2017/06/23

ヒット曲の30年の変貌から考えるアテンション時代に適したコンテンツ


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WIRED に、音楽についての興味深い研究結果が紹介されていました (2017年6月11日) 。

音楽ストリーミングがもたらした、全米ヒット曲の 「7つの変化」:研究結果|WIRED.jp

米国の大学院生が過去30年分の音楽のヒットチャートを分析した結果、いくつかの変化の傾向が確認できたようです。30年での変貌が興味深かったので、ご紹介します。


調査研究の方法


調査方法は、元の論文の Abstract に、次のように説明されています。

  • 2つの調査分析を実施
  • 1つ目は、1986年から2015年までの、それぞれの年のアメリカのシングルトップ10の曲を対象に分析 (合計303曲)
  • 分析には5つのパラメーターを使用:1. タイトルの文字数、2. 曲のテンポ、3. 歌詞が入るまでの時間、4. 曲名が歌詞に出てくるまでの時間、5. 歌詞の内容
  • 2つ目の分析は、2015年にヒットした60曲と、同じアーティストのあまりヒットしなかった60曲について、同じ5つのパラメーターで比較

WIRED に掲載され、これからご紹介するヒット曲がどのように変わったかは、1つ目の調査からです。


30年分のヒット曲を分析した調査結果


調査研究からわかった30年でのヒット曲の主な変化は、次の通りです。

  • 曲のイントロが短くなった。80年代は平均で20秒以上あったが、現在は平均で5秒
  • 曲のテンポが早くなった。この30年で 8% 上昇
  • 歌詞の中に曲名が登場するのが早くなった
  • 曲名自体も短くなった

これらの変化は、何を意味するのでしょうか。

傾向をまとめると、曲をじっくりと聴いてもらうよりも、曲をわかりやすくし、曲で最も伝えたいことを早めに出しています。サビや曲のタイトルが出るまでを早くし、聞いている人の注目 (アテンション) をすぐに得ることが意図されています。

イントロを短くする・まわりくどい歌詞の言い回しを減らすなどの、曲の最も盛り上がるところ (歌う側からすると最も言いたいこと) に最短距離で行こうとしています。

具体例として WIRED では2つの曲が紹介されています。1987年の "Nothing's Gonna Stop Us Now" (by Starship) と、2015年の "Sugar" (by Maroon 5) です。

私の聴き比べた印象は、曲調がそもそも全く違い、比較が難しいと感じました。

こちらの記事によれば、2つの曲を比べると、1987年の曲はイントロが20秒以上あり、2015年の曲は曲名が1単語・イントロは半分の短さ・40秒以内に曲名である Sugar が歌詞に登場すると解説されています。

実際の2つの曲の動画です。興味のある方は、ぜひ聴き比べてみてください。






音楽への関わり方の変化が、音楽自体を変えた


調査研究からわかった変化の背景には、この30年での音楽の聴き方の環境変化が大きいのでしょう。具体的には、次の通りです。

  • 音楽のメディアフォーマットがレコードや CD から MP3 などに変わった
  • プレイリストで自分の好きな曲を自由に組み合わせられる (好きではない曲は入れなくてよい)
  • ストリーミングで流れてきても、気に入らなければすぐにスキップができる

音楽との関わり方が、ある1つの曲を何度も流し、じっくりと味わうような聴き方ではなくなり、インスタントに消費するという環境の変化です。人々の音楽の聴き方・関わりが変われば、音楽のつくり方自体も変化したことは興味深いです。


動画にも当てはまる


受け手にわかりやすく、テンポを早くして、作り手が言いたいことまでを最短距離で伝えることは、音楽だけに限りません。

例えば、動画です。以前のエントリーで取り上げたのは以下の2つでした。


共通しているのは、動画コンテンツに注目してもらえる時間が短いこと、それに対応するためにコンテンツの作り手として、どう工夫するかです。今回ご紹介した音楽の調査結果を単純に当てはめることはできませんが、動画においても30年のヒット曲の変化と同じ傾向が見られます。

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多田 翼 (書いた人)