2017/08/04

大局観をつかむために 「3 x 3 の視点マトリクス」 を意識しよう


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外資系コンサルに学ぶ聞き方の教科書 という本に、人から話を聴くときに、相手が今は 「各論」 を話しているのか、「総論」 を話しているのかを注意する必要があると書かれています。


3つの目線を使い分ける


各論ばかりを聴いていては、「個別の事情はわかったが、結局はどうなのか」 となります。総論ばかりでは、「なんとなく話はわかったが、具体的にはどうなのか」 となります。

本書で紹介されるのは、話を聴く際には 「3つの目線」 を使い分け、質問をする時も3つの目線を意識することです。3つとは、虫の目、鳥の目、魚の目です。

  • 虫の目:近い距離の目線。各論や具体論を質問する
  • 鳥の目:高い位置から全体を俯瞰する目。全体像を見るために質問をする
  • 魚の目:流れを見る目。事象や情報を、時代の流れ・世の中の流行・組織の変遷など、どのような流れで発生したのかを質問する

人は、詳細な具体例を話したかと思えば、内容が漠然とした全体の話に切り替わったりするものです。

どちらか一方に偏ることなく、虫の目と鳥の目で話を聴き、今は何が話されているのかを意識するとよいです。片方ばかりであれば、バランスを取るためにもう一方の話を引き出す質問をするとよいでしょう。


3つの目線を効果的に使ったインタビュー


この本には、著者が関わったコンサルティング案件で、インタビュースキルの高いコンサルタントが、どのように3つの視点で話を聴いたかの例が紹介されています。

的確な質問で情報を引き出せたので、解決策提案後に、クライアントが 「この短期間でここまで当社の事情を理解し提案をしたコンサルティング会社はいない」 と語ったとのことです。

以下は本書からの引用です。

相手 「やっぱり値段が高いから競争優位性がないと思います」
自分 「具体的にどんなことからそう思いますか? (虫の目) 」
相手 「お客様は最初から A 社の商品を指名買いするんですよ」
自分 「指名買いの理由は具体的には何が多いのですか? (虫の目) 」
相手 「子供に優しいとか安全だとか、女性に使いやすいという理由のようです」
自分 「一言で言うとターゲット層への訴求が功を奏しているということでしょうか? (鳥の目) 」
相手 「そうですね」
自分 「要するに、プロモーションの問題という理解でよろしいでしょうか? (鳥の目) 」
相手 「価格というよりは、プロモーションかもしれませんね」
自分 「こういった問題はこれまでもよくあることですか?最近のことですか? (魚の目) 」
相手 「弊社では長年△△という方針があって……」
自分 「なるほど、今後もその方針は踏襲されるのでしょうか? (魚の目) 」

質問は、虫の目で具体的な情報を引き出し、鳥の目でまとめています。魚の目で、過去や今後を見据えて現状を位置づけようとしています。


将棋での鳥の目から虫の目


将棋の羽生善治氏は、大局観を定めてから将棋の局面を読むと言います。

勝負哲学 という本では、羽生氏が 「鳥の目」 と 「虫の目」 を使っていることを話しています。この本は羽生善治氏とサッカーの岡田武史氏の対談本です。以下は該当部分の引用です。

羽生:全体を認識する俯瞰性がないと部分をしっかり構成していくこともできません。いわゆる大局観ですね。大局観というのは次の一手をどう指すかといった具体的な手順よりも、状況を上からながめて全体像がどうなっているかを把握し、大まかな方針を定めることです。

上空から見て、右へ行くか左へ行くか、どのくらいの速度で進むか。それら大筋の方向性を大づかみする。それが定まって初めて、地上へ降りて、何歩歩いて、どこで曲がるか。その一歩一歩、部分部分を詳細に検討することができます。ですから、大局観をしっかり定めておくとムダな指し手が省かれて読みや直感も冴えてきます。

岡田:鳥の目が虫の目へとフォーカスされていくような感じですね。

羽生:そうです。

はじめに鳥の目で全体を把握し、虫の目に変えて部分部分を詳しく検討するとのことです。先に鳥の目を見るという順番が大事で、羽生氏は 「ムダな指し手が省かれて読みや直感も冴える」 と言っています。


「中立の目」 で判断する


岡田氏との対談ではこの後、羽生氏は鳥の目や虫の目とは違う、「中立の目」 で見る重要性を語ります。再び引用します。

羽生:俯瞰の目と同じようなことですが、私は局面をできるだけ 「中立の目」 で見るようにも心がけています。

岡田:中立というのは、どっち側にもつかない第三者の目ということ?

羽生:ええ。自分でもない、相手でもない、たとえば自分が観戦者だったとしたら、この局面はどう見えるかという第三の視点です。自分から見てこの局面は自信が持てない、相手側から見てもやっぱり判断がつきかねるというとき、そのどっちでもない中立の目で場をながめてみることは、情勢判断をするときのバイアスを排除する上でとても重要になってくるからです。

岡田:わかりますが、言うは易く、行うは難しで、実際には、とてもむずかしいことではないですか。それも対局中にでしょう?私も試合中、相手の監督の立場になって考えることはやるんですよ。いま、この戦術で押していったら相手はイヤだろうなあとか。でも、それは相手の立場に立つということで、羽生さんのいう中立は、どっちの立場にも立たないということですよね。

羽生:もちろん、そうするのはうまく状況が読めないときです。形成がいいのか悪いのか判断がつきかねるときとか、指し手の方向性に迷いが生じているときとかですね。そういう悩ましい場面のときに、ひとつ視点を増やして別の角度から検討するんです。判断材料がひとつでも増えれば、それだけ複眼になって客観的に見ることができるでしょう?


3 x 3 のマトリクスで視点を意識する


鳥の目や虫の目は遠近の切り替えです。上空から全体を見るのか、地上で部分を詳しく見るかです。一方、第三者の目である中立の視点は、立場そのものの切り替えです。

羽生氏と岡田氏の話のやりとりで思ったのは、視点の切り替えは 3 x 3 のマトリクスで考えることができることです。3 x 3 とは、鳥の目などの3つの遠近と、自分・相手・中立などの3つの立場の切り替えのかけ算です。9つの組み合わせは以下のマトリクスになります。




虫の目

鳥の目

魚の目

自分の立場から







相手の立場から







中立の立場から









1つ1つ視野を増やしていく


9つの視点を、いつでも自在に操るのは簡単ではないでしょう。自分の立場でしか見られず、さらに視野が狭くなると虫の目でしか見られません。だからこそ、1つでも多くの視点で見られるように意識をしたいです。

自分の立場からだけでも、虫の目だけではなく全体を俯瞰するよう鳥の目から一歩引いて眺めてみる、過去や他の業界と比べるために魚の目で見ることです。

自分の立場でできれば、相手の立場で考えてみます。相手とは、上司の立場・競合の立場・顧客の立場です。さらに、中立の立場で、今自分が取り組んでいることに関係のない人が見れば、どう映るかを考えます。関係のない人とは、例えば家族です。家族がこの状況を見れば、どのように見えるかです。

拡げやすいのは、以下の順番です。

  • 自分の立場から:虫の目、鳥の目、魚の目
  • 相手の立場から:虫の目、鳥の目、魚の目
  • 中立の立場から:虫の目、鳥の目、魚の目

まずは慣れている視点から、1つずつ増やしていきたいです。




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多田 翼 (書いた人)