2010/12/27

Googleと「個人データ」を考える

「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることである」。これはGoogleが掲げるミッションです。

■Googleが無料サービスを提供できるワケ

グーグルは多くのサービスを提供しています。ウェブ検索、Gmail、グーグルドキュメント、カレンダー、グーグルマップ、YouTube、等々、ここで挙げきれないほど。そして特徴的なのは無料でユーザーに提供していることです。

なぜ無料で提供しているのでしょうか。別の表現をすればどこでお金を取っているのでしょうか。その答えは広告にあります。アドワーズという検索結果連動型の広告やアドセンスというコンテンツ連動広告がそれです。グーグルの考え方は、自社のサービスを使うユーザーが増えれば増えるほど、そこで表示される広告価値が上がる。よって、ユーザーには無料で提供してくれるのです。

■個人データの取得と活用

実は広告以外に、無料で提供する別の目的があると思います。それがユーザーの利用情報である「個人データ」の取得。

例えば、グーグルで検索に使われた検索語(クエリー)は履歴として蓄積され、別のユーザーの検索に活かされています。グーグルの検索ボックスに入力していくと、検索語の予測が複数表示されますが、あれが活用例です。このように多くのユーザーが使えば使うほど、グーグルの検索精度も向上していきます。グーグルにとっては個人データの取得、ユーザーにとっては利便性の享受という、ウィン-ウィンの関係が見えてきます(図1)。


個人データ活用のわかりやすい例がグーグルのブログ上で公表されていました。「Google 年間検索ランキングで、2010 年を楽しく振り返ろう」という記事がそれです(以下は記事から一部引用)。

出所:Google Japan Blog

■データから情報へ

個々人がグーグル検索を使って知りたいことは千差万別です。しかし、ユーザーの利用履歴という個人データを積上げることで、上記の例では今年の流行が見えてきます。個人データという状態では必ずしも整理されておらず量も膨大ですが、蓄積し体系立てることでデータは「情報」となります。

このことに関して、ドラッカーは著書「明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命」で次のように述べています。「整理して体系化しないかぎり、データは情報とならず、データにとどまる。意味をなすには、体系として把握しなければならない」。

個人データについて思うのは、ネットがありモバイルも含め個人の情報発信が普及しなければ、可視化できないものであったということです。

例えば、SNSやツイッターで発信される情報の多くは、昔は個人の中でしか存在しないようなものでしたが、今ではネット上に乗せることで情報が共有されます。個人データが価値を持つような有効活用される背景には、こういった技術の進歩に加え、データ収集システムやデータハンドリングなど、データから情報体系への仕組みができてきつつある点も大きいように感じます。

■Android OS普及と個人データ取得

グーグルに話を戻しますが、前述のようにグーグルが提供するサービスのユーザー数が増えれば増えるほど、また使用すればするほど、グーグルには個人データが集まってきます。PCでの使用に加え、アンドロイドOSのスマートフォンが普及していくことで、ますますその傾向が強まる可能性があります。

ちなみに、asymcoというハイテク市場分析系ブログで企業アナリストであるDediu氏が2011年末までのスマートフォンの普及動向を予測しています(図2)。

出所:asymco

左のブロックは米国調査会社ニールセンの調査データが出所です(2010年12月現在の最新の調査結果はこちら)。そして右側はDediu氏による推計で、緑色のアンドロイドOSシェア(人数ベース)が伸びているのがわかります。

■個人データ独占という課題

このように、グーグルはこれからも個人データの取得を拡大させる可能性がありますが、それは同時に、グーグル1社が独占的に個人データを収集するという課題も抱えることになります。その例がグーグルとヤフーの検索技術提携により、両社の日本での検索シェアは9割になることで、これに対しては反対する声や適切な競争環境を損なうことへの懸念もあります。

個人データが有効に活用されること自体は、世の中がより便利になる方向にあると思っています。ただ、よりよい世界になるには一方で課題も存在するのが現状です。


※参考情報

Google 年間検索ランキングで、2010 年を楽しく振り返ろう|Google Japan Blog
http://googlejapan.blogspot.com/2010/12/google-2010.html

Half of US population to use smartphones by end of 2011|asymco
http://www.asymco.com/2010/12/04/half-of-us-population-to-use-smartphones-by-end-of-2011/

U.S. Smartphone Battle Heats Up: Which is the “Most Desired” Operating System?|Nielsen
http://blog.nielsen.com/nielsenwire/online_mobile/us-smartphone-battle-heats-up/

経済教室|日本経済新聞2010年12月24日(金)朝刊


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2010/12/24

スマートフォンって何だろう?

日本経済新聞社が毎年発表している日経MJヒット商品番付で、2010年の東の横綱はスマートフォンでした(表1)。2010年の今年を振り返ってみると、ソフトバンクからはiPhone4、ドコモからXperia、Galaxy sが発売され、auからも待望のスマートフォンであるIS03が登場しました。

日本経済新聞から引用

■スマートフォンの需要増加と活用範囲拡大

今後のスマートフォン需要増加を示唆するデータを見てみます。野村総研の調査報告によれば、国内の携帯電話端末市場におけるスマートフォンは今後も伸び続けるようです。09年度の携帯市場は需要が落ち込んだようですが、10年度以降はスマートフォンが牽引し15年度は10年度比で携帯電話出荷台数が43%増。15年度の出荷台数のうちスマートフォンは70%を占めると予測しています。ちなみに10年度上期のデータですが、携帯出荷台数のスマートフォンシェアは11.7%とのこと(MM総研)。まとめると、ざっくりと言ってしまえば、スマートフォンは携帯市場全体を拡大させ、かつ出荷台数シェアが7倍に増えるのです。

次にスマートフォンの活用範囲拡大について。日経トレンディ12月号で、これまた毎年恒例の来年のヒット商品を予測する「2011年ヒット予測ランキング」が掲載されていました。1位が「得するジオゲーム」、そして3位が「スマホリンク家電」で、ともにスマートフォンに関係するものです。

まず1位のジオゲームですが、foursquare(フォースクエア)やコロプラ(コロニーな生活☆PLUS)などによる位置情報を活用したサービスで、これにSNSなどのソーシャル性や飲食店などの割引クーポン、あるいは旅行ツアーなどが融合するだろうと予測しています。一方、スマホリンク家電ですが、これは様々な家電とスマートフォンが連携するという話で、テレビやレコーダー、カーナビ、玩具などです。テレビ・レコーダーとの連携ではスマートフォンがリモコンとなるだけではなく録画予約もアプリでできたり、玩具ではスマートフォンでラジコンヘリコプターの操作ができスマートフォンの画面上にはヘリ搭載カメラからの映像が見られるようです。こんな感じで、スマートフォンが様々な家電のハブのような役割を担うようになるのではないでしょうか。

■世の中のIT進化スピードと同期する

ここまでスマートフォンの将来需要増加や今後の活用範囲拡大について見てきました。個人的にもiPhoneを使っておりもはやなくてはならないほど重宝しているわけですが、そもそもスマートフォンって何がすごいんだろうと考えてみました。で、自分の中での1つの結論として、従来の携帯電話(フィーチャーフォン、ガラケー)と比べて、スマートフォンは世の中のIT進化スピードに同期する点にあるというものです。

スマートフォンの何が便利かと言えば、豊富なアプリであったり操作性があります。別の特徴として、アプリの追加、OSやアプリをアップデートすることができ、常に最新の状態に維持できることがスマートフォンの優れている点だと思います。しかもアップデートの大抵の場合が無料で。もちろんアップデートすることで不具合が発生するリスクもありますが、最新の状態が維持できるということは、それはつまり世の中のITが進化するスピードと同じように自分のスマートフォンもアップデートできるのです。

従来の携帯はハード面の要素が強く、スマートフォンはアプリなどのソフトの要素が大きいと感じます。携帯をハードと見た場合の買い替えサイクルは、3年半もあります(MM総研調べ)。これはつまり、携帯をアップデートするのに3年半も時間を要するということです。一方のスマートフォンのOSやアプリのアップデートはどうでしょうか。OSやアプリによりそのサイクルは様々であるとは言え、明らかに携帯買い替えより早いサイクルでまわっています。新しいアプリも次々に登場しスマートフォンに追加することができます。

世の中のIT進化と同じように自分のスマートフォンが進化(アップデート)すると、何か新しい技術やサービスが登場すればそれがすぐに自分のスマートフォンにも反映できます。こうして、新サービスの提供とユーザーの評価・フィードバックが従来よりも短い期間で行なわれ、ますます進化が加速していくのではないでしょうか。これが世の中のIT進化スピードに同期するスマートフォンの大きな特徴だと思います。こう考えると、まだまだスマートフォンの可能性っていろいろあり、今後の進化が楽しみです。

※参考情報

2015年度までのIT主要市場の規模とトレンドを展望(2)(2010.10.20)|野村総合研究所
http://www.nri.co.jp/news/2010/101220.html

2010年度上期国内携帯電話端末出荷概況(2010.10.26)|MM総研
http://www.m2ri.jp/newsreleases/main.php?id=010120101026500

携帯電話端末の買い替えサイクル調査(2009.3.12)|MM総研
http://www.m2ri.jp/newsreleases/main.php?id=010120090312500


2010/12/23

Netflixのビジネスモデルとユーザーの利便性

アメリカにネットフリックス(Netflix)というDVDレンタル会社があります。日経ビジネス2010.12.20/27号でネットフリックスが取り上げられていました。記事内にあったネットフリックスの2010年度の数字を引用しておきます(いずれも見込数で、2010年よりカナダにも進出)。

・会員数:1900万人
・売上高:21億5000万ドル(約1800億円)
・純利益:1億4600万ドル(約120億円)

■ネットフリックスのビジネスモデル

同社ではDVDレンタルだけでなく、ストリーミングでも利用可能です。ストリーミングというのは動画などの重いファイルを受信しながら再生する技術で、YouTubeなどでも採用されています。ネットフリックスは無店舗経営であり郵送とストリーミングでの提供に特化しています。返却について日本語のWikipediaには、「アパートなどの集合住宅以外は、郵便物は自宅の郵便受けに入れておけば配達員が配達のついでに回収して行くため、返却も容易である。」と記載されています。

料金は全て月定額制で、例えば月額7.99ドルでストリーミングが無制限に、9.99ドルでDVDレンタルとストリーミングで映画が見放題。また、店舗型のDVDレンタルにある延滞料金は存在しません。実はこれ、同社のリード・ヘイスティングス(Reed Hastings)CEOがネットフリックスを創業したきっかけにもつながります。Fortuneの記事には、レンタルした「アポロ13」のビデオの延滞料金が40ドル発生してしまい、この時に感じた理不尽さから郵送で貸し出すビジネスモデルのアイデアを思い付いたエピソードが紹介されています。これは1997年当時のこと。その後1999年に、現在の月定額での料金モデルに変更し一気に人気を博しました(参照:Wikipedia)。

■ネットフリックスの利便性

DVDをレンタルする時に自分でお店に足を運ばなくてよいというのは、アメリカでは日本以上にメリットが大きいように思います。というのは、子どもの頃に少しアメリカに住んでいたことがあるのですが、ニューヨークとかロサンゼルスなどの一部大都市を除けば、アメリカにはすぐ近所にコンビニが、車社会なので最寄の駅にツタヤがあるという日本のような環境ではありません。だからお店へレンタルしに行こうとすると、車で出かけて選んで帰ってくるだけで1時間とかかかってしまうかもしれません。そう考えると、ネットフリックスのように郵送レンタルやストリーミングでの提供に日本以上のユーザーメリットがあるように思います。

ネットフリックスのHPを見てみると、ストリーミングで見られる端末が充実していると感じました。PCで再生できるのはもちろんのこと、ゲーム機では、プレステ3をはじめ、WiiやXbox360にも対応しています。さらには、ソニーやパナソニック、LG、サムスンなどからはネットフリックス内臓のテレビが発売されているようです。ブルーレイプレイヤーにも入っています。モバイルにも対応しており、iPhoneやiPadへはネットフリックスアプリを提供しています。

以上のような、「映画をレンタルするのに出向く必要がない」、「見られる端末が充実していること」はユーザーにとってすごく便利だなと感じます。コンテンツを見たい時に手に入れることができ、見る端末環境の選択肢がある。これって言われれば当たり前のような状況かもしれませんが、日本ではまだまだこのような環境は整っていないのではないでしょうか。ようやくApple TVなどの登場しましたが、映画のレンタルはお店に出向くというスタイルが一般的だと思います。

■見たい時に見たいものを見る

理想を言ってしまえば、映画だけではなくテレビ番組や音楽PVなどあらゆるコンテンツを「見たい時に」「見る環境に合った端末で」見ることができることです。これが実現するためには、対応する端末、ストリーミング配信や課金制度が整ったプラットフォーム、豊富なコンテンツなど、3層それぞれでの整備・充実が不可欠です。最近、Apple TVの販売台数が100万台と突破するという報道がありましたが、ストリーミングでの視聴はますます一般的になるはずです。となれば、日本でもネットフリックスのようなビジネスモデルが普及していくのを期待したいです。

※参考情報

Netflix
http://www.netflix.com/

Netflix|Wikipadia
http://en.wikipedia.org/wiki/Netflix

ネットフリックス|Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9

How Netflix got started|Fortune
http://money.cnn.com/2009/01/27/news/newsmakers/hastings_netflix.fortune/

Netflix対応デバイス
http://www.netflix.com/NetflixReadyDevices?cid=Game+Consoles

Apple TV、今週中に100万台突破の見込み―iTunesのTV、映画ストリーミングの利用も急上昇|TechCrunch
http://jp.techcrunch.com/archives/20101221new-apple-tv-sales-to-top-1-million-this-week-itunes-tv-show-and-movie-rentals-soaring/

Reed Hastings: Leader of the pack|Fortune
http://tech.fortune.cnn.com/2010/11/18/reed-hastings-leader-of-the-pack/

Fortune 2010 Business Person of the Year: Netflix CEO Reed Hastings|WebNewser
http://www.mediabistro.com/webnewser/fortune-2010-business-person-of-the-year-netflix-ceo-reed-hastings_b9689


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社概要はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。