを活用しています。


興味深いのは TVision Insights (TVI) のテレビ視聴データです。TVI は 1,000 世帯以上の調査対象者の協力を得られており (2016年時点) 、対象者の家のテレビにはセンサーカメラが設置されています。

テレビから向けられたカメラがテレビ視聴中の視聴者のデータを収集しています。具体的には、以下の3つのデータです。

  1. 誰がテレビの前にいるか
  2. テレビの前にいる対象者の視線がテレビに向いているか
  3. 対象者の表情

TVI は2つの指標を提供しています。1 を使い Viewability Index という対象者がテレビを見られる状態にあるかどうか、2 と 3 から Attention Index というテレビに視線を向けどれだけ注目していたかです。

ニールセン ニューロは、対象者を実験室に集め、アイトラッキング用のカメラと脳波測定のセンサーを装着します。その状態で被験者はテレビ CM を見て、視聴中の目の動き、脳波の変化を測定します。

ニールセン ニューロは実験室で、普段は装着しないような機器を取り付けた状態で調査をします。TVI は調査対象者は普段通りのテレビ視聴です。TVI のほうがより自然な状態で、テレビ視聴のデータが取得されています (パッシブデータ) 。

本書で紹介されているテレビ CM の分析では、TVI のテレビ視聴データ、ニールセン ニューロのデータが使われ、今まではわからなかった科学的な分析がされています。分析からの示唆も興味深いものが多かったです。

ちなみに、本書の副題にある 「GAP」 とは、Gross Attention Point の略です。テレビの視聴率と接触回数をかけ合わせた従来の GRP (Gross Rating Point) に対して、本書では GAP は以下のように説明されています。

テレビ画面注視率 (これを 「アテンション・インデックス」 という) を、特定の CM に関してすべて足し上げた数値を、筆者は GAP (グロス・アテンション・ポイント) と名付けた。GRP (グロス・レイティング・ポイント) が、CM の視聴率を足し上げたものであるのに対し、GAP はその数値にさらに視聴の 「質」 を掛け算したものと言える。つまり、GRP が 「何発打ったか」 であるのに対し、 GAP は 「標的に何発当たったか」 を示す指標である。

■ データに基づく説得力のあるテレビ CM 効果検証結果および考察

本書で紹介されている事例は、これまでになかったデータから著者たちが自らデータ分析や考察に基いています。

テレビ CM のアテンション (注視されているか) の分析では、様々な視点で検証されています。年代別・男女の対象者の属性別の比較、CM のシーンごと、CM 放映を開始した1週目と2週目での注目度合いの違いです。

読んでいて感じたのは、データと自分たちが手掛けたことが根拠になっているので、説得力のある内容になっていることでした。

■ テレビ CM だけではなく、デジタルとマーケティングコミュニケーションがどうあるべきかを俯瞰的に提言

本書では、個別のテレビ CM を検証して終わっているだけではありません。

テレビ CM が見られるためには (注視されるには) どういう考え方、メッセージ構成、映像や音を使ったどのような表現の仕方がよいかが考察されています。永遠にベータ版であるという断りをした上で、テレビ CM のゴールデンルールの提示をしています。

また、マーケティングコミュニケーションとして、テレビだけではなくネットも含めて、どのようなキャンペーン設計、運用 (特にリアルタイムでの運用を考察) 、効果検証がよいかが提言されています。

TVision Insights のような新しいデータが得られた結果、テレビの視聴データもデジタルになり、マーケティングコミュニケーション全体がデジタルになるという指摘でした。従来は、ネット全般がデジタルで、テレビはデジタルの範疇には入っていませんでした。

テレビとネットが同じ土俵で見ることができるようになります。以下は本書からの引用です。

パソコンやスマホの場合は、ユーザーは画面を注視しているが、広告が目に入る状態にあるかを測定する必要があった。逆にテレビは、画面には映っているが、視聴者がテレビの前にいるか、ちゃんと画面を注視しているかを測定する必要があった。

この両方が測定できて指標化できると、次の段階に進む。

ここまで行くと、各々のインプレッション一回あたりの認知や、態度変容などの価値を評価することができ、テレビとデジタルを組み合わせた効果を指標化できる可能性が出てくる。まずはテレビとデジタルを組み合わせての 「統合リーチ評価」 が登場し、それから両軸での認知効果の最大化を目指す方向へと進むだろう。

テレビ CM とデジタル広告のインプレッションあたりの認知効果は、「テレビ CM を1とすると、デジタル動画が 0.9」 とか、「テレビ CM を1とすると、デジタル動画は 1.2」 のような指標化が考えられる。

また、両方に接触したときの認知効果もわかる。テレビだけ当たった人、テレビとデジタル両方当たった人、デジタルだけ当たった人のそれぞれのフリークエンシーをもとに認知や態度変容の調査をかけると、ブランディング効果をかなり把握できる。当然、接触していない人と比較し、どのくらい効果が上昇したか評価することも必要だ。

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本書を読んであらためて考えさせられたのは、データの有用性と、その一方でデータは手段でしかないということです。大切なのはデータという道具で何を達成するかです。

本書の共著の1人である横山隆治氏は、次のように書いています。本書からの引用です。

筆者は、今後は 「データを味方にできるクリエイター」 が、力のあるクリエイターとなると思う。従来、経験と勘でやってきたことも、それが成功していることをデータが立証してくれることも多い。

「送り手から受け手へ」 というメガトレンドの中で、テレビ番組やテレビ CM だけが作り手や送り手の 「ひとりよがり」 で作られ続けるとはとても思わない。

ただ、筆者はクリエイターのビッグアイデアや良質なジャンプを否定しているわけではない。データを使ってクリエイティブを最適化するという思考は、あくまで、クリエイターがジャンプするために、跳び箱の前に置くロイター板の位置と方向を定めるためにデータを使うということだ。




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