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投稿日 2015/08/29

広告メディアプランは 「マーケット感覚 → 広告メディアリーチ」 の順番で




オンライン動画広告についてよくある論点の1つは、「テレビ広告」 と 「オンライン動画広告」 の予算配分の最適化です。オンライン動画広告にとっては、従来のテレビ CM 予算からどれだけオンラインにシフトできるかです。


そもそもリーチ範囲が異なる


この時に注意が必要なのは、映像を広告素材として消費者に届けるメディアとしてのテレビ広告とオンライン動画広告では、リーチできる範囲のポテンシャルがそもそも異なることです。
投稿日 2015/07/29

オハイオ州立大学の 「性的 / 暴力表現の広告への影響調査」 が興味深い




オハイオ州立大学が、広告における性的および暴力的表現が、広告を見た人にどう影響するかの調査結果を発表しています(2015年7月) 。

​Sex and violence may not really sell products | News Room - The Ohio State University

今回のエントリーでは、調査から興味深かったものを取り上げます。
投稿日 2015/04/22

Facebook が動画広告効果調査を発表 (2015年3月) 。興味深い結果と発表スタンスへの疑問




フェイスブックと調査会社ニールセンが共同で、フェイスブック動画広告の効果測定調査を実施しました。結果は以下で発表されています (2015年3月) 。

The Value of Video for Brands | Facebook for Business


調査手法


調査の方法は以下の通りです。

  • 調査対象の動画広告は 173 本
  • 対象の広告を見せる接触者グループ (Exposed group) と、対照群の非接触者グループ (Control group) を比較
  • 広告に効果があったかどうかの評価指標は3つ
    • 広告想起 (Ad recall) 
    • ブランド認知 (Brand awareness) 
    • 購入意向 (Purchase intent)
  • さらに、動画広告の視聴時間長さによって、広告効果の違いを分析
  • 2014年12月 - 2015年2月に実施 (参考: この調査についてのインタビュー記事)
投稿日 2015/03/01

Facebook のクロスメディア広告効果調査に、あえてツッコんでみる




Facebook Japan が、自社広告を含むクロスメディア広告効果調査を発表しました (2015年2月22日) 。

参考:花王エッセンシャルで Facebook 広告が驚きの効果! | Facebook for Business


花王のシャンプーブランド 「エッセンシャル」 が、2014年8月に行なったキャンペーンの広告効果調査とのことです。広告はフェイスブックを含む、TV / 店頭 POP / Web / 雑誌 / OOH に展開した大規模なキャンペーンだったようです。

上記の発表タイトルで 「Facebook 広告が驚きの効果」 とあるように、いくつか紹介されている結果自体は興味深いものでした。

一方で、Facebook からの発表のスタンスそのものに疑問点がありました。
投稿日 2015/02/18

Facebook が新しい広告効果指標 Relevance Score をリリース (2015年2月) 。要するに何を意味するかを考える




Facebook が新しい広告効果指標を発表しました (2015年2月11日) 。

Facebook の広告が、その広告を見たユーザーにとってどれくらい受け入れられたかを点数化した、Relevance Score (レリバンススコア) と呼ばれる広告効果指標です。

参考:Relevance Score for Facebook Ads | Facebook for Business


Facebook の Relevance Score とは


Relevance Score は 1~10 点で表示され、最も良いスコアが 10 点のようです。
投稿日 2015/02/08

売上への広告効果を測定する Facebook Conversion Lift が登場 (2015年1月)




Facebook が Conversion Lift (コンバージョンリフト) という、新しい広告効果測定サービスを発表しました (2015年1月27日) 。

参考:Conversion Lift Measurement for Facebook Ads | Facebook for Business


Facebook Conversion Lift とは


Facebook Conversion Lift とは、Facebook 上の広告により、広告をした自社製品やサービスの売上やコンバージョン (会員登録等) にどれだけの広告効果があったかを測定できるものです。

Facebook Conversion Lift の特徴は次の通りです (2015年2月現在) 。
投稿日 2014/11/30

アイレップが動画広告の検索行動への効果検証調査を提供開始




インターネット広告代理店のアイレップが、動画広告の効果検証サービスをリリースしました (2014年11月14日 ベータ版) 。


動画広告の検索広告への効果検証


特徴は、動画広告を見てその後の検索行動に、広告が影響したかを測定できることです。

参考:アイレップ、動画広告の新しい効果検証方法の β 版を開発、提供開始へ 動画広告接触ユーザーの検索行動における変化を観測-|株式会社アイレップ (リリース PDF)


アイレップの調査手法


アイレップの提供するサービスの分析手法は、同じユーザーが動画広告を見る前と後で検索ワードがどう変わったかを比較します。同一ユーザーにおけるプレポスト方式です。
投稿日 2014/10/05

Cookie 問題を解決する Facebook のマルチデバイス広告測定




フェイスブックがおもしろい取り組みを進めています。

参考:Facebook 、買収した Atlas 広告プラットフォームを再ローンチ―マルチデバイス、オフラインのセールスもモニタ - TechCrunch (2014年9月30日)


Cookie 問題


オンラインでのユーザーを計測するためには、これまでは Cookie を使う手法が一般的でした。ユーザーに対して Cookie をブラウザごとに配布し、広告が配信された数、クリック数、A という広告に接触した人に B という広告を出す (リマーケティング) などに使われます。

ただし、Cookie には課題もあります。例えば、以下です。
投稿日 2014/06/14

ネット広告の効果指標の近未来 (2014年現在)




広告ビジネス次の10年 という本に、近未来予測 (第七章) がいくつか書かれています。



態度変容がネット広告効果の指標になる


広告の近未来予測の1つは、ネット広告の効果指標に 「認知」 や 「態度変容」 が加わることでした。以下は本書からの引用です。

動画広告の普及にともない 「認知」 「態度変容」 といった指標がネット広告の効果指標として浸透していくことだ。ウェブ上で直接購入を促すことだけがゴールではない商品を扱う広告主が、広告の認知、ブランドの認知、そして購入意向などの態度変容効果に着目して、動画広告を本格的に活用していく。
投稿日 2014/05/25

書籍 「IT ビジネスの原理 (尾原和啓) 」 から、ハイコンテクストの視点でネット広告を考える




IT ビジネスの原理 は、タイトル通り、IT やネットの世界の根本部分がまとまっている本です。



難しいことを複雑に説明することはできても、難しいことをわかりやすく簡単に表現し、かつ本質を捉えることはなかなかできることではありません。

この本では、著者の尾原さんが、根本を平易な書き方で説明されていて、IT ビジネスの原理がよく理解できます。


ハイコンテクストがキーワード


本書のキーワードの一つがハイコンテクストです。おそらく尾原さんが最も言いたかったことです。前職のグーグルを辞め、アマゾンではなく楽天に転職された理由でもあります。
投稿日 2013/06/02

Web広告の「反応者ターゲティング」というパラダイムシフト

ブラウザでウェブを閲覧をする仕組みは「往復はがき」で考えると理解しやすいと思っています。仕組みとしては、
  • 往信はがきを送付:PCから、ウェブページのコンテンツ情報があるサーバーに閲覧したいというリクエストを送る
  • 返信はがきの住所を確認:サーバーはユーザー情報(IPアドレス/ドメイン/ブラウザ種類等)を確認する
  • 返信はがきが届く:ユーザーのブラウザにコンテンツ情報が表示される

■Web広告とTVCMの違い

ウェブページの多くには広告が表示されていますが、ウェブ広告が画期的だったのはコンテンツサーバーと広告サーバーが別々になったことでした。往復はがきの例えで言うと、ユーザーははがきを2通用意し、コンテンツ情報が入っているサーバー宛と広告情報が入っているサーバー宛にそれぞれ送っています。

なぜこれが画期的かの理由は、コンテンツは同じ情報なのに広告はユーザーごとに適切なものに変えられるからです。例えばこのブログエントリーを見ているユーザーに表示されるコンテンツ(ブログ記事)は同じですが、広告内容はPCだと上部/スマホは下部に表示される内容はユーザーごとに違うのです。

これができるのは、コンテンツサーバーとアドサーバーが別々で運用されているから。この仕組はアドネットワークサーバーでも第三者配信サーバーでも基本的には変わらないものです。

一方のTVでは、番組とCMの放送配信局は同じなので、同じ番組を見ている視聴者には誰もが同じCMを見ることになります(例:サッカー日本代表の試合で、ハーフタイム中に流れるCMはみんなが同じものを見る)。

もしTVもWebと同じ仕組になれば、番組は同じものを見るけれど、車が趣味のAさんの家のTV1には車のCMが、来年小学生になる子どもを持つBさんの家のTV2にはランドセルのCMが、みたいなことができるようになるわけです。同じ世帯でもリビングのテレビと寝室のテレビでも違うCMを流すこともできます。

Webの世界では、(発展途上であるものの)広告配信のユーザーごとの最適化ができています。Web広告配信の最適化には様々な手法があって、
  • 行動ターゲティング:ユーザーにクッキーファイルを配り(正確には利用ブラウザに配る)、クッキー内に記録されるブラウザ情報・閲覧履歴や検索ワード・ユーザーIDなどを参照し広告を配信する
  • リターゲティング:特定のサイトに訪問したユーザーに、別のサイトで関連する広告を出す。例えば、商品サイトを訪れたユーザーに、別のニュースサイトに訪れた時にもその商品の広告を出す
  • リターゲティング拡張:↑の応用みたいなもので、リターゲティングの対象となったユーザーと似た人を選び出し、広告を出す。商品サイトに訪れたユーザーとウェブ行動が似ているユーザーは、「(まだ商品サイトには訪問していないけど)恐らく同じような関心を持っているよね」というロジック。商品サイト未訪問者なので見込み新規ユーザーに広告が出せる
  • オーディエンスターゲティング:サードパーティクッキーなどの広告主の持つ情報以外の外部データも活用し、より精緻にターゲティングを行い広告を配信する

■反応者ターゲットという考え方

「ビッグデータ時代の新マーケティング思考」という本で強調されていたのは、ターゲティングの考え方が変わる、ということでした。

従来のターゲットの考え方は、年齢や性別のデモグラ・価値観などのサイコグラフィック・行動特性などのユーザー情報からターゲットを「事前に想定する」ことでした。こういうユーザー層がターゲットになりそうと事前にしっかりと絞り込むイメージです。ターゲットを絞り、そこに向けて広告を配信する。

一方で本書で強調されていたのが「反応した人がターゲット」という考え方。ざっくりとターゲットは想定はするものの、広告をまずは配信してみて、それに反応した人たちをターゲットにするという従来とは逆の考え方、パラダイムシフトです。

反応者をターゲットにする考え方で重要になってくるのが、反応者をどう捉えるかになります。

反応者をどうグループ分けをするか。デモグラ、ジオグラ(エリア)、サイコ(心理的属性)、ビヘイビア(行動)、などに加え、ニーズで分けられるかもポイントだと思います。反応者はなぜ反応したのか、その裏にはそれぞれのニーズがあり、ニーズごとにグルーピングができるかどうか。

従来のターゲティングはターゲットを事前に想定することにウェイトを置いていたことに対して、反応者ターゲティングでは実際に反応した人をターゲットとして、その後に反応者をどれだけ分析できるかにウェイトが置かれます。PDCAで言うと、従来型はPに比重が、反応者ターゲットではまずDをやってCとAに比重があるイメージ。

■反応者ターゲットで問われる「データ活用」

反応者ターゲットの考え方はおもしろいものだと思いました。従来のターゲットの考え方は狙うことに集中しているので、撃った後のことはあまり重視されていませんでした。というかそもそも撃った後にどうなったかが知る術がなかったのです。例えばTVCMをやっても、誰が見て、その人たちにどれくらいのCM効果があったのか、つまり事前想定ターゲットが正しかったのかの検証ができなかった。CM出稿と配信後の売上という、最初と最後しかわからなかったのです。

反応者ターゲットでは、広告は誰が反応したのか、AとBの広告のどちらのクリエイティブに反応が良かったのか、反応した人の行動特性までわかります(クッキーが削除されないことという前提がありますが)。そうすると、まずはやってみて、反応者がわかり、その人達に対してどういう対応をして、という感じで次のアクションにどんどん進む、つなげていくことが可能になります。

データ分析の醍醐味は単に分析して終わりではなく、分析結果から次への示唆、ネクストステップにどう活かすかです。反応者ターゲットの考え方では、反応者した人というターゲットの発見から始まり、反応者をどう括るか、グルーピングした各反応者群にどんなアクションを取るのか、など、一歩踏み込んだデータ活用が期待できます。そうしなければ進化はないのではと思っています。





投稿日 2013/05/26

ネット広告の今後の課題:広告本来の目的を実現するために




インターネット広告の何が画期的だったかを知るには、従来のマス広告と比べてみるとよくわかります。


マス広告と比べたネット広告の特徴


ネット広告では広告媒体がネット上であるため、広告スペース (在庫) はマス広告よりも多いと言えます。従来のマス広告ではテレビ・新聞・雑誌内の時間やスペースなど限られています。

ネット広告は、広告測定にも特徴があります。どれくらい広告が表示されたのかのインプレッションや、クリック数、コンバージョンを測れるようになりました。

広告の課金体系も実際にクリックに応じてが主流です。一方、マス広告は広告を出稿した分の課金でした。
投稿日 2013/05/19

書評「リスティング広告 プロの思考回路」

「リスティング広告 プロの思考回路」という本をご紹介します。ネット広告の1つであるリスティング広告(ユーザーの検索結果に連動して広告が表示される)の基本的な考え方と、実践的な内容もバランスよく書かれています。

■リスティング広告のプロが持つ2つの視点

リスティング広告で大事な3つ視点は、
  • 自社(広告主)を知る:ランディングベージ(LP)に訪問者に本当に伝えたいことが書いていない
  • 競合を知る:そのキーワードで出稿しても、(同じキーワードで出稿している)他社に勝てない
  • お客を知る:その広告文で本当にクリックされるのか
まさに3Cのフレームそのものです。

リスティング広告のプロたちが実践している2つがあって、
  • 「お客さまは必ず自社(広告主)と競合他社を比較している」ことを念頭に置く
  • 「比較されたときに勝てる武器は何か」を理解している
検索結果に連動されるリスティング広告は、ユーザーが自分のニーズを検索キーワードという形で表現し検索した時に初めて広告が表示されます。ほとんどの場合、競合他社の広告も出ます。これはリスティング広告の特徴。

つまり、比較されることになるので、他社と比べられても自社が選ばれる「武器」がなければ、自社広告が上位に表示されても他社に取られるか、自社広告をクリックされるだけで終わってしまいます。よって、「比較された時に勝てる武器は何か」を理解することが非常に重要。

■リスティング広告の3つの要素

リスティング広告は、①キーワード、②広告文、③ランディングページ(Webサイト)の3つが一体となって初めて大きな成果が出るもの。リスティング効果が高い時は3つのバランスがいいし、効果が出ていない時はバランスが崩れている。

3つの要素それぞれに対して、比較された時に勝てるかという視点が大事だと理解しています。

広告出稿前にキーワードを深掘りする際には、候補となるキーワードについてどんな広告主が入札しているか調査してみます(例:Googleで検索)。その時に広告表示される数(広告主)が多いほど、そのキーワード市場の競争が激しいことがわかる。見方を変えるとその市場はお客ニーズも多いとも言えます。

リスティング広告として表示される広告文も「比較されている」視点は大切です。本来、広告文には自社商品/サービスの特徴が端的に書かれてものであるべき。巧みな広告文で集客できても(クリックされても)、サービス内容と広告文が乖離しれていればコンバージョンされません。いくら広告文で競合と差別化されていても、最終的には正しい情報(ユーザーのニーズにあったもの)につながらないと意味がないのです。

ランディングページでも、ユーザーやお客の立場で考えることが大事。ランディングページの目的は、サービスの特徴を一目でわかりやすく伝えること。そのためには、ランディングページでは自社の強みをまず訴求し、その強みがお客様の役にも立つ・メリットがあることを伝える。お客さまに安心感を与えて納得してもらいコンバージョンにつなげる。大切なのは、ターゲットの具体的な想定と、お客にとって「買わない理由が見つからないページ」にすることです。結局のところは、このランディングページは、お客のニーズに本当に答えているか。

★  ★  ★

本書がおもしろかったのは、小手先の技術やテクニックではなく、リスティング広告運用でどういう考え方をすればよいかまで踏み込んで書かれている点です。単にクリック率や広告スコアを上げるにはどうすればいいかではなく。

一通り読むことでリスティング広告の理解も進むし、ケース例とともに説明されているので、具体的なイメージも持てます。タイトルにあるように「リスティング広告のプロの思考回路」が学べます。




投稿日 2013/05/12

YouTube 有料チャンネルを開始した Google の狙いを、ビジネスモデルから考えてみる




YouTube が有料チャンネルを開始


YouTube が、月額課金制でチャンネルを開設できる新サービスを開始しました (米国時間 2013年5月9日) 。


まずはパイロットプログラムとしてのスタートのようです。チャンネルに登録 (サブスクリプション) したユーザーから課金できるもので、最低料金は月額99セントからです。

全てのチャンネルに14日間の無料トライアル期間がつけられ、年間契約でディスカウントもされるとのことです。

今回の YouTube 有料チャンネルが、Google のビジネスモデルにどう影響するかを考えてみます。
投稿日 2012/06/16

テレビでターゲティング広告は実現できるのか:理想と現実のギャップ

ネット広告の世界では人によって見せる広告の内容を変えるターゲティング広告は当たり前のように使われています。具体的には、そのユーザーが過去にどのウェブページを見たか、何の広告が表示されたかや実際にクリックしたか、どんな検索をしたか等の、行動データから機械的にその人に最も適切であろう広告を表示させています。広告を見せる人を絞り、より広告の効果を高めるやり方。

つい最近見た記事でもフェイスブックのターゲティング広告の話題があり、このへんの話は日進月歩という感じです。このフェイスブックの広告システムはクッキーを使ってユーザーの行動履歴を取っているとのこと。
Facebook Tests Real-Time Ad Targeting Based on Web Browsing Activity|HubSpot Blog

■ターゲティングが弱いマスメディアの広告

一方、それに比べてテレビなどのマスメディアでは広告のターゲティングはできていないのが現状です。ネットでは同じウェブページを見ていても、見る人により表示させる広告が違いますが、テレビは見る人によってCMが異なることはありません。今、日テレで流れているCMは視聴者全員が同じものを見ているのです。

視聴者全員に同じものを見せるというのはメリット/デメリットがあって、メリットとしては一度に多くの人に広告を見せることができます。専門的にはリーチ率と言いますが、テレビでは一般的に視聴率1%で100万人が見ているとされているので、単純計算では視聴率10%の全国ネットの番組にCMを流せば1000万人にCMを見せることができる。(もちろん、CMは流れていても見ていない、トイレとかで離れていることもあったり、そもそも視聴率1%は普通は世帯ベースなので、100万人という人ベースに置き換える計算も正確ではないのですが)

デメリットは、全員に見せるということは、広告のターゲットができていないということなので興味のある人にもない人にも一様に見せるので、どうしても無駄が発生します。TVCMを放映するのに大きなお金をつぎ込みますが、無駄があるほど費用対効果が悪くなります。

■ターゲティング広告配信機能を持つインテルのTVセットトップボックス

Mashableの記事によればインテルがテレビCMのターゲティングを可能にするセットトップボックスを開発したとのことです。
Intel Set-Top Box Uses Face Recognition to Target Ads to You [VIDEO]|Mashable

機能としては、インテルのセットトップボックスに搭載された顔認識技術により、TVを見ている人の性別や大人/子どもを判定し、そこからより適切なテレビ広告を表示させるようです。記事によれば認識するのは性別とか大人か子供かくらいのレベルで、個人までは特定しないとあります。おそらく技術的には事前のユーザー登録と顔認識技術でもっと詳細に個人を特定できる気はします。例えばセットトップボックスに性別・年齢・趣味・興味のあるジャンル(美容/ダイエットとか)、などに加えて顔写真を登録するイメージ。が、あえてそこまでしないのでしょう。

インテルのセットトップボックスのメリットとして、広告主には広告のターゲティングができること、視聴者にはセットトップボックスを買って使ってもらうことで、テレビや番組視聴の料金が下がるようです(なお、アメリカでは日本と違いケーブルテレビが主なので有料でテレビを見るという感覚が強いです)。

記事の最後の方に少しだけ触れていたのが、このインテルのセットトップボックスはニールセンの視聴率調査とも何かしらの連携があるようで、アメリカではニールセンのテレビ視聴率調査は日本でいるビデオリサーチのような存在なので、個人的にはこちらも気になる動きです。

■テレビでターゲティング広告をするには

顔認識で広告を出しわけるセットトップボックスは色々と興味深いのですが、出しわけが性別と大人or子供というのは切り口としてはまだまだ不十分です。これだけだと2×2マトリクスの4象限しかないので、絞っていると言ってもターゲティングとしては粗い。どこまで効果的な広告を表示できるか。

方向性としては、テレビもネットの世界と同じように今後はターゲティング広告に進んでいくはずです。テレビでもターゲット広告を実現するにはどうすればよいか。ちょっと考えてみると、

1つはインテルの顔認識のようなテクノロジーで見ている人を識別すること。前述のようにもっと細かく「その人が誰か」を判別できるようになれば、その条件に合う広告表示も可能になってくるかもしれません。ただし、これ系の技術は高度なテクノロジーを使うほどコストもそれだけ上がるので費用対効果の制約が大きくなるように思います。研究やアカデミックには色々とできるのですが、ビジネスとしてやる場合はコスト感が全然合わないという状況です。

2つ目、ネットで行動履歴データから表示広告を出しわけることをテレビでも応用する。実際にこうした技術があるのかあまり詳しくないのですが、過去に見た番組からその人の嗜好性を判定し、より興味のありそうな広告を表示させることです。いずれテレビもパソコンなどと同じように将来的にはネットにつながるのが普通になると思うので、テレビの過去視聴情報だけではなく、ネットの過去履歴も色々と統合すると、ターゲティング精度はもっと上がるかもしれません。よく「つづきはWebで」というテレビ-ネットを連動させるクロスメディアで広告を出す例がありますが、実際にテレビとネットがつながることでシームレスな広告展開ができるようになるのかもです。

3つ目、テレビにフェイスブックやツイッター、その他SNSの情報を統合して、その人に刺さるような広告を表示する。これをやる場合は2つ目同様にプライバシー/個人データ利用とかでハードルは高そうですが、SNSからその人の興味関心を導き出したり、友人おすすめ商品を広告として表示させる。おそらく上記2つ目も同時に実現される気もするので、今よりもターゲティング精度は上がります。

これら以外にも、テレビと手元のスマホを連動させて、スマホサイドでターゲティング広告を出すというダブルスクリーンを活用することも考えられます。個人的にはこちらも興味があるのですが、ちょっと長くなりそうなので割愛。

■あらためて広告について少し

テレビCMについて色々と書いてきましたが、個人的な問題意識としてはTVCMに無駄が発生している点です。ムダというのは、興味のある人にもそうでない人にも一律に見せることでせっかく広告投資をしてもどうしても捨て金が発生すること。視聴者にとっても興味のない広告を見せられるほどつまらないものはないので、結果どうなるかというとCM中はチャンネルを変えたり、録画視聴であればCMスキップされてしまう。

広告をつくること、広告枠を買うこと、広告を流すこと、それぞれにお金がかかっていて、これらの広告コストはめぐりめぐって商品/サービス価格に反映されます。つまり、広告コストは結局は消費者が負担する構図。考えてみれば、普段の生活で朝のスマホから始まり出かける前のテレビ、移動中の電車内の広告、該当広告、PCで見るネット広告・・、とそれこそ1日中、私たちは広告に接触しています。それだけ見た広告の中で印象に残る広告はどれだけ少ないことかがよくわかります。これだけ広告があるのに、ほとんどがスルーされている状況は社会全体で見た場合にそれだけ無駄が発生しているのではないでしょうか。

TVコマーシャルでも、いくつかは見ていておもしろいCMがあると思っています。広告自体がおもしろいクリエイティブに優れたもの、思わず興味が湧くCM、買ってみてもよいかなと思わせるCM、店頭でそのCMを思い出して手に取ってみる、以前に買ったもののCMを見るともう1回買ってもいいかなと思ったり。

理想論の世界ですが、自分の見るCMが興味関心があるものばかりで、TV番組と同じくらい見ていておもしろい状況が本来あるべき姿なのかなと思っています。



※参考情報
Facebook Tests Real-Time Ad Targeting Based on Web Browsing Activity|HubSpot Blog
Intel Set-Top Box Uses Face Recognition to Target Ads to You [VIDEO]|Mashable
Insight: Intel's plans for virtual TV come into focus|Reuters
日テレ、TV番組の盛り上がり表示できるスマホアプリ-Twitter連携「wiz tv」。過去番組や他局対応も|AV Watch

投稿日 2011/12/23

「我が事化」がカギだったソーシャルメディア進化論

昨日はJMRX勉強会に参加してきました(11年12月22日)。講師として招かれたのは「ソーシャルメディア進化論」の著者である武田隆氏(エイベック研究所代表取締役)。この本は今年読んだ中でもベスト5には間違いなく入るもので、最初に読んだ時にブログに書こうとしたものの下書き状態で残ったままでした。JMRX勉強会に参加し著書本人から直接話を聞いたこともあり、あらためて「ソーシャルメディア進化論」から考えたことをエントリーとしてまとめておきます。

■「心あたたまる関係」と「お金もうけ」を両立させる企業コミュニティモデル

本書の主題を一言で表現すると、「ソーシャルメディアでの心あたたまる関係」と「お金もうけ」をどうやって両立させるか。すなわち、ソーシャルメディアのマネタイズ(収益化)です。そして、著者が提示する解は、企業サイトでコミュニティをつくり企業と消費者の絆をつくること。エイベック研究所の知見が凝縮された企業コミュニティを活用したマーケティングモデルで、大きくは2つの柱があります。プロモーションとマーケティングリサーチ。各プロセスを簡単に書いておくと以下の通りです(詳細が気になる方はぜひ本書をご覧ください。一読の価値あると思います)。

引用:書籍「ソーシャルメディア進化論」
  1. 参加者の意識の向上:企業サイト上のコミュニティで参加者の発言が投稿され、参加者同士のコミュニケーションが活性化してくると、参加者の我が事化とコミュニティへの帰属意識が向上
  2. 企業サイトへの掲載:コミュニティの発言内容を企業サイトの他のページにも掲載することで、企業サイト訪問者の態度変容を促す
  3. 広告・PRへの転用:他のPRや店頭施策と組み合わせ、ファンの声を外部にも広く表出
  4. 外部の検索サイトからの閲覧者増加:発言内のワードが検索サイトで引っかかるようになり、閲覧者が増加
  5. ユーザーを把握:コミュニティ参加者を趣味や発言、影響力などで細かく把握する。特徴で参加者をグループ化
  6. オンライブループインタビューへ:特に深く知りたいグループに対してオンライン上でグループインタビューを実施
※実はこのモデルには7があるのですが、それは後述します

プロモーションとマーケリサーチの2つと書きましたが、1~4までがプロモーション、5と6がリサーチに該当します。このモデルは、プロモーションという企業から消費者に伝えることと、リサーチという消費者が企業に伝えるというコミュニケーションのキャッチボールであり、本質的には市場との会話であると武田氏は言います。1~6をPDCAサイクルでまわし、企業と消費者(参加者からファンへ)のコミュニケーション履歴が蓄積することで、お互いがお互いのことを理解するようになる。最終的にはロイヤリティの高いファンを獲得し、結果として自社商品・サービスやブランドの売上や利益が得られる。これが本書で提示された「企業と消費者の心温まる関係」と「お金儲け」の両立なのです。

■なぜFacebookではないのか

ここまでで、なぜ場が企業コミュニティなのか、あるいはフェイスブックではないのか、という疑問が出てくるのではないでしょうか。武田氏は自らの知見も踏まえた上で、フェイスブックを企業が使う場合の位置づけは「メールマガジン」がいいのでは、と昨日のJMRX勉強会でおっしゃっていたのが印象的でした。

フェイスブックは実名での参加が基本です。実名であるが故に、知人を越えたコミュニケーションが発生しづらく、お互いに実名や背後に自分の人間関係を背負っていることで、知人以外とのいきなりのコミュニケーションに不安やリスクを感じるそう。もちろん、コメントを投稿する人やいいねを残す人もいると思いますが、コミュニケーションのハードルが高いことで活性化しにくい。武田氏曰く、フェイスブックでのコメントは1~2行くらいの「言い切り」のコメントで終わるケースが多く、一方の活性化している企業コミュニティではコメントは「質問」や「呼びかけ」で終わっている。つまり、コミュニケーションが活性化しやすいコメントが続くそうです。

ただし、企業にとってフェイスブックが使えないかというとそうではなく、有効な使い方もあり、例えばANAのフェイスブックページでは、キャビンアテンダントや航空整備士など色々な立場の人がウォールに書き込んでいて、そこにユーザーがいいねやコメントを付けています。このように「人が出る」ようなコンテンツは有効だそうです。とはいえ、企業のフェイスブックページではユーザー同士の横のつながりが起こりにくく、どうしても企業と消費者の1to1のコミュニケーションになりがちで、これは企業担当者の負担も大きく、コストがペイできなくなる側面もあるようです。おそらくこれはツイッターも同様なのではないでしょうか。

■企業コミュニティを活性化させる「我が事化」

昨日のJMRX勉強会の武田氏の講演では、ポイントとなるキーワードは「我が事化」でした。ちなみに武田さんは我が事化のことを「レリバンシー」という言葉で表現されていて、これはrelevancy:関連性、つまり自分に関連があること=我が事化という使い方だと理解しました。我が事化は企業コミュニティをいかに活性化させるかに直結し、ここがそもそも非常に難しいというお話でした。あらためて冒頭のモデル図を見ると、①参加者意識の向上がきますが、コミュニティが活性化してこないと、①で止まってしまいとてもマネタイズどころではなくなります。

当然のことながら、始めから我が事化している参加者は多くありません。企業サイドから無理やり関与を求めても引かれるだけでしょう。ここは時間をかけてじっくりと関係性を醸成することが大事だそうで、例えば、共感するコメントに拍手をするような仕組みを設けておくなど、軽い行動から始めるよう促す。拍手をすれば、その後も気になるので返信コメントを付けたり、自ら投稿するようになる。このように関与レベルを段階的に上げていき、参加者の我が事化を育んでいくそうです。

我が事化を持ってもらう施策で大切なのは2つ。参加者にあるテーマを投げかけ投稿してもらいそれに拍手するなどのコミュニティ内での「役割の設定」(ご自由にどうぞ、だと逆に行動しづらくなる)、誰かのコメントに拍手したり投稿することにポイントを上げるなどの「報酬の設定」(インセンティブになるとともに参加する「言い訳」を与える意味もある)。思ったのは、役割や報酬の設定とともに、コミュニティ参加者同士での共感、そこで生まれる信頼関係をいかに構築するかなど、企業コミュニティとはいえ非常にリアルな人間味あふれる空気をいかにつくるか、ここが大事だということでした。

「我が事化」に関してなるほどと思ったのは、コミュニティ参加者が「私がいないと成り立たない」と思ってもらうところまで持って行けるか、つまり、そのコミュニティの中で自分が大事な一員だとみんなが思えている状況、そう自覚できるかということ。参加メンバーがこう思う状況になると、場が最も活性化されるのだそうです。

参加者がコミュニティを我が事化し、帰属意識を高める、それが企業へのロイヤリティを向上させるというのは、言うが易し行うは難しだと思います。ちなみに、エイベック研究所はソーシャルメディア(企業運営型BtoCコミュニティサイト)構築市場における売上トップシェア(10年。矢野経済研究所調べ)だそうですが、ここがきっちりとできるからこそだと思います。このノウハウを持っていることが強みだと感じました。「ソーシャルメディア進化論」という本では、企業コミュニティで同研究所が収益を上げるまでの紆余曲折も書かれており、武田氏は最も苦しい頃の1日の食事がみたらし団子1本だったというベンチャーならでは(?)のエピソードもありましたが、そんな状況からトップになった方の説明には説得力がありました。以前のエントリーで我が事化を取り上げた記事も書きましたが、あらためて我が事化って大事だなと。
相手も自分も動かす「自分ごと化」のススメ|思考の整理日記

■企業コミュニティモデルの可能性

心暖まる関係とお金もうけの両立は企業コミュニティを活用したプロモーションとマーケティングリサーチでした。このモデルの可能性として、企業だけではなく他の組織にも活用できるのではと思いました。武田氏が企業コミュニティで企業と消費者をつなげることを思い付いたのは、企業の自社商品やサービスに対する思いが消費者に全くと言っていいほど届いていないと気付いたからでした。実際に当時のお客さんから自社商品への思いを聞けば聞くほど、それって消費者はほとんど知らない現実。そこで、企業と消費者をインターネットらしく結びつけることが一番初めにできたコンセプト。これを具現化したのが企業コミュニティモデルです。ここで思うのが、組織の思いが消費者/生活者に届いていないのは何も企業だけではなく、NPOやNGOなどの組織、自治体や地方団体、政党、病院など、あらゆる組織と生活者に当てはまるのではということ。企業コミュニティで実現されていること、双方向のコミュニケーションが他でも実現されれば私たちの社会はもっと豊かになっていくのではないでしょうか。

ただ、昨日の武田氏の話では、例えば企業コミュニティのモデルを活用した地域の活性化は現時点ではとても難しいとのことでした。このモデルを導入するためには、組織との二人三脚が不可欠です。企業コミュニティの場合は企業サイト運営と連携し、プロモーションやリサーチなどのマーケティングに関わることになります。実際にある市の行政に提案したこともあるようですが、結局担当者に受け入れてもらえなかったエピソードも語っていただきました。

冒頭で紹介した企業コミュニティモデルは6つのプロセスがありましたが、実は7つ目まであり、1~6を繰り返すことで企業と消費者の距離は縮まっていくとしています。

引用:書籍「ソーシャルメディア進化論」

昨日のJMRX勉強会での武田氏の講演では、始めに紹介されたのは「見える人」と「見えない人」の違いでした。見える人とはネットワークを味方にする人で、「スモールワールド」を感じている人という話。武田さん曰く、コミュニティで成功する企業はスモールワールドを肌感覚で理解しているとのこと。

書籍「ソーシャルメディア進化論」で最後のほうに書かれていたのが、スモールワールドへのパスポートは「ありがとう」。昨日の話を聞くと、「心あたたまる関係」と「社会の豊かさ」の両立には期待したいですし、ありがとうという感謝の気持ちがキーワードなのかもしれません。


ソーシャルメディア進化論
武田隆
ダイヤモンド社
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投稿日 2011/07/17

Googleが計画する「ウェブデータ取引所」は、あなたと広告のミスマッチを解消してくれるのか

それにしてもスケールの大きなニュースです。Ad Age DIGITALによれば、グーグルがウェブデータの取引所を創設する構想を持っているとのことです。
Google Readies Ambitious Plan for Web-Data Exchange|Ad Age DIGITAL

■グーグルが計画中のウェブデータ取引所とは

まずは開発中とされるグーグルのこの取り組みについて見てみます。簡単に言うとグーグルがやろうとしているのは、ユーザーデータが売買できる仕組みおよび場(取引所)を提供するということです。ユーザーデータは、ネットでの行動履歴データで例えば訪れたサイトや検索した時に入力した単語(検索ワード)など。このデータが売買されるわけですが、売り手はウェブサイトなど、買い手は広告主となります。

広告主は何のためにデータを買うかというと、広告をどういう人たちに表示をさせるかというターゲット情報を得るためです。広告の基本は、1.人の集まるところに出す(だからTV広告では視聴率が重宝される)、2.広告を見てほしい人に見てもらう、だと思っていますが、この2点を考えるためにターゲット情報が活用されます。ここで言うターゲット情報というのが、上記のウェブサイトなどから提供される「ネットでの行動履歴」に当たりますが、ネットでの行動履歴というのは、言い換えればその人の興味・関心のデータです。というのは、ネットで何かのサイトや動画を見る、検索をするなどは、そこに何かしらの興味があってのことで、上記のAd Ageの記事では「新車を購入しようとしている人」、「旅行を計画中の人」などの例が書かれていますが、行動履歴を積み重ねるとその人が何に興味を持っているのか、さらにはどういう人なのかもある程度はわかるようになります。

グーグルが開発しているこのデータベースが実現すれば、広告主は自分の広告を表示させたいターゲットを抽出することができ、広告を見てもらいやすくなり購入にもつながることが期待できます。ユーザーデータについて需用と供給が成り立つことで、それに対してグーグルの役割は、あらゆるユーザーデータを一つに集約した巨大データベースを構築し、売り手と買い手の間で円滑にデータが売買されるような仲介役なのです。

■あなたにとってどういう意味があるのか

では、仮にグーグルのウェブデータ取引の仕組みが実現されるとして、その場合に私たちに一体何をもたらすのかということを考えてみます。認識としてあらためて考えてみたいのが、自分たちのまわりにはたくさんの広告であふれているものの、それらのうちどれだけの広告に興味・関心を持ち、さらにはその広告の商品・サービスを買うところまで至ったかという点です。ウェブ上でも多くの広告が表示されますが、個人的には大部分はクリックすることはなく、もっと言えば何の広告かの認識すらしていないこともあります。

この状況を冷静に考えてみると、現在の広告は多くの場合でミスマッチが起こっているのではないでしょうか。つまり、広告が表示されていても、見る人にとってその時点で興味関心は持たれていない、本当に見てほしい人(見てくれる人)に表示されないというミスマッチです。これはあらためて考えてみると残念な状況です。とういのも、ミスマッチが発生しているということは、その広告の広告主・消費者・広告媒体の三者それぞれにとっても望ましい状況ではないと言えるからです。広告出稿費を払ったのに広告の効果が出ない、見たくはない広告が表示される、表示広告に効果が見えにくいと広告媒体としての価値が上がらない、といった感じに。

広告というのは必要な人に適切なタイミングで提供できれば、消費者と広告主の双方にメリットがあるものだと思っています。広告の中には関心を抱くものも多少はあるわけで、広告で存在をはじめて知ったり、ちょっと買ってみようかなと思うこともある。あるいは実際に広告の影響で買うこともあります。

少し前置きが長くなりましたが、グーグルの取り組みが実現されるとこうしたミスマッチが解消していく可能性があると考えます。グーグルが提供している検索連動型広告は検索ワードという興味・関心に連動した広告なわけですが、それよりも幅広いネットでの行動履歴をベースに広告を表示させるターゲットを選んでくることができるからです。これにより、広告が必要な人に適切なタイミングで提供されることが期待できます。ふと○○が欲しいと思った時に向こうから知らせてくれたり、自分の中で完全なニーズになっていないことまで提案してくれる、なんてことが実現できるかもしれません。

■独占とプライバシーの問題

一方で、自分のネットでの行動履歴が使われることに対しての反発も当然起こってくるでしょう。このようなウェブのユーザーデータはクッキーという機能を活用することになるのですが(他にも仕組みはあるのですが)、自分のデータが提供されることがわかっていて許諾が得られている場合はいいとして、ユーザーにとっては自分のウェブデータが活用されていることにも気づいていないケースもあり、このあたりは個人情報やプライバシーの問題が必ず出てくると思います。

それにただでさえグーグルは独占禁止法やプライバシー問題で、アメリカやヨーロッパの独禁・司法当局からの監視の目が増している状況です。そんな中、グーグルが個人のウェブデータを集約し、売買できるようなデータベース・仕組みを構築するとなれば、独占禁止法とプライバシー問題の両方で懸念の声が出てきてしまう恐れがある。その実現は簡単ではないというのが個人的な見解でもあります。
フェイスブック・米当局…グーグル支配に包囲網|日本経済新聞(11年7月7日)
[FT]グーグルに独禁法関連の疑い相次ぐ 今度は欧州で訴訟 |日本経済新聞(11年6月28日)

■グーグルにとってなぜこのプロジェクトなのか

それでもなお、グーグルはこのプロジェクトを前に進めていくのでしょう。なぜなのかを整理するために、ここではグーグルの目的を考えてみます。1つ考えられるのは、ユーザーの行動履歴というウェブデータが集まるデータベースが構築できそこにデータを売る/買うプレイヤーが集まる、こうしたプラットフォームをグーグルが支配することです。支配できれば、課金モデルが構築できます。一定の手数料という形でグーグルにとっては持続的な利益を得ることができる。

この可能性はなくはないのですが、個人的にはグーグルの目的はこのビジネスモデルではないのではと思っています。それはグーグルがアンドロイドOSを無償提供し、あくまでアンドロイドの普及を進めているのと同じで、グーグルにとって大事なのはあらゆるウェブのデータが集まることです。グーグルの目的は、データが集まり、広告主がそのデータベースからターゲットを抽出できる、本当に必要な人に広告が表示でき広告のマッチング精度・効果が上がる、そしてオンライン広告の価値がより向上すること。これがグーグルが描いていることなのではないでしょうか。

冒頭で引用したAd Ageの記事はタイトルにAmbitious Planという表現が入っており、さらに記事ではこのプロジェクトに詳しいグーグルの幹部によれば「one of the most ambitious in Google's march to become a brand advertising giant.」と表現し、グーグルがブランド広告の巨人になるためは最も重要なプロジェクトの1つと指摘しているのです。グーグルの目的はウェブデータ取引所で広告主にデータを活用してもらい、オンライン広告へこれまで以上に投資してもらうこと、ひいてはそれが広告媒体としてグーグルの収益に結びつくという構図です。

■個人データ活用への期待

最後に、このニュースについて自分はどう思うかを少し書いておきます。ウェブのデータ活用にはメリット/デメリットがあるものの、結論としては期待のほうが大きいと思っています。マイナス面としては自分のウェブ上の行動履歴がデータとして誰かに(知らないところで)活用されるという不安がありそうですが、一方でウェブを使い以上はある程度の自分のデータが提供されてしまうのは不可避だと考えます。自分の個人情報をウェブ上に預けることで、利便性を享受できている面もあります。であるならば、データが提供されることを受け入れ、そこから個人データをいかに活用し、どうすれば世の中をもっと豊かにできるかを考えたいというのが個人的な思いです。

※参考情報
Google Readies Ambitious Plan for Web-Data Exchange|Ad Age DIGITAL
データが通貨になる Googleが「ウェブデータ取引所」機能構築へ=米報道【湯川】|TechWave
フェイスブック・米当局…グーグル支配に包囲網|日本経済新聞(11年7月7日)
[FT]グーグルに独禁法関連の疑い相次ぐ 今度は欧州で訴訟 |日本経済新聞(11年6月28日)


投稿日 2011/07/03

グーグルが新SNSのGoogle+をリリースする2つの意味とわくわく感

ついにGoogleも動いてきました。同社が世界に発表した新しいSNSであるGoogle+です。(11年7月2日現在まだパイロットテスト段階で、一部のユーザー限定で使用が可能)

参考:Introducing the Google+ project: Real-life sharing, rethought for the web|The Official Google Blog

今回のエントリーでは、Google+について以下のような論点で書いています。

  • Google+とは何か?Facebookとの違いは?
  • なぜGoogleはSNSに取り組むのか?
  • Google+が普及するとどうなるのか?そして期待すること
投稿日 2011/06/18

相手も自分も動かす「自分ごと化」のススメ




メールを送って仕事の依頼を伝えたつもりが、こちらの意図が正しく伝わっていたなかった。仕事をされている方であれば一度は経験があることです。

■「伝える」と「伝わる」は同じではない

このような「伝える」と「伝わる」ことが必ずしも同じではないということを、マーケティングや広告の世界でも起こっているのではないか、という問題意識で書かれいてたのが「どう伝わったら、買いたくなるか」(藤田康人 ダイヤモンド社)という本でした。

著者は、消費者が得られる情報が今ほど多様ではなかった時代では、メディアや企業から得られる情報が多くを占め、「伝えること」とはそのまま届くことであり、「届くこと」と同じ意味だったと言います。

しかし、今や情報を伝えても、簡単には消費者に届かなくなり、届いたとしても伝わったことにはなりません。そして、買ってもらうという行動につなげるのが、以前よりも難しくなったという問題提起です。

では、伝えるためにはどうすればいいのでしょうか。

本書のポイントは2つです。1つ目が消費者が本当に聞きたいことを把握すること、そのためには消費者を観察し彼ら/彼女らのことを深く知る消費者インサイトの重要性が挙げられています。

2つ目が伝えたい相手(ターゲットとなる消費者)にとっていかに「自分ごと」として受け取ってもらうかという発想でした。

今回のエントリーでは、2点目の自分ごとをテーマにして書いてみたいと思います。

■ そのためには「自分ごと」として受け取ってもらうこと

自分ごとについての著者の主張をもう少し見てみます。

「自分ごと」というのは、その情報が自分にどれだけ関係あると思うということを指しています。確かに自分のことを思い返してみても自分には関係ないと思った瞬間に興味・関心は薄れてしまうものです。

いかに自分ごと化できるかは、その情報にどれだけベネフィットがあるかがポイントです。ベネフィットには2種類あります。その情報を得ることでトクをするという 0 → プラスのものと、それを知らないと損をするというマイナス → 0 の2つです。

広告やマーケティングでは、消費者に自社のモノ・サービスを買ってもらうことが目的です。そのためにはベネフィットを伝え、消費者にどれだけ自分に関係する情報だと認識してもらう、それができなければ「伝わる」までには至らないということです。

受け手側にいかに「自分ごと化」してもらうか、この視点はマーケティングや広告以外にも応用できそうな考え方です。本書を読んだ中であらためて気づいた点でした。

冒頭でメールの例を挙げていますが、メールを書く際にもこちらの言いたいことを書くだけではなく、相手の立場で文章構成がつくれるか、相手のメリットやマイナスになる事態を防げるなどのベネフィットがあれば、読んだ相手に伝えたかった内容が伝わりやすくなるのではないでしょうか。

ビジネスにおいてはメール以外にも、上司への報連相や、プレゼンもこの考え方は活かせそうです。

プレゼンでは受け手側の視点で見ると、資料がオーディエンスにとって自分ごと化されている構成になっていれば、プレゼン自体もそのような形になります。

■ 日経も自分ごとで読む

ここまではいかに受け手側で自分に関係があると思ってもらえるかという送り手側からの発想でした。

自分が受け手側になった場合も、自分ごととして捉えるような意識が大事です。関連するのが以下のブログで書かれていた内容でした。

正しい日経新聞の読み方。(特に新社会人へ)|My Life After MIT Sloan

この記事の内容を簡単に整理すると、ビジネス界にいる人が新聞を毎日読むのが大事であり、そのためには日経を例にどう読めばよいかがわかりやすく書かれています。

具体的には、それぞれの記事から「意味合いを考える」ことであり、

  1. 記事内の事実
  2. 解釈
  3. 自分は何を考えるべきか

という3ステップで構成です。

例えとして、空・雨・傘が使われています。カーテンを開けると曇り空という事実から、雨が降るのではないかと解釈し、今日は傘を持って出かけようというものです。

一般化すると以下になります。

  • 「空」 = 「事実」は何かを見極め
  • 「雨」 = そこから得られる自分の業界への影響を考え
  • 「傘」 = 何をすべきか、どう手を打つべきか

2つ目の解釈、3つ目の自分は何を考えるか・行動するかという視点は、今回の記事のキーワードである「自分ごと化」と通じます。

新聞記事を漠然と読むのではなく、事実をつかみ、そこからいかに自分に関係のある情報として得られるかです。

情報収集という意味でも、あるいは記事から連想することで世の中の流れをつかむためにも、このような読み方は意識するかしないかで、得られることが違ってきます。

■ 最後に

上記のブログ記事では、新聞を読む理由として、「理由は世の中で何が起こっているか、最新情報を捉え、それがどのように自分たちのビジネスに影響するか、どうすべきかを毎日考えなくてはならないから」と書かれていました。

これには同意で、そのためには新聞に限らず、ネットでのブログやツイッターなどで情報を得る時、仕事でまわってくる資料やメールに触れる時にも、こういった発想が有効です。

そのためのポイントがいかに「自分ごと化」ができるかです。


どう伝わったら、買いたくなるか
藤田康人
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投稿日 2011/05/15

テレビとこれからの視聴率を考えてみる


Free Image on Pixabay


日本でテレビ放送が開始されたのは1953年 (昭和28年) でした。1953年2月1日に NHK が、その後の1953年8月28日に日本テレビ放送網が放送を開始しています。放送開始当初の NHK の受信契約は866件だったようです。

テレビ放送開始|NHK
日本放送協会|Wikipedia
日本テレビ放送網|Wikipedia


テレビのビジネスモデル


テレビのビジネスモデルは50年前も今も基本的には変わっていません。

1953年当初から、NHK は視聴者から受信料を受け取る有料モデル、日本テレビ放送網はスポンサー企業の CM を入れる広告モデル (受信料は無料) でした。ちなみに、日本での初めてのテレビ CM は、日本テレビ放送網の放送初日に流された精工舎の時報だったとのことです。

セイコーホールディングス|Wikipedia


スポンサー企業は50年前も今も、多くの予算を投入しテレビ CM を流しています。スポンサーにとってテレビはそれだけ広告媒体としての価値を見出しています。一つの情報を一度に大量の視聴者に届けることができるという価値です。テレビはこの点で、新聞・雑誌、ラジオ、ネットと比べても優れています。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。