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投稿日 2013/01/03

Kindle Paperwhite を買って実感した電子書籍のメリットとデメリット、依存リスク




マーケティングでは 「ドリルを買いにきた顧客のニーズは、本当はドリルが欲しいのではなく、壁に穴が開けること」 という有名な例えがあります。

2012年の年末に Amazon の電子書籍端末 Kindle Paperwhie を買いました。この例えがそのまま当てはまると実感しています。電子書籍端末を買う顧客のニーズは、端末そのものが欲しいのではなく、「より良い読書体験」 をすることです。

読書体験が変わったのは単に電子書籍をキンドルで読むことだけではなく、以下の読書フロー全体で新しい体験になったことです。キンドル購入前の予想以上でした。

  • 本を入手する
  • 読む
  • 保存する / 再読する
投稿日 2012/07/28

「仕組みの問題」 で考える Amazon と三河屋のサブちゃんの共通点




表面的な見た目の違いではなく、構造やメカニズムの違いに目を向けると新たな着眼点が見つかることがあります。起こった事象ではなく、背後にある 「仕組み」 に注目するのです。



Amazon のレコメンド機能


仕組みを考えると、A で成り立っている仕組みが B でも成り立たないか、という発想ができるようになります。

アマゾンと、サザエさんに登場する三河屋のサブちゃんで考えてみます。

アマゾンが力を入れている一つがレコメンド機能です。

レコメンド機能は、その人が買いたくなるであろう商品をおすすめしてくれます。レコメンドの元になっているのは、アマゾンでこれまで何を買ったか、欲しいものリストに何を入れているか、どんな商品を閲覧したかなどです。

確かに、レコメンドの精度はまだ不十分です。ある商品をクリックすると、おすすめ商品が関連するものばかりになってしまう時があります。もっと精度がよいレコメンド機能を期待しています。


三河屋のサブちゃん


アマゾンのレコメンドの仕組みは、購買情報や閲覧情報をアマゾンが持っているから実現できるものです。それだけ、ユーザーの一人ひとりを理解しているのです。

レコメンドをうまくやっているのが、サザエさんに登場する 「三河屋のサブちゃん」 です。

サブちゃんは、次のような一声とともに台所の勝手口に登場します。「そろそろお醤油が切れかける頃だと思って持ってきました」 。

サザエさんも 「ちょうど良かった。お醤油が切れかけてたの。お味噌もいつものを持ってきてくれるかしら」 と、追加で味噌も注文します。

これができるのは、サブちゃんがサザエさん一家を知り尽くしているからこそです。

何も言わなくとも一回に頼む醤油の量も、どんな醤油が好みなのか、そろそろ醤油が切れかけていることも把握しています。頼まれなくても勝手口に現れて、「そろそろお醤油が切れかける頃だと思って持ってきました」 という絶妙のタイミングです。


アマゾンとサブちゃんの共通点


サブちゃんは、磯野家の購買情報やサザエさんたちの嗜好を知り尽くしているのでタイミングよくレコメンドし、さらに追加で別の商品も買ってもらっています。

お客のことを深く理解し、そこから購買を促すというアマゾンと三河屋のサブちゃんに共通する仕組みです。


課題設定と問題解決も 「仕組み」 で考える


背後の仕組みに注目するのは、様々な場面で有効です。例えば、何か仕事上でミスが起こり問題が発生した場合です。問題を把握し、課題解決するために活用できます。

ミスや不備が起こった時、ミスをした当事者を責めてしまいがちです。

原因特定を担当者という個人レベルだけで、対応や改善策もそのレベルにとどまってしまうと、次もまた同じことが起こる可能性があります。容易な対策はミスを起こしてしまった担当者を変えることです。しかし、もし発生原因がそもそもの仕組みの問題だとすると、新しい担当者も同じミスしてしまうかもしれません。

問題が起こった時は個人ではなく、問題に焦点を当てるべきです。

原因究明では、なぜ起こったのかの仕組みの問題として捉えるのです。その上で、ミスが起こらないような仕組みとしての改善と、ミスが発生しても早期に発見できるチェックの仕組みを構築するという2つのアプローチで対応します。

仕組みやメカニズムに着目すると、他の業務プロセスが活用できるのではないかという視点が持てます。A で成り立っている仕組みが、別の B でも成り立たないかという発想です。一人の担当者や責任者を責めるより生産的です。

ミスを起こした側・起こされた側の双方にとって、今後はミスをなくすという win-win を目指したいです。


最後に


今回のエントリーで言いたかったのは冒頭で書いた、見た目の違いではなく、構造・メカニズムの違いに目を向けると、新たな着眼点が見つかることです。普段から 「メカニズムはどうなっているのか」 と考えるクセをつけておきたいです。

投稿日 2012/04/30

ドリルを売ろうとした Sony と、穴を開けるサポートをした Amazon

今日で4月が終わるので、2012年も3分の1が経過したことになります。時計で言うとちょうど20分のところに針がある状態です。

12年の今年は今のところコンスタントに本が読めていて、1ヶ月で20-25冊程度、4ヶ月ではほぼ100冊くらい読みました。このうちの8割以上はアマゾンから買った本です。感覚的には9割に近いくらいかもです。それくらい本はアマゾン経由で手に入れています。

本をアマゾンで買うのに何が魅力かって、中古も含めた豊富な品揃え、モバイルからでも手っ取り早く注文ができて、安定した配送の仕組みですぐ届く、送料無料、あたりかなと思っています。トータルでの提供サービスが素晴らしいです。


電子書籍を理解する3つのフレーム


次にアマゾンに期待したいのはキンドルです。電子書籍を読める環境のサービス提供です。

電子書籍は、電子書籍端末という 「デバイス」 、電子化された本という 「コンテンツ」 、電子書籍を手に入れるための 「プラットフォーム」 という3つの層で考えるといいと思っています。アマゾンへの期待はデバイス、コンテンツ、プラットフォームというトータルでの電子書籍サービスの提供です。
投稿日 2011/10/22

Amazon に期待したい 「書籍 + iTunes Match」 という読書体験

ようやくという感じですが、わくわくするニュースです。日経新聞の報道によると、アマゾンが年内にも日本での電子書籍事業に参入するとのことです。

参考:アマゾン、年内にも日本で電子書籍 出版社と価格詰め|日本経済新聞


日経が単独でスクープをするようなニュースはやや不安になることもあるのですが、記事を見ると PHP 研究所とは契約に合意し、小学館、集英社、講談社、新潮社などととも現在交渉中とわりと具体的に書かれています。アマゾンの電子書籍での日本進出が今度こそはと期待できる内容です。


3層で強みを持つ Amazon


すでに日本国内では電子書籍の市場は存在し、少なくない企業が参入を果たしている状況で、具体的には下の表のような状況です(引用:上記日経記事)。

市場規模は650億円程度(10年度)で、書籍・雑誌全体での約2兆円規模に比べるとまだまだ小さい印象です(数字は同じく日経記事から)。




ニーズがあると思われるににもかかわらず普及が進まないと思うは、以下の3層それぞれでユーザーにとって魅力を感じないからではないです。

  • そもそも電子書籍というコンテンツが少ない
  • 電子書籍端末の互換性も十分ではない
  • 購入するマーケットも乱立している

コンテンツ、端末、マーケットプラットフォームの3つで十分とは言えません。紙の本を買う方が総合的には良く、それに比べて電子書籍で読むということにメリットが感じられないのです。

アマゾンであれば違います。もちろん、前述のような幅広い出版社との契約合意が前提ですが、電子書籍は自社サイトを通じて提供されます。

パソコンだけではなく、タプレットやモバイルからブラウザかアプリのどちらからでも買えます。端末についても、専用のキンドルがあり、キンドルを持っていなくても iPhone や iPad 、Android 用のアプリも提供しているので、幅広い端末から読むことができます。

アマゾンのジェフ・ベゾス CEO は端末やサービスを普及させることを重視し、利益の回収は普及後でいいという経営戦略の持ち主です。

アマゾンから販売されるタブレットである Kindle Fire の定価は199ドルです。製造コストはそれ以上の209ドルではないかという情報もあります。これは1台売るごとに10ドルの赤字が発生します。

参考:Amazon’s $199 Kindle Fire Costs $209.63 to Make [STUDY]|Mashable


これは1例ですが、日本においても参入すると決めた以上は、コンテンツ、端末、マーケットというアマゾンの電子書籍サービスをまずは普及させるような展開をしてくるはずです。アマゾンの国内参入は、ようやく本命がきたかと期待したくなります。


Apple が提供する iTunes Match の意味


これは現在はアメリカのみ利用可能なのですが、「iTunes Match」 というアップルのサービスがあります。

iTunes Match は、自分が持っている CD から iTunes に取り込んだ音楽を、iTunes ミュージックストアで提供している楽曲と照合させ、マッチすればその曲は iPhone・iPad・iPod などの全端末でダウンロードできるようになるというものです。iTunes に入っている自分で CD から取り込んだ曲でも、全てミュージックストアから買ったものとして扱われることになります。

iTunes Match が興味深いのはその考え方にあります。

iTunes マッチがなければ、すでに CD で取り込んだ曲でも同じ曲を iTunes ミュージックストアから買ってダウンロードする場合、1曲150円等のコンテンツ料金が発生します。CD もダウンロードも同じ曲にもかかわらずです。

ところが iTunes マッチでは、「すでに CD で買っているから、同じ曲をミュージックストアからも別途金額は発生せずにダウンロードできます」 という考え方です。同じ曲に CD とダウンロードとに二重でお金を払うのではなく、「その曲を聴く権利を買う」 というものです。


 「書籍 + iTunes Match」 という読書体験


電子書籍に話を戻します。

もし iTunes Match のような考え方が電子書籍に適用できればどうなるでしょうか。

考え方は 「その本を読む権利を買う」 です。今手元にある書籍を紙の本を買っていれば、電子書籍版でも同じ本が手に入るというイメージです。

この本を読む権利を買ったということなので、一度紙で買えば電子版を別途料金で払う必要がなくなります。逆のパターンもあり得るので、電子版を先に買って紙の本を後から無料で入手することもできます。仕組みは、アマゾンの個人 ID で紐付し、どの本を買っているかの管理することになります。

電子書籍を読んでいての印象ですが、電子書籍には紙の本と比べたメリットとデメリットがそれぞれあり、どちらの形式が絶対的に良いという感じではありません。

紙は持ち運びや本の中から必要な情報を取り出すのに難がありますが、速読性や全体像の把握は紙が勝ります。電子書籍コンテンツや媒体はまだまだこれから仕組みも技術も進化するのでしょうが、それでも紙の本は一定程度は存続するでしょう。

書籍でも iTunes Match のような仕組みがあれば、魅力的です。読書をするシーンや目的に合った読書体験が用意され、各個人それぞれがストレスなく享受できます。アマゾンには、読みたい時に読みたい環境で読めるという読書体験の実現を期待したいです。

投稿日 2010/10/17

Amazon の競争戦略ストーリー


Free Image on Pixabay


「この商品を買った人はこんな商品も買っています」 - アマゾンには協調フィルタリングと呼ばれるレコメンド技術が使われています。レコメンドにより、自分と嗜好性の近いユーザーが好む商品が提示されます。


Amazon のコンセプト


一方、別の商品をクリックすると、こんなメッセージが出てくることもあります。「お客様は、2010/8/9にこの商品を注文しました。」

このメッセージを見て、初めて自分はすでに買ったことがあることに気づき買うのをやめるでしょう。

なぜアマゾンは、このようなメッセージを表示してくれるのでしょうか。アマゾンにとっては機会損失とも言えます。それは、アマゾンのコンセプトを見ると理解できます。

ストーリーとしての競争戦略 - 優れた戦略の条件 という本には、アマゾンのコンセプトは次のように書かれています。「モノを売るのではなく、人々の購買の意思決定を助けるサービスを提供する」。アマゾンのレビュー機能や、アマゾン・マーケットプレイスにより中古品と新品が比較しやすいようになっているのも、このコンセプトに基づいています。
投稿日 2010/04/17

情報収集ツールで足りないのは?

ふと思ったのですが、ここ最近めっきり物欲が減っている自分がいます。食費や生活必需品、交際費などを除くと、買っているのはもっぱら本や雑誌ばかり。あとはCDを少々。で、その代わりに強くなっているのが情報欲。もちろん、職業柄というのもあるかもしれません。しかしそれにしても、ここ最近は特にそう思います。

その理由をなぜかと考えると、1つはツイッターの影響が大きいように思います。ツイッターの特徴は情報拡散とその速度だと感じますが、ツイッターにより関連するニュースサイトや動画、ブログなど、見る量も飛躍的に増加している気がします。感覚的な数字ですが、ツイッターをやっていなかった時に比べ、3~5倍くらいなイメージです。

これに関して、自分が使っている情報収集ツールにおいて、「携帯電話」に不満を感じています。理由は、使っているのが「スマートフォンではない携帯」という一言に尽きるかと思います。情報収集端末としての機能にさすがに限界を感じており、そろそろ携帯電話を買い替えようかと思っています。



そこでまずは、日ごろ自分が使っている情報収集ツールを整理してみました。(図1)





あらためて俯瞰してみても、携帯電話への不満が一番大きいと思いました。



次に、新しいモバイル系の端末を買うとして、その候補と、それぞれのメリット・デメリットを簡単に整理すると下表のようになります。(表1)




ここで、自分の携帯電話への不満をもう少し掘り下げてみると
・ ネットへ接続しても画面が小さく見づらい
・ アプリ等もないので、使いづらい
となり、上記を総合的に考慮すると、やっぱりiPhoneかなと考えています。(超今さらですが・・)

そうなると、話題のiPadです。来月から日本でも発売されるようですが、OSがiPhoneと同じであることも考えるとひとまず自分にはまだいらないかと思います。それよりも、欲しいのはキンドル。デメリットにも挙げたように「日本語版がない」「読める本が少ない」という状況ですが、前者がクリアされれば買いそうな気がしてます(今年の年末くらいに早速?)。



最後に、iPhoneとキンドルを買った場合の、自分の情報収集ツールの全体像を示しておきます。(図2)



投稿日 2010/04/14

書籍 「iPad vs. キンドル」

「iPad vs. キンドル」(西田宗千佳著 エンターブレイン)を読みました。電子書籍の現状がわかりやすくまとまっていましたので、自分の頭を整理する意味でも、ブログ記事にしておきます。

<今回のブログの内容>
① iPadとキンドルの比較
② キンドルのビジネスモデル
③ 今後への期待

<今回のブログのまとめ>
① iPadとキンドルは全く異なる。両者の相違点は示唆に富む
② キンドルのビジネスモデルの特徴は、「通信モジュール」と「通信費」にある
③ 良いコンテンツ(電子書籍)にはお金が支払われることを期待したい



■iPadとキンドルの比較

iPadとキンドルは、実は両者は相当異なるものです。そもそものコンセプトや、アップル/アマゾン各社の狙いを比較してみるとその違いは明らかです。



○コンセプト
まずコンセプトですが、iPadは家の中のリビングでくつろぎながら、Web閲覧、音楽や動画の視聴,、そして電子書籍を読んだりと、多機能な端末として位置づけられています。iPadにおいて電子書籍はあくまでone of themなのに対して、キンドルは電子書籍リーダーに特化された端末です。

○アップル/アマゾンの狙い
アップルCEOのジョブズ氏が「iPadはiPhoneとMacBookの間にある」と説明したそうですが、iPadはネットブックに代わる新しい端末と位置付けているようです。一方でアマゾンですが、同社はオンラインでの書籍販売を強みとしているので、キンドルを電子書籍の販売増のための「手段」として位置付けているのではないでしょうか。こう考えると、アマゾンは09年3月に「Kindle for iPhone」というソフトを無償公開しておりますが、これも狙いは電子書籍の販売増だと考えらえます。


iPadとキンドルのコンセプトや狙いにおける違いにより、使われているディスプレイ等でも興味深い相違点が見られます。






○液晶ディスプレイ/電子ペーパー
特徴を整理すると、以下のようになります。

<液晶ディスプレイ>
・ 液晶はバックライトで光を発するので、長時間見つめていると目が疲れやすい
・ 常に電力を必要とする
・ Webや動画の閲覧が可能

<電子ペーパー>
・ ディスプレイで光を反射するだけなので目が疲れにくい (紙に近い)
・ 表示を書き換えるときだけ電気を使う (ページを”めくる”時だけ)
・ 現在の技術ではWebや動画の閲覧には向かない

iPadは多機能端末、キンドルは電子書籍端末。よって、iPadには液晶ディスプレイが使われ、キンドルには電子書籍を読むのに最適な電子ペーパーが使用されています。

○電子書籍の位置づけ
上記以外にもサイズや重さなど、両者の様々な特徴の違いを換言すると、
・ iPad :リビングのソファー横のマガジンラックの中の雑誌
・ キンドル :鞄に入っている文庫
と著者は表現しています。

こうして見ると、iPadとキンドルは使用シーンが異なり、直接の競合ではないのではないか、そんなふうにすら思えてきます。



■キンドルのビジネスモデル

キンドルのビジネスモデルの特徴は以下の3つだと思いました。
・ 通信モジュール
・ 通信費
・ 複数端末間の同期

○通信モジュール
以下はアマゾンでキンドル版電子書籍を買う場合のプロセスです。
(1) パソコンからアマゾンで本を検索する
(2) 買いたいものが見つかったら「購入する」をクリックする
(3) 「キンドル版(電子書籍)を買う」をクリックする
(4) 電子書籍は自動的に「キンドルの中」に送られてくる

キンドル自身が通信モジュールを内蔵し通信機能を持っているので、ネットワークへ自動接続し、買った電子書籍を自動的にキンドル内にダウンロードしてくれます。すなわち、クリック後、次に利用者がキンドルを使う時には買った本がすでに「キンドルの中にある」状態なのです。

○通信費
ここで忘れてはいけないのが通信をするためのコストで、これは「通信費」という名目で誰かが負担しなければいけません。ここが肝になる部分ですが、通信費がキンドル版書籍の価格の中に含まれています。つまり、通信費を負担しているのはユーザーなのですが、「キンドルユーザーには通信契約を強いることなく、利用時にも一切通信費を気にさせない」という方針なのです。
このビジネスモデルに関して、書籍「iPad vs. キンドル」の中で任天堂・岩田聡社長は次のように評価しています。「iPhoneよりもキンドル型のビジネスの方が興味があります。お客様が通信費を負担するのではない、新しいビジネスモデルを提案しているからです」(p.131から引用)。

○複数端末の同期
前述したように、Kindle for iPhoneによりキンドルだけではなく複数の端末でキンドル版の電書籍を読むことができます。さらに驚かされるのは、キンドルやiPhoneで読んだ位置情報がアマゾンに記録されるようになっています(しおりのイメージ)。例えば、家でキンドルで読んだ続きを満員電車の中ではiPhoneで読む、みたいなことができます。iPadがiPhone用のOSを使っていることから、おそらくiPadでも続きが読めるはずです。これも、アマゾンの狙いはあくまで電子書籍そのものの販売増だからこそ成り立つビジネスモデルではないでしょうか。



■今後への期待

○課題
日本での電子書籍市場の現状は、携帯電話がほとんどでコンテンツも偏っていると言われています。著作権、再販制度、書店、出版社と電子書籍ストアとの利権争い、既存書籍の電子化等々、数多くの課題をクリアする必要があります。(このあたりは専門ではないので、簡単な課題提起だけに留めます)

また、09年3月にある出来事が起こりました。それは、AppStoreから、特定のアプリが多数消えたことです。事前警告なしに行われた「アップルの方針転換」により、それまでその種のアプリケーションでビジネスを行っていた企業・個人は、突如としてビジネスの場を失ったのです。同じことが電子書籍においても起こらないとは言い切れません。考えてみれば、ある1社の考えにより、何十・何百という会社のビジネスの機会が失われるというのもコンテンツ産業が抱える無視できないリスクだと思います。

○期待
それでもやはり、個人的には、電子書籍には期待を持っています。なぜかというと、電子書籍が有望だと思うのは、コンテンツそのものにお金が支払われる仕組みが成立し得るからです。(もちろん、全ての電子書籍というわけではなく、フリーのコンテンツも存在しますが)

パソコンでは、ネット接続率は高いが(消費者側に)コンテンツにお金を支払うものである、という意識が低いと感じます。一方で、携帯電話やゲーム機とでは広告モデル以外に、課金システムができています。

期待したいのは、「電子書籍ビジネスが、きちんとお金を生むようになる」こと。それが、長い目で見ると、本が紙から電子媒体になってもこれからもいい本に出会えることで、本が「自分の考えを刺激してくれる存在」であり続けることになるのではないでしょうか。


iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏 (brain on the entertainment Books)



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以下、備忘録のために、電子書籍のビジネスモデルを記載しています。


■電子書籍のビジネスモデル

アメリカでは、すでに電子書籍がビジネスとして成立しています。このビジネスモデルをマーケティングの4P(Product・Place・Price・Promotion)で整理してみます。

○Product (コンテンツの重要性)
当たり前ですが、電子書籍(コンテンツ)そのものが揃っていることが重要であり、ビジネスとして成り立つ大前提となります。コンテンツが揃っていてはじめて、キンドルなどの電子書籍リーダーが存在価値を持ちます。参考までに、キンドル版電子書籍の数は、初めてキンドルが発売された07年11月当時で9万冊、10年1月時点では約41万冊です。

○Place (電子書籍ストア)
これも当然のことですが、読みたい電子書籍があっても手に入る、つまりダウンロードできる仕組みが必要です。書籍内では、「電子書籍ビジネスの本質は、電子書籍端末というハードだけではなく電子書籍ストアのビジネスモデルにある」と書かれています。(p.170)

○Price (お金を払う仕組み)
アメリカ市場で電子書籍ビジネスが成立し、これだけ大きな話題となっている理由として著者である西田氏は次のように断言しています。「電子書籍ビジネスが、きちんとお金を生むようになったからである」(p.126より引用)。
音楽配信のiTunes Storesや、携帯電話において通話料の加算から、コンテンツ利用料金を支払う仕組みが整備されているように、電子書籍においても電子書籍というコンテンツにその対価としてお金が支払われる仕組みが成立していることが、ビジネスとして成り立っているのが最大の要因なのです。
また、電子書籍はデータ量あたりの単価(ビット単価)が非常にいいという側面もあるようです。数十MBもある音楽1曲で1ドルなのに、数MB程度の電子書籍は10ドルで売られています。

○Promotion
今後の電子書籍市場においては、「どんな端末であるか」ではなく、「どんな本が読めるか」、もっと言うと「どんな体験ができるか」が重要となるのではないでしょうか。そうなった時には、書籍がどんな本なのかをいかに知ってもらうかの競争は激しくなりそうです。電子書籍は印刷や製本などの出版コストは大幅に下がるが、逆にプロモーション費用は増加する可能性が高いのだそうです。


iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏 (brain on the entertainment Books)


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。