投稿日 2017/05/05

IAS がネット広告キャンペーン ROI をビューアブル表示時間と表示回数で最大化する取り組みを発表 (2017年5月)


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ネット広告の品質測定テクノロジー会社である Integral Ad Science (インテグラル・アド・サイエンス, IAS) が、新しいビューアビリティ測定の取り組みを発表しました (2017年5月2日) 。

IAS Announces Next-Gen Viewability Measurement Capability in Partnership with Fortune 500 Companies - Integral Ad Science


IAS の新しいビューアビリティ測定の取り組み


フォーチュン 500 に入っている複数の企業と IAS との共同プロジェクトです。

指標は2つ、広告の表示時間と表示回数です。いずれも、広告がビューアブル (視認可能) な状態にある時間と表示回数を使います。

ビューアブル表示時間と回数を、広告を見た人のアテンション (注目) の指標とし、この2つが広告商品やサービスを購入するなどの成果につながるかどうかを把握します。表示時間と回数を使い、広告キャンペーンの ROI を最大化することが目的です。

以上のことが、リリースでは次のように書かれています。

Ad-tech firm Integral Ad Science (IAS) is partnering with a group of Fortune 500 companies to determine and measure how viewable exposure time and frequency have a role in turning consumer attention into action.

ROI を高めるために、3つのプロセスがあります。

  • キャンペーン期間中の累積ビューアブル表示時間とビューアブル表示回数を測定する
  • プログラマティックなキャンペーン運用により、過剰表示や過小表示を自動的に是正する
  • 広告の効果がより高まるようにキャンペーン運用を最適化する

リリースから該当箇所の引用です。

Measure the cumulative viewable exposure time and exposure frequency to a brand’s message consumers experience over the lifetime of a campaign

Programmatically eliminate overexposure and reduce underexposure on campaigns, so brands can even out their messaging distribution and increase the value of their campaigns

Optimize campaign reach against the drivers that enable brands to influence consumers


中間指標を最適化し ROI を最大化させるアプローチ


IAS が 「Next generation viewability measurement」 と言うこの取り組みが興味深いと思うのは、ビューアブルな表示時間と表示回数を使って、広告キャンペーンにおける購入などの成果の ROI を最大化しようとするアプローチだからです。

もしこの取り組みが機能すれば、最終のゴールである広告による売上増を達成するために、キャンペーン運用ではビューアブル表示時間と表示回数を指標として見ていればよい、ということになります。表示時間と回数はあくまで中間指標ですが、これらをキャンペーン運用 KPI として追っていけばよいのです。

例えば考えられるのは、累積のビューアブル表示時間が60秒を超えれば、その広告を十分見て広告商品やブランドの認知は高まり、購入への広告効果を果たしたと判断する、新しい広告クリエイティブに差し替える、という運用です。

ポイントは2つです。表示時間や回数を従来のインプレッションベースではなく、ビューアブルベースであること、表示時間と回数は広告キャンペーン運用の管理画面で表示される指標ということです。

後者について、管理画面に出る運用 KPI なので、認知等の態度変容や購入などの指標を KPI にしたキャンペーン運用よりも、表示時間や回数を KPI にしたほうが運用効率が上がります。


いずれは人ではなく AI に任せるようになる


IAS の今回のニュースを見て思ったもう1つは、ROI を最大化するために表示時間などの中間指標でキャンペーンを最適化する運用は、いずれは人ではなく機械が自動で行なうようになるだろいうということです。

人が行なうのは、投下できる予算の上限設定、キャンペーン期間、キャンペーンゴールの明確化などの条件を伝えることになるでしょう。その条件を達成するために AI が自動で運用します。

以下のエントリーで取り上げた、AI 広告エイジェンシーである Albert は1つの例です。

参考:AI 広告エージェンシーの Albert 。広告キャンペーンは人ではなく AI に任せる時代に


ビューアブル表示時間とビューアブル表示回数をどのように最適化すれば、そのキャンペーンゴールである ROI が最大化するかを見極め、実際に達成するためにきめ細かな運用をするのは、機械にやってもらう時代はもう目の前にあるのでしょう。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。