
無料で送られてくるニッセンのカタログ
ニッセンという通販サービスがあります。定期的にカタログ雑誌が送られてきます。送付頻度は季節ごとなので、約3ヵ月に1度のペースです。
カタログは男性用 (メンズニッセン) 、女性用は細かくカテゴリーが分かれており、衣服以外にも便利グッズのカタログもあり充実した内容です。
カタログは無料です。カタログとともに例えば化粧品や健康食品の広告も入っています。一部には広告による収益も入っているかもしれませんが、ニッセン会員になれば秋号や冬号とカタログ雑誌が無料で手に入る仕組みです。
今回のエントリーは、雑誌のビジネスモデルを 「仕組み」 という視点から考えます。
ニッセンのビジネスモデル
カタログだけを見ると、それなりのコストがかかっています。
毎回、複数冊が送られ、掲載量と全てカラー印刷です。カタログの製造と編集、送付、モデル人の件費もあります。会員に無料で配るということは、カタログだけに限定すれば赤字です。
赤字を補っているのは、通販サービスです。
細かい損益分布はわかりませんが、カタログ配布者 (会員数) を100とすると、そのうち通販購入者が x% 、うち y% が高頻度で買ってくれる優良顧客 (例: 季節ごとに毎回買ってくれるリピーター) 、という構図です。カタログや通販など事業全体で見ると収益を出すことができるビジネスモデルになっているのでしょう。
ニッセンのビジネスモデルを一般化すると、コンテンツ (カタログ雑誌) を無料で配布し、一部の会員から売上を稼ぐフリーミアムモデルです。
フリーミアムは身の回りでも多くあります。例えば無料アプリです。機能をグレードアップすると有料になります。試供品をタダで配り気に入ってもらえれば、あらためて商品を買ってもらう化粧品もそうです。
ソーシャルゲームも基本無料で、有料アイテムを買ってでも遊びたい一部ユーザーからの課金で成り立っています。他にはアップルです。iTunes というプラットフォームサービスを無料で配り、音楽や映像コンテンツを有料です。
週刊少年ジャンプのビジネスモデル
次の雑誌のビジネスモデルは、週刊少年ジャンプやマガジンです。
ジャンプは毎週月曜、マガジンは水曜に発売されます。250円程度で複数の連載が掲載されており、ボリュームのわりに価格は安いです。必ずしも全ての連載が好きなマンガではないでしょうが、漫画の単行本が1冊500円前後くらいを考えると低価格です。
なぜ安いのかを考えると、あえてこの価格にしているはずです。考え方はニッセンの無料カタログモデルに近いです。無料とはいかないものの、週刊誌を安く提供する代わりに、他で収益を得ています。
他とは、マンガの単行本です。逆に言うと、単行本は利益率を確保する存在です。単行本の内容は、すでに毎週のジャンプやマガジンで掲載されたもので、10話分程度の量です。
ジャンプやマガジンの週刊誌は単行本を売るための 「試供品」 という位置づけと見なせます。別の言い方をすると、テストマーケティングです。
子供のころ、ジャンプやマガジンを毎週読んでいて気づいたのは、連載が急に終わる漫画は、終わる数週間は掲載位置が後ろになっていくことでした。出版社の対応は、人気のマンガを残し、そうではないものは早めに打ち切っていたのでしょう。
収益はジャンプではなく、ジャンプコミックスという単行本で上げたいので、人気のあるマンガを長期で単行本にできれば、それだけ売上が見込めます。週刊誌である程度の単行本の売れ行きを予想できるのでしょう。
もっとも、週刊誌の各マンガの人気バロメーターは読者アンケートによるところが大きいのではないかと思います。もし、アンケートを送る読者の人気だけで連載を続けるかどうかが決まるとすると、アンケートを送る人は一部の熱心な人だと考えられるので、単行本の人気とズレる可能性はあります。
期待したいこれからの雑誌のビジネスモデル
ジャンプやマガジンを電車内のサラリーマンが読んでいる光景を見かけます。子どもの頃からずっと毎週読んでいると思うので、顧客としては貴重です。ライフタイムバリュー (顧客生涯価値) の高い顧客です。
ジャンプやマガジンなどの週刊誌は、定期購読させる仕組みがビジネス誌と比べると弱いです。
ビジネス雑誌と比較するとボリュームがあるので、配送コストはかかるのかもしれません。であれば電子版を有料モデルとして毎回自動課金にするとか、専用アプリを作って配信の仕組みを構築できればと思います。
今のスマホのアプリだと、有料アプリでもダウンロード時に1回課金されるだけなのが主流です。アプリそのものよりもアプリは無料にし、毎回配信されるコンテンツで課金するやり方です。考え方はアップルの iTunes と同じ仕組みです。
電子書籍には、活字の本だけではなく、漫画や雑誌など、幅広くビジネスモデルが成り立つことを期待します。デバイス・プラットフォーム・コンテンツの各レイヤーがうまく連携し、読者が楽しめるようになってほしいです。