仕事をしてて最近ふと考えたことですが、イノベーションには2種類あるように思います。イノベーションというと少し大げさかもしれませんが、「よりよくするもの」として以下の2つの方向性があります。
(1)「不満」を解消するもの
(2)今までになかった「便利」をもたらすもの
(1)は認識していた「不満」を解消し、(2)は新しい「便利」を創造するもの。数学的な感覚で言うと、前者:マイナス⇒0、後者:0⇒プラス という感じです。例えば(2)の事例は携帯電話。携帯電話が存在する前というのは、電話は決まった固定の場所(家、公衆電話など)からかける・受けるもので、そのこと自体に特に不満はありませんでした。ですが、電話を「携帯する」という新しい概念が登場しさらには電話以外の様々な価値が付加され、今では携帯電話なしの生活が考えられないようになりました。
■身近なイノベーションをマトリクスで整理
(1)不満解消、(2)便利創造 をもう少し具体的に考えるために、ぱっと思いついた自分の身の回りのモノ・サービスをマトリクスで整理してみます。(図1)

○不満解消×ネット
Amazonは自分の消費行動を大きく変えました。例えば本を買いたい時に書店へ行っても、欲しい本が店内ですぐに見つからなかったり、そもそも置いてなかったりします。ですが、Amazonなら検索で一発で探し出せ、かつ在庫状況もその場でわかります。こういった自分の不満をネットにより解消してくれたのがAmazonです。
○不満解消×ネット以外
Amazonとも関連しますが、朝注文した商品が当日届くのもありがたいサービスです。これはAmazonや宅配会社による物流網による恩恵です。また、個人的な事例ですが、住んでいるマンションには「宅配Box」というものがあります。これは留守中に荷物が配達された場合、セキュリティのしっかりした宅配Boxに入れておいてもらえる仕組みです。これにより留守による再配達という不満は解消されます。
○便利創造×ネット以外
電子マネーが登場する以前は、小銭で支払うこと自体に不満を感じていたわけではありませんでした。ですが、コンビニなどでのちょっとした買い物では、電子マネーで支払うと小銭を出すという余計な手間も省け便利です。
○便利創造×ネット
ツイッターを使う前は、「つぶやく」こと自体にあまり意味がないように思っていました。しかし一度使ってみると、もはやなくてはならないくらい便利なものです。詳細は触れませんが、ツイッターにより情報収集の利便性が飛躍的に増しました。
■マトリクス上の3Dテレビの位置づけ
さて、最近よく話題になる3Dテレビ。先週21日、ついに日本でも発売されました。日本のメーカーだけではなく、サムスン電子など世界中のメーカーが3Dテレビ開発・販売にしのぎを削っており競争が激しくなっています。
しかしです。自分だけかもしれませんが、3Dテレビがそこまで価値のあるものなのか、と思ってしまいます。その理由を述べる前に、まずはテレビにおける3D映像を、先ほどのマトリクスで確認すると、以下のようになります。(図2)

つまり、今ある2D映像に抱く「不満」の解消ではなく、三次元のより迫力のある映像を楽しむことができるイノベーションだと思います。
■3Dではない今後のテレビへの期待
では、なぜ各社が一斉に3Dテレビを投入することに対して違和感を感じているのか。それは、自分のテレビへのニーズをマトリクスに当てはめることで整理できました。(図3)

○不満解消×ネット
地デジにより、テレビ画面からも番組表を確認できるようになりましたが、まだまだ自分の見たい番組を見つけやすいとは言えないレベルです。結局、各チャンネルを順番に変えたほうが早いという、今までと全く変わらない状況です。(もっと早く見たい番組を探す方法を自分が知らないだけ?)
○不満解消×ネット以外
リモコンにも不満があります。あらためて手元のリモコンに目をやると、たくさんのボタンがついています。地デジ対応テレビになりさらにボタン数が増えていますが、結局よく使うボタンは電源・チャンネル・音量の御三家で、今も昔も変わりません。現代のリモコンを使いきれていない自分が悪いのかもしれませんが、もっとシンプルかつ使いやすいリモコンは作れないものなのでしょうか。
○便利創造×ネット以外
(3Dテレビなので省略)
○便利創造×ネット
ここの象限は期待したいところです。例えばパナソニックの「ビエラ」がスカイプ内蔵のテレビを出すようですが、このサービスは結構便利だと思います(さらに無料)。またテレビから直接買い物がもっとしやすくなれば、「テレビで買いたいものが見つかる⇒ネットで検索⇒購入」という無駄なステップを踏まずにすみます。そして最も期待したいのは、オンデマンド配信の充実。現在でもNHKオンデマンドなど一部サービスがありますが、まだまだ物足りない印象です。完全な一視聴者としての意見を言うと、YouTubeやユーストリームなどと連携することで、テレビ局都合の番組配信(番組表)によらない、「自分が見たい時に見たい番組を見る」という視聴を期待したいのです。(現実的には、一方的な視聴者意見なので実現は難しいと思いますが)
■最後に
3D映像もカテゴリーによってはおもしろいと思うので、決して否定するつもりはありません。映画やスポーツなどは二次元では表現できないコンテンツになるからです。しかし、各社横並びの3Dテレビ競争にはなんとなく腑に落ちないところもあり、結局上記の自分のニーズを解消してくれるのは、以下の記事に出てくるような企業からの全く新しい端末なのかもしれません。
※Google TVの発表で、Apple TVが「趣味」以上になる
http://jp.techcrunch.com/archives/20100318google-tv-apple-tv/