Apple HomePod Speaker (By Rick4512 - Own work, CC BY-SA 4.0, Link)
人工知能 AI を搭載したスマートスピーカーが、日本でも2017年内に発売開始されそうです。
来年も含めると、日本ではグーグル、アマゾン、アップル、サムスン、LINE、ソニー、パナソニック、オンキョーなどの各社からスマートスピーカーが発売される見通しです。
今回のエントリーは、スマートスピーカーでできること、各製品の特徴を見極めるための3つのレイヤー、スマートスピーカーの本質は何か、スマートスピーカーに期待すること、普及するのかを書いています。
スマートスピーカーができること
Google Home のイメージ動画です。
動画の利用シーンは、帰宅後にスマートスピーカーから自宅のライトをつけるシーンから始まります。他には、Google Home に話しかけ、音楽を流す、調理方法、クジラの鳴き声はどんなものかを質問し子どもに聞かせるなどです。
この動画での Google Home の利用は、音楽をかける、電気をつける、タイマー設定、YouTube をテレビで見る、知りたいことを聞く (月までの距離) 、SL 機関車の音を流す、という使い方を紹介しています。
Amazon Echo Dot (Dot は Echo の小型版) のイメージ動画がこちらです。
動画で紹介されている Amazon Echo の使い方は、起床後にカレンダーから予定を確認、Uber のタクシー手配、今日の天気を聞いています。人とスマートスピーカーが自然な会話でやりとりをしています。
スマートスピーカーの3つのレイヤー
スマートスピーカーは、グーグルやアマゾンだけではなく、LINE 、家電メーカーの参入も報じられています。
各社のスマートスピーカーの特徴を判断するには、3つのレイヤーで見ると考えやすいです。
- デバイス (形状やマイク音質)
- AI などの内蔵ソフトウェア
- 外部連携 (アプリ・家電などのモノ・サービス)
スマートスピーカーの本質
スマートスピーカーの本質は、外部連携です。
3つのレイヤーのうち、ハードウェアとしてのデバイスや搭載される AI などのソフトウェアではなく、スマートスピーカーが接続する先です。
いかに多くのアプリ、家のモノ (例: IoT 家電) 、外部サービスと連携しているかです。つまり、スマートスピーカーを中心としたエコシステムを築けるかです。
外部連携のイメージ例は、アップルの Home アプリのコンセプト動画に見ることができます。
Home アプリはスマートスピーカーではありませんが、動画では iPhone や iPad から家の中で連携した様々なものを動かす使われ方が描かれています。
外部連携のかけ算で価値が決まる
アップルの Home アプリの動画のように、スマートスピーカーが価値を発揮するためには、多種多様な外部連携が実現できていることです。価値を生むのはネットワーク効果で、連携のかけ算からです。
カレンダー等のアプリ × リビングルームの家電 × 自宅の様々なモノ × 自動車などの外のモノ × 外部サービス × …
かけ算のトータルをいかに大きくできるかで、スマートスピーカーの利用価値が決まります。
AI と AI の連携
スマートスピーカーからの外部連携には、他の AI との連携もあります。
実際に、Amazon Echo に搭載されている AI の Alexa (アレクサ) と、マイクロソフト の AI である Cortana (コルタナ) が2017年内にも相互連携されると、マイクロソフトが8月に発表しました。
相互連携から可能になるのは、例えば、コルタナが管理しているスケジュールをアレクサに聞く、コルタナにアマゾンの注文をすればアレクサが対応してくれることです。
アレクサとコルタナの AI 相互連携の意味は、お互いの強みを活かし弱みを補完することです。AI 同士が連携し、スマートスピーカーの利便性が良くなれば、スピーカーの提供価値は高まります。
スマートスピーカーは何を変えるか
スマートスピーカーが日本でも発売され、今の何を変えるのかに興味があります。具体的には次の3つです。
1. 人とデバイスとの自然な会話が浸透するか
スマートスピーカーとのやりとりは音声です。人ではないデバイスに対して、人同士でするような自然な会話が普通にされるようになるのかに興味があります。
スマホでも音声検索、iPhone の Siri 、Google アシスタントなど、音声から入力できる環境はあります。ただし、そもそも音声での入力をする人は多くなく、また、音声検索を使っても検索キーワードを言うだけなど、まだまだ人との会話に比べると無機質な音声のやりとりです。
スマートスピーカーもこのような音声でのやりとりなのか、それとも、家族や友人と話すような自然な会話調でやりとりがされるのかです。
2. 日常のハブになれるか
スマートスピーカーの本質は、外部連携だと書きました。価値を生むのは、外部接続先の多様性です。
この観点から、スマートスピーカーが自宅でのハブとなり司令塔のような存在になれるかに関心があります。具体的には、情報を手に入れる、指示する、外部とのやりとりなどで、どれだけのことがスマートスピーカー経由になるかです。
2017年現在は、ハブのような役割をしているデバイスはスマートフォンです。
スマートスピーカーによってスマホがなくなることはないでしょうが、自宅でスマホでやっていることのうち、どれだけがスマートスピーカーに代替されるかです。そして、スマホではできていないことがスマートスピーカーでできるようになるかです。
3. リモコンかパートナーか
スマートスピーカーの役割が、人が指示したことを命令通りにするリモコンか、それとも、擬人化されたパートナーのような存在になり得るのかも興味があります。
音楽をかける、スケジュールを確認する、外部接続先の家電を操作する (例: 電気を消す) などをただ実行する役割であれば、スマートスピーカーの役割はリモコンです。スピーカーとの会話に発展性はなく、音声で指示したコマンド通りに動く存在です。
注目したいのは、スマートスピーカーがパートナーとしての存在までになれるかです。
スマートスピーカーに聞いたことに対してただ答えを返すだけではなく、スピーカーからの能動的な提案が含まれていたり、会話が続き新しいやりとりがされるなどです。
パートナーでも、以下のような種類があります。
- 秘書のようなお願いしたことを忠実にやってくれる
- アドバイザーやコンシェルジュのように、時には言われたことだけではなく能動的に助言やサポートをしてくれる
- 親しい友人や家族のような、心を許せる存在
スマートスピーカーのすぐの普及は懐疑的
スマートスピーカーは、今までの世の中になかったデバイスです。
大きな視点で、新しい市場がどの程度になるのかに興味があります。私の肌感覚の印象は、今のスマートスピーカーでできることから考えると、受け入れられるのはイノベーターとアーリーアダプターの一部に留まるのではないかということです。
鶏と卵ですが、2017年9月時点では、スマートスピーカーの肝になる外部連携が十分ではなく、スマートスピーカーを家に置いてもできることが限られているからです。新しいものが好きな人、テクノロジーに興味がある人を超えるほどは、すぐには普及しないでしょう。
年内には日本でもグーグル、アマゾン、LINE からスマートスピーカーが発売されるとニュースで言われています。2017年9月時点では各社とも正式な発売日は明言はしていませんが、年内に発売されることを期待したいです。
販売開始後、どの程度の数が買われるのか、そして、今回のエントリーで書いたことは実現するのかに注目しています。